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何度も死んだから  作者: 飴星みと
第一章『黒髪』
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第二話『消防ん時見たヒーロー』

生む苦しみをとことん味わいながら書いてます。

「だ、大丈夫ですか!?スミタさん!」


 大丈夫じゃねぇ、痛ぇよ!どうせ、救われねぇ。なんで出会ってしまったのだろう。だからこそ、町に行きたい。生きたいよ。俺は。

 くそ痛ぇ、けど俺は我慢した。もう痛くねぇのに。なんで心は痛む!逃しただろ!俺は正義だろ!?弱いちっぽけな惨めだけど・・・ヒーローになりてぇっつの。俺は!消防ん時見たあのヒーローは今どこにいるんだよ!助けてくれよぉ!消防ん時ゃヒーローに憧れてたよ!今、ヒーローになろうなんてな。俺も、カッコ悪ぃ。もっともっとカッコ良く出来ねぇのかよ!苦しい!


「大丈夫ですか!聞こえてますか!」

「ヒーローになるんだ!!俺は!」


 空に、天に、放つ言葉は木を薙ぎ払うかのように。その言葉は理解されなくたっていい。みっともねぇ俺を見ろ!自慢できねぇ所を自慢してやる!なんでこんなムキになってんだ!気持ち悪ぃ!みっともねぇ!


「俺はお前を絶対に守ってみせる」


 だから!狼をぶん殴ってやる!今出たって後で出たって。俺はぶん殴る蹴って蹴って蹴りまくる!そしてダッ、ダッ、と殴り蹴る。狼はすぐそこに。群れてはいない。

 クゥン、クゥンと鳴く狼をシクシクとキリキリと痛む俺の心は負けないよう。力を拳に、脚に!噛みつくな!俺らに!お前は、噛みつかれた事があるのか!弱いものいじめをして、そんな楽しいのか!だから俺は精一杯抗わせてもらう。

 血が滲む拳に頭を冷やし、何かこないか凝視して注意しながら。

 それは巨体、狼だった。だから、どこが弱点か探るかのように見たが弱点らしき点はなかった。これは力の勝負だ。俺の方が弱いに決まっている。だから俺は、あの狼に、向けて、血の滲む拳を突き出す。そうすると腕が軋みギシと音がする。相手の狼には効いている様子がなかった。だけど、俺はその痛みを我慢して殴り蹴る。最近、殴って蹴ってばかりだ。彼女を救う為に。


「もう無理しないで。逃げましょう」


 !?逃げる?その手があったのか。そうだな。逃げよう。全力で逃げよう。一緒に一生懸命、精一杯、最大限を尽くそう。

 全力で走った。一緒に逃げた。けれど。その先に待ち構えていた。ドラゴンがいた。厳つい。勝てそうにないドラゴン。右に抜けた。だが、ドラゴンが追いかけて来て。(ついば)められた。


 ────────────────────


「だ、大丈夫ですか!?スミタさん!」


 またここだ。何度死んだのだろう。4回くらいは死んだような気がする。もう死にたくない。もう死にたくない。そう思っていても死んでここに戻ってくる。打開策がわからない。意味はほぼないが大きめの石を何個か拾う。


「ダイジョブダイジョブ、君の顔を見れば生き返るなぁ、ささ、さっさと町に行かないか。」


 町に向けて歩いていく。足取りは順調でなんの問題もなく。狼の出る気配はない。全く変わらぬ風景、彼女の靡く髪。綺麗な髪には赤い血がこびりついていた。


「!?」


 なぜ血と表現したのだろう。絵の具だっていう可能性があるのに。でもそれは狼の気配に掻き消された。


「逃げるぞ!全力で!」


 逃げろ、逃げろ。今、頭は逃げるという事に埋め尽くされた。戦っても、大型狼が出てくる。うまく逃げればドラゴンに会わない。あの時、ドラゴンはどっちの方角へ?

 現在太陽があるところを南と仮定して。南西の方角に町があってその道をずっと走るとドラゴンに出会う。

 そうだ、太陽の方へ逃げよう。そうすれば会わないはずだ。

 計画通り。ドラゴンに会わずに来れた。後は町に行くだけだ。その足取りはゆったりと。疲れを癒して。


##########


 町につく。


「私はセレンと言います、ここまでありがとうございました」


 と、セレンは言った。だが、ここまでありがとうございました。から読み取れる心情はさようなら。だが俺は別れるつもりはさらさらねぇ。


「スミタさんって黒髪でしょ?辛かったよね。私も黒髪だからわかる。」


 彼女はそう言った。でも何故だろう。黒髪が辛い?みんな黒髪の日本。これが当たり前だから辛くない。


「辛くねぇ、俺の故郷じゃみんな黒髪だ。」


 自分はそう言い返した。黒髪が当たり前なのになんでだ?なんで辛いのかがわからねぇ。


「そう、この世界では悪魔と呼ばれる女性がいるの。その名はセレン・ベルセリウス。私は名前まで同じだった。だから皆から嫌われていた。無視されて。意地悪されて。」


 黒髪の人が全員悪魔だったら。多分やり返して痛い目にあってるだろ。なのにこの世界はバカだ。悪魔に刺激するより、悪魔を畏敬した方がいいのに」

 あ、口に出ていた。いつから口に出ていたのだろうか?


「そうだといいのにね。すぐに変えられはしない。」


 偏見か。いじめは良くない。第一に心が傷付く。脳にも影響があると聞いたことがある。しかも暴言を吐くと人間の脳って主語認識できないらしいから暴言を言われているのと同じような状況になるらしい。

 そんな世界、くそくらえだな。連帯責任かよ。それはやっちゃいけないな。罪もない人間を罰する。それは罪を犯した者と同じだ。差別は良くない」

 またいつの間にか口に出していた。癖なのか?でもまぁこれは他人にしられてもいいことだし。


「・・・スミタさんは泊まるところがないでしょ?私の家に泊まってください」


 えっ!?女の子と同じ家!?恥ずかしいなぁ照れるなぁ。

 ・・・さようならと言っていたのに何でいきなり・・・?まさか殺すために?・・・いや、常識的に考えてそれはないか・・・。


「勿論私の部屋に入ったら貴方は通報されますよ」


 入るわけないけどな。俺は紳士だ。来ていいと言われても行く勇気がない。


「さあ、行きましょう」


 ・・・今のセレンは穏やかだ。


##########


 立派な家だ。

 豪華絢爛ではないし質素でもない立派という言葉が良く当てはまった家だ。そんな家がセレンの家だ。


「お邪魔しまーす、内装はスッキリしてるな」


 スタイリッシュという言葉が良く当てはまった内装だが俺の部屋は奥の方にあるという。部屋に俺の全財産とお菓子とソーラー発電機等を置く。

 パシャッと外の風景を撮る。中世ヨーロッパの町並みだ。このaneroid端末はカメラとメモと電卓くらいしかできないが、カメラは便利だろう。


「そうだ、外も晴れてるし、色々見回るか!」


 俺は部屋から出ると偶然セレンが居た。これはいいタイミングだ。外に行く旨を伝える。


「暇だしちょっくら外に行くわ!じゃあな!迷子にならないよう気をつけっから!」


「わかった。本当に迷わないでね?」


 多分俺は土地勘がないと思われているのだろう。まさにその通りだが。でも方向音痴ではないので通った道を覚えて、頑張ればいいはずだ。


「そういえば貴方は黒髪ね。汝、茶色に染まれ。チェンジオブカラー」


 髪の毛が茶色に変わる。そうだった。ここでは黒髪が差別される偏見的な社会。社会に抗うなんて、しても何も変わらない。


「ありがと!じゃあ行ってくるわ!」


 ドアノブをひねって外に出る。行く宛はない。けれど目的はある。それはスマホで写真を撮りながら、歩く。それだけだ。

 中世ヨーロッパのような町並み。馬車に煉瓦に、見所がねぇ。暇すぎワロタ。イベント起きれ。

 そうだ、店に行って数字を覚えようか。スマホのカメラで値札を撮る。


「おっちゃん、ワイ他の国から来たんやけど、これなんぼ?」


 と似非関西弁で喋りかける。イントネーションはわからないから似非である。


「そのリムゴは良いところから仕入れたもんでな125エムだ」


 00088と書かれていた・・・他に聞いてみよう資料はいっぱい必要だ


「じゃあこれはなんぼ?」


 店主は滑らかに答える。


「そのリムゴはどこにでも売ってるような奴で100エムだ」


 01810と書かれていた・・・さてはこれ。3進数ではないか!?


「で、なんか買っていくのか」


 そうだよな。俺はたんなる営業妨害。客を装うか。


「うーん、金はここに・・・あれ?金どこ行った。すまん!財布忘れてたわ!取りに行くで!待っててな!」


 と財布を忘れた客を装い立ち去ろう。


「はぁ、次は財布忘れんじゃねぇぞ!」


 よかった。おっちゃんが心優しくて。そう思いながら家に帰る。


 勿論帰り道は覚えている。店の看板の写真を撮ったのでまた戻ってこれるさ。・・・次はちゃんと買おうな。

 ちょっと修正。

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