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何度も死んだから  作者: 飴星みと
第一章『黒髪』
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第一話『自覚夢』

 ───ここは?

 現代日本、ゆとり教育は終わり全く意味のわからない授業が続く。けれど、眼中に行き渡るは平原。それも日本ではない、そう直感は捉えた。その平原は緑、緑、緑、青々しい空に彩られた緑。草木の匂いが妙に落ち着く。冷静に冷静に。


 ───意味がわからない。授業中だったが?夢か?

 夢の中なら「夢だ」なんて自覚するのはとてつもなく難しいことだ。なら、なぜ自覚している?明晰夢か?多分、自覚夢だろうか。自覚夢とは自覚する夢であるが、明晰夢のように自由行動出来る訳ではない。夢の中で自覚することが決められていたような夢が自覚夢だ。明晰夢を使えば夢の中だが色々な事が出来る。空を飛んだり、大金を取得したり、あんなことやそんなこと、タイムリープまで発展させることができるらしい。そして明晰夢の進化系は幽体離脱である。だがその説明は省略させてもらう。

 で、長々と喋ったのだが、夢で頬をつねった。だが、こんな事があったんだ。俺は夢の中で斬られた事がある。それは、本当に痛かった。でもなんでこんな無意味な事をするのだろうか。


 ───痛い。

 現実でつねられたような痛みがする。夢の中で斬られた時は痛かったのだが、本当の痛さではなかった。

 ・・・実はこれは、現実で寝てる俺の頬をつねったのと被っただけかもしれない。でもそんなんだったら起きているはずだ。こんな思考できているのだから夢ではないだろう・・・という推測まで持ってこられる。


 ───けど、これが本当に現実だったら・・・?

 多分、生地獄というのに相応しい状況だろう。真面目に死のうか悩むレベルだ。サバイバルになるだろう。自給自足・・・?無理だ!こんなゆとりには無理だ!スマホとそのソーラー充電器と俺の全財産862円とお菓子!・・・そうだ、ステータスと唱えてみよう!もしステータスがひらけたら・・・最強だったら?


 ───ステータス!

 非情にもそこにステータスは現れない、スキルもなさそうで、力もない。だめだこりゃ。色々な意味で苦しいと言うべき状況だが現実逃避をする。・・・その瞬間、狼が後ろから噛みついてくる。


 ───痛い。けど、死ねるんじゃないか?

 何をトチ狂ったのだろうか?生きたい生きたいと思うのが人間・・・いや生き物の摂理なのだ。でもそれはそれはとてもとても強欲なことだ。


 ───くそっ、耐えられねぇ程痛ぇ。

 なんの試験だっつーの。生きてきた中で一番痛い。そういえば、死ぬ瞬間って一番の快感を味わえるって聞いたことがある。けれどそれは嘘だったようだ。それは死を誘導させていたのか?うん、血ってグロテスクだなぁ。


 ───真面目に痛ぇ、溢れてでる血ってやっぱ俺の血だよな。

 鮫は人間を食べることはあるが、食べたくて食べている訳ではない。骨が多く、身が少ないから噛んだ後吐き出すらしい。まぁ、噛まれて死ぬが。


 ───熱い、熱い、熱い、熱い、痛む所が熱い。熱い所が痛い。

 人間、脂肪の少ない所が美味しいそうだ。内臓とか美味しいらしい。目の周りが美味しいという。視神経は珍味だと言われる。醤油で食べてみたいという自分が居た。


 ───意識が霞む・・・意識が痛む・・・。

 豚は脂肪が多そうで実は少ない。デブな人を豚というのは間違っている。豚に失礼だとも思う。豚肉美味しいし。最高級豚には謝ってほしい・・・な。


 ────────────────────


 ───ここは?

 先程まで狼に食われていた筈だ。美味しいはずないのになぁ。生きるため必死なのか?

 先程までのは夢だったのか?でもリアル過ぎる。夢じゃなかったらもう死んでたよな。今生きてるってことはさっきのは夢だった。でもその影響を受けたかな、このままボーッとしていても狼に食べられるだけだと思った。そうだ、ここから立ち去ろう。一方方向に歩いてみた。太陽の方へ行くことにした。


##########


 ずっと歩き続けていると茶髪の女性が倒れていた。

 直ぐにかけよる。息はしている。大丈夫だろう・・・か?でもこのままではよくない。起こさないと。

 ───び、美少女だよなぁ。

 童貞っていうか年齢=彼女いない歴の俺には揺する事も喋りかけることも出来なさそうだ。

 だが、勇気を振り絞る。俺の父親はいつも言っている。

「同じ人間なんだぞ?」

 その言葉を信じて肩をポンポンと叩きながら声をかける。


「あ、あのっ。だだっ、だっだっ、だいじょ、ダイジョブで、ですでです、かですか!?」


 己!恥ずかしい!恥ずかしい!穴があったら入って蓋をしてその上をセメントで固めてほしい。そしてその上にマンションをたてて大地震で崩れてほしい。そして瓦礫に埋もれたい。

 そらそうだ!女性で会話したことあるなんて母さんと先生くらいだ!彼女なんて夢のまた夢、そのまた夢の夢の夢の・・・・そんな存在だった!まして美少女ともなると!もしこの子が男であったとしたら・・・それでもいい。いやむしろそれがいい!ダメだダメだ!自分の制御がきかなくなっている!くそっ!


「う、う、あれ、貴方は?」


 ぐっ!女の子が喋りかけてくるなんて!超声綺麗美しい!優しい声に包まれる感じだ!未体験に未体験を積んだような感じだ!


「お、おおっおおっ、れおっ俺の、ななっななななっなまっ名前っはっはは、すっすすすすみ、すみすっ、炭田たったた、けっけけいけ珪、でっですですで、ですっ」


 だめだっ!こりゃだめだ!拷問!女の子と一緒にいるだけでも拷問なのに!


「えっと聞き取れませんでした。もう一度言ってもらっていいですか?」


 もう、俺、死ぬかもしれない。だめだな、死んじゃいけない。慣れていかないと。今からこの人と一緒に暮らすんだ!その為にも慣れなければ!


「おっ、俺の名前は炭田珪!お金は持ってねぇ!戦う力もだ!」


 色々とだめだな、俺。絶望。死ぬルートしか思い浮かばねぇ。けども生きねば。


「色々と・・・可哀想なことで・・・・、でっ、では、町に行きませんか?」


 町か、こんな平原で暮らしていいこたぁねぇ。もっと楽に生きたい。だからこそ平原抜けて町に行ったろう。


「おうっ!」


 さて、二人で歩いているのだが、町らしき所は見えてこない。もっと先だという。もう疲れてきた。のにも関わらず謎の美少女は歩くことをやめない。


「っ!」


 狼が、後ろから跳んでくる。咄嗟に殴った。あの狼謎の美少女を食べようとしていた。横に狼は倒れ、今がチャンスだ。


「うぉりゃ!」


 そう力を振り絞るかのように声を出しながら狼を殴る拳を突き出すといいよりかは、縦に降り下ろす感じだ。狼は痛がっている様子だ。クゥンクゥンと弱く鳴いたが自業自得だ。


「ヒーローパンチ!!」


 そろそろ拳の限界だ。さっさとスタンしてくれないと困るぞ。狼は起きようと起きようと必死だが俺が殴ったり蹴ったりしてるからそう簡単には起きられない。

 拳がヒリヒリ痛む。赤くなっている。でも我慢は出来る。噛まれた痛みに比べればこんな痛み撫でられたのと同じくらいだ。


「だ、大丈夫ですか!?スミタさん!」


 全く大丈夫だ。痛みなんてないに等しい。少し血が滲む程度だ。やっとスタンした狼に中指を立てる。

 一回死んだだけでここまで洗脳みたいな状態にされるだなんてなぁ。色々と、怖いな。でも無事で良かった。


「大丈夫だ、問題ない」


 死亡フラグを建てたが俺は唯一無二のフラグクラッシャー!!え?意味を間違えてる?間違えててケッコーコケコッコー!我ながらうぜぇ!


「な、なら良かったです。そして、救ってくれてありがとう」


 まだ変わらぬ風景。平原が広がる。遠くには森もある。落ち着く森の匂いに癒されながら歩いている。

 まだ変わらぬ風景。平原が広がる。遠くには森もある。気持ちのいい風に吹かれながら道のない道を歩いている。

 まだ変わらぬ風景。平原が広が・・・・。


「だ、大丈夫ですか!?スミタさん!」


 二重になった声は被る。フラグクラッシャーは死んだ。死亡フラグは果たされた。


 ────────────────────


「だ、大丈夫ですか!?スミタさん!」


 大丈夫・・・じゃねぇ。とてつもなく痛い。苦しい。生きる苦しみってもんかぁ?現実逃避したい。


「大丈夫」


 大丈夫じゃねぇのに、強がって。俺、弱いくせに、なんで強がるんだよ。俺、弱いくせに。今、身体に痛みはない。だが、さっきの痛みが頭の中の警鐘をならして。痛いのだ。


「だ、大丈夫に見えないんですが!本当に、本当に、大丈夫なんですか?」


 救われたい。けど誰も救ってくれない。痛いんだよ俺は、でも俺は誰も救ってくれなくても生きてたんだよ。痛いな・・・。けど大丈夫って言わなければ。強がり、それを信念とするかのようだ。俺は。けど、そんな強がりな弱虫でいいんだ。


「今こそ彼に癒しを授けろ。ライブ」


 ・・・今、気付いた。この言語はなんだ?日本語じゃないよな。意味はわかる。喋ってると口の形とかが違う。そうかな・・・・・・これが俺のチートか。心の痛みが引いていく。魔法、使ってみたいなぁ。使えないだろうけど。こんな惨めな主人公は、魔法を使えない。


「今、傷を癒しました。ですから、おそらくでしょうが大丈夫でしょう。」


 迷惑かけてすまない・・・。気が狂いかけてたようだ。けど本当に感謝しなければな。心が救われた。


「迷惑かけてすまない」


 今、あるアニメでこんな事を言っていた事を思い出した。何回も謝るより、一回「ありがとう」って言ってくれたほうが良い。したくてしてあげた事だから。という内容のこと言っていた。・・・そのアニメと被っている?色々と違うけども同じ部分が多いような。まぁ、いいのか?


「いや、ありがとう」


 俺は、すかさず訂正した。ありがとう、と優しさを差し出すかのように、放った。


「いえ、こんな事くらいどうということは無いですよ」


 でも、こんな事が嬉しい。こんな事でいいんだ。一面は、優しさに彩られた緑だ。優しい色、匂いは俺を天国に招き入れたよう。

 だが、そんな嬉しい一時は、すぐに終わってしまう。狼が、血を歓迎する。利き腕は、千切られる。右腕だ。痛みが残る。

 それなのに、俺は殴る。ダッ、ダッ、と重くのし掛かるような音を放ちながら軋む腕が痛む。優しい一時は今、血の一時へと変わるだろう。狼が、俺を噛みつく。負けじと、殴る、蹴る。いじめられていた俺は、いじめ方を知らないけれど、いじめ方などそんな心得もなく、殴る、蹴るだけだった。

 結論は救われなかった。最後に俺は、彼女に「逃げろ」といった。力強くか弱き者が言った。俺なんてバカが残っても得一つない。彼女の命があることを祈った。


「ごめんなさい」


 そう最後に、彼女は言った。


 ────────────────────

 誤字を発見したので訂正しました。

 誤字脱字と思われる点を見つけまして報告してくださると作者が「もし罵倒だったら?」と思い、勇気が必要になります。

 そして、改行を少し増やしました。

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