地獄のウサギ
二回目の投稿です。はっきり言ってまだ本編ではありません。もう少し序章が続きます。
『くはははは!無様だな!』
『一般人!!テメーは惨めだな!』
『テメーは犬死にだ!テメーを守ってやった女も死ぬ、お前のせいでな!くはははは!くはははは!』
「うわああああああ!!」
僕は飛び起きた。
「はぁはぁ、・・・・夢だったのか?」
夢、そう夢だった。そうに違いない、いやそうだと思いたい。あんな痛い経験は夢の中でのことだと思いたい。
しかし現実はそう甘くない。夢を見ていたのなら寝ていたはずだ。僕は自分の寝つきの良さに関してはとても良いと思っている。けど僕が寝る場所は家の中もしくは学校くらいなはずだ。
今、僕がいるのは円盤の上と言っても過言ではない。色は白で半径は100M程の大きさ、辺りは真っ暗でこの円盤以外は恐らく何もないだろう。
僕はここがどこかもわからないし、ここへの来た記憶さえない。ただもし、さっきの夢が現実ならここに心当たりはある。信じたくないが恐らくここは・・・
「はい、地獄で間違いありませんよ。」
「っ!、う、うわああああああ!!」
突然、話しかけられた。話しかけられた方向を見るとそこには人がいた。いや人ではなかった。
「なんですか、なんですか?突然、心の中を読まれ話しかけられびっくりし、話しかけられた方を見れば・・・」
そうそいつは・・・
「タキシードを着て、シルクハットをかぶっているウサギを見ているような顔をして?」
そいつの言った通り、そいつはタキシードを着て、シルクハットをかぶっている白ウサギだった。しかしその顔はあの可愛いウサギの顔ではなく、可愛い顔を1000倍胡散臭くした顔だった。
「ひどいですねぇ。人の顔を胡散臭い呼ばわりは、これでも私この地獄では偉いお人なんですけどねぇ。」
「っ!」
「おやおや?そんなに自分の心の中の声がばれるのが不思議ですか?フフフ、いいですねその表情。人の驚く姿はやはり面白い。」
「き、君は誰?」
「おーと!その質問はもう少し待ってください。もう少しでたくさんの他の方々も来ますので。」
ウサギは醜悪な笑みを浮かべそう言った。
「他の方々?」
「嫌ですね~、わかっているくせにここは地獄ですよ。つまり・・・・」
僕はその言葉の意味をわかっていた。けどまだ実感がなかったんだ。ここが地獄で、ここに来ると言うことが
「つまり死んだ人々が来るってことですよ。しかも大勢来ますよ。2、300人はいるでしょうね。」
「そ、そんなに!」
「人というのは誰かといつも競いあっているものです。下らないことから大変重要なことまで色々とあります。その中には自分や他人の命を賭けて競う等、愚かなことするのです。例えば戦争、それは他の人種よりも優れているのを競いあっているのですよ。その国の偉い人々は、その国の人々の命を賭けてね。」
「その割りには人間の命というものは儚いものです。運が悪ければ少しの傷でも死んだり、少しのミスで命を落とすこともある。人間の命は人間の欲よりも儚いものですね。フフフ、まぁそんな儚いものですから私はその最後の瞬間が・・・・」
最初の方は僕に話しかけていたが途中からは独り言のようになり最後の部分に関しては聞き取れなかった。しかし最後の部分を話しているウサギの顔はまるで一番好きなオモチャを壊して喜んでいる子どもの顔に見え、僕は戦慄を感じ背中に冷たいものが流れた。
その時、円盤のあちらこちらが突然ひかりだした。
「っ!な、なんだあれ?ねぇ!ウサギ、色んなところがひかりだしてるけど一体何が起こっているの?」
「フフフフフフそう人間の命は、んっ何ですか?いきなり。あっああこれですか、言ったでしょ『他の方々が来ます』と。」
「えっ!じ、じゃああれは」
「はい、地球で死んだ人々がこちらに来てるのですよ。美しい光景ではありませんか。私はいつもこの時が楽しみでたまりませんよ。フフフ」
光はその数、その強さを増しまるで円盤自体が光っているようになった。最後の方には直視できない程のの強い光となっていき、どんどん膨張しているようだった。
「ま、まぶしい。な、なんて光だ。」
「当たり前ではありませんか。これは命が燃え尽きる最後の輝きですよ。だからこそ強く!儚く!美しいのですよ!」
ウサギはその光の輝きを見逃せないように、瞬きさえしていないといえるほど凝視していた。
「さぁ!来ますよ!一番美しい瞬間が!」
「な、何?!」
膨張していた光が最後の輝きばかりに光りを発した。僕はその瞬間に目を瞑ってしまった。光はすぐに消え僕はすぐに目を開けることができた。そして僕の目の前には大勢の人々が立っていた。
「こ、ここは?」
「えっ、あれ、私死んだはずなのに!?」
「where's here!」
そこにいる人々は日本人のほかにも外国人がいた。ここが地獄なら地球上の人々が来るので当然といえばそうなのだか。
ただそこにいる人々には共通する点があった。それは驚愕と困惑だった。死んだことを自覚してるしてない関係なく、突然自分たちが知らない場所に来てしまった。僕は目の前にいる人々よりも先にこの場所にいたからこそ彼らの気持ちがわかる。それでも僕が冷静に周りの状況を確認できてはいない。只々、そんな人々を固まって見ている事しかできなかった。隣にいたウサギがいなくなっていることに気付かずに。
十数秒後、少しずつ人々に落ち着きが戻ってきたところだった。
「あれ?相馬くん?」
「えっ?君は・・・あっ!春宮さん!」
「うふふ。思い出したかしら?久しぶりね。」
声をかけられ、声のする方向を見るとそこには中学の時のクラスメイトだった少女、春宮陽菜がいた。
「えっと、そうだね。久しぶり春宮さん。」
「2、3年ぶりくらいかしら?相馬くんと会うのは。そんなに経っていたら私のことも忘れて当然よね。少し寂しいわ。」
「う・・そ、それはごめん。でも中学の時、春宮さんとはほとんど喋っていないし、それに・・・・」
それに春宮さんが可愛いからとはとても言えない。彼女はとても美少女だ。整った顔立ちにウェーブのかかった髪型、出るところは出て引っ込んでいるところは引っ込んでるという全体で男ならば必ず二度見はするだろう。
彼女は中学の時には『三大女神』の1人と言われているほどだ。後の2人は一つ上の学年に共におり、その2人が卒業してからは『学校一の美少女』にランクが上がっているのか下がっているのかわからないネーミングに変わった。
そんな彼女は周りからの男女全てから人気があり、いつも周りには人だかりが出来ており、中学でも友達が少なかった僕はその人混みには入れなかった。そのため話せるのは授業の時に必要最低限の掛け合いしかなかった。だからこそ僕は彼女には顔を見ても同じクラスメイトだったとも思い出されないだろうと思い、僕自身も彼女のことは忘れていた。
「それに・・何?」
「いや、何でもないよ!それよりまた春宮さんと会えるとは思ってもみなかったよ。」
「そうかしら?同窓会とかあればまた会えるじゃない。」
僕はクラスメイトに友達がいなかったから恐らくその同窓会には呼ばれない。とはこれまた言えない。おかしい、さっき程まで目が潤んでいなかったのに何故か目が潤んできた。とてもおかしい。別に友達がいないに悲しいとは絶対に思っていない。絶対に
「そ、そうだったね。でも同窓会はもう少し先だし、たぶん忘れて行かないかも。」
「うふふ、おかしな人ね。でも変わらないのね相馬くんは。中学の頃と一緒。」
「そ、そうかな?少しは色々変わったと思うけど、背も少し伸びたから見た目も変化してるし。」
「そういうことじゃないだけど・・・、まぁいいわ。ところで相馬くん。聞きたいことがあるの。」
「えっと、なに?僕にわかることだったら答えるけど。」
「ここは一体どこなの?気が付いたらここにいたけどこんな場所見たことないもないけど。」
彼女の顔が真剣なものに変わり、ふざけて回答するようなことはできなかった。
「春宮さん、僕に会う前のことは憶えてる?」
「えっと、学校からバスに乗って帰宅の最中だったわ。途中、眠気が襲ってきて眠ってしまったの。それで起きたらいつのまにかこの場所にいたの。突然のことでびっくりしたけど、そんなときに相馬くんを見つけたの。一応、これが相馬くんに会うまでのことよ。」
「そっか。わかったよ、ありがとう。」
おそらく、春宮さんの乗っていたバスが彼女が寝ている間に事故を起こしたのだろう。そして彼女は自分が死んだことに気付かないまま死んだのだろう。だからこそ、ここに来ても恐怖と混乱はあるが他の人々とは違う方向のものになった。そして知り合いつまり僕を見つけた彼女はほぼ完全に落ち着きを取り戻していたのだろう。
「あれ?ちょっとまって、春宮さん。春宮さんがバスに乗ったのは学校が終わってからって言っていたけど」
「ええ、そうよ。休日だったけど授業があったの。授業が終わって帰宅するときはもう午後だったわ。」
僕が死んだのはおそらく午前中のはずだ。だが彼女は午後に死んだのだろう。どうやらここに来た時間はもしかしたら全員一緒に来たがバラバラのかもしれない。
「それで教えてくれる?ここはどこなのかを?」
「あ、うん。実はここは・・じ『はーーーーい!みなさーーん!ご注目くださーーーい!』
突然、僕の声をかき消してこの円盤の上に乗っている全ての人々に話しかけられる声がした。
『はいはい、こっちですよ。こっち。一応、全ての人に見える位置にいると思うのですが見えていない人はいませんか?』
そいつは僕たちのいる円盤のよりも小さな円盤で僕たちの上空4、5メートルのところにいた。
『ふむ、どうやら全ての御人から私の姿は見えているようですね。さすが私、完璧ですね!!・・・・・おやおや反応がありませんね。まっまさか!反応できないほど素晴らしいものでしたか!私自身の反応が。それともつまらなかったですか?もしくは、まぁあり得ませんが私が・・・・』
そう、そいつは
『ウサギだったからですか?』
そのウサギは口が弧を描いた醜悪な笑みでそう言った。