#4「月と星」
土日は休ませてもらいました。急用ができてしまいまして…。
今週から頑張ります。
その日の夜は晴天だった。
星と満月が輝く、素晴らしい夜空であった。
その空の下――菜花梨紗の家。
菜花梨紗は「輝く者達」を片手に、呪文を唱えている。
彼女は魔術を発動させようとしているのだ。
どのような魔術か――彼女が呼んでいるページにはでかでかと「神と対話する魔術」と書かれている。その文字の横には不気味な魔方陣の図が描かれている。
菜花梨紗の目前には魔方陣が書かれた紙が広がっていて、その上には人間の無残な死体が乗せられていた。
彼女は二十分ほど詠唱を行なった。効果はすぐに現れた。
死体の姿が消え、魔方陣が裂け、次元の歪が出現した。
真っ黒い次元の歪から、威厳ある低い声が響いた。
その声に答えるように、梨紗は囁く。
「はい。今回もターゲットを発見いたしました」
声は梨紗に問いかける。
唸るように低い声が辺りの空間を震わせる。
敬意を払った声色で梨紗はその質問に答えた。
「そのとおりでございます。もう少しの間、お待ちください。
『来るべき日』に必ず、今回の生贄を捧げます」
すると次元の歪から笑い声が起こった。
幼子ですら品性を疑うような、品のない笑い声を、梨紗は恍惚とした様子で聞いた。この日から、毎日、世界中で赤い月が見られるようになった。
同時刻、ヒナの部屋。
ヒナは窓から月が赤くなるのを見ていた。
月が赤くなったのを見て、やはり、と一つの事を確信した。
悟ると同時に紙に魔方陣を書き起こし、呪文を唱え始めた。
突然、不思議なことが起こった。
月の明かりは消失し、星のみが輝くようになった。
魔方陣は霊の力による障壁に守られ、光り始めた。
隕石が落ちてきた時のような激しい音と、太陽の百倍は強い光が、魔方陣から発せられた。
それらの現象が止むと、障壁の向こう側に人の影が見えるようになった。
その人影は障壁の中から、ヒナに対して優しく声をかける。
「報告をいたします」
人影に向かってヒナは話し始める。
「やはり、アレは確実に動き出しています。私の親族が狙われているのを確認しました」
人影の声色は若干硬くなる。
ヒナは次々と来る質問に答え続ける。
人影からの質問が終わると、今度はヒナが質問を行なった。
「一つだけお聞かせください。どのように対処なさるのですか?」
人影の答えはこうであった。
「出来るだけのことはする。が、守れるかどうかは不明だ。
しかし奴が蘇るのは私にとっても不利益である。
何とかやってみよう。約束はできないがね」
その答えにヒナは若干怒りを抱いたが、どうしようもないことを思い出した。
代わりに、自分が力を尽くそうと覚悟を決めた。
自分の力はそれほど無いことを知っていても、尚。
時は過ぎ、満ちる。
待っていても、望んでなくても、その時は来る。
矢のように時間がめぐり、あっというまに冬休み直前となった。