#2「キラキラピーポー」
超☆展☆開
菜花梨紗が転校してきてから、ようやく一週間が経った。
相変わらず無愛想を通り越した感じの梨紗だが、
何故かスクールカーストの上位に割り込んでいる。
と同時に最下層とも言える。
友達ができてない時点で最下層なのだろうとは思う。
でも彼女が教室に入ると緊張感に包まれ、静寂が訪れるのだ。
しかも、一日中。
おかげでにぎやかだったこのクラスはまるで、全員が優等生の様になってしまった。
別に僕はこれでもいいんだけど。
何故そんなことになっているのか。
それを説明するのは簡単すぎて、
一足す一がニになることを証明するほうが難しい。
二日目に彼女に絡んだ奴らがいた。
そいつらは詳細は不明だけど、
一昨日からiCUに入ったという噂が流れている。
それが本当かは分からないが、僕も含め多くの生徒が救急車で生徒が搬送されているところを見ていた。
だから、入院しているのは間違いない。
それなのに彼女は警察沙汰になるどころか、
先生から怒られることすら無かった。
こんな不気味な出来事があったのだから、こういう状況になるのも分かる。
要するにビビっているのだ。
気分を害せば今度は自分がやられる――全員がこの恐怖の心理に陥っている。
先生たちですら彼女に対して何も言えないのが現状である。
それでいて文句も苦情も言えないから、皆フラストレーションがまるで富士山のマグマのように溜まっている。
いつ噴火するのか僕はハラハラしながら見守っている、というワケだ。
さて、今日も菜花梨紗は登校してきた。
あんな目付きをしてるのに律儀に学校に来ていることに、
僕は密かに疑問を抱いていた。
学校ぐらい平気で休みそうな顔なのに。
「……」
梨紗は何も言わず、誰も見ず、自分の席についた。
教科書を机に入れて梨紗はまた本を読み出した。
題名も何も書いていないあの本だ。
何なんだろうか、あの本は。
この一週間それが気になっていた。
思い切って聞こうとしたが、聞けなかった。
しかしこうして悶々としてるよりか、頑張って聞いたほうがいい気がする。
もしかしたら教えてくれるかもしれないし。
僕は賭けに出た。
「……あー、菜花、さん? ちょっと聞きたいんだけどさ」
教室中にザワザワ声が広がる。
構うもんか。
「その本、なに?」
チラリと梨紗は顔を上げて僕を見た。
視線に射抜かれる。
が、僕は目を逸らさなかった。
「気になる?」
自己紹介の時のようなささやき声で梨紗はそう問いかけてきた。
僕は肯定するべく頷いた。
ふぅ、と梨紗は息を吐き、言った。
「『輝く者達』というタイトル」
それだけ言うとまた読書に没頭し始めた。
これ以上ここで突っ立ってても無駄だと判断して、
勇太にこの成果を報告した。
「輝く者達? 全く聞いたことのない本だな」
「僕はどこかで聞いたことある。どこで聞いたのかは思い出せないけど」
「ダメじゃねえか」
ダメではないと思う。
家に帰ったあと調べればいいんだから。
放課後、僕は家に帰るなり早速、
「輝く者達」についてパソコンで検索をかけた。
因みに何故か勇太もいる。
「ウィキペには無いか、うーん」
ウィキペディア、通称「ウィキペ」には掲載されていなかった。
怪しげなブログで名前だけが出ているだけだった。
そのブログの著者もよく分かっていない感じだし。
要するに、にわかだ。
わからないなら名前を出すなよ。
しかし名前を知ってるということはどこかで情報を得たということだ。
どこで?
ネットの可能性が高い。徹底的に調べよう。
「ん? これは………」
一つのブログにたどり着いた。
かなり昔のブログだ。
しかも「輝く者達」の記事を最後に更新はされていない。
とにかく読んでみるか。
・禁書「輝く者達」
皆さんこんばんわ。
最近暑い日が続きますね。
あまりにも暑いので私はエアコンを買いました。
これ一台でなんとか夏の暑さを凌ぐ所存です(笑)。
さて、今日は「輝く者達」についてお話します。
失礼かもしれませんがかなりマニアックなこのブログの読者なら、
名前ぐらいは聞いたことがあるかと思います。
しかし、実際にそれが何なのかはわからない。
そういう方も多いのではないでしょうか。
それもそもはずです。
この本について説明した本やサイトは全て封鎖されているからです。
ですが、私は兎も角このブログは大丈夫です。
なので皆さんに正しい知識を与えましょう。
では最近よく聞く「輝く者達」とは何なのか。
簡単に言うと、魔導書です。
通常魔導書というと、魔術について書かれた書物という認識が正しいのですが、「輝く者達」はそうではありません。
勿論、魔術についても書かれているのですが、主題は魔術ではないのです。
この本は世界の構造について詳しく書かれてある本なのです。
残念ながら完全版は入手できませんでしたが、
少しだけ内容を把握することができました。
------輝く者達より記載------
すると、見よ。天が裂け、宙が割れ、全てが吸い込まれた。
後には何も残らず、無が創られた。
これを見た人々は恐れ戦いた。
その中の一人が、悟った。
あの空間こそが真実なのだと。
逆にこの現実だと思い込んでいる空間こそが、幻なのだと。
これ以来彼は、死を恐れなくなった。
------記載終了------
こういう風に物語式で世界の構造を説いているのです。
勿論、信じるも信じないもあなた次第ですが。
「輝く者達」が書かれたのは西暦1724年です。
イギリスで書かれたとされていますが、著者は不明。
現在は絶版となっていますので、入手することは不可能でしょう。
世界中の古本屋を漁ればどこかにあるかもしれませんが。
それでは今日はここまで。
明日またお会いしましょう。
「………勇太、どう思う?」
「魔導書ね――中二病かよ」
中二病にしては、あの姿は厨ニすぎる。
なろうと思ってなれるものじゃないな。多分だけど。
となると本物? いや、まさかね。
ああ、余計に謎が深まってしまった。
絶版になった本……詳しく知るにはあそこしかないな。
明日丁度土曜日だし、久しぶりに行ってみようか。
何かわかることを期待しよう。