第4話
女商人のレンを襲った盗賊紛いの冒険者三人を警護兵に引き渡す為にレンと出会った場所から2キロ程離れた場所にある『リンド村』にやって来た竜騎達はレンの体調の事もあって今日はリンド村で一泊する事にした。
「あっしならもう大丈夫ッスよ?」
「毒消しはきちんと効いたみたいだけど念の為って奴だよ」
二部屋取った宿の一室、レンとリーシャの部屋の中でレンが竜騎とリーシャに向かってもう大丈夫だと言うが、竜騎は念の為と言って譲らなかった。
結局、レンは渋々ながらに頷きその日は竜騎の勉強にあてられ竜騎は何とかガルムレイドの文字で自身の名前を書く事が出来る様になるのだった。
明けて次の日。
朝食を済ませた一行はドワーフの鉱山街を目指してリンド村を出立した。
その馬車の中で竜騎はレンに自身がガルムレイドの出身で無い事、聖剣の勇者でありながら聖剣を使わない事を告げた。
「あっしは別にタツキが聖剣の勇者だから仲間になった訳じゃ無いッス。確かにフォーゼル家の教えの事も有るッスが、あっしはタツキとリーシャが気に入ったからこそ仲間になったッスよ」
レンはタツキとリーシャに笑顔でそう言った。
「流しの商人たるあっしは人の目利きと道具の目利きには自信が有るッス。その目がタツキとリーシャは信頼に値する人物と言ってるッス」
絶対の信頼を持って言うレンにタツキは照れ臭くなって頭を掻き、リーシャは顔を仄かに赤くして俯いた。
「そ、それはそうと、レンは魔法が使えるんだよね?と言う事は普段の戦闘でも魔法を使って攻撃するの?」
タツキは強引に話題をレンの攻撃手段に変えた。
「あっしの魔法は少々唱えるのに時間が掛かるんスよ。そこで、あっしはコイツを使おうと思っているッス」
そう言ってレンがでかいリュックから取り出したのは竜騎が知る物とは形は違うが紛れもなく拳銃だった。
「コイツはあっしが魔導都市フォリウムで仕入れた魔導銃と呼ばれる代物ッス。この魔石弾に予め魔法を込めておいて魔導銃に装填して引き金を引くと魔法を撃つ事が出来る優れものッス!」
レンは箱に詰めてあった魔石弾の一発を取り出すとタツキとリーシャに見せる。
「へぇ〜、ガルムレイドにも銃があるんだな」
「有るッスよ〜。但しこの魔導銃は旧式の単発式なんで連射が出来ないんスよ。最新式なら有る程度の連射が出来るらしいんスけど、値段が馬鹿みたいに高いッス」
因みに最新式の魔導銃のお値段はちょっとした御屋敷が立つ位のお値段なのだ。
因みに平民が暮らす家の値段は約20万ガルム。
貴族の屋敷の値段はピンからキリだが、安くても50万ガルムはする。
はっきり言って最新式の魔導銃は貴族や王族をターゲットにした商品だった。
「多分この程度の魔具なら知り合いのドワーフが改良出来る」
魔導銃を見ていたリーシャがポツリと呟くとレンが食い付いた。
「ほんとッスか!」
「私の知り合いのドワーフは魔具にも精通しているから」
「是非とも紹介して欲しいッス!」
商人の血が騒いだのか、レンは物凄く良い笑顔でリーシャに詰め寄った。
「近い。紹介しないとは言ってない」
「くぅ〜!魔具にも精通するドワーフの鍛冶師と知り合いに成れればウチの商品の質もグンと良くなるッス!」
滅茶苦茶喜ぶレンに苦笑する竜騎とリーシャだった。
「それはそうと、タツキとリーシャはドワーフの鉱山街に行くんスよね?」
しばらくして落ち着いたレンがタツキとリーシャに聞いてきた。
「行かないと紹介出来ない。それにタツキの武具が必要」
「それがどうかしたのか?」
「あっしがクリスティア王国を旅立つ前にちょいと耳にしたんだけど、今鉱山に危険な魔物が住み着いているらしいッス。流石に気になったんで情報を仕入れてみたんスが、それがどうもデスバイソンっぽいんスよ」
デスバイソンは牛型の魔物で森や草原に住む巨大な角を使った突進を得意とする魔物である。
本来ならば食料となる草木が無い鉱山に住み着く事は無いのだ。
「バイソンって事は牛型の魔物か?」
「そうッス。元は牛が魔物化したらしいッスよ」
「正確には魔気にやられた牛が魔物化した。魔気は魔法を使うと発生する魔力の残りカスみたいな物。極稀に大気中に濃い魔気溜まりが出来てそれを大量に吸うと魔物化したりする」
リーシャの説明にほうほうと頷く竜騎であった。
この後コボルトやゴブリンの小規模な群れと遭遇し撃退しつつ、二日後に一行はドワーフの鉱山街にたどり着くのであった。
【魔物図鑑】
【小鬼】
最早説明要らずのメジャーな魔物。
元々は森に住む妖精の類が魔気に侵され魔物化した存在。
短剣や槍を武器に使う。
同種族にゴブリンナイトやボスゴブリンが存在する。
【子犬人】
元々は犬が魔気に侵され魔物化した存在。
元が犬の為、人懐っこく人語も話せるのでペットとして飼われてたりもする。
気配や臭いにも敏感なので番人代わりにどうぞ。