第2話
第2話。
今回は旅立ち迄です。
竜騎がガルムレイドに召喚された次の日。
宮廷では竜騎の勇者認定の儀が行われた。
竜騎はリクスより借りた騎士鎧に身を包み腰に聖剣ガルムレイドを携えて玉座の前に膝まづいた。
勇者認定の儀を執り行うのはクリスティア王国国王であるレイド・ヴィル・クリスティア。
竜騎が昨日会わなかった国王だが現在病に伏せており、この勇者認定の儀の時だけ無理をして起きてきたのだ。
「タツキ・サオトメよ。此処に貴殿を聖剣の勇者に任命する!」
「はっ!この身を賭してガルムレイドに平穏をもたらしましょう!」
竜騎はリクスに習った通りに答えるとその場に立ち上がると身体毎振り返ると腰に携えていた聖剣ガルムレイドを引き抜いて頭上に掲げた。
眩い光が聖剣ガルムレイドから放たれ辺りを照らす。
「見よ!この光こそ勇者が聖剣ガルムレイドに認められた証じゃ!」
国王が宣言すると玉座の間に集まっていた騎士達や文官達が歓声をあげるのだった。
この後、神官の長ったらしい有難い御言葉を受け勇者認定の儀は終わりを告げた。
「・・・・・・疲れた」
「神官長は話が長い」
竜騎とリーシャは竜騎に貸し与えられた部屋に戻るとソファーに座り身体をソファーに預けた。
「所でリーシャ。これからどうしたら良い?」
「ん」
竜騎の質問にリーシャは立ち上がると部屋の中央に置かれたテーブル迄歩きローブの懐から紙を出し、それをテーブルに拡げると竜騎を手招きした。
「これは・・・地図?」
「クリスティア王国周辺の地図。先ずはクリスティア王国から馬で5日の距離にあるドワーフの鉱山街に行ってタツキに合った武具を造る」
リーシャは地図上にその細い指を走らせドワーフの鉱山街を丸で囲んだ。
「へぇ〜。やっぱりドワーフって居るんだ?」
「彼等は優秀な鍛冶職人。リクス兄さんの剣もドワーフの職人製」
「おぉ〜。やっぱり騎士団長ともなると武器も良いのを使うんだな」
「それもある。けど一番の理由は私の友達がドワーフの職人だから」
「じゃあ俺の武具もその人に?」
「そう。彼女なら良い武具を造ってくれる。但しお酒が必要」
リーシャの言葉に竜騎はああ、やっぱりドワーフって飲んべえなんだなーと思っていた。
「んじゃ早速旅の準備といこうか」
そう言って竜騎は着ていた騎士鎧を脱ぎ始める。
「ガントレットとレガースは着けていた方が良い。胸当ては城下町で買う」
「分かった。って俺この世界のお金持ってないんだけど?」
「私が出す。城下町に行ったら先ず冒険者ギルドで登録する。私もお金はかなりあるけど、タツキが自由に使えるお金はあった方が良い」
リーシャは地図を畳むとそれを仕舞い出口に向かって歩き出す。
「私も自室で準備してくる。門で待ってて」
「了解」
リーシャはそう言って部屋を出ていった。
そして、竜騎は何よりも大事な事を思い出した。
「そう言えば俺、ガルムレイドの文字とか書けないし読めないんだけど?・・・・・・ま、いっか」
竜騎は結構お気楽な性格だった。
それから約30分程した後、王城の門の前で竜騎はリーシャがやって来るのを待っていた。
「やっぱり世界は違っていても女の子の準備には時間が掛かるもんなんだな〜」
等と空を見上げながら呟いていた竜騎は腕をくいくいと引っ張る感触に気付き下を向く。
「お待たせ。準備に手間取った」
「・・・・・・」
「タツキ?」
其所に居たのは先程迄のローブ姿から白いシャツとスカートに着替え、黒いマントを羽織りとんがり帽子を頭に乗せ手に杖を持ったリーシャだった。
だが、竜騎が見ていたのはある一点。
白いシャツを押し上げて自己主張をする豊かな果実だった。
リーシャは竜騎の目線を辿り、視線が自身の胸に注がれている事に気付くとマントで胸を隠した。
「タツキも年頃の男の子。仕方ないとは思うけど女性の胸を注視するのは駄目」
「うっ。ご、ごめんなさい」
流石に自分が悪いので素直に謝る竜騎であった。
その後クリスティア王国城下町に入った二人は先ず冒険者ギルドにやって来た。
「すみません。登録をお願いします」
受付へとやって来た竜騎とリーシャは受付嬢に冒険者登録する事を伝えた。
「畏まりました。それではこの登録用紙に記入をお願いします」
そう言って赤い髪の受付嬢は一枚の用紙を竜騎に差し出した。
「リーシャ、代筆頼める?俺字書けない」
「言われてみればそうだった。私の代筆でも良い?」
竜騎に代筆を頼まれたリーシャは受付嬢に尋ねると受付嬢は笑顔で頷いた。
「・・・・・・はい。登録証は直ぐに出来る?」
「はい。しばらくお待ち下さいね?」
受付嬢は用紙を受け取ると立ち上がり奥へと入っていった。
「リーシャは登録しなくて良いのか?」
「私は以前登録している」
リーシャは腰に着けたポーチから一枚のカードを取りだし竜騎に見せた。
そのカードは赤い縁取りをしたカードだった。
「何て書いてあるのか分からん」
「一番上にリーシャ・ヴァンゲイトと書いてある。その下に魔導師、赤い縁取りはランクを表している。ランクを表す色は白が低級、赤が中級、銀が上級」
リーシャが自身の登録証で説明していると先程の受付嬢が戻って来た。
「お待たせ致しました。こちらがタツキさんの登録証になります。とても大切な物ですから無くさないで下さいね?」
「ありがとうございます」
「ついでに私の口座から千ガルム引き出したい」
「畏まりました。それでは登録証の提示をお願いします」
「ん」
リーシャは受付嬢に登録証を渡すと受付嬢は再び立ち上がり奥へと入っていった。
「ガルムって?」
「ガルムレイドの通貨。これがそう」
リーシャはポーチから一枚の銅貨を取り出すと竜騎に手渡す。
「その一枚で1ガルム」
「て事は千枚で千ガルムか。重くない?」
「そこで役に立つのがこのポーチ。ギルド謹製で幾らでも物が入る」
「リーシャも入ったりして」
「私は物じゃない」
「冗談だよ」
リーシャと竜騎はたわいもない事を言いながら受付嬢を待っていると革袋を乗せたトレイを持って受付嬢が戻って来た。
「千ガルムと登録証です」
「ありがとう」
受付嬢に礼を言ってリーシャは登録証とガルムの入った革袋をポーチに仕舞う。
「行こう」
「あいよ」
そして、冒険者ギルドを後にするのだった。
その後二人は道具屋・酒場・武具屋により必要な物を買うと馬車を雇った。
「これで大丈夫かな?」
「忘れ物は無い」
「タツキ殿、リーシャ!」
荷物をチェックしていざ馬車に乗り込もうとした時、走って来たリクスが二人に声をかけた。
「良かった!間に合ったか」
「リクスさん?」
「リクス兄さん、どうしたの?」
「何、タツキ殿にこれを差し上げようと思ってな」
そう言ってリクスが差し出したのは使い込まれたポーチだった。
「このポーチは嘗て冒険者だった頃に私が使っていた物です。お古で申し訳ないが良かったら使って下さい。王宮よりの資金と私が必要だろうと思った道具を入れてあります」
「良いんですか?」
「今の私には使い途の無い物です。仕舞い込まれているよりタツキ殿が使って下さる方がポーチも喜ぶでしょう」
リクスはポーチを竜騎に渡すとその手を握る。
「妹の事をよろしくお願いいたします!」
「任せて下さい!」
「・・・・・・まるで娘を嫁に出す親」
リーシャの事を頼むリクスと力強く頷く竜騎を見てリーシャは呟く。
仄かに頬が赤いのは陽光のせいでは無いだろう。
「じゃあ、行ってきます」
「旅の無事と二人の無事の帰還を祈ります」
「リクス兄さん、元気で」
「お前もな。無茶するんじゃないぞ」
リクスとの別れの挨拶を済ませた二人は馬車に乗り込んだ。
二人が乗り込んだのを見た御者が手綱を操ると馬が嘶きゆっくりと馬車が進み始めた。
「必ず帰ってくる!」
「ああ、待ってるぞリーシャ!」
馬車の後ろからリーシャが叫びリクスに向かって手を振る。
リクスもまたリーシャに手を振り二人の旅立ちを見送るのであった。
この聖拳では、LAN武が他作者様に投稿したキャラを出すつもりです。
正確には三名。
ドワーフの女鍛治師、海賊、女商人の三名です。
それぞれΣさん、レフェルさん、秋雨さんに投稿しております。
どのキャラか分かった方は答えを官製ハガキに書いて丸めて捨てましょう(笑)