第13話
「おらぁっ!」
竜騎が迫り来る触手を払いのける。
「よいっしょおっ!!」
セリーナがバトルアックスで触手を切り払う。
「あー!切りがねぇ!」
先程から竜騎とセリーナはクラーケンの触手攻撃の前に完全に足止めされていた。
「ん〜?おかしいねぃ。どう考えてもお姉さん十本以上ぶったぎってんだけど・・・・・・。もしかして再生してんのかねぃ」
セリーナの疑問に竜騎が先程セリーナが切った触手を見ると既に再生がされた触手があった。
「セリーナ正解。再生してるよ。それも瞬時に」
「という事はぶった切るのは余り意味が無いみたいだねぃ」
セリーナが迫る触手を斬りながら呟く。
「なら焼いてみるか!」
そう言って竜騎は拳に炎を灯しクラーケンの触手を炎の手刀で焼き切る。
【きゅおおぉぉぉぉぉっ!?】
クラーケンの苦痛の悲鳴と共に辺りに香ばしい匂いが漂う。
「何か美味しそうな匂いだよん♪」
「醤油があればいか焼きの完成だなっと」
クラーケンの触手を焼き切りながら竜騎はそんな事を呟いた。
一方、バルテス号甲板上。
「タツキの炎が効いてるみたいっスね」
「うん。私も大きいの行く」
クラーケンと竜騎・セリーナの戦いを見ていたリーシャは杖を構えフラベイムから習った炎の魔法を唱え始める。
『舞え、炎の精霊よ。我リーシャ・ヴァンゲイトの魔力を糧に我と我が友の道を阻む愚か者に汝の炎の裁きを与えよ!』
リーシャの構えた杖の先に高温の炎が出現する。
「タツキ!セリーナ!避けるッス!!」
『炎精霊の灼熱!』
レンが叫ぶと同時にリーシャの呪文が完成し、クラーケンに向けて炎の魔法が解き放たれる。
「「どわっ!?」」
慌てて竜騎とセリーナが避けると同時にエレメントブレイズがクラーケンに着弾した。
【ぎゅるるるぉぉぉぉ!?】
炎に包まれたクラーケンは暴れ回り動きを封じ込めていた氷を砕き海の中に潜る。
「これじゃ、見えないよん」
セリーナがぽつりと呟く。
その足下にはクラーケンの触手がはいよっていた。
次の瞬間、セリーナは触手に捕まり空中へ飛ぶ。
「うひゃああああ!?っちょ!何処に入ろうと!?」
「セリーナ!?」
「ひゃ!そ、そこ駄目!?」
クラーケンの触手はセリーナの鎧の下に入り込みセリーナの身体を締め付ける。
セリーナは顔を真っ赤にして何とか逃げ出そうとするが吸盤が引っ付くはヌメヌメするはで触手から逃げ出せない。
「ったく、世話が焼けるぜ!」
その時、後方から一陣の風がクラーケンの触手を切り落とした。
「ひゃぶっ!?」
「セリーナ大丈夫か!」
竜騎はクラーケンの触手をセリーナから剥ぎ取ると、セリーナを助け出した。
「ひ、酷い目にあったよん。・・・このエロクラーケン!」
「タツキ!俺も加勢するぜ?」
「「キャプテン!」」
セリーナを捕らえた触手を切り落としたのはキャプテンライズであった。
ライズは両手のカトラスを振り回しながらクラーケンの触手を次々に切り落としていく。
「オラオラオラオラオラーッ!」
カトラスを振り回し叫ぶライズはまるで草を刈るかの様にクラーケンを切り刻んでいく。
「こりゃ負けてらんねぇな!」
竜騎は右手を手刀の形にすると、右手に炎を生み出した。
「セリーナ、同時に仕掛けるぞ!」
「了解だよんタッちゃん!」
竜騎の声に頷くとバトルアックスを肩に担ぎ上げて走り出す。
「リーシャ!レン!俺達と同時にぶちかませ!キャプテン、あわせてくれ!」
「「おう!」」
「・・・・・・了解」
リーシャは竜騎の指示に頷くとエレメントブレイズの詠唱に入り、レンも魔弾銃を構え魔力を通す。
すると、青かった魔石が赤く変わった。
一方のクラーケンも竜騎達が何かをやろうとしている事に気付き、触手を竜騎達に向かって伸ばしてきた。
伸ばされた触手を片っ端から切り刻んでいくライズであったが、ライズの剣撃の隙をつき一本の触手が竜騎を絡みとる。
「ぐあぁぁぁぁぁっ!!!」
ギリギリと締め付ける触手に竜騎が苦悶の声を上げた。
仲間達が竜騎の名を叫ぶ中、竜騎はキッとクラーケンを睨み付け、
「俺を舐めるなよ?この烏賊やろぉぉぉぉぉぉっ!」
と叫びおもむろに口を開き、そのままクラーケンの触手を食い千切った。
『ぷぎゅるぉぉぉぉぉ!?』
よもや食い千切られるとは思っていなかったクラーケンは竜騎を離し竜騎はもきゅもきゅと食い千切った触手を咀嚼しながら着地する。
「んく。大味だが結構美味いな。皆、今だ!」
竜騎の指示にリーシャがエレメントブレイズをレンが炎の魔弾を放ち、セリーナがバトルアックスを投げライズがカトラスに魔力を纏わせ斬撃を放った。そして、竜騎は再び右手に炎を生み出しまるで居合いの様に腰だめに構える。
次々にクラーケンに着弾する仲間達の攻撃の中、竜騎が放とうとする技。それはフラベイムとの特訓の際、何度も受けたフラベイムの尻尾の一撃を模した技。
「炎竜尾撃!」
横凪ぎに振るった右の手刀から伸びた炎はまるで尻尾の様に伸びクラーケンの触手を焼き切り本体へと迫る。
『ぎゅお!?』
そして、一瞬の拮抗の後クラーケンの身体を焼き切るのであった。