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第10話

無事リフォルに辿り着いた竜騎達はアルテミスの先導で彼女達の船が修理を受けているドッグへと案内された。

「ラズー?今帰ったわよー」

アルテミスはドッグに入ると青いキャプテンハットに同じ色のロングコートに右目に眼帯、左頬に傷という見るからに海賊の船長と分かる格好をした男性に声をかけた。

「おぉ!アルテミスにレミィ!無事だったか!」

「パパー♪」

「あらあら。皆さん見てるわよ?」

「ハッハッハ!構うものか!」

男性はアルテミスとレミィを抱き締めると笑顔で二人の頬にキスをする。

「きゃー♪」

「あらあら♪」

二人も満更でもない様子で男性のハグとキスを受け入れた。

「済まんな。あれがうちのキャプテンだ」

副長が苦笑しながら呆気に取られる竜騎達(レンは除く)に男性の紹介をする。

「おいライズ。客人を放ってイチャついてんじゃねーよ」

「ん?おぉ!悪い悪い。済まないなお客人。俺はライズ・ラクライン。皆からはキャプテンと呼ばれている。ってレンじゃないか」

「相変わらずッスねキャプテン」

男臭いがそれでいて人好きのする笑顔を浮かべ竜騎達に挨拶するライズはその中にレンの姿を見つけ手を挙げて声をかけるとレンは相変わらずなライズに苦笑を浮かべた。

「はじめまして、タツキ・サオトメと言います」

「リーシャ・ヴァンゲイト」

「ドワーフの鍛冶師のセリーナだよん」

竜騎達はライズに頭を下げて挨拶をする。

今さらだが、竜騎は初対面の相手には必ず敬語で話す。

例外は目の前に居る人物が自身や仲間に敵対する場合のみだ。

「ああ、そんな堅苦しい挨拶は無しだ。こっちは愛する妻と娘と仲間達を此処まで連れてきて貰った立場だし、俺自身堅苦しい挨拶は趣味じゃねぇ。しかし・・・・・・」

そこまで言うとライズは一旦言葉を切った。

「クリスティアの元王国魔導師と聖剣を持たない聖剣の勇者に会えるとはな」

そして周りを驚かせる発言をした。

「なっ!?」

「私の事は名前で分かるとしても何故タツキの事を?」

周囲が驚く中、リーシャは冷静にライズに何故初対面の自分と竜騎の事を知っているのか尋ねた。

「リーシャ嬢ちゃんに関しては外れ。俺は5年前に嬢ちゃんに一度会った事有るんだよ。覚えてねぇか?リクスの馬鹿が冒険者やってた時に冒険者仲間を連れて帰った事があったろ?その内の盗賊(シーフ)が俺だよ」

ライズの答えにリーシャは当時の記憶を思い出す。確かにリクスが冒険者だった頃、一度だけ仲間を連れてヴァンゲイト家に帰って来た事があった。

その時、リーシャを可愛がってくれた盗賊が確かに居た。だが、その盗賊の名は・・・・・・。

「あのシーフのお兄さんはリクス兄さんからラインと呼ばれていた。ライズじゃない」

「おいおい。ちゃんと名乗ったろ?ライズ・ラク『ライン』ってな。あの馬鹿、何故か名字の下三文字で俺を呼んでたんだよ」

リーシャはライズからそれを聞いて納得した。

リクスは仲が良い者を自身が決めた愛称で呼ぶのだ。

「納得。お久しぶり。あの後どうしてたの?」

「あれからウチの海賊団を継いだからな。盗賊やってたのはある意味修行だったんだよ。んで、勇者を知ってたのはリクスの馬鹿から手紙を受け取ったからだ」

そう言ってライズは懐から折り畳まれた手紙を取り出しリーシャに渡す。

手紙の内容はライズに対する挨拶とリーシャが聖剣の勇者の仲間として魔王討伐の旅に出た事、そして大陸を出る時には力になってやって欲しいという頼みだった。

「過保護(汗)」

「ま、可愛い妹が危険な旅に出たんだ。海を渡る時には少しでも信頼出来る相手に頼みたかったんだろ?」

そう言ってライズは肩を竦めた。

「まあ、船に乗せるか乗せないかは俺が決めろと書いてたがな。俺は俺が気に入った奴しか船に乗せない。それは幾らリクスの頼みでも変える気はねぇ」

ライズは竜騎を見ながらそう告げた。

(成る程。つまりこの男は俺にこう言っている訳だ。船に乗せて貰いたかったら俺に気に入られてみろって)

竜騎はライズの言葉に隠された真意に気付きニッと笑う。

「ならライズさんに言わせて見せますよ。是非とも俺の船に乗ってくれって」

竜騎がそう言うとライズは大声で笑い始め暫くしてから、

「おう!言わせてみせろ!」

ライズは笑いながら竜騎に言い、その後皆を連れてリフォルでのアジトに向かった。


アジトに戻るとライズは竜騎達をリビングの様な部屋に連れていきテーブルを囲む様に置いてあるソファーの一つに座った。

「ま、適当に座ってくれ。アルテミス飲み物を頼む」

「分かったわ。レミィ運ぶの手伝ってくれるかしら?」

「はーい」

ライズは竜騎達に座る様に言うとアルテミスに人数分の飲み物を頼んだ。

「所でキャプテン。ドワーフの鍛冶師を連れて来て欲しいってアルテミスさん達に頼んだらしいッスけど」

「ああ。その理由はクラーケン退治に使う武器を作って欲しいからだ」

ご存知だろうが、クラーケンは巨大な烏賊の魔物だ。

そのテリトリーは海中の為従来の砲弾では威力が半減する。

そこでライズはドワーフの鍛冶師なら良い武器のアイディアがあるのでは?と思いアルテミスとレミィに護衛を付け鉱山街に行かせたのだ。

「それ丸投げって言いません?(汗)」

「そうとも言うな」

ライズの説明を聞いた竜騎はとりあえず突っ込みを入れるがライズはしれっと答えた。

「ふむ、海の中だから水の抵抗があるって事だねぃ。なら、槍を矢として発射するボウガンとかが良いのかねん?」

セリーナは腕を組み考えに没頭する。

「聞きたいんだが、クラーケンの弱点ってなんだ?」

「クラーケンの弱点は雷・炎。でも水の中だから炎の効果は薄い。触手に上手く当てれば大ダメージ」

竜騎の質問にリーシャが答えると竜騎は暫し考え込み、そして手をポンと打つと笑顔を浮かべる。

「ライズさん、爆弾とかあります?」

「あ?あるにはあるが導火線が濡れるから使いもんにならねーぜ?」

「じゃあ、炎の魔石はあります?小さい奴でも良いんですけど」

「クズの魔石で良いんなら山程有るぜ?と言うか一体何に使うんだ?」

「ちょっとした小細工です。リーシャ、聞きたいんだが魔石の発動は魔力を込めてからどのくらい間が空くんだ?」

「基本的に魔力を込めた魔石は魔力を込めた者の任意で発動出来る」

リーシャの回答に竜騎は頷きニッと笑う。

「セリーナ、爆弾を水に浮く素材で覆う事は?」

「簡単だよん」

「オッケー。なら、導火線の代わりに魔力を込めた魔石を埋め込んで水に浮く素材で覆ってくれるか?」

竜騎の脳裏に浮かんだのは所謂機雷である。

それを簡易的にではあるが、この世界で再現しようとしているのだ。

「中々面白い事をしようとしてるねん♪」

「あ?何だってんだ?」

「タッちゃんは水に浮く爆弾を作って欲しいって言ってるんだよん。導火線の代わりに炎の魔石を起爆剤にしてねん♪」

ライズの疑問にセリーナが答えるとライズはニッと笑い、

「今回の勇者殿は中々面白い奴みたいだな」

と言った。

その後、アルテミスとレミィが運んで来たお茶を飲むとそれぞれがやるべき事を果たしに立ち上がる。

セリーナは副長に連れられ鍛冶屋へ、ライズは部下達に指示を出すべく作業場に向かい、レンは魔石やセリーナの使う材料を安く仕入れる為に商店へ、リーシャはクラーケンに有効な雷の魔法を進化させるべく魔法協会へ、竜騎はある事を思い付きそれを試す為に海岸へと向かうのであった。

各々がやるべき事をやりながら、あっという間に一週間が過ぎライズの海賊船『バルテス号』の修復が完了した日の夜、一行は翌日にクラーケンと再戦するとライズから告げられた。

いよいよ竜騎に取って初めての海戦が始まろうとしていたのであった。


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