第9話ー港町リフォルー
「港町リフォル迄は十日の距離なんだっけ?」
「そうッス。港町だけあって魚料理が名物ッス」
「干物も酒の肴に持って来いだよん♪」
竜騎の質問にレンが答え、セリーナが飲んべえな回答をする。
現在、竜騎達はドワーフの鉱山街から西に1日行った街道を馬車に揺られて進んでいた。
「しかし、この辺りはまだ平和だよな」
「そうッスね。でも中央大陸の辺りなんか結構魔物の被害とか多いッスよ?」
「中央大陸?」
聞き慣れない名称に竜騎が聞き返す。
「あ、タツキは知らないッスよね?あっしらが生きるこのガルムレイドには五つの大陸があるッス。北のレムリア大陸・西のヴァレン大陸・東のクリスティア大陸・南の魔幻大陸。そして、4つの大陸の中央に中央大陸があるんス」
「お姉さん達が居るのはクリスティア大陸だよん」
レンが指折り数えながら五つの大陸の名を上げるとセリーナが今自分達が居る大陸の名前を竜騎に教える。
「五つの大陸ねぇ。そう言えばフラム以外の神竜って何処に居るのかな?」
「過去の勇者の足跡を記した文献には書いてなかった」
「わきゅ?うちフラベイム様から聞いてるの」
竜騎の質問にリーシャが申し訳なさそうに応えると、御者台に座るスノーから思わぬ言葉が発せられた。
「本当?教えて」
「わきゅ♪えーと、水神竜様が西のヴァレン海域にある海神の祠で地神竜様が北のレムリア大陸にある地母神の洞窟で風神竜様が中央大陸のエルフの森に居るって言ってたのー」
スノーは尻尾を振りながらフラベイムに教え込まれた他の神竜の居場所を竜騎達に教える。
「どちらにせよ今は行けねー(汗)」
「船無いッスからね」
「と言うかタッちゃんが他の神竜様の所に行く気だった事にお姉さんびっくりだよん」
スノーから聞いた他の神竜の居場所は船が無いと行けない為、竜騎は馬車の床に仰向けで寝転びレンは眼鏡の汚れを拭きながら竜騎に返答しセリーナは苦笑しながら竜騎が他の神竜の所に行く気だった事に驚いた。
「タツキ、前方に複数の人影」
その時、前方を見ていたリーシャが複数の人影を発見し竜騎に報告する。
「うん?旅人かな?」
竜騎は起き上がるとリーシャの指した方向をまじまじと見詰める。
そこには確かに女性と女の子と数人の男性が居た。
「スノー、このままゆっくり進んでくれ」
「分かったのー♪」
竜騎の指示を受けたスノーは馬の手綱を引きスピードを落としゆっくりと進む。
その旅人達の前を通りすぎた時、偶々外を見ていたレンはある事に気付いた。
「スノー、ストップッス!」
「わきゅ!?」
レンの声にスノーが慌てて手綱を引くと馬達が嘶き馬車が急ストップする。
「い、痛いよん」
「ど、どうしたの?」
「ゆ、油断した」
セリーナ・リーシャ・竜騎が急ストップした馬車の荷台でこんがらがっている中、一人荷台にしっかりと掴まっていたレンは荷台から飛び降り旅人達に近付いていく。
「アルテミスさんにレミィちゃんじゃないッスか!」
「あら?レンちゃんじゃない♪」
「レンお姉ちゃん!」
レンは女性と女の子に話し掛けると二人はレンに気付き嬉しそうな表情を浮かべる。
「二人共どうしたッスか?キャプテンは居ないみたいッスけど?」
「えぇ、ちょっとドワーフの職人さんに用があってね?」
「かじやさん!」
「キャプテンはリフォルに居るぜ。船の修理をしてる」
レンと二人が話していると数人の男性の内の一人がレンに話し掛けてきた。
「副長も居たッスか。でも船の修理って何があったんスか?」
「クラーケンがリフォルの近くに住み着いてな。俺達はリフォルの漁師の為に討伐に出たんだが返り討ちにあっちまってよ。そん時船が破損しちまったんだよ。・・・・・・所でレンの嬢ちゃん」
「なんスか?」
「あんたの仲間達はほっといて良いんかい?」
副長の言葉にレンは馬車の方を見る。
「きゃあっ!タツキそこ駄目!///」
「す、すまん!///って何だ?この柔らかいのは?」
「うひゃあ!?タッちゃんそれはお姉さんの胸だよん!?///」
「わ、わざとじゃないぞ!?///」
そこにはこんからがったまま何とか立ち上がろうとする竜騎がリーシャの大事な所を触ったりセリーナの胸を掴んだりとラッキースケベなイベントを多発させていた。
「・・・・・・救助してくるッス」
「・・・・・・レンの嬢ちゃん、馬車の急ストップは駄目だぜ?」
「反省するッス(汗)」
副長と呼ばれた男に言われレンは頭を掻きながら竜騎達の救助に向かうのであった。
「紹介するッス。この人達はあっしが世話になった海賊団『竜の牙』の方々ッス。んで、この女性がキャプテンライズの奥さんのアルテミスさん。そしてこの女の子がキャプテンとアルテミスさんの愛娘のレミィちゃんッス」
その後、何とか竜騎達の救助を終え頭に三つたんこぶ(救助後竜騎達に殴られた)を作ったレンが竜騎達にアルテミス達を紹介する。
「はじめまして。タツキ・サオトメです」
「リーシャ・ヴァンゲイト。よろしく」
「お姉さんはセリーナだよん♪」
これまた頭に二つたんこぶ(顔を赤くしたリーシャとセリーナに殴られた)を作った竜騎を筆頭にリーシャとセリーナもアルテミス達に挨拶をする。
「ご丁寧にどうも。私、アルテミス・ラクラインと申します。レミィ、お兄ちゃん達にご挨拶は?」
「今日は!レミリア・ラクラインです!皆はレミィって呼びます!」
アルテミスとレミィが挨拶を返すと竜騎達も頭を下げる。
尚、他の海賊団の方々の挨拶は省略します。
『ひでぇっ!?』
「アルテミスさんは運が良いッス。あっし等と出会う事でドワーフの鍛冶職人に会う事が出来たッスよ♪」
「あら、そうなの?」
「お姉さんドワーフの鍛冶師だよん?」
「あらあらー♪」
「わーい♪」
レンがセリーナを見てそう言うとセリーナが自身の職業を告げる。すると、アルテミスとレミィが喜色満面の表情を浮かべる。
「あのね?ママでレミィはねパパにドワーフのかじやさんを連れてきてってお願いされたの!」
ニコニコと笑顔でセリーナに言うレミィにセリーナは竜騎とリーシャを見る。
「俺達リフォルに行く予定なんですけど大丈夫ですか?」
「はい。私の夫も今はリフォルに居ますので大丈夫ですよ?」
「分かりました。なら、俺達の馬車に乗って下さい。この人数なら何とか乗れるでしょう」
そう言うと竜騎はアルテミス達を馬車へと招いた。
「なら、俺が御者を勤めよう。俺の身体だと荷台が狭っくるしくなるからな」
副長がそう言って御者台に座る。
「わきゅ〜」
「スノー、お前は荷台でレミィちゃんの遊び相手をしてやってくれ」
「わきゅ!分かったのー♪」
「わーい♪ワンちゃんだー♪」
御者台を副長に取られたスノーは竜騎に言われリフォルに着く迄の間レミィの遊び相手を勤める事になった。
その後、然したる問題も無く順調にリフォルに向かった一行は9日後無事にリフォルに辿り着くのであった。