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プロローグ
部屋に入ると、彼女の異様さに気がついた。
長く美しかった金髪も、引き込まれそうなほど澄んでいた青い瞳も今はくすんで見えた。
たった数日いなかっただけで、どうしたこんなことになってしまったのだろう。
事態を把握できずにいると、メイドが僕に囁いた。
「ひどいのです。シオン様がいなければ手も付けられません」
「何があったの?」
「シオン様がご不在の間に、ミレンダ様がこちらへいらして…」
ミレンダとは、兄の妻であり、現在の王妃である。普段は城で生活しているはずなのに、離れのこの塔に何の用があったのだろう。
「シオン様がリリアンさんを利用していると仰ったらしくて…」
「そんなことが…」
改めてリリアンの方へ目をやると、先程まで力なくぐったりとしていた彼女が、鋭い眼光でメイドを睨みつけていた。
「違うっ! 私は利用されているんじゃない! 好きで、自分の意志でそうしているのよ!」
彼女がそう叫んだ瞬間、部屋中の家具や小物が意志を持っているかのように動き出した。