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説明



 大体周りの状況が掴めてきた。

 私がベッドに寝かされていたここは、庭園の向こうに見えたあの宮殿の中なのだろう。多分、この二人?のどちらかが花の中で寝ていた私を宮殿に運んだんだと思う。

 私が今居るここの部屋も、ざっと見たところ40畳ぐらいはあるんじゃないかってぐらい広い部屋だ。割とシンプルな部屋の中央に、私が寝ていた大きなベッドがぽつんとある。


 まるでどこかの王国のお城。天窓付きの部屋だ。星がよく見える。


「バンビ、雨芽は何も覚えてないんだから一から説明してあげないとルリ」


「いや、でも信じらんねーって」


「まだそんなこと言ってるルリ……アカシック・レコードで全部見たルリ!アカシック・レコードに間違いはないルリ」


「はああ……」



 二人?の会話は淡々と続く。でも……一体何言ってるんだろう。


「……本当なに?全然分からないよ」


 あの流れ星は何で、ここはどこで、君達は誰で、私はこれから一体どうなるのか。


「んー……色々話すことが多いルリ。はっきりいってめんどくさいルリ…」


「えぇっ……!!」


「まぁ、話すルリ」


 ほっ、良かった。なんの説明も無しにココに放置されたらどうしようかと思ったよ。


「バンビ、話してルリ。たまにはちゃんと仕事するルリ」


 って、人に頼むのか!!いや、別に良いけどさ!!


「チッ…」


 なんか舌打ち聞こえたぞ。本当にコイツ、嫌味な奴だな。


 仕方なさそうに、面倒臭そうに、紅緋色の瞳の少年はゆっくり話しはじめた。


「あー……タリィ……まず、ここが何処かということから話す。全部一度しかいわねーからな。よく聞けよ」


 少年は、随分ふてぶてしく言う。ただ、やる気はないが説明する気はあるみたいだから、しっかり聞いておこう。


「……ここは、万物の願いを叶える神、アシャルンが独自に作った世界だ。つまり神が住む世界、《神のセカイ》だな。

 この世界は、完全に他の世界から孤立してる。ただ神が神としての仕事を果たすためだけに作られた世界だからな。だから、空に見える太陽と月はアシャルンが作った偽物だ。

 星は……神が使う仕事道具みたいなもんかな。

 んで、ここは過去も未来もない。あるのは《今》のみだ。つまり、時間が流れないんだ。別に止まってるワケじゃない。《今》の状態がずっと続くんだ。

 だから、ここにあるものは意図的に壊さない限り、死なない朽ちない壊れない……こんなことを可能にしてるのは、アシャルンが全ての欲を叶える神だからだ……で、お前の頭は今言ったこと、理解してるか?」


 ……とりあえずダーッとした説明を聞いたけど、半分ぐらいしか理解出来てない。ここはどこか。それだけは一応理解出来た。ここは、神が住んでる《神のセカイ》という所らしい。私、いつの間にか地球から地球外の見知らぬ土地へワープしてますよ。


「え……?神様がいるってことは……やっぱりここは天国な感じ?」


 怖ず怖ずと聞いてみた。はっきり言って既に死んでいたら困る。もう、死ぬ必要は無いわけだし。


「……あははっ!お前、そういえば、自殺しようとしてたなぁー。 安心しろ、ここは天国じゃない。お前は死んでない」


 少年はけらけら笑って答えた。なんかちょっとムカつく。


「え?なんで知ってるの?自殺の……」


「アカシック・レコードで全て見たからだ」


「なにそれ」


「全宇宙の全てを記録する、いわば全てのことが載っている『辞書』と言えばわかるかな。

 全生物の記録、この宇宙に生まれたものは生まれた瞬間から全てのことがアカシック・レコードに記録される。また、未だ明かされていない空白の歴史……この時何があって誰がどうしたか…。

 とにかく、見れば『全て』が解るんだ。これを見れば、謎なんて一つも無くなる。

 分からないことは、未来のことだけだ。アカシック・レコードはあくまでも記録するのみだからな」


「……つまり、それで私の人生を見たと」


「あぁ、まぁそうだ。お前が生まれてからここに来る直前までを、まぁ、適当にババッと」


 私の人生、適当にババッと見られてしまった。なんか悲しいよ。


「んーまぁ、酷い人生だな」


くっ……反論出来ない!


「……そして、その神の仕事というのは、万物の願いを叶えることだ。

 一応、毎日適当に願いを選んで叶えたりしてるが、数百年に一日、ここ《神のセカイ》から流れ星を流す夜がある。

 さっき言ったとおり、あの空に見える星を使って。あの星は本物じゃないから『流れ星専用』の星って感じかな。その流れ星は、確実に願いが叶う流れ星だ。なんたって、願いを叶える神が流した流れ星なんだから、叶うに決まってるな。

 星に願い事すると願いが叶うとかいう迷信があるだろ?まぁ、実際は宇宙からの星屑に願いをかけたところで叶うわけないんだが……その普通の流れ星に紛れて、願いが叶う流れ星をここから流すわけだ。

 まぁ、一々願いを見て叶えるのはめんどくさいからな。だから、自動式の流れ星にしたんだ。あ、まぁほら願いを見られたくないとかいう奴もいるだろ?間違っても怠けてはないぞ」


「え……と、つまり?」


「お前はその流れ星を見ただろう。流れ星に願いを言った。そして、叶った」


「……うん、叶った。5000万円が空から降ってきた」


「……夢のない願い事するね」


「自分でも思ってますよ……」


「つまり、お前があの日あの時見た流れ星は、確実に願いが叶う流れ星ってことだ」


「……どんな大きな願い事も?」


「それに見合う器がそいつにあるんならな」


「へぇ……」


 まぁ、いきなりそんなこと言われても普通は信じられないと思うけど、実際あの時私の願いは叶ったワケだし、本当なのかも知れない。


「わかった、大体は信じるよ」


「順応性高いルリ!!」


「いや、だって……うん」


 いいじゃん、少しぐらいこういうのを信じたって。仮に、これが全部夢だとしても。 今まで最悪の人生だったんだから。


 でも、ホントになんでも叶うんだったら、私凄い願い事しちゃったよね。


「……あの、でも一個質問」


「なにルリー?」


 ……可愛いな。小首を傾げるのがまた可愛いな!んな、くりくりな目で見ないで!!


 私は一瞬で心を奪われてしまった。こう、ズキューンと。


「可愛い…触っていいですか」


「いいルリっ」


もふっ


 ……なにこの掴み所の無い感じは。『もふっ』って効果音でてるのに……なんていうかビーズクッションとモフモフのクッションが混ざりあった感じ。

 未知の感覚!!超気持ちイイ!


「はわわわ〜」


「……ってオイ、質問は。つーか、それ仮の姿だし。実際は……って痛って!!」


「余計なコト言わないでくれるルリ?そりゃバンビは単純バカだから、隠すことなんて何も無いかも知れないけどルリ!」


「は、はぁー、単純バカは仕方ないからスルーしてやるよ」


 お、なんかビビってる。なんで?こんな可愛いのに。


「あ、じゃぁ質問ね。私、今までずっと不幸だったんだ。だから、普通の流れ星を見るのだって幸運なのに、そんな凄い流れ星を見る幸運、私には1㍉さえ無いと思うんだけど」


これは、凄い違和感だ。私は不幸中の不幸人間なのに。


「うん。それはそうだな。普通、《神のセカイ》からの流れ星を見る奴は、大国の王とか世界を救うことになった救世主とかなんだ。大きな運命を背負った人間。

 お前は常人よりも遥かに少ない幸運の持ち主なのに、なぜ見れたのか俺らも不思議だった。しかも、流星群を。だから、お前の人生全部をアカシック・レコードで見てみたんだ。だけど、やっぱり生まれてから今まで不幸ばっかりで幸運とは程遠い奴だった。

 だけど、なぜか背負った運命の糸、因果の量だけは多かったんだ。ホントに不思議だったよ。お前の前世を見るまではな」


 なんか……よく分からないけど胸の当たりがザワザワしてきた。


「……ぜ、前世?」


「アカシック・レコードは特定の人間の前世も見れるんだ。で、お前の前世っていうのが……」


「あ、ちょっと……待って……」


 急に軽い頭痛がしてきた。……なんで?


「……言っていいか?」


「……」


 直感だけど、聞いたらダメな気がする。でも、今はより多くの情報を手に入れるのが大事だ。


「……いいよ」


「《星の民》っていう宇宙を統率し、支配するいわば世界の王なんだ」


……ホシノタミ?


 何となく、私は懐かしさを覚えた。それに比例して痛みを増す頭痛。


「まぁ、俺もお前みたいな奴が《星の民》の生まれ変わりなんて信じたくないよ」


「……なんかよく分からないけど、私がここにきた理由とどう関係があるの?」


頭の痛みを無視して問う。


「星の民っていうのは、神々からの加護を受け、星を守る王だ。

 その加護っていうのは、神から魔法に必要な魔力を貰うこと。殆ど自分の魔力は使わない。だから、常人なら死んでしまうような大質量の魔法も、自身の体力があるうちいくらでも使える。しかも、《星の民は》魔法に長けた体をしてるから、魔法を自由自在に操れる。だから、《宇宙の支配者》なんて言われてるんだ。

 で、うちの神様、アシャルンも星の民に力を与える神様だったらしくて、生まれ変わりのお前に是非会いたいって言ってんだ。だから、聞いたら神様が意図的にお前に流れ星を見せたらしいんだよ。ここに連れて来るために」


「魔法……?生まれ変わり??じゃあ、私は魔法が使えるってこと?」


「いや、今は使えないな。今のお前には魔力が全く感じられない。普通、《星の民》の生まれ変わりなら来世のお前にも《星の民》の能力が受け継がれてるハズなんだが……恐らく……いや、これは神様に話して貰おう」


「…?」



 この時、私は既に気付いていたのでした。


 迷宮のようにこんがらがった沢山の細い糸。もしくは、ひどく錆び付いた歯車。ずっと心の隅にあったまま見て見ぬフリをしていた、モヤモヤ。


そんなものが、今、ゆっくり解けようとしているのを……





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