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ここはどこ?



 ……何だろう。ぶよぶよとした生温い液体に全体が包まれている感じがする。とても気持ち悪い。体に力が入らない。

 昏々とした意識の中で、私は身動きが取れずにいた。

 上も下もなく、右か左かも分からず、ただ流されているようだ。徐々に下へ下へと沈みながら。

 もしかして、ここは死の世界なのかな…。

 頭がぼっーとして、これ以上のことは考えられない。


 ふいに、目の前に手が差し延べられた。相手の体は見えない。

 ズブズブと堕ちていく私に、それはとても魅力的に思えた。

 それに捕まれば、ここから出れるのだから。

 ここは居心地が悪い。

 私は耐え切れなくなって、その手を掴んでしまった。


 その手に誘われて、ゆっくりゆっくり上がっていく。上にある、『何か』を見たくて。何も知らない私はワクワクしていた。


――キィィイイイイン


 突然、頭をハンマーでぶっ叩いたような頭痛が私を襲った。もしくは、銃で一思いに頭を撃ち抜かれたか。

 突然の激痛に、私は悶絶しそうになった。


離してくれ。


 私は必死に、私を上に連れていく手を振り払おうとした。しかし、周りの液体が邪魔をして思うように動けない。


 容赦なく襲い掛かる痛みと上の世界を知ろうとする興味の度合いがほとんど一緒になった時、私の頭には上の世界の情報がビデオを早送りで見るようにダーッと流れ込んできた。


 ――駄目だ。これ以上、上がってはいけない。

知ってはいけない。

思い出してはいけない!



――あれ?な、にを?



 結局……上の世界も暗闇だったのか、それとも眩しく光っていたのか。


 どちらとも言えないのならば、どちらもなのか。


 そして、私はなぜ泣いているんだろうか?



***********************


「ん……」


 ゆっくりと瞼を持ち上げた。初めに目に入るのは、見渡す限りに咲いた色とりどりの花達。優しい緑をした葉が私を包み込んでるよう。


 私はそんな所に倒れていた。


 優しい色の光が、私の髪を綺麗に染め上げている。


「ど、どこここ……」


 空は明るいオレンジ色をしていた。夕焼けじゃあなさそうだが…。だって、太陽が真上にあるから。そして、5つの月が太陽を囲むようにして浮かんでいる。


……5つの月?


「……??」


 なにソレ。まだ頭がちゃんと働いてくれない。

 ……現状整理しよう。

親の借金のカタで借金取りに誘拐されそうになった。

自殺しようとした。

藁にもすがる思いで流れ星に願った。

空から金が落ちてきた。

もう一度願ってみた。

流れ星がいっぱい。

……気を失う。


つまり、ここは……!


……どこ??


 うん、現状整理しても全く分からん。


 花が咲き乱れ、蝶が舞う庭園の向こうには大きくてとても立派な宮殿のようなものがそびえ立っている。


 とりあえず、ここは地球じゃない。月が5つあるとかおかしい。


「……フォワチャー!!」


ゴスッ


 ……痛い。本日2回目。思い切りわざと転んでみたけどマジで痛いわ。

 うん、うん。まだ私は生きている。生きている、ハズだ。

 なんかここ天国っぽいけど……

 痛いから死んでないよね。うん、そういうことにしておく。別に浮遊感も無いし。


「……てゆーか、なんか眠い」


 いきなりクラッと、強い睡魔に襲われた。温かくて優しい風が私を眠らせようとする。

 よく考えたら、最近ちゃんと寝てない。

 昼学校、夜仕事。これが定番パターン。


「ね……寝ちゃ駄目だって」


ガクッ…………ぐぅ。


 私はもう一度、花の中に身を委ねた。



***********************


「あめーあーめーー……」


 何処からか、私を呼ぶ声が聞こえる。


 ……うるさいな。私は今は夢の中で、雲の上にいてフワフワッーて……


「あーめー……」


 だから〜うるさいってば。こんなふかふかな雲に乗れる夢とか、私にとっては貴重なんだからね!?

 私が見る夢、悪夢がほとんどだから!!


「あー……」


あれ?


「いい加減起きろよ!バカヤロー!!」


ゴスッ


……ぱちっ


 私は目をようやく覚ました。夢に出てきたふかふかな雲の正体は、このふかふかなベッドみたいだ。

 私はいつの間にか、ベッドに寝かされていたようである。


てゆーか……


「痛ぅううう〜!!」


 痛ったぁああーー!!

頭、蹴られたぁああ!!

物理的な痛さが私を襲う。

 コノヤロー、私を蹴ったのはどこのどいつだ!!

 キッと、その相手がいるであろう場所を睨んだ。


そこにいたのは……


 キラキラした蒼色の髪をした少年であった。

 年は私と同じくらい。身長は私より少し高いぐらいかな。

 目は燃えるような紅緋色をしてる。肌は不健康そうに白めだけど綺麗で、はっきりとして整った顔だというのが一目でわかる。

 右耳には上から金、赤、桃の小さなピアスが3つ付いていた。

 黒蒼色のスーツっぽい服は、ヤンキーっぽい外見にあっていない。ちょっと笑える。

 思わず見入ってしまうほど、紅緋の目はとても綺麗だけど、だけど……さっきから物凄く私にガン飛ばしてきてるのはなぜ。


「あぁ?なに見てんだよ?オイ」


 えぇ?!あなたが先にガン飛ばしてきたんでしょ。……売られた喧嘩は買います。それが桜田雨芽なのです。


「はああああ〜?私を蹴ったのは、テメーか?どこの世界に初対面の人様を蹴るやつがいんだぁ?あ?」


迫力100%モード!


 私、色んな仕事してるからこういう人の脅し方は自然に身につきました。まぁ、出来れば持ちたく無かった能力ですね。


「はぁ?何度呼んでも起きねーテメーがワリーんだろ? だから起こしてやったんだよ、そんなのもわかんねーほどお前の頭はバカなのか?」


「ふざけんなよ?加減ってもんがあるだろうよ……」


 ……って、張り合ってる場合じゃない。

 というのは相手も同じらしく、『……どうしてこうなった』というような顔をしている。


「……ふぅ。とりあえず、蹴ったことはもういい」


「……俺は納得出来ねーけどな」


 だから何が。なんでこんなにこの人私に対して敵対意識バリバリなの。


「……ねぇ。ここどこ?」


「……」


無視かよ。


「……」


 ちっ沈黙が……!!

沈黙が痛いぞ!


「ルリ!」


……?


「雨芽、君は様々な因果の関係でここに来たルリ」


 目の前に現れたソレは、ぽよんとした丸い形につぶらな瞳が愛らしい。垂れ下がっているミミは先っぽが白くて柔らかそうだ。

約りんご3個分の背丈。

マスコットキャラ。


 ……だから、なんなんだ一体。




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