詩 アイドルになりたい
「アイドルになりたいな」
「え?」
登校中、私は勇気を出して切り出した。
彼は驚いており、私は少し頬を膨らませる。
「そんなに驚くことないじゃないの」
いじけた子どもみたいに告げると、彼が口を開く。
「悪い。だって、お前、アイドルって…」
彼の視線が私の全身を見つめていく。
何だが心の中を見られているようで、恥ずかしかったが、逃げようとはしなかった。
「応援してやるよ」
彼が目を輝かせながら、OKサインを出してきた。
私は嬉しくなって、
「ありがとう、実は…」
カバンを開け、雑誌を見せる。
そこには、「アイドル募集」と書かれており、黄色い付箋が貼ってあった。
「もう応募しちゃったんだ」
「え!? もう!?」
「駄目かな?」
彼を上目遣いで窺うと、雑誌と私を見比べる。
首まで赤くなっているのは、気のせいだろうか。
大型動物が小動物に甘えて大人しくなったような、そんな感じだった。
彼は怒った顔を作り、
「俺に何で言わなかったんだよ?」
「だって恥ずかしいもの。でも今更だけど、どう思う?」
「どうって…」
少女のように、彼はもじもじし、早口で言ってくる。
「お前ならなれるよ。頑張れ」
彼は視線を背けると、手で顔をあおぐ。
「朝から暑いな」
誤魔化すように、1人で呟く。
私は甘えようと、彼の袖を摘む。
「本当に?」
「本当だってば。…嘘だけどな」
小声は聞こえなかった。
私は1人ではしゃいで言う。
「特技はピアノにしようと思って」
「ああ、それはいい!! お前、得意だものな」
「うん!! 何を弾こうかな」
雑誌を胸に抱えると、彼が手を繋いでくる。
私も嫌ではなかったので、握り返す。
「あ! そうだ!!」
「どうしたの?」
「ちょっと雑誌を見せてみろ」
何で急に慌てたのか、私は分からなかったが、素直に雑誌を見せる。
彼は速読し、ほっと安堵の息を吐き出す。
「…良かった。水着審査とは書いていないな」
「え? 何?」
「何でもない。…あ、先生だ」
校門に先生が立っており、私は慌てて雑誌をカバンにしまう。
「また後で話してもいい?」
先生を気にして小さく言うと、彼はすぐに頷いてくる。
受かるといいな。
ライバル達はどんな感じなのだろうか?
1人で空想しながら、校門を通ったのだった。




