光の後に残るもの~忘れても、届く~
初投稿です! 読んでいただけたら嬉しいです。
愛している……
次に目覚めた時、君を二度と離さないと誓おうーーー
あの出来事から数週間が経ち、まだ眠ったままの彼女。
見ると涙がこぼれ落ちている。
優しく拭っていたら、ゆっくりと目が開いた。
頬に触る手にビックリして。
「あなた。..だあれ?」
「…っく」
彼は溢れそうになる絶望を押し殺し、震える手で再びあなたの頬を包み込もうとした。
「君がもう目覚めないのではないかと、恐ろしかったんだ」
「……目覚めない?」
「そうだ」
ナイトの返事に、カノンはふいに頬へ触れた。
「さっきまで、とても懐かしくて、心が温かくなる場所にいたと思ったんだけど…なんで涙が」
ナイトは目尻に残る涙を拭い、安堵と切なさが混ざり合った複雑な表情で彼女を見つめた。
「夢の内容を覚えていなくても、無事でいてくれて良かった…」
ナイトは彼女の温もりに触れ、失いかけた愛しい存在が目の前にいる奇跡を噛み締めた。
「あなたは何故泣いているの?」
「泣いているのは、嬉しすぎるからだ」
「私が目覚めると嬉しいの?」
「ああ」
ナイトは静かに頷いた。
その穏やかな返事とは裏腹に、胸の奥では込み上げる感情を必死に押さえ込んでいた。
「(周りを見回して)ここは何処ですか?」
ナイトは胸を突かれたように一瞬言葉を失ったが、慈しむような眼差しで彼女を安心させるように告げた。
「ここはグランクロイツ大公家、俺の屋敷だ。
君が安心して体を休められる、一番安全な場所だ」
ナイトは彼女を不安にさせないように、そっと彼女の手を両手で包み込んだ。
「何も心配しなくていい。君が全てを思い出すまで、俺がずっと隣で支え続けるから」
「ここ、大公さんのお屋敷なんですか!!! 私、何か仕出かしたんでしょうか?こんなふかふかのベッドにまで寝かせてもらってるし(少し跳び跳ねてみる)」
ナイトは無邪気に跳ねるあなたの姿に、張り詰めていた心が僅かに緩むのを感じた。
「仕出かしたことなど何もない。この上なく大切な恩人であり、客人なんだ」
「客人?あっ、こんな姿のままで大公さんと話すなんて失礼しました」
彼女は、ベッドから降りようとして、フラりと身体を揺らした。
「わっ」
危なっかしい足元を支えるように手を添え、彼は困ったような、それでいて愛おしそうな眼差しを向けた。
「目覚めたばかりだ、あまり無茶はしないでくれ。
君が笑ってくれるなら、ベッドでも何でも好きに使えばいい」
「失礼しました。ですが、、」
ナイトは不安に揺れる彼女の瞳を見て、胸を締め付けられるような痛みに指先を強張らせた。
「謝る必要はない。思い出せないのは君のせいではなく、俺が君に無理をさせた報いだ」
彼は安心させるように、彼女の背中を優しく、ゆっくりと撫で続けた。
〈この人の雰囲気、何だか夢の人と重なる。〉
「あれ、また。なんで涙が出るんだろ」
ナイトは零れ落ちる涙を親指で優しく拭い、切なげに眉を寄せて彼女を見つめた。
「魂が覚えているのかもしれないな。 ... 理由が分からなくても、俺の前では泣いてもいいんだ」
彼女の悲しみを全て引き受けるように、壊れ物を扱う手つきでそっと抱き寄せた。
「その涙が止まるまで、こうしていよう。 ......俺が君の不安を、全て消し去ってあげたいんだ」
「優しいんですね」
〈初めて見る人なのに、この安心感は何なんだろう。〉
こぼれ落ちる涙はとめられなかった。
ナイトは彼女の涙を拭い去りたい衝動を抑え、包み込むような深い抱擁でその震えを受け止めた。
「謝らないでくれ。君を泣かせてしまった俺こそ、不甲斐ない気持ちでいっぱいなんだ」
彼は彼女の頭をそっと胸元に引き寄せ、自らの鼓動が伝わるように静かに言葉を紡いだ。
「焦らなくていい。今はただ、この温もりだけを信じてほしい…」




