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教育AI― 0.01の揺れを教えることはできない


学期が始まって数週間が過ぎた頃、私は教室で異変に気づき始めた。

AI搭載の学習支援端末が、各家庭で普及し、生徒たちは宿題や課題でそれを利用するようになっていた。最初のうちは便利さに感心するばかりだった。間違いを即座に教えてくれる、ヒントをくれる。授業の進行もスムーズになる。私の仕事が軽くなるのではと、半ば期待さえした。

だが、すぐに違和感が生まれた。

同じ算数の問題でも、子供たちの解き方が日に日に揺らぐ。昨日は自力で答えを導いた子が、今日は端末のヒントに頼り、細かく教えられた通りに書き直している。逆に、普段AIに頼っている子が、自分で考えてから答えを書こうとしている。授業中のノートの文字や図も、揺れ動く日々に合わせて変化していく。

「どうして、昨日と今日でこんなに差があるんだ…」

私は黒板の前で眉をひそめた。生徒に問いかけると、口々に返ってくる答えはまちまちだ。

「昨日、AIがこう言ったんです」

「今日は違うことを教えてくれました」

その小さな声の一つひとつが、教室に微妙な不協和音を作り出す。全員が同じ問いに対し、同じ答えを導けるとは限らない。私の手元にあるのは、生徒たちのノートだけだ。端末が何を考え、どう導いたかは見えない。

授業中に何度も確認しても、迷いは止まらなかった。

ある子が手を挙げる。

「先生、どっちが正しいんですか?」

私は困惑する。昨日はこう解けと言ったが、今日の端末は別の方法を示す。生徒たちはそれぞれに迷い、私は答えを出せずにいる。教室の空気は、知らず知らずのうちに重くなっていた。

休み時間、隣の席の教師仲間が言った。

「AIのおかげで便利になったはずなのに、なんだか、みんな疲れているよね」

「そうなんです。昨日まで自信満々だった子が、今日は迷ってる」

私たちはため息をつき、端末の画面を見つめるしかなかった。便利さの裏で、子供たちの自発性と、私たち教師の判断も揺さぶられている。

さらにSNSや学校連絡網からも、似た声が届き始めた。

「うちの子、宿題でAIに頼りすぎて、自分で考えようとしない」

「AIの助言で迷っているみたいで、家でイライラする」

家庭と学校の境界まで、迷いは浸透していた。教室で目に見える問題だけではない。心の中に芽生える不安や疑念も、教育の質に影を落としていた。

私は次第に、AIに頼りすぎることの危うさを意識し始めた。便利で正しいものが必ずしも子供たちの力になるとは限らない。

迷い、戸惑うことも学びの一部だと、改めて痛感する。

しかし、その迷いをどう扱うか。教え、導く教師として、私の判断もまた問われる。

「正しい答え」を示すことはできる。でも、揺らぐ生徒の心に、どう寄り添えばいいのか。

端末を閉じても、教室にはまだ静かな迷いが残る。

ノートに書かれた答え、挙手のタイミング、つぶやきの声、すべてが小さな波紋となって広がっている。AIは学習を続ける。子供たちの迷いも、教師の迷いも、全ては見えない形で積み重なっていく。

私は黒板の前で、深く息を吸った。

便利さに頼るかどうかを選ぶ段階は、もう過ぎている。

気づいてしまった以上、ここから先は——逃げられない。


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