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注意:本作のヒロインは「世界が優しすぎるタイプ」です。

ご了承のうえ、お楽しみください。

龍林の大地りゅうりんのだいち


果てしなく広がるこの世界――

龍林の大地は、人類が暮らす場所であり、

四つの偉大なる大帝国に分かたれていた。


四大帝国の境界が交わる中心の地には、

一本の巨大な石柱が、悠久の時を挑むかのように聳え立っている。

それがいつ、どのようにして生まれたのかを知る者はいない。

人々は畏敬の念を込めて、

それを――**「天魂の柱」**と呼んだ。


伝説によれば、この柱こそが、

人の中に稀に宿る特別な力――

**「魂力こんりょく」**の起源であるという。


魂力を持つ者は、

異界、あるいはこの世界に存在する霊獣と繋がり、

召喚し、魂を結ぶことができる。


その証として、石柱の表面には古代文字が深く刻まれており、

今なお消えることのない淡い光を放ちながら、

**「霊魂戦士」**として生きるための掟と道を語り続けている。


それ以来、人は霊獣と契約する術を学び、

やがて――

常人を超える力を持つ存在が生まれるようになった。


そしてそれが、

新たな伝説の始まりであり――

今もなお語り継がれる物語の、起点である。


月満ちる宿げつまんちるやどしゅうの町


昼下がりの周の町。

宿屋の裏手には、煮込みの香りと湿った土の匂いが漂っていた。

かつて強烈だった日差しは和らぎ、

心地よい温もりだけを残している。

表通りの喧騒も次第に静まり、

一日の最も忙しい時間は、すでに過ぎ去っていた。


宿の裏庭、洗い場で――

一人の小さな少女が、黙々と働いていた。


ムーラン。


十二歳の彼女は、同年代の子どもより少し痩せて見える。

十分とは言えない食事のせいだろう。

小さな両手は、大きな木桶の濁った水に沈み、

茶の実から作った石鹸の泡にまみれている。

彼女は一枚一枚、丁寧に油汚れを落としていた。


その横には、

彼女の背丈を超えそうなほどの洗い物が山のように積まれている。


重労働に顔をしかめる少女も多いだろう。

だがムーランは違った。

祖母が寝る前によく歌ってくれた民謡を、

かすれながらも楽しそうに口ずさんでいる。

その小さな世界には、

ささやかな幸せが確かに存在していた。


彼女はここで働き始めて、もう半年になる。

学校が終わると、毎日ここへ駆けつけ、

皿洗いの賃金で――

祖父の薬草を買い、

祖母の誕生日には木の簪を贈った。


宿の女主人・メイおばさんは口は悪いが、根は優しい。

だからこそ、ムーランを雇ってくれているのだ。


――ゴホッ。


小さな咳が、静かな空気を揺らした。


ムーランは手を止め、音の方を見た。

古びた壁の影に、

二、三歳ほど年下の少年が、身を潜めて立っていた。


汚れきった身体。

破れた衣。

骨ばった体。

そして――

飢えと警戒が入り混じった、その瞳。


少年の視線は、

近くに置かれた残飯の桶に釘付けになっていた。


――グゥ。


腹の鳴る音が、痛々しく響く。


ムーランの胸が、きゅっと締めつけられた。

彼女は知っている。

空腹のまま夜を待つ、その辛さを。


素早く周囲を確認する。

梅おばさんは帳簿に夢中。

料理人のジャン兄さんは、きっと薪部屋で昼寝中。


――少しだけ、危ないけど……!


彼女はそっと、

桶の上に残された、まだ温かい饅頭を二つ掴んだ。


「……ねえ、こっち」


少年は怯えたように身をすくめる。


「大丈夫だよ。何もしないから」


ムーランは、精一杯の笑顔で饅頭を差し出した。


少年は恐る恐る近づき、

震える手で受け取る。


「早く食べて。

それから、すぐ行って……見つかる前に」


少年は何も言わず、

深く、何度も頭を下げると――

路地の奥へと消えていった。


ムーランは、その背中を見送って、

小さく微笑んだ。


胸の奥が、

賃金をもらうよりも、ずっと温かかった。


彼女は知らなかった。

そのすべてを――

誰かが、見ていたことを。


宿の二階。

窓辺で上質な茶を啜る、

藍色の絹衣を纏った青年。


「……優しい心だ」


彼は静かに微笑み、護衛に命じた。


「調べてこい。

あの娘のことを、すべてだ」


「はっ、若様」


夕陽がムーランの頬を照らす。

彼女の小さな世界は、

まだ何も知らないまま――


だが、運命はすでに、動き始めていた。

ぜひ最後までお付き合いください。

物語はこれから、

どんどん面白くなっていきます!

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