人食いの島
幼い家の子供たちが水際で戯れている。
此処バヌアツの1月は夏真っ盛り、観光客や現地のメラネシアの人たちも海水浴を楽しんでいた。
ただ、日本からバヌアツに移住してきた私や北半球の国々から来た観光客の大人たちは皆、心ここにあらずっていう感じで頻りに北の方角に目を向けている。
水際で遊んでいた息子が突然悲鳴をあげた。
「わ! 冷たい」
北の方角に向けていた目を息子の方に向ける。
息子の方に向けた目が空から落ちてくる白い物を捉えた。
「雪?」
あぁ……やっぱり、南半球の平和な島国バヌアツも巻き添えなったか……。
子供たちに声を掛ける。
「帰るぞ」
「「えぇ! もう帰るの?」」
嫌がる子供たちの手を握り引きずるように家路につく。
現地の子供たちは初めて見る雪に歓声をあげ、砂浜にチラホラ落ちて来る雪を見上げ掴もうとしたり口で受けようとしたりしていた。
早く家に帰り立てこもる用意をしなくては。
先週の月曜日核戦争が勃発した。
限定核戦争なんかでは無く全面核戦争が。
月曜日に核戦争が勃発し4日前の木曜日に終結したらしい。
らしいっていうのは、核ミサイルが着弾した地震のような振動が探知され無くなり、北半球の戦争当事国を含めた多数の国々から救援を求める通信が細々と入り始めていたからだ。
だけど殆んど核戦争とは無縁だった南半球に雪が降って来たっていうことは、核の冬が始まった事を意味する。
バヌアツの食料自給率は100パーセント以上だが、雪が降り核の冬が到来すれば農業は壊滅的打撃を受けもしかしたらだけど、昔のカンバリズムの風習が蘇り襲われる可能性が高い、そうなれば北半球出身者が真っ先に襲われるだろうと思うからだった。




