デスワの語り
相変わらずのネーミングでやりました。
私、デスワ・テーオクレはコーカイ国に仕えるテーオクレ公爵家の令嬢です。私がお父様に連れられ、初めて王宮に参ったのは、物心付くか付かないか、と言った年齢でございました。
「デスワは可愛いね。」
宰相であるお父様が王都にお住まいなのは当然で、仲睦まじいお母様も王都の屋敷で過ごしております。必然的に娘である私も、跡継ぎであるお兄様も王都で育てられております。
そんな私達兄妹が幼い時分から王宮に出入りしていたのは、お父様が国王陛下と親友だったからでしょう。私と同じ年の第二王子ヨーイコ殿下をお引き合わせてなさったのです。
そして私達は確かに良い「友人」となり得ました。ヨーイコ殿下はお優しく、何時も私の精一杯のおめかしを「可愛い」と褒めて下さり、私の胸はポカポカしました。
友人……、ええ、友人です。只、陛下やお父様は私達を友人で終わらせるつもりは無かった。本当はーー、私達を婚約させたいとお思いだったのです。
ヨーイコ殿下は第二王子。つまりヨーイコ殿下には兄殿下がおられます。ええ、第一王子殿下、即ち王太子殿下です。
王太子ワルイコ殿下。我が国では必ず嫡男が後継者と決まっております。ですからワルイコ殿下は生まれた時から次期国王として育てられて来ました。
我が国では昔、後継者争いが激化し、危うく直系王族が滅亡しかかった事が御座います。年が離れ過ぎていた事、母親の身分が低過ぎた事で、誰もが忘れていた王子だけがギリギリ残った為、彼が王となり、存続出来たので御座います。
しかし国はその争いで大いに荒れ果て、更に其処に伝染病までもが流行りました。対処は本当に大変だったそうです。伝染病は国境を越えて発生した為、他国へ助けを求める事も出来ず、同時に弱った事を利用して、我が国に干渉する勢力もなく……、まるで綱渡りの様な執政だったと歴史は語ります。
その我が国を助けたとされる女性がおります。彼女は魔術を持って、病を封じ込めたとか……、我が国では平民の子供でも知っている伝説で、彼女は偉大なる魔女として謳われております。
我が国で後継者が嫡男と定められたのは、その魔女との約束だとか。先の後継者争いを2度と起こさない事を条件に伝染病を封じて貰ったそうです。……魔女等存在する訳がございませんが。
しかし激化した後継者争いが今に至るまで尾を引いているのは確かでしょう。最早、魔女との約束事を守る為等と建前にもなりませんが、それでも王家の嫡男に王位は引き継がれて来ました。そして自然、貴族家もそれを倣う様になり、、、今に至るのです。
そう言った事情からヨーイコ第二王子殿下の兄君にあらせられる、ワルイコ殿下が生まれ持って王太子の座に付いておりました。
しかし王太子殿下は幼い頃より横暴で、陛下方は王の器ではないと判断されておりました。其処でヨーイコ殿下を立太子させんとしていたのです。その為に我がテーオクレ公爵家の後ろ盾をヨーイコ殿下に与えようとされておりました。
しかしながら、伝統と言ったものは簡単に変える事は出来ません。いえ、はっきり申し上げて、変えようと懸命であらされました、陛下方や我が家が異質扱いされておりました。公爵家傘下の者達も消極的だと言う事でした。
結果、陛下方はヨーイコ殿下の立太子を見送らざる得ませんでした。故にーー、私はワルイコ殿下の婚約者に成らざる得なかったので御座います。
……私とヨーイコ殿下は友人です。其処に恋心と言うものが生まれるには幼過ぎておりました。しかしそれでも、私はヨーイコ殿下と結ばれるものだと思っておりましたし、それを喜ぶくらいの好意が存在しておりました。
だからこそ、それが全く違ってしまったとなった時、悲しみましたし、不安でした。その頃には王太子殿下の愚かさも耳にしておりましたから。
そして動揺する心を静めながら迎えた初対面で、王太子殿下はこう宣いやが、仰せになりました。
「お前みたいなブサイクなぞゴメンだっ!!! 婚約破棄だっ!!!」
婚約の為の顔合わせ。其処で私はそう怒鳴られました。酷い癇癪を起こした王太子殿下は直ぐに周囲に叱り付けられましたが、聞きもしません。
「ブサイクが悪いではありませんかっ!!」
そう叫んで、その場から走り去ってしまったのです。ーーそして陛下は決断したのです。必ずやあのワルイコ殿下を廃嫡すると。
その為には伝統を変えるべき、と大多数の家に認めさせなければなりません。故にワルイコ殿下の愚かさを分かりやすく周知する事になりました。
効果が高いのは矢張り、人の目が増え、同時に大人からの干渉が少なくなる学園事、そう判断され、ハニートラップ作戦が練られる事になったのです。そして月日は流れ、現在。
ーーデスワ・テーオクレ公爵令嬢!! 貴様との婚約を破棄する!!
貴族院卒業式のパーティー。其処で浮気相手をエスコートしたワルイコ殿下からの宣言。全ては計画通り。ですがワルイコ殿下が誠実な人間であれば、それだけで破綻した程度の計画でございます。
ですからこの様な宣言をなさらなければ、それだけで王位は約束されたものでした。
ーー殿下、後悔しても手遅れですわよ。
私は仄かな苦笑を唇に浮かべたのです。
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