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殺し屋と少女と日本刀  作者: uniki


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2話 打ち合わせ

 「じゃあこれで今日の仕事のメンバーが揃ったわね」


 すっかり仕事モードとなった岬がハキハキと喋る。


 「ちょっと待った」


 男は話を進めようとする岬に意義を申し立てる。


 「なによ」


 「このニワトリが今回の件に関わるというのなら言っておく。 時間は正確に遵守しろ。 スムーズに事が進まないのは気分がいいものではない」


 「いや、俺9時半集合って聞いたから…… 別に遅れてないよな……? 後ニワトリって言うな」


 モヒカンの男は不安そうな顔をしながらスマホで時間を確認する。


 「おい岬。 9時が集合時間だと言ったよな?」


 「それはレイだけよ。 遅れられたら困るから」


 さっきまで自分は爆睡していたというのになんも悪びれる様子もなく岬は平然と答える。


 「お前……」


 「はいはい。 じゃあまず自己紹介から行ってみようかー わたしは東条岬。 まあ知ってると思うけどここのバーの店主よ。 次!」


 「町村まちむら隼人はやとだ。 元解体屋だ」


 二人が名乗り終え、男の番がやってくる。 


 「葉月はづきれいだ」


 男、もとい零は簡潔に名前だけを告げる。 


 「よし! 自己紹介終了! じゃあ次仕事の話をするねー」


 岬がカウンターの下からゴソゴソと封筒を取りだした。


 「まず今回の依頼内容がある建造物の破壊なんだけど。 これね」


 そう言って岬は封筒から出した一枚のピンボケした写真を取り出す。


 「これは祠か? 」


 鮮明ではないが、背景は木々に囲まれており、祠のような物がそこには写っていた。 恐らく色合い的にも祠は木造だろう。 零の問いに岬は答える。


 「うーん。 多分そうだろうね。 依頼主からはこの写真に写ってる建造物を壊すようにしか言われて無いけど。 あ、座標位置と大体この辺にあるって地図もあるよ」


 そう言って岬は衛星写真のようなものを封筒から取り出し座標位置を零のスマホに転送する。


 「町村はこの場所知っているか?」


 地理的にはここから1時間ぐらいの山の中を指しているが零はそこに行った事がないので町村に尋ねる。


 「山までの道は知ってる。 だが中までは知らねえよ?」


 「じゃあ俺は山までの道さえも知らないから運転手は町村に決まりだな。 で、」


 カウンターに置かれた水を飲み干して一息ついた後、再び零は喋りだす。


 「町村の仕事内容は分かった。 次に俺の仕事だ。 俺は誰を”殺れば"いい?」


 町村は元解体屋だ、建造物の破壊に関しては造詣が深いだろう。 適任だ。 だが零はそういう訳では無い。 零はこの席に自分が呼ばれた特別な理由があるのではないかとそう思っていた。


 「今回はそういう仕事じゃなくて。 ただこの祠の破壊だけ。 まあ強いて言うなら町村君に何か危険が迫ったらレイにはそれを防いで欲しいなって所かな」


 岬は当たり前のように言ってのける。


 「お前は俺にこのコカトリスの出来損ないを護衛をしろと。 そう言ってるのか?」


 「コカトリスって何だ……? 俺のことか?」


 疑問を浮かべる町村を無視し、岬は零の問いに頷く。


 「またこの手の仕事か……。 護衛はあまり得意ではないんだが」


 「でも桃源郷では用心棒みたいな事やってるじゃん」


 桃源郷とはこの街にある風俗店だ。 何せ物騒な街なので金が大きく動く場所では暴力沙汰が起きるのは珍しい話ではない。 零は訳あってその店の用心棒のような事をやっている。


 「まあそれは仕方なくだな……」


 「ちょっと待ってくれ」


 黙って話しを聞いていた町村が青い顔をしながら口を挟む。


 「俺の護衛って…… これそんなにやばい仕事なのかよ?」


 不安が入り混じった声色で町村は問う。 それを聞いて岬は大きな溜息をつく。


 「町村君。 私、報酬の話したよね?」


 「ああ……。 一人60万だって」


 「えっ。 そんなすんのかよ。 ていうか俺初耳なんだが」


 岬は零の話を無視して話を続ける。


 「人によって値段は前後するけどこの街で殺し屋一人雇おうとすれば平均幾ら掛かるか知ってる?」


 町村は少し困惑した表情を浮かべ口を開く。


 「200万ぐらい……?」


 「ブーッ」


 岬は町村の顔の前に3本の指を立てる。


 「300万もするのか…… まあそうだよな人を殺すわけなんだし」


 町村は納得がいった顔で頷くがそれは間違いであるのを零は知っている。


 「30万よ」


 「え?」


 「大体平均はそのぐらい。 もちろん大物になればなるほど値段も跳ね上がるけど、そんな要人がターゲットの依頼なんてウチに中々入らないわ」


 人の命なんてものは意外と安い。 それはこの街の暗部を見る人間なら誰でも知っている。


 岬は零の前に置かれている空のグラスに水を注ぎ、再び喋る。


 「町村君。 さっきこの仕事やばいんじゃないかって言ったよね。 正直言うと相当危険な仕事だと私は思ってるわ。 それこそ命に関わるぐらいに。 だからさっきまでの話、忘れるって言うなら降りてもらっても構わないわ」


 「いいのかよ。 割と情報べらべらと喋ってたけど」


 「いいのよ。 ここでの話しを外に広めてもデメリットはあってもメリットなんて一つも無いもの。 そんな事、町村君にも分かってるはずよ」


 外見に反して相変わらず恐ろしい言葉を岬は口にする。 しかしここで選択肢を与えてやる辺りはきっと岬なりの優しさなんだろう。


 「町村君。 あなた60万で命を賭けられる?」


 笑顔で問いかける岬に対して、町村は顔を強張らせる。 こんな質問は普通の人間に対して、あまりにも意地が悪い。


 「あー…… なんか聞いてる限りやばそうなんで俺降ります」


 「レイ。 一度話しを聞いておいて、はい辞めますなんて通ると思ってるの?」


 「あれ、さっきと言ってることが違う」


 「俺…… やるよ」


 岬とくだらないやり取りをしていた零の横で覚悟が決まった町村が仕事を引き受ける。


 「60万の為に命を賭けるなんて馬鹿げているとは思うけど…… それでも俺には金が必要だから」


 覚悟が決まったというよりかは後が無いから仕方なくといった方が正しいかもしれない。


 「それに葉月が守ってくれるんだよな?」


 縋るような表情で町村は零を見る。 零はため息を付きながらそれに応じる。


 「まあ生きて帰してやるよ」


 その言葉を聞いた町村は笑顔を浮かべながら零に手を差し出す。


 「頼りにしてるぜ! お互い無事に、怪我一つ無く、生きて帰ってこよう!」


 「なんかハードコアな遠足みたいだな」


 零は町村のゴツゴツした手と握手を交わした。 見かけに反し、手が若干震えていたのはここだけの秘密としておいてやろうと、零は内心そうほくそ笑んだ。

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