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殺し屋と少女と日本刀  作者: uniki


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9話 報酬

 「……」


 零の本業は殺しだ。 人を一切の感情を動かさずにこの世から奇麗に消し去る。 その為には道具の日常点検は必須だ。 いざと言う時に銃弾が出ませんでしたなんて話にならない。 故に仕事が入ってない日は今現にこうしているように武器の手入れを毎回している。


 テレビはBGM代わりに付けて銃火器類を分解して細微にチェックしていく。 ただ何も変わらない日常。 唯一変わることがあったとすれば隣に座り、テレビを見ている白髪赤目の少女、響の存在だ。 さっきから零の作業には一切目をくれず、テレビを注視している。 零はあまりテレビを好んでみる方ではないが、一応ニュースなどは見ている。 最も最近ではスマホで確認する方が多かったのだが。


 「そんなに食い入るように観て楽しいか?」


 「あなたの作業を見てるよりかは」


 「そりゃそうか」


 そんな他愛の無い会話をしながら作業と時間は進んでいく。 丁度零が最後の銃火器の点検が終わったころ、スマホが鳴る。 連絡主は岬だ。 特に無視する必要もないので出る。


 「なんだ」


 「なんか忘れてない?」


 「昨日の勘定か? お前の奢りではなかったのか?」


 「違うわよ。 てかアンタ妙に声に張りがあるわね」


 岬が突拍子もない事を言う。 恐らく慢性的な睡眠不足が解消されたその影響だろう。 零はさっきの出来事を思い出し複雑な心境になりながらも本題に入ろうとする。


 「要件を言え」


 「私の店の前の車どうするのよ。 邪魔なんだけど」


 「あー……」


 岬が指す、車とは町村の車だ。 町村が行方不明になり、帰る足が無くなったので仕方なく一時的に零が運転して戻ってきたのだ。


 「俺の家の車庫空きがないしな。 もう少し置いといてくれ」


 「嫌よ。 行方不明者の車なんて店前に置いとくの。 辛気臭いし、いつ撤去されるか分からないじゃない」


 少し刺々しい言い方をするが岬の言う通りだ。 少なくとも零なら嫌だとそう感じた。


 「わかった。 何とかしに行く」


 そう言い、電話を切ると零は一式の装備を装着し、モッヅコートを手にして立ち上がる。


 「少し用事が出来た。 外出するのはいいがあまり遠出はするなよ」


 コートの中でクシャクシャになった1万円を1枚取り出しテーブルに置く。 散財しなければ一日の小遣いとしては多い方だろう。


 「わかったわ」


 響は素直に頷くと再びテレビに目線を戻す。 零は響に家の電子ロックの番号を伝え、家を出た。




 ◇




 「で、どうするのよ車」


 零は岬から出された水を一口飲み、煙草に火をつける。


 「まあ普通に家まで乗っていくさ。 町村の家の住所分かるんだろう?」


 「そりゃ知ってるけど職業柄そういう個人情報漏らすのはどうかなーと思う訳ですよ」


 「金か?」


 「違うわよ!」


 「じゃあお前が乗って行ってくれ」


 「正気? 町村君の家に着くころには廃車になっているけど」


 「自覚はやっぱりあるのか」


 岬は極度の運転初心者(ペーパードライバー)だ。 本人曰くアクセルとブレーキを踏み間違えるそうだ。 間違っても野に放っていい部類の人間ではない。 殺人暴走車になる。


 「あんな依頼出してるぐらいなんだから別に大丈夫だろ」


 「そういやそれいつ取り下げるの?」


 零はある依頼を捜索者と呼ばれるプロの人探しに出していた。 依頼内容は町村を見つける事だ。 捜索者はただ人を探すだけだ。 見つかった後のことはまたこちらで何とかしないといけないがまずは見つけ出さないと話にならないだろう。


 「町村が見つかるまでだ」


 「本気で言ってんのそれ? あれたっかいのに」


 「善人を愛するべし(・・・・・・・・)。 町村は見た目は兎に角、悪人じゃないだろう?」


 「……ふーん」


 岬はグラスを磨いているがその眼はどこか遠くを見ていた。

 

 「ま、そう言う訳だ。 兎に角住所を教えろ。 じゃなきゃもう帰るぞ」


 「わかったわよ…… 仕方ないわね……」


 よほど店前に車を置かれるのが嫌なのだろうか。 岬は渋々と言った様子で自分のスマホを操作する。 そうすると零のスマホに位置データが送られてくる。


 「そんなに遠くないな。 駐車場の車庫ナンバーは?」


 「流石にそこまで知らないわよ。 ただこれ一軒家よ」


 だとすると家族で住んでる可能性が高い。 少し面倒くさいなと思いながら零は立ち上がる。


 「あー。 レイ」


 「なんだ」


 立ち去ろうとする零を岬は呼び止める。 まだ何か用事があるのだろうか。


 「昨日はよく眠れたみたいね」


 岬は自分の目の下を指さしながら笑う。 恐らくこびり付いていたクマが少し落ちたのだろう。


 「おかげさまでな」


 岬に指摘された通り、よく眠れたのだと零は思う。 以前は鉛のように重かった頭の中も今日はやけに冴えわたっている。 睡眠を取るだけで世界はこんなにも変わるのかとそう思う。


 「それと、これ。 ホイッ!」


 岬はカウンターの下から輪ゴムで止めた札束を投げつける。 ずっしりと重みのある金を零はキャッチする。


 「随分と多いようだが?」


 「結局この依頼遂行したのはレイ一人だからね。 よかったじゃん一人勝ちってやつ?」


 「なるほどな」


 零は報酬金を懐にしまうと、らびりんすを後にした。



 ◇



 「ここか……」


 零はスマホの位置データを頼りに町村の家と思わしきものを発見する。 表札にも町村と書かれているから間違いないだろう。 家の前に車を停めギアをパーキングに入れ、サイドブレーキを引いてエンジンを止める。


 車から降りて家族になんて説明しようと悩みながらインターホンを押そうとしたところで、玄関のドアが開かれる。


 「お兄ちゃんの車の音がしたのでお兄ちゃんと思ったんですが、どうやら違うようですね」


 そう言い目を閉じた少女が玄関前に立っていた。

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