勇者への一歩 憎しみより正義を
2月16日改稿しました。
「死ね雑魚が」
マッギリールは俺の顔を踏んづけた。
「私は弱いですから許して下さいと言え、言え!」
また俺は蹴られた。
しかし、大きな隙が出来たマッギリールをマーガスは横からすさまじい勢いと気迫で殴った。
「ぐああ!」
「いい加減にしろよお前」
さらにフォルスターはマッギリールを刺し腕も切った。
「真面目にやってるやつバカにするなよ」
俺はぽかんとした。
フォルスターは言った。
「止めを刺してやる。心臓を刺すだけでなく八つ裂きにして燃やす。貴様ら魔王軍は骨すら残さない」
マッギリールは震えていた。
俺はフォルスタ-の切れた目が怖かった、
しかし咄嗟にマッギリールの前に出てかばった。
「何だ?」
フォルスタ-の声が低くて怖い。
「も、もうその辺でいいでしょ? もう動けないんだし」
「何を言ってる? 甘い! ナターリアは僅か一七の人生を失い他の皆も苦しんでいる。少なくとも俺は魔王軍を許せない」
「そこを何とか、無闇な残酷な殺生は良くないよ。それにあんたも憎しみに取り憑かれてしまう」
「お前に何が分かる? 俺の憎しみと悲しみは筆舌に尽くしがたく他人に理解されるレベルじゃないんだ……俺はもう止められないんだ」
「そ、そこを何とか!」
「……」
「憎しみじゃなく正義の心を……!」
「……お前中々熱い男だな。ナターリアの仲間なんだっけ」
と言ってフォルスターは剣を納めた。
「ナターリア、何となく事情は分かった。快人もよろしくな」
「ナターリアが憑依したって話信じてくれるの?」
「ああ、にわかには信じがたい。しかしお前が一生懸命真摯に説明するのを見て信じた。それに必死で戦ってる奴は嘘はつかないだろう」
「ありがとう」
俺は礼を言った。
フォルスターは決意した。
「俺はもっと強くなる。マーガス、お前もだ。二度と仲間を目の前で失うのはごめんだ。ナターリアは恨んでるかもしれないが」
しかしナターリアは俺の口から彼女の声で言った。
「フォルスター、私は貴方やマーガスの力が足りなくて自分が死んだなんて一ミリたりとも思ってないわ!」
「え?」
「貴方達の仲間である事を誇りに思ってる。貴方達がいるから今の私がいるのよ! だから無理に責任を感じて追い詰めないで」
「ナ、ナターリア……」
言葉が出ないフォルスターを見てマーガスは言った。
「驚くのも無理はないか」
フォルスターは心がほぐれたように言った。
「また、君の声が聞けるとは思わなかった。君の気持ちはすごく伝わったよ。これからよろしくな。快人、マーガス、ナターリアもありがとう」
「え? ありがとうって?」
「ナターリアが死んでから俺は自分を責めしばらく自分しか信じなかった。しかし仲間の必要性を思い出した。でもナターリアは俺達が仲間である事を誇りに思ってくれていた」
マーガスは気づいた。
「そう言えばお前、さっきより肩の力抜けてるな」
「ああ、皆のおかげだ。よし、これから一気に砦に行くぞ。あいつらは油断している。俺達はもう十分強くなった。一気に決着だ」
え、でも俺は全然強くなってない。
一気に決着ってどうすれば。
「でもまだ快人を強くしなきゃいけないな。お前には自爆がある、と言うのは冗談でこれから伝説の師匠に習いに行こう」
「師匠までの道は魔王軍の配置が強くなってる」
よし、その人に会いに行こう。
そしてこれからはナターリアだけでなくマーガスやフォルスターの信頼も得なければいけないんだ。
でもやるよ。必ず。
ナターリアは微笑みを向けた。
「でもまずい事になったわ。マッギリールが来たことで。元々快人君の事は弱い魔物と戦う事からじっくり育てる予定だったの。でもこれで軍に目を付けられてこれからは攻撃が激しくなる。名前を知られちゃったから」
「じゃあ、すぐ強くならないといけないってこと?」
「即戦力はさすがに難しい。であるならお前の白い炎の使い方を学び研究するんだ」
「剣術より魔法を?」
そうだな、俺の唯一の取り柄、白い炎にかけるしかない。
フォルスター達と大分差があるしね。
「少し休んで能力を引き出す練習をしましょう」
俺は聞いた。
「フォルスターは何故騎士学校に入ったの? 正義感とか? それとも誰かを目標にしてるとか?」
「まあ、国を守りたいとか強くなりたいとかは勿論あるよ。だけど一番の理由は王様が貴族の父さんに『凄い才能があるから鍛えて戦士にしてほしい』と依頼されたからなんだ。ナターリアや快人と同じに水晶に出たらしくて」
「へえ」
「だから、正義感とか強くなりたいとかの理由が小さく感じる程、父さんは俺に期待をかけた。何せ王様からの頼みだからな」
「嬉しかった?」
「まあ、それで親父は俺を鍛えると同時に愛情も注いでくれた。俺も期待に応えようと言う気持ちと自主的な気持ちが両方あって修練にいそしんだ。二人の兄がコーチでな」
「兄貴どんな人」
「実は徹底的に二人にしごかれた。その為常に家には緊張と恐怖が支配し俺は他人とあまり話したくなくなった。そこで声をかけてくれたのがマーガスとナターリアなんだが」
「兄貴にしごかれてやだった?」
「『お前は勇者の資質あるんだろ? だったらもっとやれよ』『甘い』『お前だけ愛情受けて気に入らない』とか言われてきつかった。いつも」
マーガスは言った。
「何か、兄貴さん少し憎しみを込めたような言い方してないか?」
「ああ、俺も兄者を『俺を憎んでるんじゃないか』と思った事はあるけどおかげで強くなれた。感謝してるよ。愛情だと思ってるよ。特に『パーティはチームワークだけじゃない、個々の力を上げなきゃダメなんだ』と言う言葉に影響を受けて最近まで黙々修練してたってわけさ」
「でも『気に入らない』なんて家族に言っちゃダメな言葉よね。まるで本当に憎んでるみたい。う、ううっ」
「ナターリア! 泣いてるの?」
「家族にそんな事言われるの可哀そうで……私は家族仲良かったし」
マーガスは言った。
「実は俺もナターリアも兄者二人に会った事あるんだよ。確かに厳しくて冷たい感じでフォルスターへの憎しみすら感じる程だった
「まあ、俺は愛情と解釈してるよ」
「強いんだなフォルスターは」
「いや、そう思わなきゃやっていけない部分もあったんだ」
マーガスは冗談ぽくなく言った。
「まさか、血が繋がってないとか言うオチじゃないだろうな」
「……」
「マーガス……」
「ま、その時はその時だ」
「フォルスタ-って意外ときつい冗談受け流せるんだね」
「後な、親父が凄腕の家庭教師雇ったんだが、そいつは魔王軍の戦士だったんだ」
「え?」
「彼は俺に『魔手剣』と言う強力だが使うと生命力を奪っていく技を教えた。使えば死に近づいていくから」
「それでどうなったの?」
「王国の騎士団が戦ってくれた。その時魔手剣を食らわせてやった」
「え!」
「それで俺は自信がついた。この技すら武器にして行こうと決めた。生命力が減っても」
「何たる前向きさ」
「いや。俺は兄者にしごかれるのが辛くて、言われたくないと言う消極的理由で強くなった小心者さ」
そして俺達は人のいない野原に行き能力実験を始めた。
「はっ!」
俺が手から白い火を出す。
「もっとだ」
「はっ」
ごうごうと燃える炎が出た。
「次は火の弾を作るんだ」
「うおおお」
小さな火の弾を作る事に成功した。
「驚いた。凄い成長スピードだ」
ナターリアは俺の体内に潜っていた。
「凄い炎のパワーだわ!」




