2人の命の犠牲
「えっ、アッサム様はどうなるんですか?」
「恐らくと言うか、死ぬ」
「そんな!」
海斗は一人でギルザルゴと戦っていた。
しかし、彼でさえ戦うのは厳しかった。
俺は叫んだ。
「待ってください。アッサム様の命を犠牲にするなんて!」
「僕は悔いはない。それしか方法はない」
海斗は俺に叫んだ。
「ギルザルゴの弱点を透視してくれ」
俺は必死でギルザルゴを透視した。
「胸の中央に心臓みたいなのが見える」
「良し!」
「どうする気だ」
アッサム様は言った。
「彼は命を捨てる気だ。僕もだけど」
「そ、そんな! 俺の為に二人もの人が犠牲になったら俺はどうすれば!」
「快人、勇者は『強い、優しい』だけじゃなく人の命や犠牲を背負い乗り越えなきゃいけない事もあるんだ」
「!」
一方、海斗は光に包まれた。
「さらばだ、快人」
「よせ!」
叫ぶ俺にアッサム様は聞いた。
「記憶は戻らないか?」
「はっ! 頭に文字が! それが読めるようになってきた!」
「それを君の口で詠唱するんだ」
「しかし、海斗を止めないと!」
海斗は叫んだ。
「俺が隙を作る! 後は頼む」
光の塊になった海斗はついにギルザルゴに突撃した。
「海斗! はっ!」
俺の右手に感じた事もないとてつもない炎のエネルギーが充満した。
「撃つんだ!」
「うおお!」
これまでにない白炎が俺の手からギルザルゴめがけ放出された。
凄まじい音とともに俺の超強化された魔法がギルザルゴに命中した。
記憶が、いや完全には戻ってない。
でも頭に保存された古代語とそれを解読する能力が身に付けられた。
何か違うんだ。
悟った様な。
でもギルザルゴは煙の中から姿を現した。
「効いてない?」
マーガス達が言った。
しかしアッサム様は傷ついた体で言った。
「いや、効いている。しかし一発じゃ足りないんだ」
「アッサム様、力が残ってたんですね!」
「何とかな」
海斗は光となって消えた。
彼の死を無駄にするわけに行かない。
俺は更に古代の超魔法火炎をギルザルゴに撃った
今度は放出状態が力を出す限り続くタイプ。
ギルザルゴとの根競べになる。
その時脳内のナターリアにアッサム様から指示が入った。
「ナターリア! 一旦抜け出て元の肉体に戻るんだ」
「え?」
アッサム様は言った。
「快人の力だけでは心もとない。君の肉体の力も引き出すんだ」
「そんな事をしたらアッサム様は」
「構わない」
ナターリアは俺の体から抜け出し元の肉体に入った。
そこへ満身創痍のアッサム様が来て彼女の背中に手をあてた。
「君の力を全て引き出す。そして快人と二人の力で倒すんだ」
「そんな、何とかアッサム様は生きれたのに、そんな事をしたら」
「君達に未来を賭けるんだ。私はもう九十だ。悔いはない」




