約束が守れなくなるから
突然刃が上空から降って来た。
「あっ!」
避ける間もなく兵士一人の首が飛んだ。
「ああ!」
兵士達は勿論俺達も恐れた。
どこから発射されたのか、スピードも見切れない。
ザンブラーは嘲笑った。
「はっはっは。今のは儂ではない。これがギルザルゴ様のお力だ」
今度は超速の槍が上空から飛んできて二人の兵が刺された。
「あ、ああ」
俺は何とか勇気を振り絞った。
「誤解です! 俺達はだまし討ちをしたわけじゃ!」
と言うとアッサム様が俺の口を塞いだ。
「それを言えば『兵だけが悪い』と言う事になる」
「あ……」
また姿なき声がこだました。
「貴様らは少しは骨のある人間と思っていたが」
ところがラセル王子が前に出た。
「すべては私の責任です! 兵達を殺さないで下さい!」
「王子!」
突如槍がラセルを襲った。
と思いきや方向を変え兵士に刺さった。
「え!」
「ラセル王子とやら、そなたは中々に骨のある人間の様だ。それに勇者達もな。と言う事は後から来た兵達が嘘つきと言う事だな。我々は人間すべてがくずとは思っていない。だから侵攻を緩めていたのだ。だが勇者とアッサム以外はとりあえず殺させてもらう!」
また刃と槍が飛んできて兵を襲い殺した。
「止めて下さい!」
俺は自分でも気づかない内に敬語になっていた。
「兵達を守るんだ!」
俺達は兵を守る様に囲んだ。
「ではこれでどうかな」
今度は巨大な鉄球が落ちて来た。
俺達皆で受け止め支えたが凄まじい重さだ。
「余は『勇者達は助ける』と言ったのに勝手にだまし討ちした兵達をかばうのか? 分からんな」
「俺達は兵達がだまし討ちしたのは悪いと思ってるけど死なせない!」
「生かす価値があるのか? では『勇者パーティだけは』謝れば助けてやる。しかしその兵どもは全員殺す。さあどうする?」
「……お、俺は謝らない! そんな事をしたら、約束が、ナターリアとの約束が守れなくなるからだ!」
「!」
重い、重すぎる。
少しでも気を抜いたら鉄球に全員押しつぶされそうな重さだ。
「攻撃したくても片手外しただけで押しつぶされそうだ」
「まずギルザルゴを下に降ろさなければどうにもならん」
「挑発するとか」
アッサム様は言った。
「しかし挑発は」
マーガスは言った。
「出てこい! 降りてこい!」
フォルスターも叫んだ。
「逆効果かもしれんが俺も挑発させてもらう! 出てこい」
「ふん」
何とガスの様な塊が天井をすりぬけて降りて来た。
「ギルザルゴが姿を現す?」
だんだんと生物と言うより魔人の姿を現すギルザルゴ。
恐竜の様な肌と太さの手足と骸骨の中に意地悪そうな目がある顔。
生物の皮の様な兜。
「あ、あれがギルザルゴ」
「だまし討ちしか出来ないと思われると余の名折れなのでな」
「勇者様皆様! 私達の事は放っておいて奴と戦ってください!」
「で、でも!」
「我々では逆立ちしてもギルザルゴには勝てない。でも快人様達ならまだ可能性が」
「でも、出来ない」
「何故です!」
「皆が押しつぶされるのを見られないから」
ギルザルゴの声が響く。
「快人とかいったな。貴様中々骨があるな。それほどまでに兵達を見捨てたくないか」
「俺達と直接勝負しろ! あんただってだまし討ちじゃないか」
兵達は言った。
「快人さん、皆さん! 我々の意地を見せ特攻してやりましょう! 例え相手が邪神でも!」
「そうです! 負けても人間の誇りを見せるのです!」
でも俺は言った。
「特攻はしないほうが良いです」
「何故です!」
「死ぬのって良いことじゃないですよ。すごく辛いです本人も他人から見ても。痛いし。命を無駄にしちゃだめですよ。俺もこの世界くる前トラックに突っ込もうとしましたが。俺の祖父の親友は特攻で亡くなりました。トラックにひかれそうになった時その人の姿が見えました」
「!」
「でも今は命を大事にしたいと思います。人間はすぐ死んじゃいけないと思います。しかも一回死んで生き返った人もいます。死ぬのはすごく辛い事です。だから勝ちましょう」
「さすが勇者!」
「いや、僕は人違いです」
「そんな事は良いんです、海斗さんとどっちが勇者かとか」
ギルザルゴの声が響く。
「良く言ったな白炎の魔法使いの子孫」
ギルザルゴと遂に一騎打ちの時が来た。
「……!」




