自爆覚悟 無駄死には一つもない
3月1日改稿しました。
俺は剣であっさり切られた。
オルンの攻撃はオークのそれとは比べ物にならないスピードだった。
俺の胸の切られた傷から血がどしゅっと飛び散る。
「え、何これ」
血飛沫が現実を知覚できなくする。
マーガスは叫んだ
「快人!」
「ぐ!」
オルンはどさりと倒れた俺を嘲笑った。
「貴様は弱いな。話にならん」
「……」
認めるしかなく、言い返せなかった。
ナターリアの操作に俺の体がついて来れないんだ。
俺の体が足を引っ張ってるんだ。
ナターリアの強さならこいつは倒せたろう。
体が重い。
素早く動けない。
連携が上手く行っていない。
その為、ラグが大きく発生した。
痛い、立ち上がれない。
俺はうつ伏せに倒れた。
血が一杯出てここで死ぬのか。
とても申し訳なかった。
約束したのに。
しかし、次の言葉だった。
「まあ、さすがはあの途中で犬死にした馬鹿女の仲間だな」
これが俺の脳と感情を思い切り突き抜いた。
「何だと!」
「ぐぐ!」
俺は立ち上がろうと大地を掴むと、手から白の光が出て掴んでいる地面が二十センチ四方ひび割れ始めた。
「何⁉️」
そこにいる皆が動揺した。
そして俺はまはゆい白の光をまとったまま立ち上がった。
俺は息絶え絶えだけど力強く足を踏みしめオルンをにらんだ。
怒ってる俺を見て動揺しそれを隠すようにオルンは迫る。
「死ね」
しかし俺は血が流れてるにもかかわらず倒れなかった。
引けなかった。
オルンに怒りの感情全てをぶつけるまでは。
倒れられないんだ。
「う、ううう」
俺は猛獣の様なうめき声を出した。
引き金は引かれた。
もう、止まれなかった。
「うおお!」
そして俺は素手でなりふり構わず食ってかかった。
「こいつ、素手で殴りかかってきやがった」
あっさりパンチはかわされた。
でも、俺の気持ちは収まらない。
「何で犬死にした女なんて言うんだ⁉ 取り消せ!」
「ふん、あんなブス価値はないが」
「取り消せ!」
「何で俺がお前に命令されなきゃなんないんだ? 頭を下げるってのは下が上にする事なんだよ」
オルンの次の剣を俺は棍棒で受けたが体勢がぐらつき 俺は倒された。
オルンは再度せせら笑った。
「弱い男だな。こんな奴が勇者パーティとはとんだ人選ミスだ」
「人選ミスなんかじゃないわ」
ナターリアの声が突如俺の口から出た。
「な、何だ女の声が」
「快人君は私を家に入れてくれて短い話だけで信用してくれてついてきてくれた。もし、もしも人違いで快人君が勇者でなかったとしても、私を信じて助けてくれた人、私は信じて一緒に冒険したいわ!」
すると俺の体の負荷がなくなりナターリアの動きになりオルンの動きを上回った。
「何だこいつ!」
「快人君は偽善者呼ばわりされるのを恐れていた私を一歩踏み出せる様にアドバイスしてくれた。恐れは全部消せなくても、偽善と呼ばれるのを恐れないで人に優しく出来るようになりたい! 私に任せて! 止めを刺してやるわ」
ぴったり波長が合ってる!
一気に押しまくった。
「急に強くなりやがった!」
これなら勝てる。
しかし俺はよろよろの体で彼女を止めた。
「いや、待って」
「え?」
オルンは戸惑っている。
「何だ?」
俺はナターリアに頼んだ。
「俺にやらせてくれ。俺の力で」
「無茶よ!」
オルンは俺が急にパワーダウンしたのを見抜いた。
「ぬ、動きが下がった」
しかし俺は棍棒を投げ捨てた。
オルンは動揺する。
「まさか素手で?」
「この方がやりやすい。行くぞ!」
「はーっはは!」
馬鹿にした態度で襲い掛かるオルンの剣を俺は決死の覚悟で手で掴んだ。
血は出た。
でも白いガスの様な膜が発生して剣を防いでくれている。
「何だこれは⁉」
「これが、俺にしか出せない、白い炎……」
そして膜が突如花火の様に小型爆発を起こしてオルンを吹っ飛ばした。
「くっ」
小さいけど。
「快人君の体力が相当落ちているわ。この力を使う程大きく減るのよ」
「いくらでも使う」
「私に交代して」
「いや良いんだ」
「うおお」
その時だった。
俺の叫びと共に手のひらの白炎が初めて放射状の形になってオルンに襲いかかろうとした。
「何だ!」
ごうごうと俺の心を表す様に燃える炎ははた目にもすごい威力の様だ。
発射されたすさまじい白い炎はオルンの横をすりぬけ彼方へ消えて行った。
「ぬう!」
外してしまった。
しかしその炎はオルンをたじろかすに十分な威力だった。
この世界に来て最大の威力を感じる攻撃が感情と共にふいに出た。
俺は手をしみじみ見つめた。
これは普通の人間なら一発で焼け焦げる大きさと勢いだ。
「白い炎だと! 勇者は緋色の光を使うが白い炎とは」
「あんたには一生分からないだろうが、俺みたいなクソガキが言っても説得力ないだろうが、勇敢な人の死に無駄死になんて一つもないんだ!」
しかし、気を取り直したオルンは切りかかってきた。
「わわっ!」
俺は再度剣を手で受けた。
完全に無我夢中で。
先程同様俺の手を覆う白いガスの膜が剣を防いだ。
「何!」
「ぐっぐ。わっわっ、俺の体内のエネルギーが今にも爆発を起こしそうだ。身体が熱い! 何だこれ、うわ」
俺の体は白い光に包まれた。
そして五秒後爆発を起こした。
「ぐわ! ああ!」
自爆ショックで俺はうつ伏せに倒れた。
もちろんこの爆発は狙ったんじゃない。
完全なるまぐれ。
オルンの体は焼け焦げた。
俺にももう力が全然なかった。
引き分けに近い。
「う……」
俺は力がなかったが言葉を絞り出した。
「勝てた、ナターリアの助けなしで」
「快人君! 一発目の数倍の爆破をしたから一気に体力がなくなったんだわ!」
「だ、大丈夫。ひどいよなあんな事言うなんて。俺は半端な人間だから。親戚のおじさんに言われたから、十七になって勉強も半端にしか出来ないのに人生何とかなると思ってる。でも下手すればニートになるかもしれない。半端な考えは人生に通用しないんだ。ナターリアの戦いが教えてくれたんだ」
「う……」
「え? な、泣いてるの?」
「だって、おじさまの言う事がひどすぎてつい同情しちゃった」
「大丈夫か快人? お前が女みたいな声を出すのが聞こえたんだが。少し休めよ」




