交流
3月23日改稿しました。
俺とナターリアは休息も兼ねて町へ買い出しに行った。
「昔、町に行くと必ず飢えている人がいたわ」
「この間の事があったからあまりそういう人がいても無理しなくていいよ」
「ありがと」
ところが、とても間の悪い事に、いかにも食べ物のなさそうな子供が五メートル前にいた。
七才前後の男の子は黙々と座って絵を描いている。
目は凄く情熱的で集中力があったが、それはどこか空腹をごまかしているように見えた。
案の定子供は少ないパンの切れ端をかじってまた絵を描く。
「……」
ナターリアは突き動かされるように、前に出て何か少年に言おうとした。
俺は手を出して制した。
「俺が行くよ」
俺はパンを持って少年に声をかけた。
「な、何?」
「これ、あげるよ」
「い、いくら?」
「はは、お金なんかいらないよ」
「本当⁉」
俺は少し不安だったけど少年は満面の笑みを見せた。
「おいしいかい?」
「うん! これ高いパンでしょ」
「いや、普通だよ」
「僕には高いパンに見えるんだ」
「君、名前は?」
「マズル」
「絵を描くのが好きかい?」
「うん、画家になりたい」
「おお、夢大きいな! 立派。何の絵書くのが好き?」
「雑踏と人々」
「……芸術を雑踏に感じるんだ」
「僕には一番芸術に感じる」
「そうだよな。風景と人が合わさると絵になるよな。なかなかのセンスじゃん」
「いえ」
「学校は?」
「親はいないよ。昼は靴磨きしてる」
「そうか。絵描いてるとき楽しい?」
「うん、でもね、最初は楽しかったけど、今はその、どうしても画家になりたいプレッシャーがあって」
「プレッシャー?」
「うん、なりたいって言うよりどうしてもならなきゃいけない感じ」
「もしかしてお金の為?」
「うん、それもあるんだけど、認められたいんだ」
「え?」
「僕はお金がなくていつも馬鹿にされていた。だから人を見返したいんだ」
「そうか」
「偉くなりたい」
「馬鹿にした人っていっぱいいるのかい?」
「うん、その人達全てを見返したい」
「そっか」
「どうしたの?」
「いや、どうするのが良いかと思って」
「僕の考え間違ってる?」
「間違ってない。でもね、好きな事をやるのは人を見返す為じゃないんだ。それをしているといつか本当に大事な物を見失ってしまうんだ」
「……」
「人間は、例え王様になっても全ての人に認められるのは難しいんだ」
「ふーん。お兄ちゃんは悔しいと思ったり怒った事ある?」
「あー、俺ねあんまり悔しいと思わないんだ。あ、待てよ、そうだ! オルンと戦った時怒ったよ。友達を馬鹿にされて」
「友達ってあの一緒にいた彼女みたいな人?」
「か、彼女じゃないよ……でも、友達より少し上の気持ちもある、あ、まあいいや。とにかくね俺は自分が馬鹿にされてもあまり怒らないけど、友達をけなされた時凄く怒った確か! そうだ、人間て怒る時も誰の為に、何のために怒るか、大事なんじゃないかと思う。自分が少し馬鹿にされても」
「へー、つまり自分より他人の為に怒るのが立派って事だね」
「そ、そうだね、はは自分でも今気づいたよ」
「じゃあ僕も頑張るよ」
「ああ、じゃあね」
俺は少しのパンを渡し手を振って別れた。




