フォルスター対兄
気性の荒そうな長男、ウイリアムスはぽきぽき手を鳴らした。
「さてとおっぱじめるか」
冷徹な次男、ケークはずいと前に出た。
「……!」
「行くぞ!」
「ぐ!」
いきなり切りかかって来たウイリアムスを何とかかわしたフォルスターは距離を取った。
手で『戦えない』と言うサインを出した。
キルビルは何も言わず見ている。
フォルスターは事態が飲み込めない。
「止めてくれ兄者、操られている二人とは戦えない!」
レイ・ドルイドは意地悪く嘲笑った。
「ぷっくくく」
ウイリアムスは大声で馬鹿にした。
「バーカ!」
ケークは無表情で言った。
「甘い奴だ」
ウイリアムスは説明した。
「何度も言うが、俺達は操られてはいない。自分の意思で魔王軍に入ったんだ。要は俺達がお前を憎んでいる事を受け入れられないんだろ?」
フォルスターは辛そうに懇願した。
「兄者、俺の事がどんなに憎くても構わない。だが俺は肉親に刃を向けたくない。だから俺を殺したければ殺せ。でもそれ以上悪い事はしないでくれ」
「……」
黙ったケークに対しウイリアムスは言う。
「肉親に刃を向けたくないか。ふん、血がつながってない孤児のくせに」
「何?」
「お前は『勇者を探す水晶』で目をかけられ家で育てられる事になった孤児だ」
「!」
「王様は親父に『勇者候補の子を一人育ててほしい』と頼んだんだ。しかし親父はそれをお前には言わずあまつさえお前に一番の愛情を込めた。『人格も能力も勇者にふさわしい』とな」
「……!」
「だから俺達はお前を『鍛える』と言う名目でしごいてやった」
「俺が強くなったのは兄者のおかげだ」
「馬鹿かお前、あれを愛情だと勘違いしてたのか?」
「俺はきつかったけど楽しかったよ」
「しかし父上は最近お前を正式な跡取りにすると言って来た。もう我慢の限界が来た俺達は親父を殴りその足で魔王軍に入ったのさ」
「俺は遺産なんていらない。だから止めてくれ。俺は手を出さない」
「何? ふーん。無抵抗な貴様を殺しても面白くない。だがお前の仲間にも傷を付けると言ったらどうだ?」
「何?」
「特にナターリアとか言う娘にはお前は惚れているんだろ?」
「お、俺は学校が第二の故郷だ。兄者のしごきで暗い性格になった俺をマーガスやナターリアは仲良くしてくれた。他の友人も。そして最近できた快人やキルビルも」
「!」
キルビルは驚いた。
「だから今の俺があるのは仲間のおかげだ。皆には手出しさせない。だが俺は手出ししない」
「何? ふーん、ならお前の仲間の家族を襲うか」
「何!」
「くっくっく」
「兄者、催眠術を振り払ってくれ」
「はーっはっは! こいつまだ信じてやがる!」
「くくっ」
大笑いするウイリアムスに対しケークはすっと笑う。
「俺達はお前の才能、いや『選ばれた何か』が気にくわないんだ。財産以外に。来ないのならこっちから行く」
とウイリアムスが遂に剣で切りかかったがキルビルは前に出て槍で止めた。
「何?」
「俺は事情をよく知らないし口出す権利もない。だがあんた達は仮に催眠術であっても明確にフォルスターを殺そうとしてる敵だ。よって口を出させてもらうぜ。それにあんた達の腐った目、催眠術なんかじゃない芯からの悪人だって伝わるぜ」
「ふん」
「それにフォルスターは今の仲間の為に犠牲になろうとしてる。いくらへらへらしてる俺でももう黙って見てられないぜ。二対一で相手してやる」




