出会い
2月27日改稿しました。
「ここは」
俺は周りを見渡してみた。
俺達が放り出された場所は、近くに道がある草原の中だった。
その道なりに目をやると、はるか遠くに城が見える。
ここは、明らかに中世の世界。
現世みたいに交通なんか整備されてない。
見回す限り草原と荒れ地と道。
「ここどこかわかる? 道はどこかに繋がってる?」
「私達の拠点のお城の近くね。これから王様に会って貴方を紹介するのよ。その後師匠の元へ連れてくわ」
「成程」
現時点の力
快人
レベル一
攻撃力三 素早さ四 体力三 魔力二 HP十八
武器 なし
スキル:白炎の力 魔法:なし
「弱い…でも君が憑依してるし」
「水を差すようで悪いんだけど、実は私他人に憑依したり動かすの初めてなの。つまりどうすれば貴方の体から百の力を出せるか今は分からないの」
「え?」
「米田君程度なら倒せる。でも貴方の力の引き出し方は完全に分からないし、逆に貴方の体がついて来れなくなっちゃうかも知れない。そうならない為には一刻も早く私が慣れ、また貴方の能力を解析する、そしてあなたに強くなってもらわないといけないの」
「そうなんだ」
「まずは二人の波長を合わせるわ。無駄な力はぬいて。一旦深呼吸してみようか」
「ふう」
「まず、腕を挙げて」
「こう?」
「首を上に上げて。後伸びをして」
俺は言われるままやった。
「後屈伸とサイドステップを。さらに足をその場で前後に出して」
これもやった。
「この位ならまだ反応に差はないか。次はパンチをなるべく速く出してみて」
「はっ」
「どう?」
「何か、自分の体じゃない気がした。何て言うかな二十パーセント位違う」
「そう! それが反応の差で負荷でもあるの。入って動かしている私とに隔たりがあるの」
「それって解消しなきゃいけないんだね」
「焦りは禁物だけど、スピードや筋力や脳や波長にラグがあるのよ。難しいけど少しずつならしていくわ。で私が最初主導して貴方の経験を稼ぎ一方で貴方の能力の解析をするわ。どういう点が強いのか」
「二人三脚だね。一人よりずっと心強いよ。合わせる苦労もあるけど、頑張るよ」
「ありがと。後はあなたのパワー解析。まず腕力とスピードは今はまだだめ。でも内包した謎の力がある」
「スキル『白炎の力』って何?」
「勇者の力は基本緋色なの。でも違う」
「俺だけ違うの」
「あなたにしかないわ。あなたの体の中で燃え盛る白いマグマみたいな力が見えるの」
「白いマグマ?」
「うん、白い炎みたいなのが見えるの。それは数値に表す事は出来ない。でもこれは他の戦士誰にもない物。ちょっと力を溜めて」
「うん」
「少しずつ炎が大きくなって行くわ」
「俺は分からないけど」
「手を突き出して力を放出して」
「こう?」
「少し火が伸びたわ!」
「本当?」
「手に力を」
「あっ、ほんの小さな白い炎が」
「貴方の秘められた勇者の力じゃないかしら。前例がない」
「白は俺だけなんだ」
「ちょっと小型化して体内を見て来るわ」
ナターリアは俺の体内と精神を探りに行った。
「やっぱり、凄い白炎が燃え盛ってる。これがキーね。この『未知数の力』がこれからの貴方の要、最大の武器になるんじゃないかしら」
「使いこなし方は?」
「二人で解析しましょう」
「これからお城に行くまできっとモンスターが出て来るわ」
「初めての戦いか。異世界での戦い、緊張して膝ががくがくしてくる。どこから敵がくるかわからないし」
「落ち着いて。基本は剣道と感覚は同じ。貴方には戦いの勘がある」
そして恐る恐る城への道を歩き始めた。
そして道を歩いていくと小型の豚獣人が現れた。
「あれはちびオークよ!」
「来たかっ」
緊張しながらとっさに相手と適正距離を取る。
防衛本能?
剣道より少し遠い距離にささっと。
恐怖が本能的に距離を取らせているんだと思う。
俺を落ち着かせる為か、ナターリアは言った。
「まずは私が体を動かすわ。貴方は雰囲気に慣れて」
グルルと言いながら睨んでくるオーク。
怪物との戦いなんて初めて。
人間相手と気持ちが違う。
オークは今にも襲い掛からんばかりだ。
俺は武器がない。
そんな中、僅かなにらみ合いが終わった。
そしてよだれを垂らし、いきりたったオークは勢いよく棒で殴りかかって来た。
「わ、わわっ」
「大丈夫、私に任せて」
オークの攻撃に対し反応が遅れた俺の体をナターリアが一転、高速で操作した。
すると、自分の身体じゃないみたいに凄い速さの回避でオークの攻撃をかわす事が出来た。
しかも無駄がない。
オークが戸惑うくらいに。
「俺がこんな動きを……?」
もちろん彼女の操作のおかげだ。
彼女の反射神経、回避能力はすごい。
オークの攻撃はかすりもしない。
しかしすぐ次が来た。
ちょっと意外なタイミングで。
「危ない危ない!」
「まず私に任せて」
とまたナターリアは操作でかわしてくれた。
不意のタイミングで自分じゃかわすの無理だったと思う。
何より、俺は緊張で硬くなってる。
剣道の腕なんて役に立ってない。
「大丈夫? あいつは小学生くらいの強さよ。初心者でも行けるわ」
「俺は武器がない」
と言う中、オークの三発目の振りかぶり棒攻撃が飛んできた。
「わっ!」
でも、これもナターリアのおかげですごい速さ、かつ最小限の動きでかわせた。
反応速度も申し分なし。
でも俺は怖かった。
だけど、体に負荷が少しかかっている。
彼女の操作は良いんだけど、さっき言ったタイムラグとかがあり重さを感じるんだ。
隙のない動きをナターリアがしようとすると、隙がある俺とラグが発生するんだ。
ナターリア
レベル三十六
力 九十
素早さ 九八
体力 八十二
魔力 九十
「凄い、鍛え抜かれてるね」
ナターリアは言った。
「パンチよ。武器がない今それしかない」
俺は力を込め、拳をオークの顔に思い切り気合を込め食らわせた。
しかしあまり効いてない。
相手の反応が鈍い。
剣道と違い、俺は相手を殴らないから。
直後、俺に隙ができた。
即座に反撃が来た。
しかしこれもナターリアのおかげで何とかかわせた。
危ない危ない。
すれすれだった。
今のはこれまでより危ない。
「反撃に備える事も忘れないで」
「パンチじゃ効かないな」
「あの棍棒を奪い取るのよ。上手く避けながら」
「やって見るよ」
俺は上手く次の棒攻撃をかわした。
これもナターリアのおかげ。
俺は隙を見て自分の腕をオークの腕にからめた。
これは俺自身で動かした。
そして相手の手首を殴り、棒を落とすのに成功した。
「やった。これを拾えば」
急いでオークより先に棒を拾う。
そしてオークを棒で二発殴った。
オークは頭を押さえ弱気になった
そして逃げて行った。
「やった」
「やったね初勝利」
「武器がないから棍棒を拾っておこう」
「一休みして魔法が使えるかの検証」
「私が体内で詠唱すれば魔法は出せるかしら」
ナターリアは詠唱した。
俺の口を支配して。
でも魔法が出ない。
「どう言うメカニズムになるのか分からないわ」
「俺に魔力がないのか。自分で覚えないと駄目なのか」
何回かトライしたが今は駄目みたい。
ちびオークは今度は仲間を連れて来た。
親玉格のオーク二匹。
「今度は強そうだよ」
「焦らないで」
親玉オークは二メートル近い体長。
盛り上がった筋肉を持っていた。
落ち着き迫る親玉オークの片方。
もう一匹は動かず傍観している。
「あの傍観してるの怪しいわね。目を離さないで。作戦があるかも」
「良く読めるね」
親玉オークの片方は迫り、思い切り振り上げた棍棒を俺に向かって振り下ろした。
「わっ!」
回避はナターリアのおかげ。
「隙が大きく凄く速いわけじゃないけど、食らったら頭蓋骨陥没してたわ」
オークはウーウー言いながら地面にめり込んだ大きな棍棒を再度振りかぶった。
「くっ!」
これも何とかかわした。
と言ってもこれもナターリアのおかげ。
急に勢いづいたオークは速い接近で俺に迫りぶんぶんと棍棒を振り回した。
俺は言った。
「あの棍棒を狙って落とせば」
「でもあいつのスピードが予測不能で迂闊に飛び込めないわ。それにもう一匹、あっ!」
ナターリアが気づいた通り、何ともう一匹のオークは大きな口を開けて光線を俺に噴いた。
危ない。
「避けられたけど髪が焦げた」
「あいつのあんな攻撃は私の知識に無かった」
それに気を取られるなり、今度はもう一匹が棍棒を振り回してきた。
「どっちに集中すればいいんだ」
「あの光線を吐く奴の方に大急ぎで近づいて!」
「え!」
俺は言われるままダッシュした。
すると飛んで火にいる夏の虫を見る様に俺を見てにやりと笑うオークは、口を開けて光線を放った。
「ぎりぎりでよける!」
俺は光線を避けた。
すると光線は後ろから追って来た方のオークに直撃した。
「これを狙ったんだ!」
さらにナターリアの操作で光線を吐いた方のオークの隙を付き棍棒を取り上げた。
俺は呆然とするオークの頭を棍棒で何度か殴って倒した。
「すごいな、さすが戦いの経験と勘がある。俺は何も出来てない」
「そんな事ないわ。全部あなたのおかげよ。力は少しずつ付けて行ってくれればいい」
「代わりに戦うって約束したのに……」
「そんなに気にしないで。最初の内は私に任せて。何より貴方の命は私が保証する」
これじゃ命の受け皿みたいだ……
「繰り返すけど気にしないで。操作するのは私だけど経験値はあなたに入るの。だから今の内に弱い魔物をやっつけて貴方の力を上げるのよ」
次に小柄な細身の鬼みたいなのが二体現れた。
「ゴブリンね」
狂暴そうでキーキーいい、いきりたっている。
また動きも早そう。
「落ち着いて」
俺は、力を抜きプライドをすてナターリアに全て任せた。
俺は動体視力ないから相手の攻撃を見切れない。
ならぱ目も、神経も脳も彼女に委ねるんだ。
すると彼女は驚くべき速さで俺を動かした
襲い来るゴブリンのこん棒をかわす。
最小の動きで。
かわされた事でいきり立つ二匹。
今度は目で打ち合わせをしたのか、まるで時間差攻撃の様に攻めてきた。
しかし一発目も二発目もナターリアは見きった。
そして反撃。
この動きも無駄がない。
頭を一撃、手応えあり。
もう一匹の頭をなぐる。
簡単に二体を倒して見せた。
続いて体長一メートルの大ウサギが現れた。
こいつも動き速そう。
相手の動きを見ながらチャンスを伺う。
「何となく動きが読める」
速いのだがナターリアは飛びかかるタイミングを読んでいた。
ひらりとかわした。
ところが、体当たりをかわされたウサギはすぐバックステップした。
「バックステップ!」
そして不意のタイミングでさっきより速く飛びかかって来た。
角を突き立てて。
俺は反応が遅れ、左腕で角を受けた。
「ぐわあ!」
「快人君!」
角が刺さったまま。
血がしたたり落ちる。
俺は角を引き抜いた。
痛みも伴いながら。
またウサギはバックステップした。
また、飛びかかる機会を伺ってるようだ。
「チャンスは一度だけだ」
「うん」
またも飛びかかって来たウサギ。
危険だけどこの時を待っていた。
タイミングを合わせ棍棒で角を狙う。
こっちの体に当たらない様に。
一種の賭けだった。
棍棒は兎の角ごと頭部を砕いた。
ようやくウサギは倒れた。
腕から血が流れてる?
「いい調子で経験が上がってるわ」
「今のところ君との動きのラグもそんなにない。魔王達を倒す約束は命を賭けても守りたい」
「え?」
「人との約束は命がなくなっても守り通したいんだ。それが俺の唯一の取り柄って言われるしね」
「約束を必ず守るきっかけって何かあったの? 暗い話になりそうならいいけど」
快人の回想にはいる。
快人には働いてない従兄弟がいた。
「快人君! ち、ちょっとでいいからお金貸して!」
「え!」
「親がもう、こづかいはやらないって。必ず働いて◯日までに返すから!」
一ヶ月後。
「ごめん快人君! 俺仕事始めたのにすぐ辞めちゃったんだ!」
回想を終わる。
「君と同じでお金を人に貸した事がある。何とその人は年上、二十三歳の従兄弟、でもその人は返せなかった。でも騙された訳じゃなく、足りなかったらしくてその人は涙ながらに謝った。俺はそんなに怒ってなかったけど、その人すごく後悔してた。約束を守れなかった方もすごく傷つくって知った」
「話してくれてありがと」
「破られた方はなんて言っていいか迷うんだ。すごく怒る人もいれば、笑って許す人もいるかも知れない、俺は何て言っていいか分からなくて、破られた方もすごく悩むって分かった」
「そんな状況でも相手に配慮するなんて、月並みだけど優しい……」
さらに進んで行くと、今度はまるで鋼鉄の様な皮膚を持つ巨大サソリが現れた。
「でかいサソリだ」
「鉄鋼サソリ。あいつの尾は注意よ。尾にとにかく気を付けて。こいつはまず魔法で攻撃するのがいいかも知れない」
と言いナターリアは詠唱を始めた。
「今度は使えるかな」
「分からないわ。貴方は集中して手を前に出して」
そしてナターリアの詠唱が終わった。
ところが俺の手からは何も出ない。
「駄目だわ! やはり貴方自身が魔法を学ばないと」
「ん?」
俺の手周辺が白く光り出し僅かに煙も出た。
「あれ?」
「もしかして出かかってる? でも火炎魔法でこんな現象は起きないわ」
「確かに俺の体の中から大きな力が出るような感覚がする」
「貴方の体にはあまり大きな魔法力は感じないけど別の何かを感じる」
「よし、棍棒であいつに殴りかかろう」
俺はサソリの背中を思い切り殴った。
「痛い! 何だこいつ!」
「このサソリの体は鋼鉄並みなの」
「あっ!」
サソリは尻尾を振り上げた。
「くっ!」
俺は何とか尾を抑えたが尾の力が強く押されている。
「両手が塞がっていて反撃できない。うおお」
不意に俺が力を込めるとさっきの白い光が手から出た。
「うおお」
「あなたの攻撃力が上がってるわ!」
その秘密は分からない。
「このままひっくり返してやる。サソリも強いけど」
ところが、である。
「何だあいつ」
空中に突如大きさ二メートル位の古代怪鳥が現れた。
「援軍?」
「魔王の手下同士呼び合ってるのかも」
「あいつもやっつけないと」
古代怪鳥は急降下して来た。
しかし俺はかわし損ねた。
「うわ!」
「ごめんなさい! 私が上手く出来なくて!」
「俺の体上手く動かなかった」
「私が人の体を動かすのに慣れていなくて」
「大丈夫、俺も自分の力で戦う」
怪鳥が下りて来た所をパンチで迎え撃とうとしたが避けられてしまった。
「駄目か、俺の動きじゃ」
「ごめん」
「波長合わせるの初めてだし気にするなよ」
「波長も私が上手く操作出来ないのも原因なのよ」
「そこに弱点があるのか。俺がもっと動ける様になれば」
しかし今度は隙を突いてサソリが背部から迫り、尾を突き立てようとする。
ところが
「うおお!」
突如響いた声の主は十八位の体の大きな青年だった。
そして乱入した彼はサソリを何発か切り何と持ち上げ投げた。
仰向けになったサソリの腹を剣で刺した。
さらに急降下した古代怪鳥も青年は倒した。
青年は言った。
「大丈夫ですか?」
ナターリアは青年を見て名前を叫んでしまった。
「マーガス!」




