表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

61/70

第61話 空白の5日間

今日はグループ研究の実験の日だ。これから5日間、毎日行う。

テラスは早めに来て、準備をしていた。


「よう、早いじゃねーか」


シンが来た。予定の時間より15分早い。


「おはよう。シンこそ早いね」


「まーね。天才は努力もするんだよ」


「自分で言っちゃったね」


「いーだろ」


シンはテーブルの上を見る。


「もう全部そろってるじゃねーか。一体何時に来たんだ?」


「8時半くらいかな?朝食おわってそのまま来ちゃった。楽しみで」


「ふ~ん」


シンはテラスをチラっと見た。


「そう言えば、昨日あの後どうなったんだ?」


「え?あの後?」


「あいつと奥の部屋に消えたじゃねーか」


「ああ、別に普通に手伝い片付けただけだよ」


なるべく平静を保って話すテラス。


「大丈夫かよ」


「何が?」


「だってあいつ、テラスを性の対象として見てるんだぜ」


「仕方ないよ…。普通のことだもん」


テラスもそれは理解しているのだ。


「あいつと2人きりになるの、危険じゃねーの?」


「どうして?」


「襲うとか言ってたじゃねーか。危機感ねーのかよ」


「アンセムはそんなことしないよ」


「なんで言い切れるんだよ」


シンは全然理解できない。


「今までのアンセムを見てきたから。それに、もし襲われたら、それは私がいけないんだよ、きっと」


「はぁ!?なんだそりゃ」


「私のことより、シンはあれからどうなったの?」


「話し逸らすなよ」


「私の話はおしまい。シンには関係ないことだよ」


「う…」


なぜか相手がテラスとだと、話題の手綱を取られてしまうシンである。


「なんか、すごいインパクトある女の子だったね」


「うっぜーのなんのって」


シンは思い出してげんなりした。


「逃げることには何も言わないけど、私に避難してこないでね」


「テラスは冷てーな」


「うん。冷たいの。さて…と」


テラスは資料を見ながら、材料が揃っているか確認を始めた。


「なんだよ、テラスが助けてくれないから、昨日は大変だったんだぜ」


「え?なに?」


集中し始めたところだったのでよく聞いておらず、テラスは聞き返した。


「だから、あの女、なんだか知らねーけど、最近付き纏い始めてさ」


「あ、話聞いてほしいの?」


改めて確認されると、素直に認めたくないシンだった。

なんとなくプライドが邪魔をする。

だからそのまま話を続けた。


「この前の談話会からしばらくして『あんな場で本音言えるなんて、すごいですー』とか『シンのこと知りたいのー』とか『デートしようよー』とか、とにかくしつこいんだよ。

邪険に追い払っても食い下がってきてよー。昨日も結局食堂までついてきて、一緒に食べるハメになったんだぜ」


「あはは、割と優しいとこあるじゃん。付き合ってあげたんだ」


シンの意外な一面を知って、テラスは笑顔になった。


「ちっげーよ!あの女が勝手に横に座って、一方的に喋りまくくってただけだよ」


「イヤなら部屋で食べればいいのに」


「ラーメン食いたかったんだよ」


「その程度のイヤなんだ」


テラスの言い方が、なんだか癪に障ったシンである。


「なんで厄介な女避けるために、俺のラーメン諦めなきゃなんねーの?」


「ぶはっ」


テラスは噴き出す。


「食は大事だよねぇ」


「あ、なに笑ってんだよ」


「本気でイヤなら、ラーメン諦めてたと思うよ」


これは経験からの発言である。

リツに付き纏われていたときのテラスは、部屋で食事をとることも多かったし、食堂で食べていても、リツの姿を見つけると食事を中断して即逃げていた。


「ラーメン食ったらすぐ部屋に戻ったよ!」


「うん、それでいんじゃないかな」


「なんだよ、他人事だな。もっと親身になってくれよ」


「だって他人事だもん」


そこへリリアとセイラスがやってきた。約束の時間の5分前だ。


「おはよう~」


テラスは挨拶をする。

リリアとセイラスも挨拶を返す。


「随分早く来た?もしかして」


リリアがテーブルの上を見て驚いた。


「うん。準備万端だよ!」


「やる気満々だね」


セイラスも驚いている。

2人の乱入で話が終了してしまい、シンはなんだか物足りなく感じていた。

もっとテラスに話を聞いてほしかったのに。


-----------------------


アンセムはテラスの部屋を訪れた。

昨日の醜態を晒したままではいたくなかったからだ。

しかし、戸をノックしても反応がない。


(そう言えば、今日から実験だと言っていたな…)


そのことを思い出し、アンセムは諦めて引き返した。

以前テラスに聞いた話だと、今日から5日間実験のはずだった。

スケジュールは午前も午後も丸々使うため、立食会も免除になると言っていた。

テラスはこの実験をとても楽しみにしていて、意欲的に取り組んでた。

邪魔はしたくない。


となると、訪問するなら夜だが、まだ部屋でテラスと2人きりになる自信はなかった。


(5日間我慢するしかないかな…)


本当は、今すぐにでもテラスに会いたいが、堪えることにする。

この5日間で、もう少し冷静さを取り戻そう。

アンセムはそう思うのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ