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  作者: 夜穹
3/5

魁星

 しかし、いざ活動を始めてみると、全てが全て思うようにはいかなかった。


「じゃあ私をすっごいお金持ちにして!」


「"年に一億稼げるようになりなさい"」


「モテモテにしてくれるの?」


「"相手の好みが分かるようになりなさい"」


「か、彼女になって下さい!」


「"運命の相手を見つけられるようになりなさい"」


「ウザイ奴がいてさ、そいつをシメて欲しいんだけど」


「"自分で報復出来るようになりなさい"」


 突然やらされる綱渡りのような案件ばかりで、正解が分からないままさばいている状況だった。


 そうこうしている内に、「性格診断の人の真似して固有魔法増やし屋が出た」という噂が立った。


 固有魔法増やし屋……そう、私の固有魔法「何かを出来るようにさせる魔法」で実質的にやっている事である。


 その事にみんなが気付いてからは、具体的な願いが殺到するようになった。


「必殺技が欲しい!」


「"必殺技が使えるようになりなさい"」


「古代魔法を使えるようにして!」


「"古代魔法が使えるようになりなさい"」


「透明人間になる魔法が使えるようになりたいんだけど……」


「"透明人間になる魔法が使えるようになりなさい"」


「火の魔法全部使えるようになりたい!」


「"火の魔法を全て使えるようになりなさい"」


「じゃあ俺水の魔法全部!」


「"水の魔法を全て使えるようになりなさい"」


「絶対に当たる占い師になりたい……!」


「"絶対に当たる占いが出来るようになりなさい"」


「ナザリオ以上の攻撃魔法を使えるようになりたい!」


「"ナザリオ以上の攻撃魔法が使えるようになりなさい"」


「やあ、僕以上の願望機になってるな、ベガ」


「"あなた以上の願望機になりなさ……"オリヒコ!?」


 呆れ顔のオリヒコが、魔法の発動に備えてのけぞっていた。


「過労の先生みたいな顔してるぞ、少しは断ったらどうだ?魔力の基礎量は十分上がっただろ?」


「……まだ試していませんわ」


 願望機……確かにそうだ。

 少し、機械的に働き過ぎたかもしれない。

 気がつけば、いつもはきちんとしたツインテールもよれよれになっていた。


「確かに少し休んだ方が良いかもしれませんわね、それに魔力量がどれだけ上がったか調べてみませんと」


 中庭へ出て、空へ向けて杖を構える。


「"ナザリオ"!」


 ドン!と爆音が響いた。


「!?」


 太く、まばゆい光線が、私の杖から放たれていた。


「えええ!?」


 動揺して杖から手を離して、やっと光線が途切れる。


「すごいじゃないか」


「で、でも今のは……」


「普通のナザリオの感覚で撃っちゃダメなやつだな」


「そうですわね……でも、オリヒコ、私……」


「ん?」


「この魔力量があれば……魁星(メトシェラ)になれるかもしれませんわ」


 魁星(メトシェラ)……それは、宇宙が出来る前から存在したとされる星の名を冠した地位で、自分で新しく作り出した魔法を普及させる事が出来る身分だ。

 しかしかつて「ダニの色を変える魔法」やら「髪の毛をパンチパーマにする魔法」など正直微妙な魔法で登録しようとする者が相次いだ為、難しい試験が設けられ、それを突破した優秀な魔法使いだけが魁星(メトシェラ)の地位を欲しいままにするようになったのである。


「ふん、実技実技だもんな、この世界!まあ君ならやれるさ、頑張れよ」


 そう言って笑うオリヒコの表情には、どこか怒りの色が混じっている気がした。

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