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6話 過去の足跡

 ボクは強くなれてる。

 

 ボクは強いんだ。

 

 自分に言い聞かせるように何度も何度も心の中で呟き、目の前の『ロメロ』と『ジュリア』に向き合う。

 

「さっきの言葉を後悔すんじゃねぇぞ!」

「ちょっと、ぶっ飛ばすのは良いけど顔は止めときなよ。後が面倒よ」

「へへへ分かってるっつうの!」

 

 あれ以上、冒険者ギルドで騒ぎを起こして獅子宮殿に迷惑をかけたくなかったボクは近くの路地裏で2人と対峙していた。

 

 2人が何かを話していたけれど頭の中に入って来ない。

 

 ただ2人の敵意だけが伝わる。

 

 ロメロが剣を構え振るう。

 

 ジュリアが弓を構え射る。

 

 敵意を持った攻撃が迫るなか、ボクが思った事は一つだった。

 

 なんだ弱いじゃん。

 

 レオスさんから貰った剣を振るう。

 

「テメェ何しやがった!」

 

 2回同時に響く金属音、そして体勢を崩してよろけるロメロ。

 

 口の端に泡を飛ばして叫ぶ彼を見て心は急速に冷えていくのが分かった。

 

 何って、キミの剣と矢を弾いただけだよ。

 

 コレがミリシアちゃんなら剣ごと両断されてた。

 

 コレがファルシアさんなら今頃串刺しにされてる。

  

 ......なんで怯えてたんだろうか。

 

 なんでこんな人達にバカにされて嗤われて。

 

 バカみたい。

 

「ちくしょう!ふざけるな!」

「『荷物持ち』のくせに私を下に見るんじゃないわよ!」

 

 だからさ、そんな遅くて緩い攻撃じゃボクは止められないよ?。

 

 ほら少し弾いて足を引っ掛ければ......。

 

「いてぇ! おい、しっかり狙えよ!」

「はぁアンタが勝手に割り込んできたんでしょ!」

 

 ジュリアの射程の入るようにロメロの体勢を崩すと楽しい程に簡単によろける。

 

 防具に阻まれたのか矢は刺さらずに衝撃だけを伝え、痛みを与えた。

 

 ギャーギャーと聞くに耐えない罵りを聞き流して思う。

 

 今、何をしたかも分からないんだ......もういいや。

 

 こんな人達に使う時間が勿体無い。

 

 『荷物』を振り上げて垂直に振り下ろす。

 

 力を加えず、可能な限り加減をした一撃。

 

 ロメロが慌てて剣を盾に防ごうとするけれど......勢いに負けて盾にした剣ごとロメロ顔を殴打する。

 

「ロメロ!」

 

 今、倒れた『荷物』の髪を掴んでジュリアへ投げ飛ばした。

 

 人ひとりの質量をジュリアが受け止められる筈がなくなす術なく、2人仲良く裏路地の地面を転がった。

 

「クソ! こんなに強いなんて聞いてねぇぞ!」

「アイツまさか嘘の情報を掴ませたんじゃ!」

 

 何を言っているんだろう。

 

 でも興味はないや。

 

「ヒィ!」

 

 とりあえず邪魔をしないように気絶させておこう。

 

 後々にまた絡まれても面倒だし......少しぐらい。

 

「やっやめてくれ!」

「もっもうアナタには関わらないから良いでしょう!」

 

 『もうやめてよ......痛いよぉ、お願い』

 

 痛めつけても良いよね?。

 

 『荷物』を振り上げ。

 

「っ!」

 

 腕が動かなかった。

 

 2人の姿が情けないとか可哀想とかは関係なかった。

 

 レオスさんから貰った剣に映ったボクの顔が。

 

『ほら! もうちょっと悲鳴の種類を増やせよ無能!』

『あーあ、もうつまらないからソイツ、クビにしたら?』

 

 アイツらと同じ顔をしていたから。

 

 逃げ出した。

 

 何から逃げているのかは分からないけれど只ひたすらに足を動かして遠くへ逃げたかった。

 

 貰った剣だけを抱いて。

 

 /////////

 なるほど、つまりテメェらは獅子宮殿に喧嘩を売ったと言う事だな?。

 

 元ロディの仲間だったというロメロとジュリアの話を聞いて冷静に2人に話しかける。

 

「レオス様、冷静に」

 

 冷静だよ。

 

 あぁ俺は冷静だよファルシア。

 

「嘘ね」

「ん」

「ガハハ! こりゃ相手も災難だな!」

「本当よねぇ、でもワタシも正直暴れたい気分よ」

 

 とりあえずマオとミオハは直ぐに冒険者ギルドへ行ってギルマスを引きずり出せ。

 

 そもそもギルド内での一方的なイチャモンを止めない時点でギルド側にも責任がある。

 

 金は自由に使って構わん、居るだけの人員を導入しろ。

 

「ガハハハハ! 分かった任せろ!」

「うふ、こんな時じゃないと見れないリーダーの顔......カッコいいわぁ」

 

 ドワーフ族のマオと猫族のミオハは細かい事が苦手だが人の扱いが上手い。

 

 今回もうまくギルドを転がしてくれるだろう。

 

 デルタは王都周辺の影へ飛んでくれ、陽が落ちてるから広範囲を探せるだろう。

 

「ん 了解」


 ゴーレム族であるデルタのギフトは『影潜』、影があれば影から影へと高速移動が出来る。

 

 夜の帳が下りる今がデルタの舞台だ。

 

「レオス......ごめん!アタシが一緒に居ればこんな事にはならなかったのに!」

 

 いや、コレは獅子宮殿の誰のせいでも無いさ。

 

 強いて言うならロディの優秀さに甘えて精神のケアを怠った俺の責任だ。

 

「っ! レオス! アタシは何をすれば良いの?」

 

 ミリシアは裏路地の探索を、ロディの場所が分からん以上、可能性ある場所は全て探してくれ。

 

「分かったわ!」

 

 ミリシアの能力とギフトがあれば治安の悪い裏路地でも万が一も無いだろう。

 

 そして、この場に残ったのは俺とファルシアにロメロとジュリアだ。

 

 ......さて、ファルシア


「なんでしょうか?」

 

 コイツらどうしようか?。

 

「そうですね、適当に締め上げて放置で良いのでは無いでしょうか?」

 

 それじゃあ生ぬるい、人のパーティーに手を出したんだ。

 

 徹底的に潰そう。

 

 テメェらも文句はねぇよな?。

 

「レオス様」

 

 なんだファルシア。

 

「既に気絶しております」

 

 ......あっそう。まぁコレだけ脅せば次は無いか。

 

「そこまで愚かでは無いと思いたいですね」

 

 じゃあ適当に外に捨てといてー。

 

「承りました」

 

 ファルシアが『植物支配』を使い、手をかざすと獅子宮殿の外から植物の蔓が2人に体に巻き付いていく。

 

 そのまま外へ投げ飛ばした。

 

 うわぁファルシアさん、実は凄い怒ってる?。

 

「えぇ勿論、可愛い後輩を害した愚か者などアレで十分です」

 

 外を見るファルシアの目が非常に冷たい。

 

 それじゃあ俺も動くとする。

 

 リーダーとして、ロディの先輩として、『黒』級の冒険者として......誰に喧嘩を売ったのかを思い知らせてやろう。

 

 ファルシアは此処でみんなの情報の中継をしててくれ。

 

 もし相手の手が早ければ動いてる頃合いだろうし。

 

「レオス様」

 

 ん?。

 

「私達の可愛い後輩をよろしくお願いします」

 

 あぁ、そうだコレが終わったら直ぐに宴を開こう。

 

 ロディが好きなサンドイッチ屋をここに招いて盛大にな。

 

読んでいただきありがとうございました!

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