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22話 三流の黒幕

 かつて商人だった男の顔を見た瞬間に頭の中に声が蘇った。

 

『パパ! ママ! どこにいるの?』

 

『お家に帰りたい!』

 

『もう痛いのはイヤだよぉ』

 

『ん あたらしいごしゅじんさま?』

 

 潰す。

 

 目の前で叫び喚く小汚い男を制圧する為に、悟られないように静かに全身へ力を巡らせる。

 

 地面が爆散する一歩手前で力を解放する!。

 

 ロリコン死すべし! 慈悲はない!。

 

「ちょっとレオス!」

 

 後方からミリシアの声が微かに聞こえたが、既に俺の拳は男の目の前にあった。

 

 殺さないよう慎重に最大限の注意を払って拳を振り抜いた。

 

 拳が止まる。

 

 何かに体を固定されたように空中で動きを止められたのだ。

 

 なんだ何が起きた? 間違いなく目の前の男は反応できていなかったはず。

 

「レオス! 植物が絡みついてるわ!」

 

 ミリシアの言葉で、動かしづらい腕を動かして握った拳を見ると細くこまかい枝のようなモノが絡みついていた。

 

「ひひひ! 貴様達は俺様の罠に嵌ったんだよ!」

 

 罠だと?。

 

「お前が俺様に危害を加えようとすればダンジョンコアが反応して俺様を守るように命令を下したんだ」

 

 こんな風にな!。

 

 男が叫んだ瞬間に体に巻き付く力が強くなり、体を引き裂こうとその力を強めていく。

 

「レオス! 待ってていま......」

 

 ミリシアを見る。

 

 視線に気づいたらミリシアは『斬撃』で俺を締め殺そうとしてくる植物を切り裂こうとしたが踏み止まり剣を納めた。

 

「そうだ! 『冒険王』を引き裂かれたくなければ、そこで黙って見ているんだミリシア!」

 

 初めてあった男に名前を呼ばれミリシアは怪訝そうに眉を顰めた。

 

「どうしてアタシの名前を......」

「まさか目をつけてた女にこうして会えるなんてなぁ! 少し歳は気になるが......ひひひ! 俺の想像通りの可愛い女になったなぁ!」

 

 勝ちを確信しているからか、欲望に塗れた笑みをミリシアへ向ける。

 

 うわぁ......ミリシアさんお知り合いですか?。

 

「しっ知らないわよ! こんな奴を見たら忘れないでしょ!」

 

 確かに、現に俺も見ただけで思い出せたぐらいに欲望に塗れた顔だし......そもそも笑い方が汚い。

 

「待ってろよ、コイツを殺したらお前を可愛がってやるからな!」

 

 クソっ死ぬ前に聞かせろ!。

 

「あぁ? ......まぁ俺様は寛大だからな、地獄の土産に特別に答えてやるよ」

 

 俺を締め付ける力がさらに増していく。

 

 このまま強くなれば、いつか四肢が引き裂かれてしまうだろう。

 

 だから今のうちに聞かねばならない。

 

「お前はココで何をしようとしてたんだ! あの白い影と何をした!」

 

 俺の叫ぶような言葉に男はニチャリと笑う。

 

「ここに来て分からなかったか? フォレスターベアにマッシュボア、それにウールバード。 それの共通点に気づかなかったのか?」

 

 え? 弱いだけじゃ。

 

「アイツらの素材は金になるんだよ! ダンジョンで大量にモンスターを生み出し! それを売り払う! そうすれば俺様はまた富豪へと返り咲くことが出来る!」

 

 夢への道筋を声高らかに説明を始める元商人......事細かに聞いてもいない事を話し続けているが俺は自分の状況を忘れてボソリと呟いてしまった。

 

 ......いやムリじゃね?。

 

 それに続いてミリシアが頷いた。

 

「ダンジョンでドロップするのは魔道具と魔石だけ......モンスター素材は外じゃないと手に入らないわよ」

 

 魔石の純度や魔道具の効果や質は敵が強ければ強い程に良くなるが、モンスター自身の素材が落ちる事は無い。

 

 とある魔工師の仮説では、ダンジョン内のモンスターは『ダンジョンコア』が作る模造品では無いかと言っていた。

 

 もしかすると異常に弱いモンスター達は、男の命令で無理やり作らされた粗悪品だったんじゃ無いだろうか。

 

「なっふざけるな! あの白い奴が言っていたんだぞ!」

 

『ダンジョンコアの設定をイジれば好きにモンスターも魔道具も作れるよ(多分ね)』

 

 あぁ最後の副音声が聞こえた気がした。

 

 一度しか会ってないがアイツなら適当に言うな。

 

「いっいや! 騙されねぇぞ! 今だってこの魔工具でダンジョンを操れたんだからな!」

 

 男が懐にしまっていた不気味に輝く黒い水晶を取り出して笑い出す。

 

「ひひひ! 残念だったな! 死にたく無いからって嘘はいけねぇな!」

 

 あっ。

「あっ」

 

 男が大事に抱えている水晶にヒビが入った。

 

 それに気付かずに男は水晶を高く持ち上げるて叫んだ。

 

「もう良い! あの男を殺せ、ダンジョンよ!」

 

 声に呼応するように水晶がさらに黒く輝きはじめ、ダンジョンが震え。

 

 そして。

 

 水晶が割れた。

 

「は?」

 

 水晶は砂のようにあり方もなく消え、それを呆然と見送るが突如異変が発生した。

 

 ダンジョンの揺れが大きくなる。

 

 植物が暴れ狂い、鞭のように手当たり次第に攻撃を始める。

 

「なっなんだ! 何が起きてるんだ!」

 

 男は気づかない。

 

 ダンジョンの怒りに触れたことに。

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