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16話 『斬撃』

 『水面の祠』の4階層。

 

 その全ての層を調べて来たのだけれど......正直拍子抜けね。

 

 道の構造は大体一緒だし見栄えも変わらない。

 

 いっそのこと1階層をループしてるって言われた方が納得出来るわよ。

 

「またフォレスターベアとマッシュボア、ダンジョンくん管理に飽きたのかな?」

 

 どうかしらね、それだったら嬉しいんだけど。

 

 レオスの軽口に適当に返事しながらアタシは出てきたモンスターに思考を巡らす。

 

 出て来るモンスターも熊と猪、偶に鳥型の魔物の『ウールバード』が出て来るだけ。

 

 確かに最初は3体ともダンジョンでは確認されていないから驚いたけれど、その全部が弱すぎたのよね......。

 

 本来のフォレスターベアは堅牢な樹木の体と質量の攻撃が脅威で鎧ごと叩き潰される事もあり一瞬でも油断できる相手じゃない。

 

 マッシュボアもキノコが頭に生えた猪で名前と外見は可愛らしいけれど小さい体躯と強靭な脚力を活かした突進は非常に厄介だ。

 

 ウールバードは名前の通りに羊毛のような羽毛を持つ事で有名ではあるが、非常に凶暴で遠方から高速で飛んでくる攻撃はアタシでさえ対処が難しい。

 

 コレが普通なら厄介なのよね......普通なら。

 

 ここで遭遇したモンスターのいずれもが銀級でさえ油断していると命を落とす程に強いモンスターのはずなんだけれどココでは違った。

 

 フォレスターベアは脆く。

 

 マッシュボアは体躯だけが大きくて鈍重になり。

 

 ウールバードは羊毛が多すぎて機敏さが消え去っている。

 

 亜種と呼ぶには余りにもお粗末なモンスターに当初は気合いを入れていたレオスも拍子抜けしちゃってる。

 

「うーん、なんだろ? 出現頻度が高すぎて面倒臭い以外の感想が浮かばん!」

 

 採取の片手間でモンスター達を倒すレオスを見ながら、アタシは気を引き締め直す。

 

 こんなダンジョンでも銀級が行方不明になってるんだから、しっかりしないと!。

 

「あっ」

 

 どうしたの? なにか見つけた?。

 

「スマン、ギフトが発動した」

 

 そんな忘れ物したみたいなテンションで言わないでよ!。

 

 アタシとレオスが同時に剣を構える。

 

 そして、ダンジョンが揺れ始め......マッシュボアが大量に湧き始めた。

 

 体が肥大した亜種が。

 

 ダンジョン内に響く豚の鳴き声、非常に勇ましいが動きは鈍重だ。

 

「......喜んで良いのかどうなのか」

 

 原種が湧くよりは良いんじゃない?、さすがにダンジョン内で襲われたら死ねるわよ。

 

 目の前でギュウギュウ詰めで身動きが取れていないマッシュボアをなんとも言えない感情で見つめていると。

 

『    』

 

 ん? 今なにか聞こえなかった?。

 

 豚の鳴き声に混じって声の様な......怒鳴り声のような......不快な声が聞こえたような。

 

 レオスも聞いたのか、不思議そうに周りを見渡したけれど、誰も居ないし聞こえない。

 

 もしかしたら銀級の冒険者達かと思って期待したけれど、どうやら違うようだ。

 

「とりあえず今はアイツらの相手をしないとな......行くぞ!」

 

 レオスが駆け出す前に肩に手をおいて止める。

 

 今回はアタシが片付けるわ、あまり時間をかけたくないしね。


 アタシが声をかけて一歩先に出ると、隣からレオスの楽しげな弾んだ声が聞こえる。

 

「おっ! 久しぶりに大技が見れるのか!」

 

 茶化すな!。

 

 『聖剣』使わないアンタじゃ大群の相手は苦手でしょ。

 

 レオスは身体能力が常識外れでどんな状況にでも対応出来るけれど、それでもこういう時だけはアタシの方が適役だ。

 

 それを分かっているからレオスも素直に引き下がってくれる。

 

 ......ニヤけるなアタシ、それは帰ってからだ!。

 

 剣を横に構え、頭の中で世界の認識を変える。

 

 世界から色が消えていき、余計な情報を削ぎ落とす。

 

 音が消え。

 

 色も抜け落ち。

 

 時間すらも引き延ばされていく。

 

 斬るべきはモンスターに在らず、悉くを斬り伏せるには......。

 

 空間ごと斬れ。

 

 『斬撃』

 

 剣は既に振り抜かれ、目の前に広がるは扇状に広がる斬撃の傷痕。

 

 そこに居たはずのモノは立つ事を許されず、全てが死に絶えた。

 

 モンスターも。

 

 森も。

 

 全てを薙ぎ払う『斬撃』。

 

「さすが『斬撃』の剣聖! 惚れ惚れする斬れ味だな」

 

 切り替える......世界が急速に息を吹き返して行く。

 

 なによ、その取ってつけたようなお世辞は。

 

 だらしなく緩みそうになる顔を引き締めながら、レオスを睨むフリをする。

 

 それでも嬉しそうに頷いて褒め続けるレオスに顔を見られないように開けた森の中を先に進む。

 

「ちょっ! 待ってくれよミリシア......あっヤバい! 足が泥にハマった!」

 

 ふふ、何してんのよ!。

 

「ぎゃあ! 靴の中に泥が! ミリシア助けて!」

 

 ......コレはレオスの体に触れても不可抗力よね?。

 

 いやぁ泥に足を取られるなんて可哀想ね! アタシが助けてあげるわ!。

 

 全力で力を入れれば抜け出せるだろうけど、パニックになってるレオスにその発想はない!。

 

 正気に戻る前が勝負よ、ミリシア!。

 

 /////////

 

 なお、心の中で意気込んだ結果は手を握るだけだった。


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