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プロローグ 冒険王レオス

 ざまぁとは何だろう。

 

 『冒険王』レオスは未だに考えている。

 

 人が幸せから不幸に落ちる様を愉悦として見る言葉。

 

 周りに威張り散らしていた奴が不幸になったら、ざまぁと言えるのだろか。

 

 考えれば考える程に意味が分からなくなっていく。

 

 どうしてレオスがこの様な事を考えているかと言うと1柱の女神の気まぐれのせいだ。

 

 /////////

 

「最近、地球のざまぁ展開と言う奴に興味があるのよ」

 

 カラカラと笑う女神の目の前には不安定に揺らぐ魂が浮いていた。

 

 それは女神が己の娯楽の為だけに、異世界の名もなき魂を核に造られた英雄レオスだ。

 

「そうねぇ、産まれてしばらくは適当に過ごしてて良いわよ。頃合いを見て主人公と合流させるから適当にざまぁされて」

 

 理不尽だ。

 

 理由も筋書きもフワッとし過ぎて無能なワンマン社長ぐらい言ってる事が滅茶苦茶すぎる。

 

 元になった魂が叫ぶが肉体の無いレオスでは抵抗する事もできない。

 

「とりあえず簡単に立場を作れる様に能力だけは高くしとくから感謝しなさい」

「それと、日和って逃げられないように枷をつけてあるから」

 

「主人公が居るのにざまぁされる気配が無ければ......アナタの前には強力な魔物が来る様にしてあるから」

 

 せいぜい楽しませなさいよ。

 

 /////////

 既にレオスの齢は24歳、冒険者として絶頂期と行っても過言では無い。

 

 更には立場も盤石に整えてある。

 

 レオスの為だけに作られた冒険者の最高ランク『黒』を国王から拝命し、一塊の冒険者とは言えないほどに盤石だ。

 

 後はざまぁされるだけ。

 

 それだけで女神の呪縛から解放されるのだ。

 

 今はまだ余裕を持って対処出来ているがこの先はどうなるか分からない。

 

 さぁ早く来い世界の主人公よ! 俺はいつでも覚悟は出来ているぞ!。

 

「あっあの! レオスさん」

「どうした? ロディ」

「本当にボクみたいな『荷物持ち』を仲間に入れて良かったんですか?」

「構わんぞ? そもそも何故かパーティーを募集しても誰も応募してくれないしな」

 

 もし俺がざまぁされても仲間達の受け入れ先も万全。

 

 ギルド内で自由に使えるお金も十分。

 

 さぁ主人公よ! いつでも来い。

 

「レオスさん! ボク頑張ります!」

「おう! 期待してるぞロディ!」

 

 レオスは気づかない。

 

 ロディこそ女神が用意した主人公であると。

 

 レオスは気づかない。

 

 ざまぁに1番必要なのは傲慢さと横暴さだと言うことに。

 

 レオスは気づかない。

 

 既に呪縛の強さは最大値である事を。

 

 レオスは気づくことが出来ない。

 

 既に女神は神権乱用のし過ぎで捕まり、別の神が管理している事を。

 

 けれど神の呪縛は健在である事は新たな神でさえ気づいていない。

 

 /////////

 

 ボクの名前はロディ。

 

 『荷物持ち』っていうギフトを与えられた冒険者に憧れる村人だ。

 

「あーあ、ロディはハズレか」

 

 一緒に神殿でギフト鑑定を受けた男の子に笑われた。

 

「まぁ、鈍臭いロディには丁度良いんじゃねぇか!」

 

 『荷物持ち』は名前の通りに荷物を持つ際の重量を軽減できる能力なんだけど......重すぎるモノは軽減しても持てないし、力が上がるギフトじゃ無いから戦闘では役に立たない。

 

 どんなに鍛えてもボクの体はいつまでも華奢なまま。

 

 幼馴染に黙って冒険者になって、どこのパーティーへ所属しても馬鹿にされた。

 

「ギャハハ! 荷物持ちがお荷物とはな! 笑えるぜ!」

 

 チームでもソロでも戦えない役立たずなボク。

 

 夢を諦めて村へ帰ろうかと考えていた時に幼馴染のミリシアちゃんに見つかった。

 

「ちょっと! アンタどうしたのよ!」

 

 剣聖として『冒険王』が率いるチームに所属するミリシアちゃん。

 

「あぁもう、泥だらけだし......それに酷い顔よ?」

 

 今のボクとは天と地程も違う立場を再確認して自分が情けなくて泣きそうになる。

 

 何を言われるのか......怯えるボクを見て何かを思いついたようにミリシアちゃんは。

 

「とにかく今はウチへ来なさい!」

 

 そう言って、泣きそうなボクを引っ張り豪華なお屋敷へ連れて行ってくれた。

 

 ここがミリシアちゃんのお家? スゴイ、貴族様みたい。

 

 スゴイなぁ、ボクなんかとは大違いだ。

 

 ......そうだよね。

 

 ミリシアちゃんの『斬撃』とボクの『荷物持ち』。

 

 比べるのもおこがましいよね。

 

 そんな事を考えるボクにミリシアちゃんは貴重な火の魔石でお湯を用意してくれた。

 

 汚れた体と髪を暖かいお湯で洗い流しているとミリシアちゃんが綺麗な服を持って来てくれた。

 

 どうしたんだろう?。

 

「コレ、多分ロディに丁度良いと思うから着なさい。古い服は捨てとくけど良い?」

 

 流石に慌てて受け取れないって言ったけどミリシアちゃんは何でも無い様に。

 

「別に良いわよこのぐらい、幼馴染なんだから気にしないで!」

 

 その言葉に泣きそうになった。

 

 勝手に格差を感じて、勝手に劣等感を感じていたのに......ミリシアちゃんは昔と同じだった。

 

「それにこの後レオスに合わせるから、流石にあのボロ布じゃ.....ね?」

 

 え?。

 

 待って! 初めて聞いたよ?。

 

 戸惑っている間にミリシアちゃんに服を着せられて瞬く間に引きずられて1人の男の人の目の前に連れて行かれた。

 

 多分、ボクが怖気付かないようにしたんだろうけど急すぎるよ。

 

 でも......ボクはそこで運命に出会えた。

 

「なるほど『荷物持ち』か。しばらくはミリシアがここの事を教えてやってくれ、慣れて来た頃合いで俺がダンジョンで適正を見る」

 

 彼は......『冒険王』レオスはボクのスキルを聞いても笑わなかった。

 

 それどころか。

 

「そういえば、倉庫の方に力をあげる魔道具があっただろう。ロディへ渡してくれ、それがあれば選択肢が増えるだろうからな」

 

 ボクに色々な道を作ってくれた。

 

 だからボク頑張るよ!。

 

 連れて来てくれたミリシアちゃんに応える為に!。

 

「励めよ、ロディ」

 

 ボクを受け入れてくれたレオスさんの為に!。

 

 ボクはココで頑張りたい!。

 

 でもレオスさんがたまに呟く、ざまぁって何だろう?。

王道を書きたくなりました。

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