【プロローグのみ】コノハナ スクール シミュレータ
プロローグのみです。
続きは有りませんが、投げっぱなしでお届けします。
「まずは自分がなりきるキャラクターの作成からだな!」
装置を介してだが、人間が電脳世界へ入り込めるようになってから、はや数十年。
その位時間が経てば、個人にも装置は普及する。
普及すれば、娯楽としての利用も活発になり、関連ソフトウェアの開発も効率化される。
そうなれば、少数製作や個人製作のゲームも発表されるようになるのは、必然である。
その必然的な流れに乗り、とあるタイトルは世の中に発表された。
【コノハナ スクール シミュレータ】
これは架空の町であるコノハナ町を舞台にして、プレイヤーはその町にあるコノハナハイスクールの学生となって、自由に生活すると言った内容だ。
そのハイスクールは現在3万人の学生を抱えるマンモス学園と言う設定で、メタ表現を恐れないならば、現在は3万人のテストプレイヤーを募集したβテスト中だ。
つまり正式稼働が始まれば、コノハナハイスクールは更に巨大化する予定である。
……それだけの客が集まれば、の話だが。
「種族は存在しない……性別は選択可能……男を選択。 身長は160㎝~190㎝までで、ちょっと狭い範囲か。 メッセージには製品版は範囲を広げるってあるけど、本当か?」
そのβテストが開始当日。
βテスターに当選した彼が、早速ゲームを起動させてプレイを始めた所だ。
「体格は……痩せ・標準・太い・筋肉質・筋肉質(細)って選択肢だけか。 調整は……製品版で導入するか検討中ってメッセージがあるな」
ちなみに女性を選択しても似たようなレベルである。
「あとは髪型と色・目の形と色・服装・アクセサリ位の項目しか無いな」
服装はそれぞれの場面で何を着るかを設定するタイプで、その場面になったら自動で瞬時に変わる便利機能だ。
部屋着・外出着・学園周辺及び学園内での制服・体育時の服装等々。
いちいち着替え操作をする必要が無くなるのは、面倒臭がりには有り難いだろう。
「ステータスは……全員最初は同じで、行動によって増減するのか。 まあ、生命力の項目は疑問だが」
筋トレをすれば筋力が、勉強すれば学力が……と言う寸法である。
しばらくサボれば、サボった要素の数値が減る。
食べていなければ満腹度は減る。
ストレスの溜まらない行動ばかりなら、ストレスは増えない。
つまりリアルに近い要素だ。
ライフは雑な説明で、筋トレ等の能力上昇行為をしすぎたら減る、とだけ書かれている。
無くなったらどうなるかは、書いてない。
「明確な目標は無くて、永遠の学生生活を楽しもう……なのか。 これは『箱庭とオモチャは用意した。 さあ自由に遊べ』って奴だな。
指示待ちの性格だと何をすれば良いのか分からなくて、投げ出すのがお約束なゲームか」
そう言ったゲームだ。
遊べそうな要素“だけ”置きまくって、みんなで工夫して遊んでくれって奴だ。
なお歴史とか謎とかは無い。
考察する隙は無いので、そんな暇があるなら遊び方を各自で考えろ。
なんと乱暴なゲームであろうか。
「あー、昔からこう言ったのは一定の需要が有るんだよなぁ。 遊べそうな要素を詰め込んで、遊んでもらうゲーム。
遊べそうな要素をしゃぶりつくすプレイ動画があったり、自分でドラマの脚本を書いて登場キャラに演じさせる遊びをしたり。
ひたすらにバグやシステムの限界を追求して、そのゲームの穴を利用して面白おかしく遊び倒そうとしたり」
そう、自分なりの遊び方を自力で見つけるのが、このゲームの楽しみ方だ。
それが苦手なヒトには、表面に用意された要素を一通り遊んだら終わってしまう、すぐ終わってしまうゲームとなる。
「……まあいいか。 どの位遊べるかは、実際にプレイすれば分かるんだ」
そう彼はつぶやき、キャラクターの作成を終わりにしてゲームを始める。
ゲームを始めると、そこは住宅地。
「ここは……自宅前スタートか。 なるほど」
後ろを振り向くと、住宅の玄関。 そこから連想できるのがそれ。
実際正解で、玄関を見た瞬間にメッセージウィンドウが目の前に現れて、ゲーム開始時に自宅はランダムで与えられるとあった。
「間取りの確認はしておこうか」
学園への登校は頭の片隅においやって、拠点の確認を始めたのだった。
ちなみにβテスターの大半が似た行動をして、学園初日に遅刻が多発したのは、ゲームあるあるとして笑い話となった。
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ゲーム内時間で一週間が経過。
この間はβテスターおとなしく、昼間は真面目に授業を受けて、休み時間や放課後や休日は常識の範囲内で遊ぶ日々を過ごした。
が、その束の間の平和は終わりを迎えた。
「ヒャッハーーッ!!」
奇声をあげながら、クラスの教師に銃をぶっぱなす。
とあるβテスターが、ついに平和では無い要素に手を出し始めたのだ。
「“ちゅーりっぷ組”に、色んな武器が置いてあったぜ! あと追加の弾薬は、港の倉庫で買える!」
しかも情報を拡散。
「NPCは倒しても気絶しただけって処理されて、次の日には復活するみたいだから問題なし!」
NPC相手でも、暴力を振るう抵抗感さえ、薄くなる。
「βテスターだから倒れても再出現する仕様だから気兼ね無く倒せるし、今日からこのゲームは、暴力が支配するゲームになるぜぇ!!」
――――この瞬間、ゲームを沢山遊ぶβテスターは思い出した。
一見平和そうなシミュレータゲームに潜む暴力要素を……。
平和で楽しそうなBGMの下で行われる理不尽を……。
この後、みんなでFPSのゲームとしてβテスト期間中を遊び倒すのであった。
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やっぱりヤンデレさんのシミュレータが切っ掛けなんかな?
平和なシミュレータゲームなのに、拳銃だの剣だのアサルトだのスナイパーだのショットガンだのの、暴力用の道具がこっそり用意されてて、殺伐としたゲームになるの。
しかも、BGMは言った通り戦闘中でも軽い音で、お遊び感覚のまま暴力を振るうとか苦笑しましたわ。
そんなのが量産されて、しかも大抵がヤンデレさんのデータの流用ばかりとか言う恐怖。
あれは許諾をもらった流用なのだろうか? 権利フリー素材で作ったとかで使いたい放題なのだろうか? 無断で盗用したのだろうか?
まあ良くわからんけど、一時期溢れてたんですよね。 シミュレータゲーム。
それをちょっとやりたくなったんで、こうしてその欲望をこう……|д゜)チラッ