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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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96 それぞれの事情と目的

「♪~~~・・・」


 テスはとても上機嫌だった。


 今回の依頼は懇意にしている孤児院の友人のシスター達からのお願いで来ていた。

 ただ・・・ここ最近は仕事で地方に出掛けることも多々あった事であまり孤児たちと遊べていなかった・・・訂正、構いたくても出来なかった。

 たとえ忙しくても、少しの休暇があれば、子供たちの面倒を見ることがテスにとっては癒しであり、何よりも大切な時間であった。


 本人は否定しているが、周りからすれば子供達に構ってもらっているのは、テスであると言われてもおかしくはないくらい子供との時間を大切にしていた。


 それが、緊急のお願いとして引き受けたために、遊べる時間が無かった。

 少し、落ち込んでもいた・・・・・・が。

 そこに、クリスが現れた。


 仕事の危険性から、子供達を危険にさらすわけにはいかない・・・という建前を作ってでも、自分がクリスの面倒を見なければいけない、という使命感でテスはクリスと行動を共にしている。


 あくまで``使命感``であると周りに言い聞かせるくらい。

 しかし・・・仲間からはそんな風に考えられていない。

 本音は``ああ・・・子供と遊びたかったんだな~``という理由が透けて見えるくらいにバレバレであった。

 だが、それでもリーダーとしても実力は確かであるし、今までパーティとしてここまで実力をつけてきた実績がある

 そのため、仲間もそこにとやかく言うのはあまりしなかった。


 言っても意味が無いと、諦めている部分も多分に含まれていたりするが・・・。


「(テスが凄く上機嫌)」

「(最近、討伐とか調査で街に帰ってなかったからストレス溜まってるんじゃない?)」

「(ああー、だからここに来るまでずっと彼に話しかけていたのか・・・)」

「(一歩間違えれば、危険な人。

 女に声を掛けまくる酔っ払い・・・)」

「♪~~・・・なにか言った2人とも?」

「「いえ、何も」」

「(間髪入れずにハモってる・・・)」

〔悪い方ではなさそうですが・・・これは・・・クリスをある意味、生贄にされていそうですね〕

「(生贄!!)」

「・・・?、どうかしたの?」

「ええ!あ、いえ・・・ううん、何でもない・・・です・・・」


 ついギョッとしテスの顔へ勢いよく振り向いてしまい、不思議に思われるクリス。

 何とかその場を誤魔化しやり過ごした後、チラッと目で後方にいるヘレンとプリムを覗き見ると・・・そこには、手を合わせ祈るような謝罪する様な動作と共に目を閉じ拝まれていた。


〔確定ですね〕


 ガクッと首が下がるクリスだった。



「カレン」

「はいっ!」


 師匠に呼ばれ、瞬時に移動を開始した。


 ザシュッ、ズシャッ・・・・・・。

 ドササッ・・・。


「カイル君」

「了解です」


 光りを纏ったマナをイスカに飛ばす。

 イスカに光の玉が当たると体の周囲を覆う様に光の膜が出来上がる。


「今です」

「うん・・・・・・」


 ダンッ!


 キーン・・・・・・。


 ズシャシャシャシャシャシャシャッ!


 ドサッ、ドドッ・・・・ドズン・・・!

 

 地面に微かに振動するほどの重量のある落下物。


「ひゅ~、やるね~♪」

「暢気にしてないでお願いします!」

「はいよ・・・・・・っと」


 トタッ。


 一瞬で遠くにトウジロウが行き、地面に降り立つ。

 トウジロウの直線状にいた者達は寸断され、大半が一気に霧に同化するように上空へと霧散していく。


「・・・やはり、スゴイですね・・・」

「はあ~・・・速過ぎて、ほとんど見えませんでしたー」

「終わったか?お前達・・・」

「はい、こちらは」

「バッチリでーす」


 古城、砦班は目的地に向かい山の向こう側へと登山中に大量のゾンビと化したモンスターや元人種に遭遇、戦闘を繰り返していた。


 その数は古城を目指して近づくたびに増やしていった。


「・・・終わりか・・・」

「・・・ふう。

 先生、この数って・・・」

「ああ。・・・多分、情報には入っていないが、どこかの町が攻め滅ぼされたと考えていいだろう」

「しかし・・・ギルドからそんな情報は・・・」

「おそらく・・・ギルドを受け付けていない領主の町どこかでしょう・・・。

 冒険者ギルドといい、住民や村、町、その地方にも大きく助かる利便性が高い所がギルドという組織であり仕組みなのですが・・・。

 住民の勝手を許すことを良しとしない地方の貴族の町が襲われてしまったのでしょう。

 だから、ギルド間でも知らせが来なかった」

「じゃあ、今回の草原に入るゾンビも・・・」

「たぶん、その中に村だけでなく、町の住民も含まれています」

「・・・・・・こういう時のために冒険者は居るのに・・・」


 カレンの疑問にメルムが答える。

 そして、我が儘で住民を死なせる判断を下した領主にイスカが不快な思いが言葉に出てしまった。


 世界は広く、また冒険者の利便性が高いが・・・それでも、世界中の国や地方が受け入れないのが現状である。

 利便性が高くなれば、それだけ色々な人々の思想が強くなる。

 当然、冒険者は人間だけの職業ではない、様々な種族が入り混じっている。

 中には宗教観や文化がその町、村の中に価値観として入ってしまう。

 それを嫌う国、地方の統治者が制限を掛けたり、受け入れ拒否が入ってしまうのは自然に起こりうる行動の1つであった。


「自分達の兵士や騎士達で何とか出来ると高をくくっていたのでしょう。

 よほど自信があったのでしょうが・・・」

「今回はそうはいかなかった・・・という事ですね、メルムさん」

「はい」

「・・・こういうのを見ると・・・あたしは運が良かったのかなって思うよ」

「ケイトちゃん?」

「だって、考えてよテト?

 あたし達はたまたま、教会が近くにあって、それが1番強い権力を持っていたからここまで、生きてこれたのよ?」


 ケイトは倒したゾンビモンスター達の中に、世界へとマナへ強制変換で消えかけていく中、その死体にケイトよりも明らかに年下の子供の姿も見かける。

 その姿はただのモンスターに成り果てた存在だけど・・・かつては同じ人であったからかほんの少しだけ同情をしてしまった。


「自分達の事は自分達で何とか出来る。

 助けはいらない・・・。

 世界として見れば、どこにでもあるごくありふれたものだ」

「・・・そうだな。

 ただ我々の生まれた場所、育った場所の先人達が生きていく選択の結果、たまたまこうして冒険者という立場に立てているだけだ」

「最も、お前さんらは教会側だがな・・・」

「ふ・・・違いない・・・」


 トウジロウの言葉に賛同するようにボールドが答える。

 全ては・・・ただの偶然に過ぎない。

 たまたま、自分達はそこで育った結果生きているだけ・・・と、とても客観的な事実だけを述べた。


「・・・それでも・・・こういうのを見ると不愉快」

「イスカ・・・」

「「「・・・・・・」」」


 イスカの言葉に無言で同意するカレン、ケイト、テトであった。


「・・・皆さん、どうやらここから霧が一層深くなりそうです」


 カイルの言葉に全員が山の山頂の先辺りを見据える。

 そこに、まだ見えない古城をまるで見る様に注意深く観察する。


「カイルがそこまで感じるって事は?」

「はい・・・もうそろそろ城と砦が見えてくると思います」

「いよいよか・・・霧で時間が判りにくいがもうそろそろ夕方に入る頃か?」

「はい。

 平原の方も、おそらく夜にクレフーテに奇襲を仕掛ける様に動かしていたと思われるのでもうそろそろ戦いが始まっているころでしょう」

「どうして、この山から直接降りて進軍しなかったんだ?」

「ギルド長達とも話したのですが、向こう側に何らかの意図があったのではないかと推測しています。

 その理由までは何とも言えませんが・・・」

「・・・たぶん、仲間集め」

「イスカ?」


 メルムの思う疑問にイスカはほとんど消えていった死体の方角を見ながら答える。


「・・・なるほど」

「あん?どういうことだ?」

「ここに居たモンスターは・・・ゾンビ、スケルトン、ゴースト、サイクロプス、レンカザードマン、ウルフ・・・これだけ色々といるという事は様々な種類を従えさせるモンスター、あるいは魔物の誰かが協力していることになる。

 おそらく平原に向かったのは、そこで仲間に引き入れたモンスター達を連れていくためだ」

「魔物が参加した!」

「人と同じだ。そこに利用価値があれば使う。

 それが古城の主に従ってなのか、強力なのかは不明だが・・・」

「しかし!彼らがモンスターと協力するとはっ・・・」

「向こうの大ボスさんが知恵があって強いってこったろ・・・。

 そこに、従順か力や権力を欲したどこかのバカが手を貸したんだろうな」

「そんな・・・」

「どんな人にも、自分の考えがあって動く。

 そこに種族という枠組みは無い。

 まあ、最も・・・その価値観に囚われ易いのが人種なんだが・・・」

「良くも悪くも、自分勝手はお互い様・・・なのにな・・・」


 カレンとカイルは衝撃と共に自身の考え方に、ふとボールド、トウジロウの言葉に思い当たる節があった。


「ふ・・・お前たちはそこで、考えて自覚できるのだから問題ない」

「救いようのない人って世の中にはホントたくさんいるしねー」

「はいー。

 でも、場合によっては彼らと協力しなければならないのが教会の辛い所ですね~」


 経験しているケイトとテトの言葉に、カレンとカイルは世界の事を改めて知った。


「カイルは今まで私達と色んな所に行ったけど、見てない部分も多くある」

「まあ、ずっと町の中で生活していましたからね~。

 世界の常識を聞くのと見るのとでは全く違うとでしょうし、理解にはまだまだ時間が掛かります」

「カレンもそうだな・・・。

 今回は遠くまで来たが・・・そういった場面には出くわしたことが無かったな」


 経験者であるイスカ、メルム、トウジロウのその言葉には納得は出来ないが、それが世界だと少しずつ知れば良いと暗に促していた。


「それよりも平原も方は大丈夫か?」

「少なくとも私達の仲間がいるので全滅はしないと思います」

「ああ。ディックとチャルルもいるしな」

「他にも・・・夜明けの・・・メー、ト?」

「メーテですよ。

 ・・・彼らに関しては良く知りませんが、クレフーテの町の側にある、ミカルズの塔を踏破したという事は、それなりのふる実力はあると考えていいでしょう。

 多少の被害は覚悟しなくてはいけませんが、無事、勝ってくれるでしょう」

「それじゃあ、俺達は・・・」

「はい・・・・・・この先です」


 冒険者達は山の先にある、かつては繫栄したであろうの古城へと目指し再び歩き始めた。



「・・・・・・」

「どうされましたか?」

「・・・私の城へ向かってくる者がいる」

「・・・冒険者・・・でしょうか?」

「おそらくは・・・ただ、以前に来た者共よりは遥かに強い。

 山頂付近の僕が一掃された」

「へ~・・・って事は、なかなか楽しめそうな奴が居るって事ですかい?」

「ああ・・・お前たちの好きにして構いません、排除しなさい」

「了解」


 古城を根城にしているかつて、レッサーヴァンパイアと言われる存在だった男の指示に部下達がそれぞれ返答し、部屋出て行った。


「・・・・・・ふふふ、丁度いいかもしれない・・・前哨戦には・・・」


 男はくつくつと笑いながらも体内のマナをどんどんと膨れさせていった。



「ウチの王は今も成長中ってか・・・ははははは。

 フーー・・・一度でいいから戦ってみたいぜ」

「そういうのはどうぞ、後で好きにしてください。

 王なら、喜んで受け入れてくれますよ。

 ・・・それよりも」

「分かってるよ、目の前の侵入者だろ?」

「はい・・・以前の冒険者達は全滅させるつもりでしたが・・・。

 どうやら逃げられたようですね」

「にしても早くないか、確か襲わせたのは昨日・・・いや、一昨日か?」

「向こうにも私たち同様、何かしらの情報網を持っているのでしょう。

 ここを目指していることから、ある程度、目星は付いていたのだと考えられます」

「つう事は・・・王のおっしゃっていた通り・・・?」

「ええ、遥かに強い相手になります。

 こちらを殲滅するために強力な者を討伐に向かわせたのでしょう」

「・・・ンヒ~~~、ハハハハハ~ッ!

 命を懸けた殺し合いが始まるってか~、ワクワクするね~・・・」

「楽しんでいる所、申し訳ありませんが、こちらもそれなりに気を引き締めないと、アッサリ・・・なんてことにならないようお願いしますよ?」

「任せろ!がっはっはっはっはっは」


 ヴァンパイアの部下たちは、専用の部屋へと向かう。


 そこには、事前に集まるように連絡しておいた幹部連中が大きなテーブルを囲み、椅子に座って待機していた。


「ダルゾ・・・あなたの声は不愉快だわ。

 黙ってくださる~?」

「こんな時に楽しまずにおれるかよ」

「何かあったってのか?」

「はい・・・侵入者です」

「今回は何?」

「冒険者」

「ふん、またか・・・。

 前回貸した我が僕が不満を漏らしていたぞ」

「前回のは・・・あれはおそらく偵察です。

 戦闘よりも情報を集めるのに向いていた集団でしょう。

 数が多かったのはそのためでしょうね。

 ・・・ですから、今回がおそらく本命でしょう」

「王が強いと言っていたぞ?」

「まことか!

 ・・・では、我が行こう」

「おいおい待てよ、ここは俺に行かせてくれよ。

 前回、俺の所の部下は何も出来なかったんだぞ?」

「頭も無く、あーあー言ってるだけのどこが部下なのかしらー?」

「お前の所の部下だって似た様なもんだろうがヨネーリ」

「それでよー、俺様達にも戦わせてくれるのか?

 最近、つまんねー雑魚ばかり相手していたからよー、ウズウズして仕方ねえんだ」

「大丈夫ですギルフさん。

 複数人はいらっしゃるのでどこかで戦える機会はあるでしょうから・・・」

「わらわは遠慮する」

「アルトーネさんはよろしいので?」

「わらわに対等に戦える者達がいるとは思えん。

 それに、協力はしているが常に命令に従う義理はないはずじゃ」

「アルトーネさん、それは・・・我が王の言葉を軽んじていらっしゃるので?」


 幹部の1人がアルトーネに殺気を向けた。

 しかし、そんなことなど気にしたそぶりもせずに答える。


「勘違いするな小娘。

 今回の協力はそもそも、お前たちの王が持ち掛けてきた話じゃ。

 わらわはそこにこちらにとっても利害が一致するものと判断したに過ぎない」

「我も似たような所だな。

 我らの目的に協力をするために過ぎん。

 しかし・・・それを邪魔するのが今回の侵入者なら排除するのに協力は惜しまん」

「俺様は暴れさせてくれるなら何でもいい」

「ダナザックさんは・・・?」

「・・・私は、強い者との戦いが更なる高みに昇れるなら構わん」

「分かりました・・・・・・ボス?」


 幹部連中が集うテーブルの真ん中に小さな黒い煙が立ち込める。

 それは、不定形だったが1つの小さな丸い球体に変形したかと思うとそこからヴァンパイアが幹部達に連絡を飛ばす。


「参加するもの、しない者はそちらの隙にしてくれても構いませんよ?

 ただし、全滅させてください。

 今回の前哨戦が終われば次に向かうのはアルヴォークですからね~。

 そこまでにはあなた方にも更に強くなってくれなければ困ります」

「そういえば王よ、以前にも聞いたけどよー?

 その国の奴らはそんなに強いのか?

 だったらどうしてそこに仕掛けずにわざわざこんな辺鄙(へんぴ)辺鄙(へんぴ)な所でじっとしているんだ?

 今の俺達ならサッサと責めればいいだろう?」

「あそこにいる者の中に少々面倒な者達がいるのですよ・・・。

 戦力だけなら、おそらく問題ないでしょうが、その者共に裏から攻撃をされては確実な勝利が望めませんから・・・」

「デルト、お主に問う。

 その者がわらわ達と戦う事は決まっているのか?」

「・・・確実ではない。

 しかし断言はできます。

 彼らは私達を道具としか思っていません。

 使えるなら生かすでしょうが、少しでも邪魔なら抹殺してきますよ?

 あれらはそういった存在ですから・・・」

「お主を裏切って、向こうに(くみ)するとしてもか?・・・」

「アルトーネさん!」

「構いませんよキュレス」


 デルトの制止によりキュレスは立ち上がったが再び座り直す。


「どうぞご自由にアルトーネさん?

 あなたの行動次第では向こうもあなたを殺しはしないでしょう。

 しかし、気分を害せばあなたはあっさりと死ぬことになりますよ?

 ああ、もしここで協力を反故にしてもいいですが、もし向こうで敵対関係になれば私が直々に殺して差し上げますよ・・・ふふふ」


 声だけなのにも関わらずとても暗く、恐怖を相手へ届かせてしまえる凄みがあった。


「っ・・・。

 わらわがその者を従えさせるという事も考えられるぞ?」

「ははははははははははははははははははははははははははははは」


 一歩間違えば壊れた機械の様に、デルトはとても愉快そうに笑った。


「・・・何がおかしい・・・!」

「・・・あー、失礼。

 ここまで愉快な冗談を聞いたのは久しぶりかもしれなくて・・・」


 アルトーネはデルトの笑いに隠すことなく不快になり殺気を纏わせる。


「いやいや、そこまで怒られるとは・・・これは大変失礼しました。

 しかし、もう一度断言しておきます。

 彼らにとって、私たちの様な存在は道具でしかありません。

 ただの道具が持ち主に何を従わせるのですか?」

「知れた事。

 その者共が力で示せというなら、わらわが直々に簡単にあしらって「不可能ですね」・・・」


 アルトーネの言葉をバッサリと短く切り捨てるデルト。


「申し訳ない、先に謝っておきましょう。

 たかが、どこかの小さな部族の魔物が少し強くなったくらいでは、あの存在には勝てませんよ。

 ハッキリ言って、目障りな羽虫を払う程度で殺されてしまいますね」

「・・・・・・よう言うたな、今ここでお主と一戦しても構わんのじゃぞ・・・」


 立ち上がり、殺気をまき散らし、今にも部屋を破壊せんばかりにマナを荒れ狂わせる。


「先に謝っておいたでしょう?

 私達が戦う本命はそういう者達だという認識をしてほしかっただけですよ。

 あなたが、それまでこちら側に就くかは知りませんが・・・」

「・・・・・・」


 アルトーネは殺気を納め、大人しく椅子に座る。


「デルト、貴様が倒したい者はそ奴らなのか?

 今の話を聞くと無謀に聞こえるが・・・」

「今のままでは少々厳しいでしょうね。

 ですから、今以上に皆さんにも強くなってもらわなければいけないのですよ。

 ダナザックさんの様に考えてくれると助かりますね」

「それが、我・・・いや、我らにとっては必要な事なんだな?」

「ええ。

 いずれは戦う事になるでしょうね。

 早いか遅いかの違いはあっても必ずそうなっていたでしょうね」

「遅い方がもっと確実だったんじゃねえか?王よ」

「それは難しいな、ダルゾ。

 もともと、私達のこの集まりが無くとも、強くなっていけば、いずれは必ずぶつかってしまう事になっていたからな。

 それが本人かそれとも、その者の使いかの違いしかない」

「撃退しても、更に上が待っている。

 こちらが全滅するか、向こうが戦えなくなるか・・・だけですか・・・。

 いやはや、何とも辛い選択ですね」

「すまないなトレマール。

 これは私個人の復讐でもある。

 だから、ここで君たち幹部が抜けたとしても私としては一向に構わん。

 行動する時期が延びてしまうだけだ。

 必ず奴らを殺せるなら私は1人でも構わん」

「・・・今更ですね。

 ここまで、来た以上は最後まで付き合いますよ」

「私も~、ヤバくならない程度には付き合ってみようかしらね~」

「命を懸けて戦える場所を提供してくれるんだ文句なんてねえ」

「さっき、思いっきり言っていたであろうが。

 が、我にとっても必要な事なら協力はする」

「殺し合いが出来るんだろ?

 俺様も参加させろ」

「デルト様が進む道に私達も従います」

「・・・面白い」


 トレマール、ヨネーリ、ダルゾ、ゴクガス、ギルフ、キュレス、ダナザックの幹部7人は参加の意思を示す。


「アルトーネ・・・君はどうする?」

「・・・・・・気に入らんが、いいじゃろう。

 わらわも参加しよう」


 これにより、幹部全員がデルトの目的に賛同する事となった。


「それで、デルト様。

 侵入者の方は?」

「複数人・・・数まではハッキリとは分からなかった。

 どうやら、人数を分けてこちらに向かって来ている。

 微かに感じた所では二手に分かれていた。

 この後もさらに分ける可能性がある」

「では、町へ進軍させたものは?」

「そちらは向こうに送った私の影からの報告では、途中の平原にて戦闘中だそうだ」

「分かりました。

 それでは、私達は侵入者の排除に向かいます」


 トレマールが球体に向かい礼をすると、球体は渦を巻きながら更に小さくなり消えていった。


「っで?トレマールどうするよ?

 こっちから探しに行くのか?」

「いや、向こうから来てくれるのだ。

 出迎えればよかろう」

「うっし!それじゃあ、俺が城の門の前な?」

「おい待て、それは我にさせろ」

「俺様が先に戦う」


 幹部たちはイスカ達をどう出迎えるかで会議が行われ始めた。






【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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