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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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94 攻略開始

 クリス達はクレフーテの東門を少し出た辺りで現在、最終チェックをしていた。


 会議を終えたギルド長セルリアは、そのまま下の冒険者ギルドの入り口会場でクエストを受けに来ていた冒険者達に緊急依頼を要請。


 朝方に集まった冒険者達はその足ですぐに東門前に集合し、町から決戦場へ向かう兵士や騎士達と共にモンスター達を迎え撃つために草原へと出発し始めていた。


「それじゃあクリス君。

 そっちの方は任せた」

「まあ、君なら問題ないから大丈夫だよね」

「無理はしないでね」

「君なら高ランク冒険者達にも付いて行けるだろう。

 それよりも、むしろ俺達の方が気を引き締めないとな」

「大丈夫だって。

 そのための俺達や高ランク冒険者によるゾンビ共の掃討作戦なんだからな」

「・・・まあ、危なかったらフォローするわ・・・コールディが」

「そうね・・・コールディが」

「なぜそこで俺なんだ!」

「ははははは。

 それじゃあマイクさん達も気を付けて」

「「おう」ええ」うん」ああ」」


 返事をした後、手を振って出発組に参加するべくマイク達は列へと走って行った。


「じゃあ2人とも・・・がんばって」

「皆さんのご迷惑をかけてはいけませんからね?」

「しっかりと上の冒険者としての節度を持ってください」

「だあああ~っ!わ~~ってるよ!」

「こいつと一緒にしないでよ。

 私はちゃんと兵士達のフォローだって出来るんだから」

「うん、フェリル。

 出来るだけ助けてあげて」

「俺がこのチビと一緒ってのは納得いかねえが。

 まあ、出来るだけは助けてやる」

「ロイドは素直じゃないですねー」

「うっせー、黙ってろカイル」

「どうやら、他の冒険者も向かったようです。

 それでは、くれぐれも油断の無いよう気を付けてください」

「うん。

 メルム達も気を付けてね」


「じゃあ、まあ・・・無理せず普通に戦え」

「先生・・・もう少し励みになるような言葉で・・・」

「そんなこと言っても・・・う~、こういうのは苦手なんだよー」

「ははは、別にいいよカレン。

 少しだけ冒険者達のフォローしてあげるだけだし」

「ええ。

 こちらの掃討が済み次第、すぐにそちらへ合流します」

「おう。

 じゃあ、ちょっくら実力を見せてこい」

「「はい!」」


「どう?

 準備の方は?」

「大丈夫です。

 一応いざの時の対策は常備しておりますので」

「私も大丈夫だよ。

 プリムは?」

「うん。いつでもいいよ?」

「じゃあ、みんなの準備が済み次第、行こうか」


「ボールドさん、あの古城に本当にいると思いますか~?」

「分からん。

 我々の情報だって、いつも最新というわけではない。

 そもそも奴らが何を企んでいるのかが分からない」

「あたし達がまずやるべきは、古城にいる主を倒すことよ。

 探すにしても、行ってみない事にはどうしようもないしね」

「・・・そうだな」


 組み分けされた冒険者達が次々、草原へ向かう者達の列へと入っていった。



「それじゃあ、どうしますか?

 私達の方も出発しようと思いますが・・・?」

「・・・そうねー。

 ・・・プリム、召喚獣を出してもらえる?」

「分かった」

「でしたら私も」


 プリムとメルムがマナを練り、二人の下には魔法陣が作り出される。

 魔法には独特の流れがあるようで、陣の縁にいくつかの縦に螺旋に舞うマナが出来上がっていた。


 2人がほぼ同時に体内に練ったマナを地面の魔法陣に落とし込むと縦の螺旋がドーム状に覆い包む。

 そして、中には膨大なマナが溢れ、少しだけ強い光を放った。


「ワオーーーーーーンッ!」

「ピウキィィーーーーーーッ!・・・」


 そこには足が8本ある20メートルはありそうな犬がいた。

 もう片方は鳥。

 10メートルはある赤い鳥だった。


「それじゃあ、皆さん私かプリムさんの召喚獣に乗ってください」


 メルムの指示でそれぞれが背中に付けられた鞍の様なしっかり掴み座れる所へと乗り始める。

 クリスも同じく乗り始めようとする。


「あ、君はコッチに乗ってくれるかなー?」

「?、分かりました」


 テスに鳥の方へ乗るよう指示されクリスは背中に登る。



 草原へ出発した冒険者達から少し脇に反れ、クリス達は遠くにある山へと召喚獣に乗って向かっていく。


「ふふふ・・・」

「・・・」


 クリスは鳥に乗って上空から見る景色に感動していた・・・最初は。

 しかし、少し時間が経ったあたりでクリスは、ずっとニコニコとしながらこちらを見ているテスにどうしたらいいのか困っていた。


「テス」

「なに?

 ・・・ふふふ」

「子供が困ってる」

「いくら何でも見すぎ。

 どうしたらいいか困っているよ?」

「え?そうなの?」

「はぁ・・・孤児院にいる子供達も、テスがずっと相手をしてあげてましたからねー」

「あの子達も元気にやってると思うよ?

 ノノ達が今、面倒見てくれてるんじゃないかしら?」

「あまり構い過ぎると嫌われちゃうよ?」

「ええ~?そんなことないよー」

「今は良くても、孤児院の中には男の子だっているわよ。

 色々と思う事がある年頃の子だって現れるわよ・・・ね、ゾッド?」

「・・・どうしてそこで僕に聞く?」

「他意はない」

「いや・・・明らかに含んでそうな言い方だけど・・・?」

「気にしちゃダメよ」

「そっか~。

 そりゃあ男の子もそうなったりしちゃうかー」

「ええ!テスにも、何か言えない事が?」

「そりゃ、そうだよー。

 私だって、一応女の子なんだし、秘密にしたいことだってあるんだから」

「あ・・・ああ!そっ、そうだよね・・・そっか、それも・・・そうだよな・・・」

「何を考えてたのかな~?

 ゾッド君は~」

「ヘレンは黙っててください」

「・・・スケベ?」

「プリム!」


〔なかなか賑やかな人達ですねー、クリス〕

「(うん・・・それは、良いんだけど・・・。

 どうしてあの人はずっとこっちを見てるんだ?)」

〔孤児院というワードが出ていました。

 おそらく、クリスくらいの孤児の子供たちも面倒を見ているのかもしれません〕

「(ああ、そういうこと。

 でも・・・こう、ずっと見られているとなんか居心地が悪くて・・・)」

〔地球でいた時からそうでしたね。

 クリスは注目されるのに慣れていないようですし〕

「(はぁ・・・注目されて変に目をつけられて嫌な思いをした記憶がつい最近まであったからね。

 どうしても注目されるのって苦手意識が取れないんだよ)」

〔そればかりは時間と共に慣れていくしかありませんね。

 出会う人や付き合う人が変われば考え方や意識は変化しますが・・・。

 学校は決まった人達しかいませんからね。

 そういう所だと閉塞感が出来てしまい囚われてしまいますから〕


 クリスはどうしたらいいのか悩みながら目的地へと向かう。


「どうしたんですか?先生。

 上の方ばかり見て・・・何か気になる事でも?」

「カレン・・・あの子供、どう思う?」

「子供?・・・ああ、あのクリスっていう子供の事ですか?」

「そうだ」

「確かに、気にはなりました。

 あんな小さい子供をわざわざこの仕事に参加させるなんて。

 ギルド長が薦めているという事にも疑問に思いました」

「・・・確かに、それは俺も疑問に思わなくはなかったが・・・」

「では、やはり参加させずに待機か避難させるように通達しますか?」

「・・・」

「先生?」

「・・・やっぱり、小さい。

 ・・・お前には判らねえか?

 いや、俺にもあまり分かっちゃいねえが・・・何なんだあの子供?」

「・・・先生は、一体あの子の何が気になるので?」

「マナだ」

「・・・?」

「お前は感じなかったか。

 あの小僧、とても緩やかに、自然体で体内のマナを循環していたんだ。

 しかも、外には極少量しか漏れない程度に。

 それが何を意味するか・・・お前は分かるな?」

「っ!、まさか・・・!

 だってまだあんなに小さい」

「ああ・・・だが、実際にやってのけている。

 俺だってそれぐらいは問題ない。

 しかし、あそこまで自然体でいるとなると・・・相当・・・。

 ・・・っふ、俺もまだまだ知らねえことがたくさんあるな」

「・・・」


 2人の師弟は黙って空に飛ぶ鳥の背中に乗った子供を見る様に見上げている。

 トウジロウは歯をむき出しにした笑みを、カレンは未だ信じられず疑いと驚愕持って見上げていた。


 クリスがなんか居心地が悪いといったのは無意識に他の者達の視線を監視してしまっていたのもあるかもしれなかった。


「・・・やはり、あいつも気づいていたか」

「どうしたんですボールドさん?」

「・・・いや、何でもない」

「「?」」


 ボールドはあまり他人の事情に深入りするものではないだろうと、敢えて首を突っ込まないようにした。



 草原から数十キロほど離れた麓に到着。

 さらにそこから進もうとしたが霧が山向こうから覆う様に立ち込めている。

 そのため、危険を避けるために地上から足を使って上ることにした。


「これより先はモンスターが潜んでいる可能性があります。

 念のため、ここで召喚獣を降りて進もうと思います」

「うん、分かった」


 イスカ達が犬の召喚獣から降りる。

 それに続き次々と冒険者達の降りていく。

 クリス達も鳥の召喚獣から降りた。


「それじゃあ、ここから山の向こうの古城まで行きますが・・・ボールドさん、古城について何か知っていますか?」

「山の向こうの坂に城があり、その周りを砦で囲んでいるそうだ。

 昔はそこが1つの大きな国の首都の城だったそうだが、時代の流れで都市は無くなり、城だけが未だに老朽化しても残り続けているそうだ」

「町があったのですか?」

「城からは少し離れた所に朽ち果てた姿でごく一部だけが残っているらしい。

 といっても、我々が向かう所とは違い見えない位置にあるそうだ」

「別荘みたいに建てられた城で、町と城との間の道が結構離れていたらしいです」

「そんなことで大丈夫だったのかな?」

「城と砦だけでも十分な敷地があり、当然、中にたくさんの備蓄があったのだろう。

 もし、町で何かあっても、籠城する事も出来たわけだ。

 町には視察という形で見回りをしていたのだろう」

「山の中だから、自然とそういった生活の形が出来上がったってわけか・・・」

「しかし・・・かつての繁栄も永遠ではなかった。

 暮らしやすい場所が出来て、生活が楽になれば人はそこへ移住する」

「結果、残ったのが砦と城ってわけかー・・・なんか寂しいね」


 ボールドの説明に、ケイトが補足。

 メルム、カイル、カレン、ゾッド、テスが割って入りながら聞いた。


「とにかく、後は進んで実際に確かめてみないと分からん。

 向こう・・・城に着いた時はどうする?」

「メルム・・・お願い」

「分かったわ。

 ・・・まず、城の前に砦があると思いますが、そもそも規模が分かりません。

 あまりに広大な敷地だと、一緒に回っては時間が掛かってしまうので、3つに分けようと思います。

 城に直接向かう班・・・砦内を周る班・・・そして、秘密の抜け道があるかもしれない周囲を見回りながら城へと向かう3つに分けようと思います」

「エルフェンローゼは砦の中を探ろうと思います」

「じゃあ、俺とカレンも砦内に参加しよう」

「我々は城に向かおう」

「それじゃあ、私達が抜け道が無いか周囲を探すわね。

 あ、ゾッドはダムガさんのパーティに付いて行って。

 今回の目的のモンスターは城にいると思うし、そうすると一番モンスターが多くて強いのがいるとだから」

「わかりました。

 よろしくお願いします」

「こちらこそ~」

「・・・坊主、お前はどうする?」

「え?・・・もともとお手伝いですし、周囲を周る方に付いて行こうかなと思います」

「なんなら、お前も砦に来たっていいんだぞ?」

「いや、人数的にもこれが良いと思うので・・・」

「そうか・・・(残念)」


 トウジロウは口元を笑わせながら下がっていった。


「それじゃあ、見回りが終われば、砦班も、外周班もダムガ班と同じく城に向かってください」


 メルムのまとめに皆が頷いたり、返事をする。


「それでは・・・これより攻略を開始します」








【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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