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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
95/473

93 緊急会議と高ランク冒険者

〔クリス、起きてください。

 クリス・・・クリス・・・〕

「う・・・うう゛う゛~ん・・・・・・ううん」


 のそっと布団から顔を出し起き出すクリス。


「・・・・・・なに?」

〔外の様子が変です。

 何か慌ただしくなっています。

 何があったのでしょう?〕

「・・・?」


 クリスはサポートの言葉で窓の外を見た。

 そこには、兵士や騎士が何人もが走っていた。

 外で仕事の支度をしていた住民もその様子を不思議そうに見ていた。


「・・・何があったんだ?」


 ドンドンドンッ!


 強くドアを叩く音と共にクリスの部屋に声を掛ける者が・・・。


「クリス君起きて。

 ギルド長のセルリアです。

 申し訳ないんだけど起きてくれないかしら?」

「は~い・・・」


 クリスはドアへ向かって返事を返し、扉を開く。


「あ、起こしちゃってごめんね。

 でも、緊急なのよ。

 申し訳ないけどすぐにギルドの応接室に来てもらえるかしら?」

「何があったんですか?」

「スタンピードが起こったのよ。

 ゾンビの群れが近くまで向かってきているそうなの」

「・・・分かりました。

 用意したらすぐに行きます」

「ギルドで待っているからね」


 伝えたい事だけ告げ、セルリアは宿を出て行った。


「・・・」

〔行きましょう〕

「ああ」


 クリスはすぐに用意を済ませ、旅に必要そうなものをリュックにしまいギルドへと向かって行った。



「来たわねクリス君」


 クリスを迎え入れるセルリア。

 今回入った応接室は冒険者同士で協力して依頼をこなす時に打ち合わせでも使われる部屋だった。

 そのためパーティ同士で入っても問題ない様にかなり広く作られている。

 もちろん、あまりに多いパーティ同士だとリーダーや参謀役と人数を絞っての話し合いになる。


 今回は古城に向かう冒険者パーティが全員入っていた。


「やっぱりクリス君も呼ばれたんだね」

「クリスなら問題ない」

「助っ人は彼だったか・・・」

「まあ、クリス君なら当然か」


 マイク達はクリスを見て、納得していた。


 そんな中・・・。


「おいおい、何だこのガキは?」

「・・・どうも、私たちのお手伝いとして参加する子のようね」

「えっ!ちょっと待ってよ、こんな子供が?」

「おめぇも大概子供じゃねえか」

「なんですってー!」

「ロイド、フェリル、うるさい」


「どう思います?先生」

「・・・面白い子供だな」

「先生?」

「なんかパッとしない子供ね」

「そこらにいる子供の1人って感じだな」

「はっ・・・お前たちの方がもしかしたらパッとしねぇかもな」

「それは・・・いったい?」


「なんかあの子達みたいだね?」

「そうやってあなたは・・・子供を見るとすぐに甘くなる」

「あら、いけない?」

「私は良いと思いますけど?」

「・・・私も・・・」

「あなた達まで・・・。

 あんな子供を危険な場所へ連れて行くのですよ?」

「ふふふ、やっぱり優しいね?

 あの子の心配するんだ」


「・・・何だあの子供は?」

「どうも~、セルリアさんのお願い受ける私達のお手伝いさんだそうですねー?」

「えっ、ウソでしょ?

 まだあんなに小さな子供よ?」


 それぞれの別パーティ達はクリスに思い思いの印象を抱いていた。


「やあクリス君」

「ビスガルさん!」


 クリスに近づき挨拶するフロスタン家の護衛騎士筆頭のビスガル。


「君を参加させるとセルリアが言った時は少々驚いたが・・・君なら問題ないだろう」

「この集まりは・・・さっき、ギルド長が言ってたスタンダードで問題が?」

「ああ、その事で彼女が今から説明してくれる」


 ビスガルがセルリアの方へ向いたのに釣られクリスも向く。

 セルリアは応接室の注目の集まりやすい場所まで移動して全員に聞こえる様に声を発した。


「それでは緊急ですが会議を始めさせていただきます」


 セルリアの声に先ほどまであった喧騒は静まり返って全員がセルリアの方へ振り向く。


「今回は皆さんに古城の調査をお願いしてもらう予定ではありますが、今朝、町に帰って来た冒険者からの緊急連絡があって、急遽早めに皆さんにはこの冒険者ギルドに集まってもらいました」

「・・・何があったのですか?」

「今朝、皆さんをここへ呼ぶ際に話した通り、スタンピードが始まっているそうです」

「「「「「・・・・・・」」」」」

「今から約1時間ほど前、東口の門から血相を変えて冒険者が走って帰って来た所、見張りをしていた兵士がその冒険者から事情を聞いたそうです。

 何でも、霧の中から大量のゾンビもしくはそれに類するモンスターが大量に山から徐々にそれぞれの町に向かっているという報告がありました。

 聞いた話から推測すると、皆さんが向かう古城方面からモンスターが押し寄せているようです」

「それは・・・以前調査に行った冒険者達の所からさらにモンスターが増えたって考えていいのでしょうか?」

「はい、そうだと思われます」

「って事はやっぱり、向こうにいるモンスターって・・・」

「・・・おそらく、死霊系かヴァンパイア系統・・・」

「ギルドもその可能性で考えています。

 もちろん、モンスター以外の誰かによる人為的な可能性も捨てきれていませんが・・・」

「・・・モンスターがこれだけ大量に発生するって事は・・・それを操れるだけの実力者って事ですよね?」

「そうでしょうね。

 でなければ、ここまで町に向かってしっかりと進軍するのは不自然ですから」


 セルリアの説明にどの冒険者達もそこからの予測とこれからの行動をどうするかを話し始めていた。

 そこへ、セルリアから再び説明を始める。


「現在、町の兵士と騎士達には周囲の警戒にあたらせています。

 そして、町の警備部隊を残し、編成した部隊で東口の門より先の平原でスタンダードに迎撃してもらう手筈になります。

 現在その編成途中になっています。

 また、この町の冒険者達にもそれに参加していただきます」

「こちらの数とモンスターの数と方は?」

「現在、先行して数名に偵察に行ってもらっています」


 コンコン


「失礼しますギルド長」


 中に入ってきた職員さんが紙を持って入ってきた。

 そして、それとセルリアに渡し、部屋を退出した。


「・・・この資料によれば、おそらく数は約5000。

 ゾンビが人や動物、モンスターも中には含まれたいるそうです。

 さらにスケルトン、レイス・・・サイクロプスといるそうです。

 レイスやサイクロプスは数こそ少ないそうですが・・・それでも50はいるそうです」

「この町の奴らだけで対処できるのかよ?」

「・・・こちらの向かうモンスター達の統率力はそこまでではないそうですが・・・サイクロプスが数頭も現れるとなると、町の者達だけでは・・・」

「っち、じゃあどうするんだ?」

「私達がまとめて相手しましょうか?」

「そうね。

 その方が被害も出ないと思うし」

「もともと、スタンダードの中に厄介なモンスターがいる可能性は最初からありました。

 そこで、この中から数人を町の兵士達と共にスタンダードに回ってもらおうと思います。

 数は少なくなってしまいますが、そのまま残ったメンバーで古城に向かってもらい、同時進行で事にあたってもらいます。

 スタンピードに参加した方々は掃討次第、古城に先行した皆さんと合流してください。

 おそらく、向こうの数が手薄になるため攻め込むチャンスになります。

 この機会を逃した場合、逃げられてしまう可能性があるために速やかな排除をお願いします」


 セルリアの説明で冒険者達は誰が古城に行くか、スタンピードに向かうか話し始めた。


「イスカ、どうします?」

「私が決めていいの?」

「ええ。ここはリーダーのあなたが決めて。

 そうじゃないと揉めてなかなか決まりそうにないので」

「分かった。

 ・・・・・・古城には私、メルム、カイルが向かう。

 ロイド、フェリル、あなた達がスタンピードに参加して」

「ちょっ・・・俺に古城に行かせろよ!」

「ロイドは置いておいて私は古城に行ったって良いじゃない!」

「なんでお前が古城なんだよ!

 お前は明らかにスタンピードに向かった方が良いじゃねえかよ!」

「はぁ・・・やっぱり揉めた・・・」

「落ち着いてください。

 ・・・イスカ、理由は」

「・・・なんとなくだけど・・・。

 ロイドは動き回ってたくさんのモンスターを一掃するのに向いているから。

 フェリルも魔法で一気にたくさんのモンスターを倒す使い方が向いているから?」

「確かに、大人しく隠れたり繊細に戦うより、お二人の場合、ド派手に動き回る方が向いていますものね」

「確かに」

「偵察だってできるが、どうせなら一気に片づけてしまった方が良いじゃねえか」

「そうそう。

 周りの雑魚をいちいち相手していたらキリないもん。

 魔法で一掃した方が楽じゃない」

「だから、あなた達をスタンピードにしたの。

 数が多く兵士達の被害を減らすのはこれが一番」

「そういうことです」


「ディック、チャルル、お前たちが残れ」

「えっ!それって、先生とカレンが古城へ行くって事ですか!?」

「先生どうしてですか?

 私の方が古城の方に向いていると思うのですが?」

「私もそう思います先生」

「一応、スタンピードにあたる兵士達、騎士達はある程度、統率が取れるだろう。

 しかし、問題は冒険者だ。

 共闘は出来るし、多少の助け合いは可能だが、その場の行き当たりばったりだ。

 簡単に連携なんて崩れる。

 それに・・・」


 男はイスカ達の方を見る。


「どうやら、イスカ達の方はロイドとフェリルを向かわせるようだ」

「げっ、あの単細胞が!」

「繊細な戦いには向かない2人ですね」

「あ゛あ゛っ!

 誰が単細胞だってー!」

「神経質女には言われたくないわね!」

「はぁ・・・疲れる」

「コラ、2人とも!

 すみません、トウジロウさん」

「いや、こっちこそすまない。

 そっちはロイドとフェリルがスタンピードに参加するんだな?」

「はい、潜入任務よりこちらの方が向いているとイスカが判断したので・・・」

「確かに、この2人はそっちの方が性に合っているだろう。

 ・・・という事だ」

「・・・分かりました。

 出来る限り、こちらの被害が少なくなるようにサポートいたします」

「ディック、すまんがお前もチャルルと行動してくれ」

「・・・先生がおっしゃるなら分かりました」


「テス、どうします?」

「うーん、私達はどちらでも問題ないけど・・・」

「私はどちらかというと古城の方で・・・。

 あまりに大勢で戦う場所だと武器の使用範囲が限定されます」

「弓専門だもんね。

 わかったヘレンは古城で・・・」

「・・・私も古城かな?

 探したりするのに助けてくれる子達がいるから・・・」

「分かった。プリムも古城だな?

 とすると・・・俺とテスがスタンダードの方か?」

「うーん、どうしよっかー?」


「あの~ボールドさん、ケイトちゃん。

 私たちはどうします~?」

「我々は古城だ。

 もともと奴らを追ってここに居るのだからな。

 ここで外されても困る」

「っという事だそうよ?テト。

 あたし達は一応、協会からの任務でも来ているの。

 だから、そっちが優先されてしまうのよ」


「どうしようマイク?」

「・・・俺達も古城に付いて行きたいぜ。

 こんな高ランク冒険者が集まる機会に参加できることなんてないからな」

「でもスタンダードは無視できない」

「そうだな・・・。

 一応、ここにもしばらく暮らしているし、多少の恩義はある」

「・・・そうよね。

 お世話になっているんだし・・・ここは少しでも恩返しした方が良いわよね?」

「ああー・・・せっかくのチャンスが・・・いやでも、町には・・・・・・」

「マイク、1人参加でもいいよ?」

「バッ、分かってるよ。

 俺もスタンピードの方にするよ!」


〔どうやら、それぞれある程度は別れるメンバーが決まったようですが・・・。

 私達はどうしますか?、クリス〕

「(うーん、どうしようか・・・。

 クエストでは灰の宝石があるって書いてあったし無視できないけど・・・このまま、町の人達を放って向かうのもなんだか気が引けるなー)

 ・・・うーん」

「クリス君」


 クリスが悩んでいる所にビスガルが話しかけてきた。


「君は古城の方へ向かってくれないか?」

「え?」

「私も。

 本来なら君みたいな子供は止める立場なんだけど、ビスガルが薦めるのなら間違いないと思うわ」


 ビスガルの薦めにセルリアもクリスの古城行きを推した。


「君ならどちらでも生き残ると思うし問題ないと思っている。

 それに・・・これだけの高ランク冒険者の実力を間近で見る機会はそうそうないかもしれない。

 こんな時に何だが君にとっては良い勉強になると思う。

 だから、君は古城に行くべきだ」


 迷いの無い顔と声にクリスは少し驚きながらも確認を取る。


「いいんですか?

 俺も残った方がいいのかなって思ってたんですが」

「心配するな。

 どうやら、向こうの冒険者達からも古城とスタンピードで別れる者がいる。

 君1人分ぐらいなら十分対処してくれる凄い方達だから。

 君は、君の目的のために動いてくれて構わない」

「・・・ありがとうございます」


 セルリアに宝石に関して聞いたのかもしれない。

 しかし、ビスガルがクリスが悩んでいる理由に確信があって言っているわけでも無いだろう。

 だが、何かを感じ取ったビスガルはクリスに古城行きを薦めた。


 クリスもビスガルの真意のほどは分からないがその意思を汲み取ることにした。

 セルリアもビスガルの意思を尊重する様だった。


 少しの時間が経ち、セルリアが途中ではあるが担当メンバーを確認する。


 パーティ[エルフェンローゼ]

 古城組

 イスカ、メルム、カイル

 スタンピード組

 ロイド、フェリル


 パーティ[メンセイテン]

 古城組

 トウジロウ、カレン

 スタンピード組

 ディック、チャルル


 パーティ[アスリカの鳳光(ほうこう)

 古城組

 テス、ゾッド、ヘレン、プリム


 パーティ[砂丘のダムガ]

 古城組

 ボールド、ケイト、テト


 パーティ[夜明けのメーテ]

 スタンピード組

 マイク、キャシル、トルカ、コールディ


 そして、古城に参加するクリス。

 古城に13名、スタンピード8名に別れて行動する事になった。


「これだけの冒険者がスタンピードに参加してくれるなら大丈夫でしょう。

 では、このメンバー分けで行動してください」

「ちょっと待て!

 どうしてそのガキが古城なんだよ!」

「そうよ・・・って言うか、本当に参加させるつもりだったの!」

「勝手ではありますが、彼なら問題ないと私が判断します」


 他にも意見を言いたそうにしていたメンバーを遮るようにビスガルが割って入り、告げる。


「・・・ギルドマスターはそれで本当によろしいのでしょうか?」

「私もビスガル・・・この護衛騎士とは付き合いが長いので、彼が大丈夫というのであれば問題ないと判断します。

 もし、それでも危険ならクリス君にそこから避難するように言ってください。

 ・・・クリス君も申し訳ないけど、彼らの指示に従ってもらえると助かるわ」

「分かりました」

「色々と言いたい事もあるかもしれませんが、ギルドマスターとして決めた事なのでご了承ください。

 他に意見は?・・・なければ各自、行動を開始してください。

 以上です、解散」


 セルリアの号令でそれぞれのメンバーが行動を始めた。






【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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