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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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92 連鎖の始まり?

〔クリス、ギルド長が戻ってきましたよ?〕


 クリスは考え事を一旦置いて入ってきたギルド長を見る。

 先ほど村での出来事の話から少し沈んでいたが、その表情は心なしか少し元気になっていた。


「クリス君。

 実は君に言い忘れていたことがあってね?

 さっき村が無くなってゾンビが出たって話をしたじゃない?

 そのことで実は宝石が関連してそうな話になっていてね。

 直接宝石が関わっているかまでは分からないけど、問題となった事件の真相を探るために明日、高ランク冒険者達が町の外へ行くことになったの。

 山の奥にある古い古城が怪しいって事になってて調べに行くそうよ?」

「明日ですか・・・早いですねー」


 少しニヤッとするセルリア。


「つきましては、そこにこの町の冒険者からも何人か同行して手伝わせては?という話になってねー」

「・・・はい」

「まあ、向こうに高ランクの冒険者が何人もいるんだから荷物持ちとか何かだったら問題ないかなーって思いまして・・・」

〔クリス・・・これは〕

「(何となくわかった)

 ・・・もしかして、俺に付いて行けと?」

「んっふっふっふ~良く気が付いてくれたね。

 そういう事だから、行ってみてはどうかなー?

 たぶん、クリス君にとっても高ランク冒険者と一緒に何かをできる滅多にない機会だよ?

 こういった緊急時以外で共に行動なんてそうそうできない事だから」

「いや・・・確かに、そうですけど・・・・・・大丈夫ですか?」


 クリスが何を言わんとしているか気付いたセルリアはクリスを見た。

 分かり易く見た目。

 まだ幼すぎる子供。

 種族によっては見た目と年齢が合致しないことは良くあること。


 ある意味クリスもそれに該当するがセルリアには分からない。


 しかし・・・セルリアから見ても明らかに人間で見た目通り子供。

 すぐに仮登録の冒険者で、そんなヒヨッコを連れて、事件に疑わしい場所へ連れまわす危険性が高い場所に誰が連れていくのか?

 普通に考えればそうなって当たり前である。


 たまたま現場で知り合った者ならまだしも、調査に最初から調べる時に付いて来るとなると普通はお荷物でしかない。

 何かしらのメリット以上にデメリットの方が大きすぎると考え断られてしまう。


 しかし、セルリアは確信持って言えた。


「君なら問題ないでしょう~。

 高ランク冒険者が目立つと思われるから出発時、領主様達は住民を怖がらせたり不安にさせないために来ないと思うけど・・・ビスガルかリンジーちゃん辺りが見送りに行くと思うよ?

 私も見送りに向かうから、その時に冒険者達に紹介しておくね?」

「いや・・・でも・・・。

 俺は仮登録者ですし・・・あまり目立つことは、出来れば・・・・・・」

「なるほど、避けたいわけね。

 了解。その辺りも言い含めて何とかしておきましょう」


 クリスの言葉に腕を組んで頷きながら答えるセルリア。

 しかし・・・肝心なランクや強さについては何も大丈夫とは思えないクリスの不安に``分かっている``とさも訳知り顔で理由についての話をセルリアはクリスに告げる。


「現状、この町で強い冒険者はマイク達を除けば、君しかいないのがこの話の実情だ。

 なぜ、そう断言できるかというと・・・現在、この町に住む冒険者でミカルズの塔を攻略完了した冒険者は君たち以外いないからだ。

 今回来た冒険者の中にはミカルズの頂上まで上った者はいるが、それ以外はまだまだそこまでの実力が無い。

 それだけ、あそこの攻略は難しいんだよ。

 ましてや、たった2日で頂上に登った者など、私が知る中で君が初めてだ。

 ・・・ハッキリ言おう!

 この町で高ランク冒険者に付いていける人材が君たち以外いない。

 だから送り出せるのはマイク達とクリス君しかいないんだ」


 もはや開き直りとでも言ってしまえるほどに堂々とした発言であった。


〔ここまで、ぶっちゃけられると・・・いっそ清々しいですね〕

「(何と言ってよいものやら・・・)

 高ランク冒険者って事は・・・皆さん当然ランクが高いんですよね?」


 探るように窺うクリス。


「ああ、そうだよ。

 Bランクの上位~Aランクの人達しかいない。

 個人差によって能力的に違いはあるが、総合しての評価としては、文句のないランク付けだろう」

「だったら、それだけの実力者がいるなk「甘い!」・・・・・・」


 一喝してクリスの言葉を遮るセルリア。


「甘いよクリス君。

 いいかね?

 ミカルズの塔はそれだけ難易度が高いダンジョンなんだよ。

 君は聞いたことないかい?

 頂上に到達した者は実質Bランクに相当するという言葉を?」

「・・・あ」


 クリスはミカルズの塔の説明を受けていた時にビスガルの説明の中にそんな話があった事を思い出した。

 実際にはランクがそれで必ずしも上がるわけではない。

 しかし、実力だけならその領域に踏み込み始めた事を意味していた。


「分かったかな?

 キミたち以外に手伝える人がいないという事実に・・・」

「・・・はい」

「うん。素直でよろしい。

 まあ、行くかどうかを決めるのは君次第なんだけど・・・宝石関連の何かがある以上は君は言った方が良いというのが私の意見。

 最終的にどうするかは君が決めるといいよ。

 それと・・・マイク達は行くと言っていたよ。

 お手伝いでもいいからって・・・」

「マイクさんは行くんですか?」

「う・・・うん・・・まあ、本当はマイクがコールディの話を聞かずに二つ返事で引き受けた感じだったけどねー・・・あ、あはあははははは」

「・・・何となく想像つきます」


 頭を掻いて笑うセルリアにとりあえず頷いたクリスは少し考える。


「(確かに宝石関連なら調べた方が良いだろうな・・・。

 だけど、目立つってのはなー・・・ただでさえこんな見た目だし。

 面倒事はイヤだな~・・・)」

〔その辺りはセルリア達が何とかしてくれるでしょう。

 場合によっては門の外に出て人が少なくなってから合流という事にしてもらいましょう。

 私達にとって宝石は欲しい情報です。

 向こうからきてくれた以上、これを逃す手はありません。

 もちろん警戒は必要ですが、いざとなったら高ランクの方々を頼ってしまいましょう。

 事件討伐の仕事は本来、向こうが引き受けているのですから〕

「(なんか良いとこ取りな気がしないでもないんだけど。

 美味しい所だけ奪うってのは・・・)」

〔今回は降って湧いた話です。

 たまたまに、あまりケチをつけても仕方ありません〕

「(・・・このチャンスを逃すのは確かにもったいないか・・・)

 あの・・・我が儘で申し訳ないんですけど俺が合流するのは門の外でいいですか?

 そこなら人通りもほとんどないはずですから」


 クリスは参加する旨をセルリアに告げる。

 落ち合う場所を指定する事になるが、そこならばと伺いを立てて。


「分かったよー。

 じゃあ、その様にビスガル達にも伝えておくね?」

「かっるっ」

「こういうのは時に潔くすることが大事だからね。

 では、早速、私はビスガル達に伝えに行くとするよー?

 っという事でクリス君、明日に備えて、準備をするにしても英気を養うにしても、十分な休息は取ってくれたまえ~~・・・・・・」


 いうや否や、行動に移したセルリアが執務室を出て行った。


 クリスも仕方なく執務室を後に、明日に備えて準備する事にした。



 それは久々に聞いたような感覚になる通知音のような音だった。


「ん?ステータスか?」

〔何でしょう?〕


 クリス達はステータスを開き、閲覧する・・・・・・そこには。



【クエスト】


 忘れられた古城


 ボスを討伐し灰の宝石を入手



 単純な文章ですっかり忘れていた、クエスト欄のタブを開き、書かれていたミッション表記。


「久しぶりに来たな・・・」

〔ええ。

 この世界に来て初めてです〕

「それに、ここに書かれている字があるって事は」

〔宝石を持ったボスがいるという事ですね〕

「・・・行くことは決まっていた。

 目的も決まった」

〔はい。明日の備えて今日は休みましょう〕


 クリス達は少し早めに宿のベットに横になるのだった。



 深夜


「よう、ツェーゲン、そっちの準備はどうだ?」

「ん?ヤハトか・・・何だ急に」

「いやね、どうやらレッサーヴァンパイアの奴が更に被害を増やしてね?

 どうやら調査に乗り出した冒険者パーティを壊滅させちゃったのよ」

「・・・・・・で?」


 ため息をついて続きを促す。


「こっちは事前に連絡を取っていたのか、その調査隊が壊滅したことがいろんな町のギルド間の連絡で広まっちゃってね。

 結果かどうかは知んないけど、どうやら明日、高ランク冒険者が調査に乗り出すそうだよ。

 おそらく古城にいるヴァンパイアも殺すんじゃないかな?」

「ヴァンパイアが持っているとして、冒険者達にバレず隙を突いて上手く盗めそうか?」

「え?無理無理!

 何言っちゃってんだよ。

 いくらお兄さんでも高ランクの冒険者じゃ厳しすぎるってー。

 俺達が使うモンスターと違って、ステータスの数値頼りの奴とは違うんだからー。

 技術とか練度もあって簡単に殺されちゃうよ」

「・・・っち、他に手はないのか?」

「・・・ちょっとだけなら、あるかもしんない」

「なんだ?」

「レッサーとはいえ数値的には強いし、多少の知恵もあるだろ?

 それに・・・お兄さんはゾンビ達と戦っていた。

 この数日でいくつかの村を襲っていて、前回の冒険者達が惨敗したことから考えると・・・」

「スタンピードか・・・」

「擬似的にだけどモンスターが増殖していることから、もうそろそろ町を襲ってもいいくらいの数にはなっていそうだよ?

 まあ、高ランクの冒険者達に簡単に排除されちゃうけど・・・多少の時間稼ぎにはなるんじゃないかな?

 もし意識がレッサーヴァンパイアに向いて宝石がどこかにあったのなら」

「隙を突いて盗むことが可能か・・・」

「最初の疑っていた時に調べていれば良かったけど・・・。

 たぶん、お兄さんが見つけた時には問題が出ていた可能性があって動けなかったしねー」

「仕方ない。

 今回の機会に無事盗み出してくれ」

「りょうかーい。

 一応頑張ってみるよ。

 それで?・・・そっちは?」

「どうやら、あのバカの部下・・・俺達に協力していたあいつが死んでしまっているという情報をどこからか入手したようだ」

「疑いではなく?」

「部下の行動は知っているそうだ。

 奴が何も連絡しないまま隠れることも逃げることも絶対にないと豪語していたよ」

「・・・部下を信頼しているのか・・・」

「いや・・・あれは使える駒と認識しているだろう。

 手足の様に動く駒が居なくなったことに焦りの色がある。

 ・・・使えるという意味では、お前の言う様に信頼しているのだろう。

 たかが1つだが、奴にとっては自分の手持ちを失う事が許せんらしい」

「は~あ、何とも我が儘な」

「しかし・・・こっちとしては持ち堪えさせることはもう出来そうにない。

 ある意味、良いタイミングかもしれない。

 奴が動くのはレッサーヴァンパイア討伐の2,3日後辺りになりそうだ」

「またえらく急に・・・」

「モンスターをすべて投入するには、俺達の目的にはタイミングが悪いが少数なら出しても問題ないと判断した。

 いきなり都心には迎えんし、こちらの手持ちをすべて見せてしまえば対策が簡単に取られるだろう。

 一気に攻め落とさないと後手に回りかねんが・・・境界の町程度なら簡単に崩せる。

 そこから一気に進軍して、そこへモンスターをさらに投入する」

「案外ギリギリなんじゃない?」

「ああ、良くも悪くもそちらのスタンピードも含め時間が勝負になる」

「宝石を集められる時間は稼げそうかい?」

「サックがわずかに感知した。

 一瞬だったそうだが、どういうわけか宝石が3つ揃っていたそうだ。

 もう1つはお前も知っているだろう?」

「ああ、調べて分かったけど・・・あれ取ると大騒ぎになるぞ?

 相手は大貴族だぞ?」

「それは後でも構わないだろう。

 奴の部下は失敗していたが、奴の力は俺達が貸したモンスター頼りだった。

 調査もかねて最後の情報があった現場に部下と向かったが・・・惨状からして俺達のモンスターが暴れた後が通りから洞窟に続くように残っていた。

 おそらく、逃げて行った結果なのだろう。

 どうやって倒したのかは不明だが、この程度の雑魚で苦戦するならいつでも奪える」

「・・・俺達の我が儘だけど・・・出来るだけ、そういうのは控えた方が良いんじゃない?」

「いまさら何を言う?」

「あの人が望んでいるわけじゃないし・・・」

「・・・分かってる。

 奪うといっても、必要の無い殺しは避ける。

 宝石さえ手に入れば俺達にとって、後はどうでもいいからな」

「・・・あと少しなんだ・・・焦るな・・・」

「分かっているよ、ヤハト。

 問題なのは3つの方だ」

「揃っているという事は俺達と同じで宝石を集めてる?

 どうしてだ?

 マナを取り込んで一気に進化するためか?」

「だったら吸収して先に宝石を自分の物にすればいい。

 いちいち3つも持っている状態でいる必要はないはずだ」

「・・・サックはなんて?」

「分からないと・・・ただ3つ持っていたという事が気になる」

「・・・あ!青に黄色に・・・黒か!」

「ああ、黄色という事はあいつの部下が死んだ時にその場にいた可能性がある。

 もしくは殺した本人かもな。

 青も持っているという事は入れ違いで入手したのかもしれん。

 黒に関しては・・・どうやって手に入れたのか分からん」

「感知した辺りにヒントがあったりするんじゃない?」

「感知したのはミカルズの塔だ」

「あそこか・・・・・・いけない事も無いけど・・・ああー・・・行くのが面倒だな」

「もう行く必要ないだろう。

 3つ持っている者から奪えばいい」

「持ってそうな奴ってわかる?」

「・・・残念ながら、そこまでは無理だそうだ。

 感知したのも何かの力が働いた結果らしい」

「・・・結局わからずじまいか・・・」

「いや、そうでもない。

 ミカルズの塔で反応したことを考えれば、近くに住んでいるのは間違いないだろう」

「クレフーテか!

 ・・・はあーーっ、一気に4つも揃ってるんじゃねえかよー」

「ああ。

 だから緑の方か後回しで良い。

 先に3つの宝石か当初の予定通り灰の宝石を手に入れてくれ。

 スタンピードに乗じて探すことも含んでシャーリィとクラルを助っ人に向かわせた。

 合流は現地でしてくれ、古城辺りにいるはずだ」

「俺に探せますかねー?」

「安心しろシャーリィ達がお前を探してくれる。

 それにこの灰の宝石入手に最初の会議以上にクラルがご執心だ」

「なぜ・・・ってそうか、レッサーヴァンパイア」

「ああ、品位も何もないのが気に食わないそうだ」

「ヴァンパイアなりの感性・・・か」

「とにかく、お前も現地に向かってくれ。

 灰を先に入手し3つの宝石はその後、3人で捜索してくれ。

 これだけの宝石を集められるという事はそれなりの実力者だ気を付けろ」

「・・・はぁ~~~。

 出来るだけ頑張ってみるよ」



 翌朝、日の出と共に門に血相を変えて入ってくる冒険者がいた。

 見張りをしていた兵士が事情を聞く。

 大量のゾンビが群れを成して現れたという情報を受けたのである。


 程なくしてギルドに緊急依頼が発令される。


 クリスがまだ夢の中にいる頃の事だった。







【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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