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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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79 始まっている予感と始まりそうな予感

「・・・・・・この辺って言ってもな~。

 範囲が広すぎるって。

 本当にあるのかね~」


 面倒くさそうに頭をポリポリ搔きながら、森に囲まれた一本道をひたすら歩く男。

 ため息を鼻から吐き出しながら歩く。


「・・・・・・お?

 村らしき場所発見。

 ・・・?・・・何だ?」


 そこには確かに村があった。


 しかし、その村には荒らされた形跡があった。

 しかも、それもごく最近の後だった。


「・・・野盗とかに襲われたのか?

 あるいはモンスターか・・・」


 男はボロボロになってしまっているいくつかの建物から中の様子を窺う。


「扉は壊れている・・・・・・どういう事だ?」


 扉が壊されていること自体が問題ではなかった。

 問題はそこには軽く見えた範囲だけでも食料も金品になりそうな物も放置されていることだった。


「これは・・・やっぱり、モンスターか?

 ・・・!」


 ズザッ・・・ズザッ、ズッ、ザッ。


「ウウウ゛~~~。

 アア゛~~~・・・アア゛ア゛~~~~~・・・」

「アア゛ア゛ッ・・・アアア゛ア゛~~~~」

「ウウウ゛ウ゛ウ゛・・・・」


 部屋の奥から、建物の脇から、いたる所から次から次へと体の一部が欠損、もしくは下半身を失った元人間が引きずるように、這うように現れた。

 中にはしっかりとした足取りで男に向かって近づいて来る者もいた。


「ウヴアッ!」


 1人が男に向かってダイブするように顔から飛び込んできた。

 男はスッと見事な体捌きで避け、距離を開ける。

 飛び込んだ者を皮切りに次々と男に向かって、集まった者達が殺到し始める。


「ゾンビとはっ・・・どういう事だ?」


 男は建物から離れ、急いで外へ。


「・・・この村にいた奴全部か?」


 そこには、ゾンビの仲間になり果てた人や動物たちがいた。


 ゾンビたちは男を視界に入れると一斉に襲い始めた。


「おいおいおい・・・聞いてないぞこんなの!」


 男は剣を取り出し、襲い掛かるゾンビをカウンターで切り裂きつつ、後退し囲まれないようにしながら目の前に集まっていくように誘導していった。


「・・・おじさん。

 死んだ死体まで、嬲る趣味は・・・ない・・・のっ!」


 剣を上段に構え、炎を纏わせ、一気に振り下ろした。


 ゴオオオオオッ!・・・・・・・・・・・・・・・・シュウ~~~~~~~・・・・・・。


 一気に駆け抜けた炎によって燃やし尽くされたゾンビたち。


「あ・・・いや、今回は仕方ない・・・よな?

 ・・・すまない」


 一直線に飛んで行った、炎の渦によって、目の前にあった建物も、その奥の広場らしき場所とすべてが綺麗に抉られて消えていた。


 男は村を破壊したことに謝りつつ、周りを警戒。

 ゾンビがもういないことが分かり剣を鞘に納めた。


「どうなってんだ、ここ?

 話では普通の村しかないって聞いていたけど・・・ゾンビなんて、そんなの現れるのか?」


 ポリポリと頭を掻きながら、ここへ来る道中に聞いた情報に面倒くさそうにしながらも考える。

 しかし、目と声だけはいつになく真剣だった。


「(ゾンビなんて戦場に行けば、死体の中から生まれることは普通だ。

 アンデットも含めれば簡単に出現するしな・・・。

 だが、ここは普通の村・・・つまりは)

 ・・・あそこになんかあんのかな?」


 男は自分が開けた道の向こう。

 そこにある山の向こうを見て呟いた。


「・・・確か、かなり古いお城と砦の様な場所だったっけ?

 ・・・な~んか・・・面倒くさそうになってきたね~・・・」


 男はそう言って今後の方針をどうするべきかを考えるのであった。




「はい、コレ。

 昨日言ってた許可証だよ」

「ありがとうございます」


 昼近くに冒険者ギルドに訪れたクリスは受付の職員さんにお願いして、ギルド長と面会していた。


「一応これで君もミカルズの塔に挑戦できるよ~?

 どう?ワクワクしてる?」


 覗き込むようにクリスに顔を近づけるギルド長のセルリア。

 許可証を受け取ったクリスはどう答えるべきか困りながら笑って適当に返事を返した。


「ははは、まあ正直。

 昨日が昨日でしたので・・・あまり無茶はしない様にと・・・」


 初心者用のダンジョンで死にかけたクリスは今度はもう少し安全を取りながら挑戦したいとだけセルリアに伝えた。


「・・・キミは慎重だね~。

 もうちょっと攻めていく気持ちでガンガン進めればいいのに~」

「あははははは・・・それをやって昨日は大変な目に遭いましたから」

「なるほどね~・・・うん、それもそっか。

 分かった、とりあえずは自分のペースで攻略していったらいいよ。

 以前来たパーティ連中のまるで行軍の様な変な事はしなくていいからね。

 あれは、裏方、支援する者が居てこそ成り立つ方法だからね」

「はい、気を付けていきます」

「うん、素直でよろしい。

 ・・・その荷物という事は?」

「はい、今から行こうと思います。

 そのために今朝、必要なものを買いそろえていたんです。

 ・・・あ、許可証ありがとうございます」

「ウム!・・・それでは若人よ、行ってくるのだ~」

「はい。失礼します」


 片手を前へ出しクリスの形だけの指示飛ばしながらセルリアは見送ったのだった。


 クリスはそのまま北側、森に隣接しているため厚めの壁に覆われ見張りが何人も居る、門の入口へと向かって行った。


「・・・本当に無理はしちゃだめだよ・・・」


 どんなに強くても、まだまだ小さな子供。

 危険に喜んで向かわせるほどセルリアは豪胆ではなかった。



 北の門の入り口はそのすぐ外が林道で少し歩くだけで森になってしまう。

 どうしてこんな場所に町を建てたのか永い年月で記録にも一部しか残された居なかった。

 森にいた部族の一部がここに住処を作ったのが最初とも記録に残されていた。

 そのため、町とは、ほぼくっ付くような形になってしまった。


 そして現在、この北側の壁が厚めなのはモンスターが来た時に木が邪魔になり発見が遅れる可能性があるため他の場所に比べて厳重になっている。


 また、この先には多少、腕に覚えがある者達。

 つまり、新人を卒業した冒険者がギルドからのクエストでよく使われるエリアとなっている。


 その森のから程なくしてクリスが目指す場所、ミカルズの塔がある。


〔さて、クリス。

 昨日のケガのほどはどうでしょう?〕

「(大丈夫。

 昨日貰った回復薬を飲まなくてもいいくらいだった)」

〔あの時の様な不運は避けたいところですが・・・〕

「(そればっかりは・・・どうしようもないね)」

〔まあ、今回こそ、ゆっくりと様子見しながら行きましょう〕

「(そうだね。

 別に頂上を目指してるつもりはないし・・・)」


 その後もクリスは北側に向かう道中で周りの景色を楽しみながらサポートと会話するのであった。



 北の門には4人ほどの兵士が入り口の前を守っていた。


 そこへクリスは門を潜ろうと歩き出していたが・・・案の定止められた。


「はい、一応、冒険者です。

 ギルド長から・・・許可証も持っています」


 クリスはカードをアピールし、許可証を警備の兵士に見せた。

 どう反応していいのか戸惑う兵士だが許可証を疑う事はしなかった。

 許可証の名前とマークには特殊な細工を施されているらしく、偽造は難しいそうだ。

 それを知っているのか、小さな子供を森へ向かわせる事に納得はしていないが許可が下りているために渋々、道を通す兵士達だった。


「それじゃあ~」


 クリスは足早で森へと向かって行った。



 森の中はどこも似た様な感じの印象を受ける。

 しかし、よく見るとやはり違う。

 生えている木の種類によって太さや葉など性質が全く違う。

 そのため、苔などが生い茂る場所も決まってくる。


 奥へ行くほど、その面積が増えていった。


〔・・・いくつか、複数の冒険者パーティの気配がしますね。

 モンスターはそこかしこに居ますが・・・〕

「まあ、モンスターにとっては住みやすい場所なんだろう。

 何もない草原より食べ物も水もここなら確保できるだろうし」


 クリスは道に沿って歩きながら視界に塔を入れつつ歩いていた。


「あそこまで大きいと・・・内部は一体どうなってんだろうな?」

〔ダンジョンとおっしゃっていましたから、中もまた昨日の様に特殊な構造になっているかもしれないですね〕

「異空間なのかな?」

〔さあ?・・・ただ、異空間の様に内部を広大にできるのであれば・・・あのような巨大な塔にする必要はないでしょう〕

「・・・誰かが意図して作ったとか?

 バベルの塔みたいに・・・」

〔それだと、最終目標は神に自身も上り詰めることになりそうですね〕

「ははは、確かに。

 もしかして挑戦したかったのかな?

 もしくは、それぐらいの意志があるっていう表明だったとか?」

〔どうでしょう・・・。

 もし、これが人為的に創ったものならば、何がしたかったのか・・・。

 どのような世界でも人は何をするかわかりませんからね~。

 これも案外、ただ創ってみたかったとか、そんなオチかもしれませんよ?〕

「それはそれでスゴイけどな~?」


 微かに遠くで誰かの戦っている音や、モンスターの気配を感じながらもクリスは散歩する感じで塔目指して歩いて行くのだった。



「はぁ~~・・・・・・でかい」

〔ここまで、大きいと全体が見えませんね〕


 森が少し開けた場所にミカルズの塔はあった。

 視界には端から端まで塔の外壁しか見えない、上を覗けばあまりの大きさに塔の先、頂上が見えなかった。


「こんな所を登るのか~」

〔まあ、外をよじ登るわけではありませんし、この中を入っていくのですから、ゆっくりと攻略していきましょう〕


 塔の前には列を成して冒険者達が待っていた。

 数人の兵士や騎士が塔への入場に制限を掛けチェックしながら許可を下したいた。

 クリスもその列に並ぼうと、すぐそばの頑丈そうな建物を通り過ぎ、真っすぐ塔を目指して歩こうとしていたが・・・。


「ちょっと君!

 待った!ここには入っちゃいけないよ!?」

「え?」


 建物の2階からクリスを見つけた兵士の1人が呼び止めた。

 その声の後に建物の中に居た兵士も急いで出て、クリスに向かって走ってくる。


「・・・キミ、一体どこから来たんだ?

 ここに入ることは出来ないよ。

 っというかこの場所自体、どうやって入ってきたんだ?

 まさか、迷子か?」

「森の中を迷ってしまったのか?

 さ、私たちが案内するから安全な所に戻ろう」


 クリスを迷子と勘違いした兵士が町へ案内しようと建物内部から数人ほど仲間を呼んで送ろうとしていた。


 たまたま、塔目指して歩いていた冒険者パーティが数グループほどその光景を見ていた。

 中には笑っている者も数名。


「おいおい、こんな所にガキがいるぞ?」

「お~い、坊主~迷子か~?」

「迷子にしたってこんな所に来るなんて・・・」

「あの塔目立つからな~。

 どうせ目印にしたんだろ」

「あ~、納得」

「怪我は無さそうだし、良かったじゃない」

「確かにな、しかし、こんな深くまで町から少し離れすぎていないか?」

「・・・リュックを持っているから何かの素材集めでもしていたのかもしれんのう」

「それで、気づかずこんな所まで?

 危ないわね~」


 色々な事を言われているが慣れてしまったクリスは特に気にすることなく。

 許可証を兵士に見せ、説明した。


「ギルド長から許可は貰っています。

 はい、コレです」

「えっ!」

「・・・確かに、本物だ・・・」

「どうする?」

「いや、でもここに彼を通せって書いてあるし、マークと名前が付いてるから・・・。

 俺たちが勝手に止めちゃダメだろうな」

「・・・あ、止められることは織り込み済みだから、こう書いてるのか・・・」

「ああ、そういうことか・・・」

「って事は・・・」

「ああ。許可するしかない」


 兵士たちはクリスに許可証を返し、塔へ入ることを許可した。


「どうぞ、お進みください」

「あ、はい。

 ありがとうございます」


 クリスが進むための道を譲り、兵士はその背中を見送る。

 クリスは塔へ目指して多少、注目されることは理解していたので気にせず進んだ。


 兵士が見送るその態度に驚き、気になった冒険者たちが兵士に詰め寄る。


「おい!どういう事だ?

 あんなガキが塔に入っていいのかよ!」

「いくら何でも塔に挑ませるのは無茶だろ」

「何考えてるの!」

「なに、あっさり許可してんだよ!」

「私達だってここに入るまで苦労したのに~」


 あまりにあっさりクリスを通した光景が納得がいかないと抗議したり、危険だから連れ戻した方が良いという者まで現れた。


「ギルド長から許可が下りてる・・・。

 それが何を意味するか、分かるでしょう・・・」


 1人の兵士の言葉に冒険者たちは黙ってしまった。


 ミカルズの塔に入るくらいのランクまで昇ったほどの冒険者が、兵士の言っている意味に気付かない者なんてほとんどいなかった。


 それはギルド長が責任を持って許可したことなのだから。


 ギルド長が責任を持つ意味が分からない方が冒険者稼業をやり始めて長いのであれば気付かないわけがなかった。


 たまたまクリスと居合わせた冒険者達は驚きながら、彼が塔へ向かうのを見送ってしまうのだった。

 塔の前の入場でも似た光景を見ながら。


 そんな中、不穏な気配を漂わせる者がいた。






【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 19

 HP 224 MP 201

 STR 89

 VIT 80

 INT 92

 RES 81

 DEX 84

 AGI 88

 LUK 56

『マナ性質:レベル 1』『強靭:レベル 1』『総量増加:レベル 5』

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