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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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7 ステータスと謎

 今回、さっそく同じ孤児院にいるモルドとアーシュに頼んでステータスを見せてもらうようお願いした。


「お願い!ステータスを見せて!」

「うーん、あのねクリス。

 ステータスは簡単に人に見せちゃいけないものなんだよ?」

「うん、それはわかってるんだ。

 ただ、モルド達がどれくらい強くてステータスがどれだけ必要か知りたいんだ」

「モルド兄ちゃん。

 別にいいじゃねえか、クリスに見せるくらい。

 なんか問題があんのか?」

「アーシュ・・・そういう問題じゃない。

 いいか?、これは今後クリスがもし冒険者とかで世界に旅をするとき、生きてくうえで必要になることを教えてるんだ」

「ふ~ん、でもそんなの今じゃないからいいじゃん。

 いつかオレだって世界を旅して勇者って呼ばれるくらいの伝説を作る英雄になるんだから」

「アーシュ、今は気にしなくてもいいが、そのいつかのためにはちゃんと知っておかなきゃならない事なんだ」

「は~あ、兄ちゃんは固いなぁ」


 この押し問答をお願いして10分くらい、どうやら本当にステータスの情報はかなり重要ではあると分かっていたが、ここまで慎重に厳重に自己管理しないといけないものだとは知らなかった。

 少し自分の自己認識を改めないといけない、とクリスは考えていた。

 それに比べて、アーシュのどこかオープンすぎるところは危険だと思っていた。

 確かに、そのいつかにアーシュも情報の大切さは気づくと思うが、今は仕方ないのかもしれない。

 そして、俺にはどうしたって危険をできるだけ少なく、さらに確実に経験値を積み上げるためにはこの情報が必要なことだと思った。

 さすがに、俺のステータスがひとケタしかないのは明らかに弱すぎるのではないか?

 このままでは、もし万が一の時、逃げられるのかが怪しくなってくる。



 孤児院には何人も子供がいる。

 その中でクリスは一つ年上のミィナから同い年当たりのほかの子供たちとかけっこをしたとき、ほぼ必ずビリだった。

 ほぼなのは、クリスに気を使って手を抜いてくれた時の2回のみ。

 これはさすがに問題だと考えてモルドたちにステータスを聞くと決めたのが昨晩のベットでのことだった。



「モルド・・・あなたの言ってることはもっともよ?

 でも、私からもお願いできないかしら?」

「・・・クレア姉ちゃん」

「私もステータスをクリス君に見せるわ?

 これであなたとお相子とは言わないけれど。

 クリス君のこれからだと思って。

 孤児院のお兄ちゃんとして、弟たちのことを思って手伝ってくれないかしら?」


 途中から話を聞いていたクレアが見るに見かねて話を持ち出した。

 クレアなりにクリスを助けてあげようとお願いする。


「・・・分かったよ。

 別に意地悪してこんなことを言ってるわけじゃないから」


 クレアからもお願いされ受け入れるモルド。


「モルド兄ちゃんもさっさと見せればいいのに」

「アーシュ」


 はぁ~、とアーシュの能天気さに呆れるモルドだった。



 場所は孤児の教会に移動してここで正確に鑑定で調べる。

 祭壇の横の教卓に水晶を持ってきたクレアがクリスたちを集める。


「念のために言っておくけど、鑑定による情報をむやみに誰かに喋っちゃだめよ?

 特にアーシュ」

「わ、わかってるよ、クレア姉ちゃん」

「ふぅ・・・本当かしら?」

「まあ、僕が近くにいるときは注意しておくよ」


「お願いね?

 モルド」

「なんでモルドにちゃんに言うんだよ」

「ははは」


 そんな3人のやり取りを聞きながらクリスは少し早くなっていく鼓動を抑えながら鑑定を待っていた。


「さ、それじゃあ鑑定を始めちゃうけど誰からしちゃう?

 ここは、私がやろうか?」

「オレ!オレからやらして!」


 かなり張り切る感じで手を挙げアーシュが立候補した。


「わかりました。

 まずはアーシュからね?」

「よっしゃー!

 オレもだいぶ強くなったんじゃないか?」

「まだ、始めてないのに早いなアーシュ」

「だってモルド兄ちゃんについて言ってモンスター結構倒してきたんだぜ?

 強くなるのが当たり前だろ」

「んもう、張り切るのはいいから早く水晶に手を付けなさい?」

「はーい」


 意気揚々と水晶に手を付け、ステータスの結果を楽しみにするアーシュ。

 水晶に上から手を添えるとわずかに輝きだした。


「これでステータスを見るの?」

「ん?・・・ああ!

 そうか、もしかして鑑定するところ見るの、クリスは初めてか・・・」

「うん、聞いたことはあるけど、それだけだから」

「この状態で少し待つと、水晶が、ギルドとかだと専用の板が触れた人の中の情報、マナとかを読み取ってそれから私たちの前に表示されるのよ?

 だから、普段は専用の部屋とか周りから見えないように隠して調べるの」

「へ~」

「そうしないと、自分のスキルとか弱点がバレて、厄介な連中に絡まれたら・・・」

「命に係わる」

「そういうこと。

 クリスはまだ3才なのに賢いなー。

 その賢さが少しはアーシュにも移ったら・・・」

「どういうことだよ兄ちゃん」

「その無鉄砲に突っ込むところがマシになるのに」

「危険でも前へ進む、それが男にカッコ良さだよ兄ちゃん」

「誰の言葉だ?」

「英雄、ラクオーニ」

「前はツイコムじゃなかったか?」

「どっちも英雄!」

「・・・ふぅ」


 肩の位置を上げてから下げ、モルドはあからさまにやれやれといった表現をした。


「・・・ん。

 終わったようね」


 水晶に触れてからわずかに光っていた水晶が輝きを無くした。


「それじゃあ開くわね?」

「よしこい!」


【アーシュ・レイハルト】 7才 人間 仮登録冒険者

 レベル 22

 HP 582 MP 63

 STR 96

 VIT 59

 INT 23

 RES 34

 DEX 41

 AGI 73

 LUK 35

 『速度UP:小』『追加の一撃』『攻撃補正』


「おおー!レベルが4も上がったー!」


 ガッツポーズを上げるアーシュ。


「アーシュはレベルが上がるのが早いねえ」

「そうなの?」


 空中に半透明のスクリーンが現れアーシュのステータスに釘付けだったクリスはモルドの言葉に反応して視線を移す。


「そうだよ?

 本当はもっと掛かるんだよ。

 僕がアーシュのレベルまで上がったのだって仮登録から新人冒険者になって1か月くらい経ってからだもん。

 確かに僕の仕事の依頼を手伝うようになってからモンスターと戦うときは増えたと思うけど、それでもレベルの上りはかなり早い、もしかしたら英雄って呼ばれてる人と同じくらい早いかも」

「へ~。

 でも、レベルが高くても実力がそうとは限らないってギルドにいるおじさんに聞いたけど?」

「まあ、その通りなんだけどね。

 それは、今後のアーシュ次第だね」

「まあ!、アーシュすごいのね。

 もうそんなに強くなったのね。

 だったら今度から重い食料を倉庫に荷運びも頼めるわね!」

「え!・・・ま、任せてよ姉ちゃん」


(本当は嫌なんだろうな。

 だけどクレアさんが素直にアーシュを頼りにしてるから断りづらいんだろう)


 何とも言えない、作り笑顔を向けながら返事を返すアーシュを憐れむように見つめるクリスとモルドだった。


「さて、次は僕かな?」


 そういってモルドが水晶に触れた。


「モルドもこの前よりたくましくなったから、どうなってるのか楽しみね」

「そんなにすごくないよ、クレア姉ちゃん」

「あら?わからないわよ?」


 少しからかっているように微笑みながら話すクレア。


【モルド・ファウン】 11才 獣人 Hランク冒険者

 レベル 28

 HP 798 MP 112

 STR 126

 VIT 105

 INT 53

 RES 78

 DEX 84

 AGI 120

 LUK 51

 『身体強化:微小』『腕力:小』『聴覚補正』『嗅覚補正』

 M

 『ストーンシュート、ウォータシール、ファイア』

 固有

 『ブレス(咆哮):小』


 モルドの表示されたステータスを見てクリスは考え込む。


(おそらく``M``は魔法だろうその下の名前からして。

 使えるものが今表示されているものだろう。

 その下のは種族特性かな?)


「やっぱりモルドもずいぶんたくましくなったじゃない。

 いつもオドオドしてたあの頃の姿が懐かしく感じるわ」

「ははは。

 さすがにあの頃よりは強くなって当然だよ。

 それと、昔の話はやめてよ」

「だってー、いつもどこ行くにも一緒にいたじゃない。

 あの頃の可愛かったモルドが思うと・・・ね?」

「だから、思い出さないでって・・・」

「スゲー!やっぱモルド兄ちゃんの能力たけぇー!

 よし、オレももっともっと強くなるぞー!」

「ははは、そんなに頑張られちゃ、兄ちゃんすぐに追い越されるな」



「それじゃあ、次はクリスがやるのか?」

「え?」

「いや、鑑定だよ」

「・・・ああ。

 そうか」

「?、どうしたんだ?」

「え!いや、何でもない」

「そうか?だったら、とりあえず水晶に触ってみな?」

「う、うん」

「あ!」

「どうしたの?クレア姉ちゃん」

「モルドのステータスを見せてもらう代わりに私も見せるって言ってたのすっかり忘れてたわ」

「ああ、そういえば」

「じゃあ、クリスの後にすればいいよ」

「うーん、一応約束だし、私が先にクリス君に見せていいかな?」

「え?それは別にいいけど・・・クリス、先に姉ちゃんが鑑定するけどいいか」

「う、うんわかった。

 ・・・お願い」

「それじゃあ私から・・・」


【クレア・ミール】 16才 人間 シスター

 レベル 51

 HP 1208 MP 781

 STR 191

 VIT 143

 INT 322

 RES 265

 DEX 118

 AGI 137

 LUK 83

 『MP増加:中』『癒しの加護』『慈しむ抱擁』

 M

 「ヒール、ヒールライト、ヒーリング、ヒーリングサークル、キュア、キュアライト、ライト、ライトソーン、ライトシール、ライトシェル、ライトカバー、レザリング、レザリングライト、レザリーヒーリング」

 固有

 『フェリアーゼの加護』『懸け橋』


 クレアのステータスを見ているとやはり思うのは・・・。


(俺のステータス低すぎじゃね?)


 という感想しかなかった。


「まあ、こんな感じかな?

 クリス君どう?

 これで良かったかな?」

「え?、あー、うん。

 ありがとう。

 みんなのおかげで鑑定のことがわかったよ」


 こういうのが今は関の山だった。


「じゃあ、次はお待ちかねのクリスの番だ!」

「さ、じゃあ水晶の前に来て?」

「わかった」



「あら、あなたたち。

 あ!クレア、ちょうど良かったわ。

 今から病院に行くから一緒についてきて欲しいのよ?」

「え?シスター長どうされました?」

「病院の患者に今日は冒険者の方々がケガをして大勢運ばれてきたのよ。

 だから、治療に手伝ってほしいと、病院や近くの教会から応援要請が来てるの」


 教会の講堂に入ってきたシスター長がクレアにそう説明した。

 その後ろの入り口には応援を頼んだ別の教会のシスターの姿が見える。


「分かりました。

 すぐに行きます。

 ・・・ごめんね、クリス君。

 クリス君の鑑定はまた今度ね?」

「あ、うん分かった・・・」

「そう落ち込むなってクリス。

 また今度すればいいんだし」

「そうだね。

 クリスのステータスがどうなってるのか僕も気になるけど、今日はもうあきらめよう」


 優しく慰めてくるアーシュとモルド。

 当の本人っであるクリスにとっては、むしろ助かったと考えていたが表情には出来るだけ出ないように誤魔化した。




「・・・ねえ、鑑定ってステータスの力とかスキルとかだけは水晶とかじゃないと見れないもんなの。

 自分の能力とかって」

「・・・?」

「何言ってんだ?」

「え?」

「鑑定の能力を持ってる人は多少は相手のことが見えたりするらしいけど。

 あくまである程度なんだよ」

「?、だから、自分で自分のステータスとかって見れないの?」

「それも見れるのはあくまで、相手の鑑定で見るのと大差ないよ。

 どんなステータスの数値になってるのかとか上がったのかどうか、どんなスキルを手に入れたとかはギルドや教会でないとわからないんだよ」


「は?、自分のことも調べられないの」

「そんなのがあったら、もっとうまくやって情報をごまかすやつとか現れたりするだろうなぁ」




(マジか!じゃあ俺のステータスがしっかり表記されるのは何なんだ?

 これが、異世界転生特典とか?

 まあ、王道の作品だと結構化け物って言われてるけど・・・

 俺のはどうなんだろう?)




 謎がさらに増え、クリスたちも教会を後にした。

やっと主人公以外のステータス公開!

結構疲れる。


気を取り直して、今後も表記する能力とかはあくまで演出上の目安くらいにお考え下さい。

気楽に読んでいただけると幸いです。

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