70 計画と計画
「ふ~~~~~・・・さっぱり~~」
〔やはり体を洗えるというのは偉大ですね〕
「?、お風呂の入るのは俺なのにそんなことが分かるのか?」
〔感覚の問題と言われればそこまでですが。
身体を清潔にすることがクリス自身の精神にリラックス効果を与えます。
すると、クリスの魂に繋がっている私もその影響を受けるというわけです。
当然、独立していますが。
こういったリフレッシュは私も欲しい所なのです〕
ギルドの紹介で宿を見つけてもらい、宿泊が出来るようになった後、クリスはさっそくこの町にあると聞かされた大衆浴場に向かった。
かなり大きな場所でいくつかに区分けされていた。
食堂も兼ねた場所のようであった。
「あれは銭湯というより完全にスパだったな。
丁度ご飯も食べられたし・・・良い場所を紹介してもらった」
クリスはこの町がかなり気に入り始めていた。
〔それで・・・クリス地図の方はどうなのでしょう?
この辺りに宝石があるのでしょうか?〕
「おっと、そうだった。
っつってもあまり資金も無いから、また簡単なクエストでもいいからお金を集めなきゃ」
〔はあ・・・世の中はやはり金ですね〕
「その言い方、どんな状況でもあまり良い時に使わない言葉じゃないか?」
クリスはリュックから取り出した地図を確認した。
「おっ?なるほどね~、クレフーテの町に着いたから地図もその周辺が明るくなったな・・・」
〔・・・この地図はこの辺りの地方、国を基準としているのでしょうか?
「そうじゃないか?
このクレフーテが思ったより大きめに表記されたし、もともと一部の地方の事だとは思っていたし。
う~ん、でも何だろうなこの×印はおそらく宝石か何かだとは思うけど・・・。
うっすら光ってるこの周囲は・・・」
〔おそらく×は明確な場所なのでしょう。
この光っている場所はその周辺にあるのを示しているのでしょうね〕
「・・・分かり易くて助かるけど。
確か、宝石って封印していたんだよね?代々。
っにしては、あまりに簡単に情報が分かるんだな。
普通こういうのってもっと慎重になって一部の者達以外、知らせないものなんじゃないか?」
〔・・・可能性としては、シェイミ―達を助けた時にいたモンスター。
さらに、アヌイの村のダンジョンで出会ったモンスター。
この2つから封印自体が弱まっているか、あるいは何らかの信号を送っているのかではないかと〕
「・・・どっちにしても時間が無さそうな話だな」
〔はい。といっても焦って良い事はありませんし。
それにここまであやふやな光りだと地図の真っ黒く塗られた場所とか輪郭だけでは探しようがありません。
ここは、情報を手に入れつつ行動するしかありません〕
「・・・・・・足で探せってことですね」
〔そういうことです〕
思考を切り替え、クリスは明日に備え、すぐに就寝するのだった。
「おい、どういうことだ」
「何がだ?
どうして奴から連絡がこない。
こちらに向かってきているのか?」
「そんなこと聞かれても知らないわよ。
私は私で忙しかったの!
目的の宝石はあなた達の仕事でしょ!?」
「はいはい。そうカッカしな~い。
ワタクシも少しだけ小耳に挟んだ程度ですが、どうやら黄色い宝石を入手してすぐに緑の宝石の在り処まで掴んだとかで一石二鳥だとかで勝手に回収しに向かったそうよ」
「ハア!
そんなの知らねえんだけど!」
「あら、あなたと一緒に宝石を手に入れたすぐ後だから、てっきり一緒に向かったとばかり」
「・・・ッチ、あのヤロー手柄を横取りしようとしてたな?」
イライラが募り口調が乱暴になってしまう。
別の者が、それを意に介さない様に話を切り替える。
「っで?
結局、奴とは連絡が取れないのか?」
「分からん。
あいつがどこに行ったのかも・・・」
「・・・という事は・・・つまり?」
「何らかの事態に遭遇したか、あるいは・・・単純に集合日を忘れているだけか・・・」
「後半だったらタダじゃおかないんだから」
「ふふふ、落ち着いて。
何もかも悪い事ばかりではないことを喜びましょう」
「・・・仕方ない。
現在の状況を確認だ」
集まらない仲間を放置し集ったメンバーだけで会議を行う。
「まずは、宝石は何が集まった?」
「俺が赤だ。
どこかのバカがダンジョンから盗んできたようだ。
売り払ってちょっとした金稼ぎでもしようとしてたのだろう」
「うお、マジかよ!
は~あぶねえ、もしそんなことになれば探すのに一苦労しただろうな。
特にお前が穏便にできずに悪目立ちする方法で」
「ふん、俺は面倒なのが嫌いなだけだ。
さっさと渡せばいいものを無駄に手間取らせて・・・」
「では、次はワタクシね。
一応、保険もつもりだったのだけど。
まさか本命よりも先に向こうが動いてくれるとは思わなかった。
この通り、ワタクシは紫の宝石を手に入れたわよ」
「本命の方はどうだったのよ?」
「ぜ~んぜんダメ。
何を勘違いしたのか、別の宝石を命がけで守ろうとしていたわ。
ワタクシたちが欲していたのは祀られていた物ではなくて、その控えの者が家宝として持っていた物だったのに・・・」
「ふ~ん。
っで始末したの?」
「ええ、しっかりと・・・。
あの時の驚きと絶望の目・・・最・高でしたわ~」
「それは良かったわね」
「ええ・・・とっても~・・・んふふふふふふ」
「はぁ・・・ダメだこりゃ」
「それで次は誰だ?」
「んじゃあ、あたし。
私の方は橙の宝石を手に入れたわよ?
ほんっと、今思い出しても腹立つ~」
説明している者は怒ってテーブルをダンダンと叩いている。
「弱いくせに意地貼っちゃって、正義だ何だと偉そうに上から目線で言いやがったのよ!
不利と見るや逃げようとする上に私にバレない様に宝石も仲間に持たせてバラバラに散っちゃったのよ!?
おかげで一人一人捕まえなきゃいけない羽目になったのよ」
「モンスターを使わなかったのか?」
「使ったわよ。
中には中途半端に強いのがいて、ソイツのせいで捕まえて吐かすのに時間を喰わされたのよ?
分かる!あの時の無駄にニヤついた顔。
~~~~っ!もっともっとボコボコにしとけばよかった!」
「落ち着け。
とにかく手には入ったんだな?」
「ええ、この通り」
「よし。
これで赤、紫、橙の3つは手元にある」
「残りは青、緑、黄、黒、灰、白だな」
「黒については何もわからん」
「青は?」
「・・・この赤とセットだと記録には残っていたのだが。
どうも、これを持っていた奴らは知らなかったようだ」
「じゃあ、そいつらを見つけた場所の近くなんじゃないのか?」
「無理だ」
「は?なんでよ」
「あそこは精霊と魔物が守護している場所だ」
1人の仲間が言った言葉に沈黙し互いの顔を伺うメンバー達。
「・・・・・・誰が行く?」
「私はイヤよ!」
「ワタクシもパスで~」
「では、お前が行くか?」
「えっ!・・・いや、それは遠慮したいな~」
「周辺のモンスターや遺跡のモンスターは問題ないんだけど・・・」
「守護者がいるとね~?
今のワタクシたちじゃ上位は太刀打ちできないし~」
「しかし、いずれは向かう事になるかもしれない」
「あそこにあるの?」
「セットであったのなら、それしか考えられん。
それに、俺が行った場所の近場のダンジョンはあそこぐらいだ」
「つまり、封印されている可能性で考えたら~・・・そうなってしまうわね~」
擦り付け合いになりそうになった所でもう1人が会議の部屋に入ってきた。
「・・・大丈夫。
青の宝石はダンジョンの外に出ている」
「・・・お前か。
どうしてわかる?」
「ちょっとだけ、あんたが赤を入手した時に感じた。
誰かが持ち出したと思う」
「・・・・・・確かなようだな。
お前がそこまで言うのなら間違いないだろう」
「ねえ?
その力を使って他の宝石も探せないの?」
「・・・難しい。
他の宝石はココにあるのと違って波長が弱い。
たぶん、まだ封印の効力が強いからだと思う」
「はああぁぁ、つまり地道に探せってわけね」
「えええええ!
めんどくさ~い」
「う~ん、流石にワタクシも遠慮したいですわね~」
宝石を探すことに異論はないが、抵抗している勢力に少々辟易したメンバーもいて、その中でのただっぴろいエリアに中からたった1つの宝石を探すことにはなかなか乗り出せないでいた。
しかし、1人の者は意に介さず。
「・・・微弱でも構わない。
おおよその辺りをつけてくれ俺が探す」
「黒に関しては分からないけど・・・白は・・・たぶんこの辺り。
灰はここから少し近い、この辺りだよ」
「他に色は~」
「青と同じで何かあったのか何も感じられなくなったんだ」
「・・・。
青は後回しだ先に白か灰を探す」
「でしたらワタクシが灰にしようかしら~」
あーだこーだ行っても埒が明かないと思った1人が進んで宝石探しに候補した。
しかし、もう1人が指示を出した。
「いや、それは・・・お前がやれ」
「えっ!ちょっ、なんで俺が~?」
「計画の時に気楽にやっていたそうじゃないか?
俺たちが探して出掛けている時も、遊んでいたと聞くぞ?」
「!。・・・いや、あれは・・・そういうので・・・はなく・・・て、そう!
敵情視察と今後の過激な計画のための下準備をだな・・・」
「つまり・・・遊んでいたのよね?」
「遊んでらしたのですわよね~」
計画には賛同しているがどこか楽をしようとしていた者の行動がバレており他のメンバーに指摘され言葉に詰まった。
そこを、さらに他のメンバーからの訴えるような目に耐えられなくなっていく。
「・・・」
「ああ!分かったよ探しに行けばいいんだろ!?
行きますよ、行かせていただきます!」
「決まりだ。
では俺が白。
お前が灰の宝石を探せ」
「りょーかーい」
「他の件については・・・」
「あ、一応、必要って言われたモンスター数は揃えたわよ?
確か300ほどで良かったのよね?」
「ああ。
確か冒険者で言う所のCランクだったか」
「それ以上のモンスターは作るのに苦労したわ~。
あまり強すぎると言うこと聞かないんですもの」
「助かる。
それで、どれくらいの強さになった?」
「ランクによる強さってわからないんだけど?」
「・・・レベル数で構わん。
実力より単純なステータスによる強さで教えてくれ」
「わかった。
えーっと~、レベル200代が120体、270代が75体、350代が54体、400代が38体、600代が9体、850代が3体、1000が1体・・・これで300体になるわね」
「おいおい!すげー戦力じゃねえか!
っつーかそれだけの戦力があれば大国も滅ぼせるだろ!」
「はぁぁ・・・確かに、戦力やレベルによるステータスだけ見れば脅威だろうし、圧倒的な力は戦術を意味をなさなくだってする。
しかし、それは・・・机上のゲームなら、だ」
「ええ、単体でこのレベルのモンスターを相手取れる化け物が人という種族の中にもいます。
そして、1人ではだめでも数人のパーティーで挑まれればあっさりと逆転されたりします」
「これだけいても上には化け物たちがたくさんいる。
今の俺たちでは太刀打ちできない生物はごまんといる。
今回のレベルに関してもあまり過信しすぎるな」
「そういうことね、わかった?
まあ、一応これだけ集められたけど、流石にこれ以上だと誰かの目につくし、いくらココがまだ大丈夫でも時間の問題よ?」
「分かっている。
これ以上は下手に増やさない方がいいだろう。
ただでさえ、赤の宝石を手に入れる時に近くに奴らがいた気がするからな」
「えっ!ひょっとしてもう嗅ぎつけられたの?」
「いや、まだ大丈夫だろう。
俺達が宝石を探していることは気づいているだろう。
おそらく、戦争にモンスターを巻き込ませることも考えているだろうが・・・」
「まだ~、私たちにとって宝石探しがメインでそれを探す間の時間稼ぎだってことは気づいてないでしょうね~」
「そうだ、向こうも気づいて先手でモンスターを退治するだろうが、こちらの戦力・・・おそらく、国が動く」
「?・・・つまり?」
「国が持てる戦力は決まっている。
特に化け物と言われる規格外な奴らは、それこそ1つの国と契約した者、その専属が1ヶ所に集中すればパワーバランスもあったものではない」
「世界が1つの国に支配されてもおかしくないの」
「でも、実際にそうなっていない」
「つまり、それはそれぞれの思想や価値観の下、対立と協定が結ばれているからだ。
だからこそどの国も一筋縄にとはいかない。
それにそこまで上り詰めた者を国が・・・いや、そこを統率している者がどれだけ扱いきれるかになてしまう」
「そして今回、私たちの目的には国の中でも上位の存在。
冒険者や英雄と呼ばれる者達が最も邪魔なの」
「幸い、この騒ぎを早く対応解決してくれるのならそれだけ、そこの国の守りが薄くなり私たちが楽に通れるってわけ。
宝石探しに専念できる」
「なるほどな~、そういう事か」
「っで出すタイミングはいつにするわけ?
向こうこっちの目的に気づいたら、モンスターを暴れさせる効果も弱まっちゃうわよ?」
「それについては任せて。
計画はまだバレてないから、向こうは怪しんでいるだけだから。
たぶん高ランクか英雄クラスを呼んで調査をさせようとしてる段階だと思う」
「それじゃあ、マズいんじゃないかしら~」
「問題ない。
せいぜい呼んでも2,3パーティーが来るかどうか。
災厄クラスでも人というのは自国を最優先にするため戦力投入を渋るはずだ」
「じゃあ」
「ああ、モンスターの量産は終了。
宝石集めに専念する。
計画は第二に移行する」
次の計画の発令により会議は終了の合図なった。
メンバーがそれぞれの思い思い寛ぎだす。
「りょうか~い。
は~~やっと休憩できる~」
「ご苦労だった。
少しの間だが休息をとっておいてくれ」
「ワタクシもそ~させてもらいますわね~」
メンバーが去って行く中、遅れてきた1人が指揮を取っていた者に話す。
「それであの男は?」
「国でふんぞり返っている奴か?それとも・・・」
「前者の方」
「あいつは・・・まあ都合よく動いてくれたんだ。
少しくらいの旨みを味合わせてやらなければな」
「信用できる?」
「権力と支配欲が強い男だ、こちらがまだ使えると思われているうちは向こうも手を貸すだろう。
・・・それに、戦争による支配に随分と力を注ぐ様子だしな。
俺達に気付いた奴らが動くタイミングが遅ければ、あの男が先に宣戦布告して戦争に持ち込むだろう。
そこに便乗してモンスターを少し導入すれば、奴も勝ち戦にご満悦になり周りが見えなくなるさ」
「後者の方は?」
「あいつは分からん。
あいつはそもそも俺達とは違う系統だ。
おそらく仕えている御方が全く違う。
以前は共通の理由があって行動を共にしたに過ぎない」
「わかった、じゃあ僕はこのまま少し眠るね」
「ああ、すまないな。
また必要な時に起こすから今はゆっくり休んでくれ」
「そうする」
各々が去って行った。
そして、会議の部屋は真っ暗になっていくのだった。
【クリス】5才 人間(変化)
レベル 7
HP 57 MP 49
STR 25
VIT 22
INT 28
RES 21
DEX 24
AGI 27
LUK 12
『マナ:レベル 5』『強化:レベル 5』『総量増加:レベル 1』




