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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
71/473

69 お、お前はいったい・・・なんちゃって

「おかえりなさ~い!

 シェイミ―ちゃん、キルシュちゃん!」


 屋敷の門を潜り、玄関を入った瞬間、シェイミ―とキルシュは誰かに抱き着かれた。


「うわっ・・・お母様!

 ただいま」

「ただいまおかあさま」


 その人はシェイミ―達の母親だった。

 目がおっとりとしていて優しそうな人だった。

 プロポーションは・・・大変すばらしかったです!

 2人に抱き着いてもあふれ出してしまいそうなそのたいへん大きな・・・


〔おっほん!〕

「(おっと、失礼)」

〔・・・。

 たまにクリスはむっつりを発揮されますね〕

「(俺も男です。

 そういう考えがあったっていいと思うんですが)」

〔・・・・・・〕

「(すみませんでした。

 できるだけ気を付けるようにします)」

〔・・・〕


 あれ?いま、ため息をつかれたような・・・まあ、いいか。



「レナ―シェ様、只今戻ってまいりました」


 ビスガルは騎士の礼をする。

 そして、横に並んだリンジーもそれに倣う。


 わが子に抱き着いていた母親は立ち上がり。

 屋敷の主としての顔になって2人を見て答えた。


「・・・ええ、ご苦労様です。

 シェイミーとキルシュをよく無事に連れ戻しました。

 礼を言います」

「ハッ・・・もったいなきお言葉」


 そこには確かな忠節を持った主従関係があった。

 クリスはその光景に少しばかり感動していた。

 現代の地球にはもうおそらく無い、昔の話に出てくるとても厚く固い志を感じたからだ。

 まるで映画の世界に入ってしまった錯覚にも感じるほどに。


「っとまあ、堅苦しいのはこれくらいにして。

 本当に無事にみんなが帰ってきて嬉しいわ。

 護衛ありがとね、ビスガル、リンジー」


 ホントに一瞬だった。


「(これが、現実・・・か)」

〔幻想は捨ててください〕


 心なしか真っ白に燃え尽きかけていたクリスに追い打ちをかける様に言うサポート。


「ははは、レナ―シェ様、一応客人がいる前なのですからもう少し厳かにしていただかないと」

「ビスガルさん、レナ―シェ様にそれは・・・」

「う~ん、私そういうのあまり好みじゃないのよね~。

 必要な場面ってのはあるのだけど、毎回毎回やっていけた試しがないのよね~」


 とてもおっとりとしている、それでいて人に不要な緊張を与えないとても親しみやすい婦人だった。


「それでビスガル、その可愛らしい子がお客様かしら?」

「・・・全くこの方は・・・。

 ええ、そうです。

 我々の命を助けてくれた冒険者のクリス君です」

「あ、初めまして」

「あらあら、この子が冒険者なの?

 凄いわね~」

「はい、クリス君のおかげで私も助けられたようです。

 私とビスガルさんは戦闘中に気を失って・・・。

 たまたま居合わせたクリス君がシェイミ―様とキルシュ様と我々を助けてくれたのです」

「ふ~~~ん、そうなんだ~。

 ・・・分かりました。

 それについては主人もいるし上の執務室で詳しく聞きましょう」

「はい・・・では」

「・・・」


 とてもおっとりしているが一瞬見せた笑顔の中の目には何かを見定める様なモノをクリスは感じた。


〔あの方・・・クリスを見極めようとしていましたね〕

「(うん。

 一瞬だったけど、そんな感じがした。

 かなりな切れ者タイプ?)」

〔少なくとも、やり手であるのは間違いないかと〕


 クリスはこの町が都市と言われてしまうほどの巨大な場所になったのはダンジョンによる恩恵だけではないと直感的に感じた。


「(これは、シェイミ―達の両親ってかなりすごいんじゃないか?)」

〔ええ。相当優秀なのでしょうね〕


 クリスは階段を上がっていくレナ―シェとビスガルとリンジーの後姿を目で追いかけるのだった。


「クリス君?どうするの?」

「え?」

「お母様、行っちゃったし、これからどうするのかなって」

「・・・あ、そっか。

 もともとシェイミ―達の護衛で付いてきたけど、もう終わってたんだった。

 う~ん、どうしよう?

 とりあえず宿を探すのが先かな?」

「あ、そっかクリス君は冒険者だもんね。

 まずはどこかに泊まる場所を探すのが先だよね」

「ええ、クリス兄ちゃん遊ぼうよ~」

「こ~ら、ダメよ?キルシュ。

 クリス君が泊まれる場所を見つけないと、野宿しなくちゃならないんだから」

「ええ~」

「「クスクスクス」」


 近くを通るメイドや執事がコチラの様子を微笑ましそうに見ていた。


「うん、とりあえずギルドに行くよ。

 そこなら冒険者が泊まれる場所も紹介してもらえるから」

「じゃあ、私が案内しようか?」

「あ!僕も~」

「いや、大体の場所だけ教えてくれれば自分で探すよ。

 それにせっかく帰って来たのにまた出かけると・・・」

「あああ、そっかあぁぁ。

 お母様も心配してたし・・・仕方ない。

 キルシュ、今日は諦めましょう?

 また勝手に出て行ったらお父様も心配しちゃうから」

「ううぅぅぅ」


 分かり易くしょんぼりするキルシュ。

 シェイミ―の言葉にどれほど理解しているかは分からないが、お姉ちゃんの注意をしっかり聞こうとしていた。


「冒険者ギルドはね、この屋敷を出て少し真っすぐいった所を右に曲がるとあるのよ。

 建物が大きくて4階まであったかしら?

 だから、他に建物や家に比べて大きいから一発で分かるはずよ?

 もう1つ冒険者ギルドがあるんだけど一番近いのがそこかな?」

「わかった、ココをまっすぐ行って右の大きな建物だね?

 ありがとう。

 それじゃあ、さっそく行ってくるよ」


 クリスは屋敷の出口へ向かって、玄関を出ようとした。


「あ、まって。

 ・・・あのね・・・ありがとう。

 私や弟たちを助けてくれて」

「ありがとうクリス兄ちゃん」

「・・・帰ってくる途中で言ったでしょ?

 あのモンスターの原因は俺にもあるって」

「ううん。

 それでも・・・ありがとう」

「・・・。

 うん。

 それじゃあ、また」

「うん・・・またね」

「またね」


 2人に別れの挨拶をして屋敷を出て行った。



「・・・ハアァァ、そうか君達もシェイミ―達も無事だったか・・・。

 私の我が儘に付き合わせてしまい申し訳ない」

「いえ、あなたの判断が正しかったようです。

 しかし・・・簡単な調査のつもりがまさかあんな危険な目に合うとは・・・お嬢様達には大変怖い思いをさせてしまいました」


 執務室ではこのクレフーテの町を統治する大貴族、バーデン・H・フロスタンと妻のレナ―シェ。

 護衛騎士のビスガルとリンジーが会議を行っていた。


「ごめんなさいね、主人の地方に出向かわなければもっと騎士や冒険者を雇ったりしてあなた達に護衛を増やせたのに」

「いえ仕方がありません。

 簡単な調査にあまり人員を割けなかったのですから。

 レナ―シェ様はここを守り、監視をしていなければなりませんでしたので致し方ないでしょう」

「浅はかだった。

 まさかここまで早く動くとは想定外だった」

「あなた?

 そちらの方はどうだったの?

 やっぱり戦争を起こしそうなの?」

「・・・いや、今はまだその時ではなさそうだった。

 たが、町の様子はともかく、内部の様子や騎士たちの空気だろうか、明らかに普通ではなかった」

「という事は準備を始めているのは明白だと・・・。

 う~ん、困ったわね~。

 冒険者たちが言ってたことは本当なのかしら?」

「砂丘のダムガの言っていた事か?

 おそらく・・・いや、間違いないだろう。

 シェイミ―達を襲い、わざわざ宝石を求めていたと言うし・・・。

 向こうの国・・・もしくは別の・・・その辺りは分からないが誰かが裏で宝石を求め、戦争を仕掛けようとしている」

「バーデン様、戦争時、冒険者に有志を募って戦っていただくことは出来ないのでしょうか?」

「それは無理なのよリンジーちゃん。

 冒険者は世界中にいて、国をまたいで様々な依頼を受ける人達。

 一国だけに贔屓して味方をすれば他に国の冒険者に何があるかわからない。

 だから、お願いしても頷いてはくれえないのよ」

「そうだ。

 ・・・確かに、冒険者から国の、王の専属騎士になった者もいるがそれはごく少数、世界にいる高ランク冒険者もそれは災害級のモンスターに対して所が大きい。

 武力による圧力。

 ひいては戦争に投入するなど世界が決めた条約に違反しかねない」

「不可能ではないけど、望みは薄いって事なのよ~」

「ビスガル・・・私見で構わない。

 今回であったモンスターの強さはどうだったのだ?」

「・・・最初の方に現れたモンスターはせいぜいEランク~Dランクに入りそうな所。

 しかし・・・最後に現れたモンスターはCは間違いなく入っているかと」

「・・・何も出来ませんでした」


 屈辱と苦痛に顔歪ませるビスガルとリンジー。


「C・・・」

「この町にいる冒険者でもそのランクは居ないわけではありませんが、その辺りまで上り詰めるとなると・・・」

「ああ。かなり絞られる。

 ランクが上がれば上がるだけ急激に数が少なくなっていく。

 もしそのランクになれば下手すれば町ですら、たった1人で壊滅させられるぞ」

「砂丘のダムガは?」

「念のため、連絡を取り、もしこちらが戦争に巻き込まれそうなら加勢すると言ってくれている。

 どうやら、向こうはモンスターを使う可能性があるからな」

「それを理由に冒険者を募るのは?」

「可能ではあるが・・・ランクが低いと勝負にならない。

 無駄に命を散らせることになってしまう。

 こちらの都合で迷惑をかけるわけにはいかないだろう」

「この場所を無くなれば、今の利益が失うと理解すれば可能なのでは?」

「・・・それは程度によるな。

 こちらの町を含めた施設が失うほどの甚大な被害があれば今ここで利益を得ている者はココを見捨てるだろう。

 あるいは、自分たちの自治領として作り上げるか敵側が攻め勝ち支配した領地の場合、私たちと似た運営を再開するだけの話。

 どちらにしてもこの町がどうなろうと関係ないという集まりも大勢いるのが現状だ」

「それでは・・・私たちの町は・・・」

「滅びる可能性がかなり高いって事かしらね」

「ここを、この町を思ってくれている者を集めてもですか!?」

「・・・」


 重い沈黙が現状を支配しようとしていた。


「可能性は残されている。

 一応、私たちの方でも手は打ってある。

 といっても人頼りなのは否めないが・・・。

 おそらく砂丘のダムガとは別に1パーティないしは2パーティはBランクとAランクから人が来てくれるだろう」

「?、どういうことかしら~」

「何、確かに戦争ならそこにモンスターが混じって冒険者から有志は集めにくい・・・」

「ああ、なるほどね~」


 レナ―シェは夫の考えに理解し納得する。

 ビスガルとリンジーは置いて行かれ困惑していた。


「つまり~、戦争そのものには干渉は難しくても~。

 宝石を集めているその組織が裏で強力なモンスターを操っているなら~」

「・・・!

 それは、国にとっても脅威になりかねない。

 そして、災害クラスになりかねない事に加えモンスターが相手なら」

「専門家の領分・・・ということですか?」


 レナ―シェの説明に気づいたビスガルとリンジーだった。


「ああそうだ。

 戦争がその国によっての行為であっても、まだはっきりと起こしていると公式には告げていない。

 加え、今の段階なら向こう側の強力な存在は限られてくる。

 厄災をもたらすモンスターなら国が決めた取り決めにより派遣、依頼が可能である。

 戦争は始まっている。

 しかし・・・まだ戦争は決していない」


 バーデンが町を開け、出かけていたのは敵国になりかけている領地だけでなく、国へ緊急申請を伝えるためでもあった。


「それで・・・上手くいきそうかしら?」

「分からない・・・向こうが短気でないことを願うばかりだな。

 ここからは時間との勝負にもなりかねん。

 ビスガル、リンジー。

 すまないが、武具や物資の調達と整備をお願いしたい。

 それも、かなり穏便に・・・この町にはたくさんの住人が住んでいる。

 中には・・・伏兵や寝返る者が隠れている。

 これは可能性ではなく確実だ。

 だからこそ、ひそかに行ってもらいたい」

「了解です・・・しかし」

「大丈夫よ。

 まあこちらが何もしなければ(・・・・・・・)という事だけど。

 その場合だと早くても半年以上先になるでしょう。

 普通に考えれば、ここは戦争する所とは隣ではないの、わざわざ近くの領地を抜けてここに来ることを考えれば・・・万全を取るなら2年、3年は掛けるものかしら。

 宝石を求めてにしても性急すぎるもの~、そんなことをすればすぐにどこかが綻ぶわよ」

「そうなれば、向こうにとって最悪の場合、スタンピードと同じ状態と扱われ冒険者を投入させることが出来る。

 前の話で、それが出来なかったのは相手があやふやになってしまう事、冒険者の相手はモンスターであって人という事ではない事。

 主にこの2つが問題だった」

「では、それまでに準備を整えればよろしいのですね?」

「ああ。

 ・・・いや、そうだとしたら・・・」

「あなた?」

「もし、自分の騎士や兵士を捨て駒にしてでもスタンピードを起こすことを躊躇わないのなら・・・」

「・・・その人の望みは何のかしら?」


 さらなる可能性を考え、悩む出す夫婦がいた。


「・・・あ、あの?」

「・・・ん?ああ!すまない。

 早速準備を始めてくれ」

「分かりました」


 リンジーが先に執務室を後にした。


「ビスガル・・・それで・・・キミを助けた者というのは?」

「クリスです」

「そのクリス君に礼を言わなければな。

 それと、お前たちを助けてくれるほどの実力があるなら、少しだけ今回の事で協力を「それは出来ないわ、あなた」」


 遮るようにレナ―シェが口を挟んだ。


「申し訳ありませんバーデン様。

 私もさすがにそれは・・・」

「理解しているつもりだ。

 冒険者なのだろう?

 だったら、調査として宝石に関して可能性のありそうな遺跡などを調べてもらうよう依頼することは出来ないのか?」

「・・・彼ならそれは可能かもしれませんが・・・」

「そうなのビスガル?」

「ええ、彼がいたおかげでここまで無事帰還できましたので」

「では」

「ただ彼は子供なのです」

「・・・は?」

「ああ、ごめんなさい、あなた。

 言ってなかったわね、シェイミ―達を助けてくれたクリスちゃん・・・キルシュと変わらない子供なのよ」

「!」

「本当です」


 自信の予想を超えた話にビスガルに目で確認を取ってしまったバーデン。


「・・・そんな幼い子供がCランク相当のモンスターを倒したと?」

「・・・俺は見ていなかったので、詳しくは。

 ただお嬢様達はハッキリと見ていたようです」

「それだけ幼いのなら仮登録だよな。

 種族的な身体的特徴でもない限りは」

「はい、人間だそうです」

「・・・どうなっている?」


 混乱するバーデンがいたがそこに嘘が入っていないとレナ―シェとビスガルの雰囲気から理解しますます混乱するのだった。






【クリス】5才 人間(変化)

 レベル 7

 HP 57 MP 49

 STR 25

 VIT 22

 INT 28

 RES 21

 DEX 24

 AGI 27

 LUK 12

『マナ:レベル 5』『強化:レベル 5』『総量増加:レベル 1』

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