60 対決と目的・・・そして、謎
だいぶ先に先行していたニセ冒険者の悲鳴がこだましていた。
「うわあああ・・・・あああああああああああああっ!」
「おい!しっかりしろ、早く逃げるんだよ!」
後を追って坂を下っているクリス達の先の方から少しずつ走ってくる音と所々を爆発させながら大きな何かが接近してくる音が聞こえてきた。
「(何かあったようだ。
マズッ!隠れなきゃ!)」
下りきった先には大きな遮蔽物と化している建物の残骸らしきものと何本の柱が周りを囲むように並んでいる神殿跡のような場所にたどり着いた。
その神殿に向かって下っていく形になっており、遠く50メートルくらい先からニセ冒険者が駆け上がってきていた。
「はあはあはあ・・・逃げろ!
こんなダンジョン誰が好き好んでくるか!」
「はあはあはあ、文句を言わずに走るんですよ!」
周りにあった建物の残骸を壊しながら岩の形をした大きなサイが2人目掛けて突進してくる。
「っ!キタ!」
「っく!」
咄嗟に杖の男が魔法でサイもろとも周辺を爆発させるがサイはあまり喰らっていないようで煩わしそうに首を振り、周りに散った埃を払おうとしていた。
「今の内だ!」
「逃げろ!」
脇目も振らず男たちは坂を上って逃げて行った。
クリス達は高くの遮蔽物に身を隠し、ここでの状況を見ていた。
「(あれってモンスターなのか?)」
〔おそらくそうでしょう。
私も見るのは初めてですが、作られた人工物ではなく、生物のようです。
あの体の岩も自然と身を守る過程で出来た進化した形のようですね〕
サイのモンスターは煙幕のように舞った埃の先にニセ冒険者がいないことに激怒し大きな鳴き声を上げ、坂へ向かって突進しようとしていた。
「っ!(このままいくと、ひょっとして村にまで・・・)」
〔・・・あの者たちは何かをしてしまったのでしょう。
下手をしたらこの森を抜ける可能性もあるかもしれません〕
「(確かに、何か持ってたな。
赤い宝石かな?)」
〔ええ、大きさは大人の拳ぐらいの物でした。
・・・何か大事なものなのでしょうか?〕
「・・・今はこっちを考えるべきだな」
〔ええ、そうですね〕
何か体に、特に4足の足に集中してマナを溜めていたサイのモンスターがいよいよ走ろうとしていたた。
そこへクリスが上から正面に見下ろせる位置に出てサイを見た。
サイも気づき足に溜めていたマナを留めてクリスの方へと見上げる。
「・・・こっちは戦う気はなかったんだけど・・・こうなってしまっては・・・」
〔クリス、気を付けてください。
いくらあなたが強くなったとはいえ、どこまで成長したのかまだ分かってはいません。
上手く距離を保ち、先ずはスリングショットで探っていきましょう〕
「・・・分かってる」
流石に成長した力とはいえ、肉体的には5才。
質量の問題で一瞬で決着がついてしまうかもしれないとクリスも分かっていた。
ジリ・・・。
クリスが腰を少し落とし体のマナによる流れと一気に高めた瞬間、合わせる様にサイのモンスターが一気に突進をして距離を詰めてきた。
咄嗟に横の遮蔽物に隠れたクリスは見えなくなった瞬間に加速し一気に距離を開ける。
そして、念のために服の裏の腰に挟むようにして持っていたスリングショットを取り出し、転がっている石を拾ってマナを石にも纏わせ、祭が顔を出し振り向いた瞬間を狙い定めた。
重い音が上ってくる。
ガアーーーーンッ!
堅い物同士がぶつかり片方大きくが壊れる。
サイが現われ、クリスが隠れた方角へ顔を向けた。
「ッ!」
ジュンッ!
重い音と空気を無理やり力で強引に突き進ませ、石がサイに向かって飛んで行く。
「ボッ!」
サイは飛んでくる何かに気づき、咄嗟に岩がある頭の固い部分で防御の構えをとる。
ガジュッ!・・・ガン、ゴッ、ガ―――ン!
サイの頭の岩と一部の肉を抉り、後方の遮蔽物に向かって石が飛んで行った。
「ッ!!、ブウッ!、フ――ッ」
予想外のダメージにサイは困惑し、息を荒げているが、クリスに向かって走ることを躊躇った。
もっともそれはクリスにとっても予想外な事だった。
「・・・力の加減が・・・」
〔これは、予想以上に器としての存在値が高いようですね。
・・・それに、どうやらこのモンスターは意外と接近戦でも戦えるくらいの強さのようですね。
クリス、油断はできませんが、剣による戦闘の実践訓練をしましょう〕
敵の強さを、マナを含めておおよその把握が出来たサポートはいきなり無理難題をクリスに吹っ掛けた。
「ちょっ!いきなりなんてこと言うの!
まだ剣を使ったのは1回だけなんだぞ!?」
〔はい、だからこそです。
こんな実戦で丁度良く挑める機会が今後もそう何度もあるとは限りません。
この際、マナの使い方も含めて、いい練習相手にしちゃいましょう〕
「(なんか勝てると分かった瞬間に調子に乗ってない?)」
〔気のせいです。
ほら、早くクリスも剣を取り出してください。
向こうは警戒しながらも地形を使ってこっちに来るようですよ?〕
「え?」
サイのモンスターは自分への突然のダメージには驚いていたが、少し頭が冷えたのかクリスとは真正面に立たない様に遮蔽物に身を隠して、クリスと同じく地形を使って襲う戦法に変えてきた。
ドッ、ドッ、ザッ・・・ドッ・・・。
微かに聞こえる響くような重い音が少しずつ間隔が空いていき、明らかに音が小さくなっていた。
「(・・・これは)」
〔奇襲による攻撃に変えてきましたね。
クリス、今のうちにショートソードを〕
「(・・・あ、ああ)」
クリスは背負っていたリュックの中にあるアイテムボックスからショートソードを取り出した。
リュックを背負い直し、剣を抜き、鞘を紐で無理やりズボンの腰に固定した。
「(少し手間取ったけど、この隙に襲っては来なかったな)」
〔どうやら、かなり警戒しているようです。
・・・しかし、問題ありませんね。
おそらくそこらの動物や先ほどの冒険者程度ならば上手く隠れられると思いますが・・・。
私たちのようにマナを使い、感知が出来る者には意味がありません。
使いこなせれば話は変わりますが・・・どうやら、そこまでの知能も力も無いようですね。
バレバレです〕
「(・・・ホントだ。
これは、カモフラージュとかじゃなかったんだ)」
〔はい。おそらく息をひそめる様に野生の間で隠れているようですが、マナがまだまだ駄々洩れで見えてしまっています。
感じるではなく、これはある意味、狼煙みたいですね〕
「確かに・・・」
上を見上げればサイのモンスターが坂を下り、下からクリスを奇襲するように回り込んでいこうとしているさまがハッキリとサイの放つマナで見えていた。
〔質というよりは内包しているマナの量が多いのでしょう。
制御が出来ず感情によってかなり左右されているようです。
先ほどのクリスの一撃によって少しは冷静になっているようですが、これぐらいのモノなら小さくても使いこなせている存在の方が脅威です〕
「(・・・奇襲を待つべきかな?)」
〔いえ、こっちから逆に奇襲しちゃいましょう。
マナを小さくしながら、内部だけで上手く循環させる訓練も磨いておきましょう〕
「(了解)」
サポートのアドバイスの下、マナを協力して小さくする訓練を行いながら、少しずつ移動を開始。
サイの後ろ辺りに回り込むように移動している。
サイのモンスターはクリスが居たであろう場所に向かって接近を開始していた。
どうやら、下から打ち上げる様に側面を突くつもりのようだ。
「(じゃあ、行くか。
ちょっと怖いけど)」
〔勝負は時として勢いが大切です。
相手を驚かせてやりましょう〕
少し緊張気味のクリスと楽しみだすサポートが行動に出た。
タッ・・・・・・タッ・・・タッ。
音を最大限に抑え、一気に加速、遮蔽物の壁を蹴り、そこから更に壁の天辺を足場に後方の上空から奇襲をかけた。
「(ッフ!)」
剣を目の前の際の背中から右わきにかけて振り下ろした。
グシューー!
サイのモンスターの背中の岩をものともせず斬りつけた。
「ウンンボゥッ!」
突然の痛みで鳴くサイ。
着地と同時に懐に入って追撃を掛け深くダメージを与えるクリス。
マナを剣はもちろん体中に巡らせたクリスの攻撃はサイのモンスターに致命的な深手を負わし、右の後ろ脚も切断させた。
「ンンンンッ、フ――ー!フ―――!。
ンボウーーーーッ!」
サイは体を振り回し周辺を壊す勢いで暴れた。
クリスはすぐに後方へ飛んで距離を開けた。
バランスを崩し体を斜めの倒してもクリスの方をしっかりを向けるサイ。
一部を失くし大量の出血を足や腹部、口から出しながらも戦闘の意志を持ち続けていた。
「(・・・)」
〔クリス、ここで躊躇してはいけません。
手負いのモノ程危険なのですから。
ここで情けをかけてしまえば、あのモンスターにも、クリス自身にとっても良い事にはなりません。
覚悟を持ってください、クリス〕
襲い掛かってきたための戦闘。
いきさつは悪い偶然だっただけ、というものでしかなくその結果、相手を殺そうとしているクリスは自分の身勝手な行動によって起きた現実に何とも言えない悲しい気持ちになってしまう。
傲慢な考え。
もし相手が強ければ今倒れて瀕死状態になっていたのは自分かもしれない。
そんなことがどこか他人事のようになっているクリスにサポートなりの活を入れた。
「(ありがとう・・・これは、たまたまでも命をかけた戦いだった。
ここで、あのモンスターを倒すことが今回は・・・最善になると信じよう)」
〔・・・クリス、倒してあげましょう〕
「ああ、そうだな」
戦意は未だあるが出血で限界が近いサイのモンスター。
クリスは長く苦しませることは避けてトドメを刺す。
サイも目に覚悟を持った意志を持ちクリスにしっかりと対面した。
ッダ!
クリスの方からサイに向かって走り出した。
「ンンンバアアアアアッ!」
サイも体内のマナを全力で吐き出し、ロケット噴射のように真っすぐにクリスに向かって飛んでくる。
「ッッ!、アアアアアア!」
クリスもマナをフルに使い、剣を振り下ろす。
クリスの剣とサイの角がぶつかる。
シュンッ!・・・ズウウウウン。
クリスの剣がサイを両断。
その威力は衝撃波を生み、奥の遮蔽物をもぶった斬った。
シュウウウウウ~。
斬った状態で止まっていたクリスは、残心を解きゆっくりと振り返る。
大量に辺りに流れていたモンスターの血が煙のように霧散していく所だった。
「(・・・ごめん)」
勝手とはいえ、どうしてもクリスはこのモンスターに言わずにはいられなかった。
モンスターはどんどんと粒子となって消えていく。
代わりに、そこには青い宝石のネックレスと薄く細く箱と地図が落ちていた。
「・・・これは・・・え?」
クリスが落ちたドロップアイテムを見ようと近づいたとき、首に下げていたペンダントが光り、それに伴って落ちていた青い宝石が光りだし浮かび上がった。
「え?な・・・なに?」
クリスが困惑している中、青い宝石は吸い込まれるようにクリスの胸元のペンダントに入っていった。
パーン
レベルが上がりました。
「いやいや、そういう事ではなくて!」
システム的な情報より、今起きた目の前の事が知りたいクリス。
「いったい何が?」
〔・・・クリス、ステータスを見てください〕
「えっ?・・・あっ、そうか!」
クリスはさっそくステータス内のペンダントの所を見る。
道標(仮)のペンダント → 救命と花のペンダント「レミテス」
名前が変わっていた。
「救命と花?・・・レミテス?」
〔・・・どうやら、これがクリスがしてほしい、あるいはしなければならない目的になりそうですね〕
「・・・・・・」
サポートの意味を理解したクリスはいつになく険しい顔になった。
「つまり・・・いずれにしろこのモンスターとは」
〔・・・戦う事になっていたって事でしょうね〕
「・・・クエストって何なんだろう・・・」
〔・・・わかりません。
しかし、関わっていけば、いずれはその意味も・・・〕
「・・・うん」
自分の中にあるステータスの意味が未だ謎が多く残されているかもしれないと改めて再認識したクリス達だった。
【クリス】5才 人間(変化)
レベル 1 → 3
HP 1 → 25 MP 1 → 18
STR 1 → 8
VIT 1 → 6
INT 1 → 7
RES 1 → 5
DEX 1 → 9
AGI 1 → 7
LUK 1 → 3
『マナ:レベル 1 → 3』『強化:レベル 1 → 3」




