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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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53 次への旅支度+点検

〔純、先ほどの通知音は?〕

「ああ、さっきの音か・・・。

 何となく、この数日は何事も無かったからちょっと忘れてたけど・・・。

 ・・・これって」

〔ええ、おそらくそうでしょう〕


 純もサポートもこのタイミングでのお知らせに何となく察しはついていた。



 たぶん、次のクエストはもっと危険なものになるだろう・・・と。



 前回のクエストからこれまでのクエスト発生までは1ヶ月以上も空いていた事から何らかの準備期間。

 そう純たちは考えていた。


「・・・まあ、なんというかタイミングが良いというか、良すぎると考えるべきか」

〔しかし、純。これは私たちにとってはむしろ良かったかもしれません。

 現在は十時影家には純しか住んでいません。

 しかも、あと2週間もすれば姉たちがこの家に住まうことになるでしょう。

 でしたら、このタイミングこそ、今度の戦闘に対するお知らせとしては都合がいいです。

 示し合わせたものかもしれませんが、乗らない手はないでしょう〕


 サポートの言葉には純も納得している。

 確かに、今ほど今後も都合よくタイミングが合わさるとは思えなかった。

 むしろ、最悪な状況でさえあるかもしれない。


「だったら、ここでチェックし次第考える方が良いな」

〔はい〕


 納得したのちさっそくステータス表記からタブをスライドしてクエスト表記を見る。



【要請】


 諸毘志製鉄工場もろびしせいてつこうじょう、地下一階、廊下


 転送準備まで後2日



 たったこれだけが記されていた。


 しかし、純とサポートはすぐに理解した。


「これってつまり・・・」

〔おそらく、異世界に転生しろってことでしょうね。

 いえ、もしくは転移でしょうか?

 いずれにしろ、もう一度、純に向かってほしいそうですね〕

「・・・それって、システンビオーネにか?」

〔宇宙は広く、いくつもある別の異世界かもしれませんが・・・おそらく、純に縁がある異世界と言えばそこしかないでしょうから、おそらくはシステンビオーネで問題が発生するって事ではないでしょうか?〕

「・・・また、あそこに行くのか・・・」

〔おや、嫌なのですか?

 それはちょっと意外です〕

「いや、そうじゃなくて・・・前はたまたまだったし。

 コッチに戻って来た時もそれほど時間的な誤差は無かった。

 ・・・・・・でも、今回は自分の意志で行くことになる」

〔・・・なるほど。

 帰ってこれるかもわからない。

 帰ってこれたとしても時間のズレが大きく知らない間に過去や未来に行ってるかも、とか考えておられるのですね?

 ・・・おそらく大丈夫なのではないでしょうか?〕

「・・・凄く楽観的な気がすぎやしないか?」

〔いえ、純。考えてみてください、以前はたまたま帰ってこれたかもしれませんが、それでも向こうでの過ごした時間が無かったわけではありません。

 現に純は約3ヶ月は住んでいたはずです。

 こちらとの時間的な流れがもしかしたら違うのかもしれませんが・・・それだとしても純が転生し帰って来るまでの時間経過が非常に短いです。

 もし、これが通用するのであればもっと早く帰ってこれるともいえるわけです。

 つまり、向こうからこっちまではほんの数秒の間かもしれませんよ?

 少々乱暴な言い方かもしれないですが、今回はステータスに記された``要請``からきているので、その辺りは配慮されていると考えてもよろしいんではないでしょうか?〕

「・・・まあ、実際どこまで信じられるかはわからないが・・・もう一度、あの場所にはいずれ行きたいとは思ってたんだ。

 ずいぶん早かった気がするが・・・それでも、行けるんなら行っておこう。

 サポートの話も何となく、そんな気がするってわかるし。

 理由はないけどお前のように俺に対して不利益しか働かないなんてことは無いだろう?」

〔それは間違いなく。

 主をサポートするのが私の務めであり、それは純のステータスも同様です〕

「だったら、行こう。

 システンビオーネに」

〔了解です。

 期間は2日後と記載されていますが?

 場所は純が倒した鳥人モンスターとの場所ではないかと、おそらくあの地下でしょう〕

「・・・2日後の夜に・・・不法侵入になるけど行こう」

〔わかりました〕


 純とサポートはシステンビオーネに行くことを決め、その日はすぐに眠った。


 そして、朝。


 さっそく今持っている武器などの点検に入った。


 そのためにずっと触れていなかった報酬を手に入れることにした。


「・・・なあ、1つ思ったんだけど、何でまだ手に入れてない報酬アイテムは異空間?みたいなのにあるんだ?

 俺にはサーニャのリュックみたいに便利機能があるのか?」

〔いえ、ありませんよ。

 ただ、純がまだ正式に受け取っていないため一時預かりのような状態になっているだけだと思います〕

「・・・それって、マズくないか?」

〔ええ、そうですよ?

 もしあの時にすぐ受け取っていたら、最悪、サーニャのリュックのようなアイテムボックス化していなかったら、ショートソードなんてただの危険な刃物。

 銃刀法違反で捕まりますね。

 しかも、そんな武器を作るという事自体がほとんどない、ましてや刀匠みたいな仕事人が知り合いにいるわけでもないのに、精巧な作りの武器なんて持っていたら・・・ただの危険人物ですね〕

「おーい!

 人をあぶねえ奴みたいに言ってんじゃねえよ!

 偶然そうなっただけだろ・・・たまたま、たまたまなの!」

〔ふぅ・・・人の言い訳ってこんなに見苦しいモノなのですね。

 それは警察も現行犯で捕まえますよ」

「ひどい言い草するな!

 っていうか、お前が俺を落とし込んでどうするんだ!」

〔あ、そうでした。

 私が純のサポートしなければいけないのでしたね〕


 何とも胡散臭い言い方で純をコケ落とそうとするサポート。


「・・・たまに、めちゃめちゃ他人事で話して面白おかしくしようとしてないか?・・・お前」

〔言いがかりはよしてください。

 これほど献身的で素敵な仕事をしているモノは私以外にはいないでしょう〕

「・・・・・・姉さんたちとか?」

〔さ、早く報酬を開きましょう〕


 純が今までお世話になった人を指した瞬間、サポートは手のひらを返し、次に進めようとする。


「・・・はぁ、わかった」


 純は諦め、正式に報酬を受け取った。


 今日はそれぞれの用事と1人生活期間のために姉たちはこの家には来ないようにするようだった。


 まあ、と言っても何かの理由を作っては来てくれるんじゃないかと純は考えていた。


 1人生活は快適だけど、ちょっと寂しい時もなくはなかった。


 なまじ向こうの異世界で3ヶ月の間に出会いと別れを経験しただけにその人とのふれあいが結構大切だってことが純の中で生きた学びとなっていた。


 中学では、もうその状態は気づけないと思っていたが、高校はどうなるのかわからない。

 それに、家族がいて本当に1人になることが無かったのが気づかなかった無意識の内の心の拠り所になっていたのかもしれない。


 距離を置いて遠慮してても家族としてちゃんと自分は認識していたとこの時初めて気づけた。


 当たり前すぎて見えなかった支えてくれる人がいる幸せ。


 純はいろんな人から、地球でも異世界でも助けられてばかりだったと改めて心の中で感謝を述べた。



 さっそく、報酬の受け取りボタンをタップするとすぐ目の前が光、足元に荷物が置かれていた。


 (クリス)専用ショートソード

 サーニャのリュック(アイテムボックス:小)

 道標(仮)のペンダント


 この3点である。


 早速、ショートソードの柄と鞘を掴み刀身を見てみる。


「特に普通の者に見えるが・・・柄とかもデザインが彫られているわけでもないし・・・。

 これのどこが専用なんだ?」

〔・・・形やデザインではなく、この中に内包されているマナの存在値の高さでしょう。

 はたから見るとその技術を持った者でも見分けがつかないかもしれません。

 しかし、確かにそのマナから出る情報量の高さは明らかにシステンビオーネでも高ランクの冒険者が使用する者と遜色ないと思います〕

「へ~。・・・サポート、これってどのくらいのランク相当になるんだ?」

〔・・・おそらくですがDランク上級~Cランクの中級辺りになります。

 もしこんな代物に気づける者がいたら狙われる可能性が高いでしょう。

 このショートソードはそれだけ目利きが優れている者なら興味をそそる一品なっています〕

「へ~すげぇな。

 ・・・でも、これが専用ってのはどういう?」

〔・・・わかりません。

 ただ専用と付けられていることから考えますとこの武器自体が何らかの能力を持っているか、その所有者も含めての条件でしか本来の力が発揮しないとかそういう類ではないかと〕

「要は、名前以外さっぱりってわけか」

〔そうなります〕


 刀身が60センチ前後、柄を含めて80ぐらいと結構大きめに感じるソードを鞘に戻して、純は別のものに目を向けた。


「サーニャのリュックか・・・あの時、もしものために交換したんだっけ?

 ・・・・・・ラーナ達は無事に国に帰れたかな?」



 当時は生き残ろうとするだけで一杯一杯で他の事に意識を回せる余裕がほとんどなかった。


 何せ、どこかの国の勇者一行が勝手な理屈で襲い掛かって来たために、結果生き延びるために必死に抵抗するしかなかった。



 少しだけ当時の事を思い出す純。


「と言っても、実際は1ヶ月くらいしか経ってないから感覚的には最近って感じがするけど・・・」

〔しかし、あそこでたまたまにしても滝に落とされたのは良かったですね。

 もしあそこで、遺体を回収されたら純は無事にこの世界に生還できたかどうかが分かりませんから〕

「えっ!それはどういうこと?」

〔純はあの時に実績を解除して私や世界の常識・・・理とは少し離れた能力の開花を果たしました。

 もしあの時、遺体を回収されていれば、魂も引っ張られ、最悪、質の悪い上位の存在にでも目をつけられれば、オモチャとして弄ばれ使い捨ての道具にされていたかもしれません。

 自分の娯楽のために蘇らそうとするか、あるいは魂を回収して別の何かに生まれ変わるように仕組んだかもしれません〕

「・・・ひぃぇぇえええ」


 想像した純は青い顔をしてしまった。


〔ま、あくまでもそれは一部の者です。

 しかし、人が色んな存在や価値観を持って生きる様に、上位の者も己の価値観で生きています。

 そのため常に人の味方や自然の味方をするとは限りません。

 世界とはそういった存在の遊び場なのかもしれません〕

「・・・う~わぁぁぁ。

 俺って結構危なかったってことなのかー・・・」

〔はい。あの時、滝に落ちたのがまさに幸運と可能性が引き寄せて、純自身で意図せず導きだされた結果なのでしょう。

 あるいは、純が感じた直感が出した結果でしょう〕

「・・・う~ん。

 お前の言うことが本当だとしたら・・・なんかその上位ってやつはとんでもない傲慢な悪い奴って印象を受けるんだけど・・・」

〔いえ、そうではありません。

 人がおいしい食べ物を食べるために新鮮な食材を育て、刈り取り、調理し食べる。

 生きていくために行っている当たり前な事を彼らもやっているだけでしょう。

 そこに、常に善悪だけで判断するのは・・・些か軽率な考えになってしまいます。

 もちろんどんなモノにも一筋縄ではいかないのが当然かと〕

「・・・なるほどね。

 人と同じで結局それのそれぞれによって立場や理由によっても変わってくるわけか・・・」

〔はい、そういうことになります〕

「・・・ま、いきなり何でもかんでも悪と決めつけるのは良くないか」

〔そうですね・・・ただ実際の話、純を付け狙う可能性があることは否定できないので警戒だけはしておいた方が良いでしょう〕

「確かに・・・分かった。

 今回も行くとしても・・・まあ、判るかどうかは怪しいがその上位の存在に気づかれない様に注意しておこう」

〔了解です〕


 そして、ちょっと脱線したがサーニャのリュックを今度は掴み、中身を点検した。


 サーニャのリュックは誰かのプレゼントなのか可愛らしいデザインがカバンの縁や中にマークの様なワッペンと刺繍が施されていた。


「・・・たぶん、親御さんとかからもらった大切な物なんだろう」


 純は所々に縫い付けてあるリュックにその持ち主への愛情が窺えた。


「・・・今度会ったら返しておかないとな」

〔はい〕


 サポートも純の想いに賛同した。


 そんなことを想いながら中身を調べる。


「・・・あれ?、確かここにはそんなになかったけど色々入れていたと思うんだけど・・・。

 持った時からわかってはいたが何も入っていないとは思わなかった」

〔・・・純が転生した時に中のあらゆるものが分解されてしまったのでしょう。

 おそらくこのリュックなども含めて純の所有物は分解されその一部が報酬で再構築されたのでしょう〕

「だから、中身がないのか・・・俺が作ったスリングショットも無いし」


 純はサポートの考えに合点がいった。


 しかし、疑問も少し残る。


「じゃあ・・・どうしてリュックは再構築されたんだ?」

〔わかりません。

 純自身が誰かの大切な物だからと勝手に認識していたのを純自身のステータスが配慮して再び作り直したのでは?〕

「そんなことが出来るのか!」

〔いえ、ただの思い付きです。

 さすがに根拠となるものが無いので何とも言えないのが現状です〕

「そっ・・・そうか」


 少しそうだったら嬉しいなと感じる純だったが、サポートも確証が持てないと言ったことからその考え方をすることは止めた。


 どこまで行っても答えが無いものになりそうだと分かったからだ。


「っで・・・最後に・・・なぜか(仮)と書かれていたペンダントと・・・」


 純は黒いゴム製のチューブのような紐のペンダントを持ち上げた。

 感触はゴム製、水晶は3センチぐらいの涙型の形をしている。

 そして、その水晶は全体が黒く、地球ではモリオンと言われるものに似ている感じがした。


 まあ、モリオンなんて名前もこっちの家に持ってきたノートパソコンで調べた情報なんだけど。


 とにかく、不思議と惹きつけられる何かを感じた。


「なあ、これなんだと思う?

 俺は何となくこれが重要なんじゃないかって気がする。

 まあ、名前から勝手に思ってるだけだけど」

〔いえ、純の考えで私も間違ってないと思います〕

「・・・という事は」

〔はい。・・・これが純が向こうの世界へ転移あるいは転生するときや何かの重要な道標になるアイテムだと思います〕






【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)

 レベル 18

 HP 52 MP  48

 STR  33

 VIT  28

 INT  27

 RES  30

 DEX  42

 AGI  35

 LUK  23

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