45 討伐完了!
ゆっくりと下げた頭を上げ彰隆を見た初段モンスターは、言い終わったとばかりに一気に彰隆に詰め寄り顔に右ストレートを浴びせる。
「っ!(速いっ)」
咄嗟に顔を右に傾けて回避した後、カウンターで反撃に出る。
が、しかしその時には距離を取られ離れていた。
「彰隆っ!」
楓花が彰隆の横に並ぶようにして刀を目の前の敵に向ける。
「・・・大丈夫だ。
これは怖いな・・・佳胡、芳守、澪奈ちゃんを連れて下がれ。
翼、來未もだ。
・・・こいつは俺と楓花、勉と花蘭が相手をする」
ゆっくりと初段モンスターの所に歩き一定の距離、お互いの間合いのギリギリ外で止まった。
彰隆はゆっくりとベルトに固定したケースから警棒を取り出し、黄色の光を走らせながら構えた。
凱洞花蘭、柴垣勉は彰隆の声に自身のメンバーに振り向き頷いた。
そして、花蘭もゆっくりと近づき、勉も屋上から飛び降りて歩み寄ってくる。
「コマリマシタ・・・デキルダケ・・ニエ、ハ・・・タクサン、ホシイ・・・ノデスガ」
声にはとてもそんな風には聞こえなかった。
ましてや顔はずっと口を大きく裂けて笑っていた。
目だけはとても濁った黄色の目でギラギラと彰隆達を見ていた。
「そんな殺気立てて言われても困るんですがね~」
「ここで、お前を逃がすわけがないだろ?」
「できれば、潔く死んでくださると助かるのですが・・・」
彰隆、勉、花蘭が思い思い言葉を口にする。
それでもモンスターは笑みを止めない。
「あまり調子に乗られても困るんだけど・・・」
楓花は、刀を下げ腰を落とし、戦闘態勢に入る。
勉も拳を握り締め、花蘭も薙刀を構え、切っ先を向けた。
「・・・・・・・・・ザンネンデス」
その言葉を合図にそれぞれが動き出した。
彰隆が振り下ろした警棒を片手で受け止め、勉の拳打を軽く払いのけ、後方にいた勉が勢いを殺せずモンスターの前に出る。
そこを、彰隆の警棒を持った右手を掴み、強引に力技で引っ張り勉を巻き込んで横の工場施設の壁に吹き飛ばした。
「っぐ!」
「っが!」
壁を突き破ってさらに奥の壁まで吹き飛ばし、施設に大穴を開け煙が舞った。
「っ!」
楓花が投げ飛ばした敵の体が横を向いた所を切り伏せようとした。
それを軽くのけぞらすことで回避し、反対から奇襲のように切りつけようとした花蘭を回し蹴りで
吹き飛ばす。
「ぐふっ!・・ガッ!・・アッ」
大きく花蘭も吹き飛び施設の一部とパイプを破壊する。
「ッチイ!」
楓花は責める姿勢を変えず果敢に攻める。
「ウウ~ン・・・イイデスネ。
コノ、イノチヲモヤ・・ス、シュンカン・・・ハ」
余裕と何度も楓花に攻撃を避けながら言葉を漏らす初段モンスター。
起き上がった彰隆と勉が戦いに参加するが攻撃を与えられずにいた。
花蘭も参加し、彰隆たちの間を縫うように相手のスキをついて攻撃するがガードされてははじかれてしまう。
だからといって遠距離からのサポートを頼むわけにはいかなかった。
彰隆は戦闘を続けながらも冷静に相手と状況を観察していた。
「(ここで、遠距離や補助は却って危険だ。
補助を掛けてくれば一時的に身体能力が上がるし、魔法なら確かなダメージは多少与えられる。
しかし、それは奴の狙いを変えさせることに繋がる。
あいつの狙いがここに居る奴らの命なら・・・まず、簡単に始末できそうなやつから狙うはずだ。
勉も花蘭もその辺りは判っているはずだ)」
戦いは数分が経過しようとしていた。
だが、戦況が変わることは無かった。
「(マズいな、向こうはまだ余裕がありそうだな。
けど・・・こっちは結構一杯一杯だぞ?
どうする!?)」
彰隆達は焦っていた。
変わらない戦況、しかも敵にはまだまだ余裕がある状態。
こんな状況が続けば飽きて別のアクションを起こしたくなっても仕方がない。
「ソロソロ・・ワタシモ、チカラヲ・・・タメシ・・・テミタクナ・・・リマシタ。
イチオウ・・・ココマ・・・デタタカッテ・・・クレタ、ミナサンニ・・・ワタシカラケイ・・・イヲヒョウシ・・・マシテ」
初段モンスターがそう話した後、内包していた黒いオーラを噴出させ白かった上半身も黒く染まり、握った眼は真っ白の中に小さな黒い点がある状態に、背中には薄く黒い靄のかかったような 半透明な翼を生やし、ツルツルだった頭から歪な形の黒い輪っかの入った見え方によっては王冠の様なモノが出てきた。
「コノスガタニナレルトハ、オモイマセンデシタ。
カンシャシマス、ワガカミヨ」
先ほどよりも流暢な言葉で交わし彰隆達を見た。
「(・・・おいおい、マジかよ。
さすがにこれはマズいって)」
彰隆は上空の澪奈、鏡花、茉莉が張った結界が歪んでいることで初段モンスターの異様な強さを改めて実感して恐怖した。
「(これは・・・もはや3段クラスのモンスターの領域だぞ?
これを、俺たちで対処しなくちゃいけないのか?)」
勉はさらに険しさが増した顔になり相手の力量と状況を判断する。
「(・・・残念だけど、これは最悪を考えないといけませんわね。
とにかく私たち以外を無事にここから逃がす手立てがあるのかどうか)」
厳しい現実に自身のメンバーや他の仲間たちを逃がす算段を考え出す花蘭。
その時
「おうおう、すげーじゃねえか。
俺たちのためにわざわざ変身してくれるってのはありがたいねえ~」
急に飄々とした態度で何らかの能力で上昇し空中で止まっているモンスターに話しかける彰隆。
全員が彰隆を見る、もちろん敵も。
「イエ、カンシャスルノハムシロコチラノホウデス。
アナタガタノヨウナキョウシャノオカゲデ、ワタシモサラニセイチョウ、シンカガデキタノデスカラコンナニスバラシイコトハアリマセン」
「ふ~ん・・・なるほどね~。
それが進化した姿なわけね」
「エエ、ソノトオリデス」
モンスターはとても誇らしげに頷く。
彰隆はさらに話をつづけた。
「聞きたいんだけど、進化とかって色々条件があるんだよね~?」
「ソレガナニカ」
「いやね・・・さっきあんた、神に感謝するとか何とか言ってたけど・・・あれってどういう意味かなって」
いきなり何を聞いているのかと彰隆以外は思っていた。
こんな状況で聞くことなのかと。
「ソノママノイミデス。
ワタシハカミニエラバレ、ミトメラレタノデス」
「神ね~・・・いや、いるって思う事や信じることは良いと思うよ?
俺だってどっかにいるんじゃないかって思ってるし・・・」
彰隆は長々と話していたがその疑問の核心を聞きたかった。
「・・・で?
お前の言う神・・・って何?」
先ほどの飄々とした軽口から一気にトーンが下がり真剣な眼差しで敵に問いかけた。
「・・・イミガワカリマセン。
カミトハツネニワタシタチヲミマモリ、ソノソンザイガ、フサワシイカドウカヲキメテイルノデス。
ソレハヨリコウ――――――――――――――――」
ザ―――――――――――――――――ッ!
砂嵐のような音が響くと突如、話が中断された。
モンスターの表情がなくなり、その場で止まった。
彰隆達はお互いの顔を見合わせ困惑する。
ほんの少しの間だけ聞こえていた砂嵐が収まると。
急にモンスターの表情が戻った。
しかし、
「ウッ!・・・アアッ!・・・ッグ!
コレハドウイウコトダ?
ナゼワタシガ・・・チカラガ・・・」
言葉は流暢だがひどく弱り、地上へとヨロヨロ降りてきた。
彰隆達はさらに困惑する。
先ほどまであった圧力が著しく弱まり、従来に初段モンスター並以下になっていたからだ。
変身した肉体もボロボロと崩れていき、肌の色も胸のあたりまで以前の白い肌に剥がれていた。
頭の黒い王冠の様なものも一部を残し崩れ落ちていた。
翼は無くなり微かに黒い靄だけが体の周りをうっすらと纏わりつくだけの留める。
「これは・・・一体」
楓花がみんなの言葉を代弁するように絞り出す。
「どうやら、お前は自分の信じた神というのに見捨てられたんじゃないのか?」
「ソ・・・ソンナコトガアルカアアアッ!」
激昂し叫ぶモンスター。
「ま、どっちでもいいか・・・今は」
「ッ!ック!」
彰隆達の殺気に気づいたモンスターは逃げようと飛んだ。
「ここまで、コケにしてそれは無いだろう?」
飛んだ所を柴垣に追いつかれ、足を掴まれ引っ張られ腹を膝蹴りし九の字になった所をさらに追い打ちで回転蹴りで地面にたたきつけた。
「ぐぅおうっ!・・ガッ!」
強く叩きつけたその威力で小さなクレーターができるが勢いが止まらずバウンドし回転した所を、花蘭が斬り、大きく損傷を与える。
「ガアアアアアアアッ!」
黒い煙と血を吹き出しながら無理やり体の姿勢を直す。
「・・・フッ!」
「!・・グギャアアアア!」
立ち上がり再び距離を取ろうとした所を楓花が詰め寄って袈裟斬りに刀を振り下ろした。
その結果、楓花の接近に気づいたモンスターは咄嗟に手で庇おうとし両腕をそれぞれ失った。
「あ~あ、ここまでくると、なんか一気に可哀そうに感じるのは気のせい?
それとも俺だけ?」
「・・・彰隆さん」
軽口で冗談を言っていたら、佳胡に睨まれ居住まいを正す彰隆。
「はい、ちゃんと討伐させていただきます」
彰隆は佳胡を見ずに返事をした後、モンスターに歩み寄って行った。
「・・・と、いうわけで悪いが。
お前を倒して今日の仕事は終わりにするから」
死刑宣告を告げられたモンスターはそれでも必死に逃げようとする。
どこにそんな力があったのか初めて会った時に匹敵する力で逃げようとする。
今までの吹き飛ばされた過程で気づかない内に佳胡、芳守、澪奈に近づいていたモンスターは咄嗟に弱い者を盾に逃げ切ろうとした。
その結果、一番近い人物の中で弱い力しか感じなかった澪奈目掛けて走り出した。
「ッ!」
「っ!芳守っ!」
「澪奈ちゃん!」
佳胡が盾になろうとしたが間に合わない。
咄嗟に芳守が盾になろうと剣を構えたが能力が一時的に回復したモンスターのスピードには目も体も追い付かずたった数メートルが遠くに感じていた。
「っ!」
澪奈は``襲われる``と目を閉じた。
しかし、そうは起きなかった。
突如足元から大きな衝撃が起こったからだった。
工場施設内をモンスターが徘徊したことで、いたる所に爪痕が残っていた。
その一部が爆発のような衝撃をもたらしたのだった。
それは、規模は小さいが水が急速に熱され起きた水蒸気爆発のように。
一瞬の戸惑い。
しかし急速に弱まり、パニックになって腕を失い、バランス感覚が微妙に崩れてしまっているモノにとっては、姿勢を保つために自然と足を止めてしまう。
そのほんの一瞬が仇となり、彰隆が近づく時間を与えてしまった。
「往生際が悪すぎるぞ。
狙うなら俺にしろってのっ!」
彰隆は黄色くスパークさせた警棒で思いっきり殴り飛ばした。
「・・・ッ!」
そこへ、自分が狙われたことによる怒り、澪奈はやり返すように1枚のお札に力を注ぎこむと、吹き飛ばされているモンスター目掛けて投げつけた。
投げたお札は緑と黄いろの光を纏いモンスター目掛けて加速した。
一部屋上の工場施設が崩壊した建物まで空中を吹き飛んだモンスターに澪奈が投げたお札が下から救い上げる様に追い付き大きな爆発を生んだ。
「グアッアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
噴出していた黒い靄を強制的にかき消す力が澪奈の放った御札から出て爆発と共にモンスターに追い打ちをかけた。
「(なめるなよ雑魚共がっ!
こんなところで貴様たちにやられる恥などさらすものか!
死ぬなら自身でやってくれる。
ハハハハハハハハッ、お前らも道連れだ!)」
モンスターが残っている自身のエネルギーをどんどんと急速に中心に集めだした。
「(・・・・ハハハ、何とも愉快なやつらだ、その顔が見られないのが残念だ。
じゃあ、一緒に死のうではないか!」)
「・・・なんだ?
(奴の力が急に・・・・)」
彰隆が不審に思っているがそんな時間は許されなかった。
最後の力を全部絞り出すように力を体内の中心から解放しようとした。
「アアアアアアア!・・ッ!」
バキリッ、ヒュンッ!
突然、叫んでいたモンスターが急に何も言わなくなった。
「え?一体何?」
まだまだしぶとく、倒れそうの感じなかった彰隆達は一瞬モンスターを警戒した。
しかし、空中から落ちていくときには煙になって空から素材だけが落ちてきた。
煙は風に乗って上昇し消えていった。
あまりの事にキョトンとしてしまうが誰にも何もわからなかった。
「えっと・・・その、これで討伐依頼は終わりなのかしら?」
花蘭がたまたま、近くまで来ていた茉莉に問いかけた。
「・・・え?あ、ちょっと待ってください!」
茉莉は何を聞かれているかを思い出し、目を閉じモンスターの気配を探った。
「・・・はい、もうこの工場にはモンスターは居ません。
・・・・討伐完了です」
それを聞いた全員が一気に疲れを感じて座りこんでしまった。
「つ、疲れた~」
「やっと終わった~」
思い思いが安堵のため息を漏らした。
「ふう~、何とか倒せたね~」
「何とかじゃありません。危うく死んでしまう所でしたよ」
「いや~、ははっ。
ホント無事でよかったわ」
彰隆に言葉に文句を言う佳胡。
とにかく無事にみんなが生き残ったことを喜ぶ楓花だった。
「・・あの・・彰隆さん」
「ん?あっ、ごめんね澪奈ちゃん。
危ない目に合わせてしまって」
「いえ、それは・・・あんな状況じゃあ・・・。
それよりも、さっきの・・・」
「ん?あのモンスター?
いや~、怖かったね~。
俺、ちょっと漏れそうだったよ」
「下品ですよ、代表」
「あははは、ごめんごめん。
・・・ッで何?澪奈ちゃん。
あのモンスタ-がどうかしたの?」
「あ・・・・いえ、何でもないです」
頭を下げた後、澪奈は鏡花たちの元に向かう。
「(あの時、確かにあのモンスターの胸辺りに急に穴が開いた様に見えたんだけどな・・・)」
疑問を持ちながらも鏡花たちの所に走る澪奈だった。
そして、もう1人。
「(う~ん、どういう事だろう・・・。
あのモンスターまだ体力はあったように感じたんだがな?、何かしてくる可能性だって。
それに・・・確かに何かが下から飛んできたように見えた・・・何か丸かったような・・・。
あの玉か何かが貫通したのがトドメっぽかったな~。
・・・でも、特にモンスターは居ないって茉莉ちゃんも言ってたし・・・。
うん、わからんものは一旦保留だ。
どうせすぐ分かるもんでもないだろうし)」
全員が疲れ果てヘトヘトになっている中、ある一人の少年もヘトヘトになりながらガッツポーズをとっていた。
【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)
レベル 13
HP 20 MP 15
STR 17
VIT 15
INT 16
RES 16
DEX 18
AGI 17
LUK 15




