43 衝撃の真実と成長に隔たりは・・・ない?
〔純、どうやらもう少し大胆に行動してもよさそうですよ?〕
「?(どういうこと?)」
〔どうやら、この力場と結界の中だとカメラがしっかりとは作動しておりません。
おそらくですが何らかの意図があり、どうやらこの状態を世間に広めるのを避けているようなのです〕
「(誰が何の目的で?)」
〔そこまでは不明です。
しかし、外の漏れないようにする結界にも同様のモノが働くように組み込まれていますね。
つまり、国から要請された組織もこの辺りは秘密にしておきたいようです〕
「(・・・っという事は)」
〔はい。カメラを気にせず動いても大丈夫です。
しかし、私たちはバレない様に行動はしています。
ですので、人にバレない様にすることだけは留意なさってください〕
「(分かった、そういう事なら動きやすくなるな)」
工場施設の中に入る過程で何体もモンスターを倒しながらも、カメラを気にして行動が制限されていた純は一気に施設内を歩き回り気配のする方へ辺りを探し始める。
「(やっぱり、あの時考えた通りで正解だったな)」
〔ええ、どうやらこのモンスターは今の純には少々厳しいモノたちが多いようです〕
純は施設内に入る段階で数体モンスターと戦うことになり、その時はマナをフルで使わないと対等に戦えないモノも現れた。
「(しかし、スリングショットが使えないのはツライ)」
〔仕方がありません。
この結界のおかげで被害規模を強制的に多少は縮小させる効果が付与されているようですが・・・そこまで強力な力ではないようですから。
むしろこれは、外に出さない被害を漏らさないことに特化しているようですし・・・ここで、純が本気を出してしまうと施設のいたる所が穴だらけになってしまいます〕
「(それはさすがにな~。
別に建物を破壊したいわけじゃないからな~)」
何とも言えない複雑な表情を浮かべながら気配のする方へ向かう純だった。
その時、突然大きな衝撃とともにスプリンクラーが作動し純は服をずぶ濡れになった。
「(いきなりなんだ!)」
〔・・・どうやら何者かがこの付近のモンスターと接触したようです〕
気配に流れが大きく揺れ動きそれを察知したサポートが純に知らせた。
純は現在1階から少し降りた半地下1階に廊下の真ん中にいた。
カメラに隠れながら移動している結果そこに行きついてしまったのだ。
「(とにかく、向かおう)」
純が走り出そうとする。
〔!、お待ちください〕
急なサポートからの制止で止まった時、目の前に突然、上の吹き抜けになっていた空から一体の炎を纏った鳥人が現れた。
「ウギャァァアアアアアア」
鳥頭に翼を生やした二足歩行の生き物。
この世界ではまず見ることは無い・・・明らかにモンスターだった。
吹き抜けから半地下一階の廊下に飛び降りてきたモンスターは純を見つけるとその体以上に赤黒く燃えている目で獲物を捕らえゆっくりと歩いてきた。
「(!・・・こいつは!)」
〔純一度逃げますよ、ここでは満足に戦えません!〕
純が今通っている廊下の横幅は狭い。
大人が2人、少し壁の方に寄らないと通り抜けられないほどだった。
鳥人モンスターは2メートルを超える大きさがあると純は遠くに見える姿から予測した。
「(確かに今すぐ逃げっ!)」
「ギャァァァアアアア!!」
純が踵を返し、逃げようとしたのを判断したモンスターはすぐさま飛び純に迫った。
〔純!上を向いてガードを!〕
「!・・・・ぐっ!」
サポートの言葉に咄嗟にモンスターの方に振り返り手をクロスにして上を向いた。
そこに今まさに背中を鋭い爪と共に叩きつけようとするモンスターの振り下ろしがきた。
純はとっさにガードしたがあまりの威力に地面が砕け純は数メートル以上の下にコンクリートの地面に落ちてしまった。
上から壊れた鉄パイプや破片などが落ちてくる。
「・・ゲホッゲホッ!・・・ふう」
辺り一帯の半地下一階にあったコンクリートの壁や地面も砕けたため大きな粉塵が埃が待った。
純はモンスターの攻撃を受けたことも含めむせていた。
手で払いながら辺り見回し、上を見上げた。
「ずいぶん落ちたな」
〔おそらく、3階分は下に落とされたのでしょう。
しかし、咄嗟にガードしたのは良かったです。
もしあのまま落とされていたら、最悪しばらく動けなかった可能性があります〕
純はサポートの声を聴きながら体の異常がないかをチェックする。
バサッ!
翼が羽ばたいた音がした方向を見ると、大きく待った粉塵を払いのけ鳥人モンスターが飛んで降りてきた。
そして、純との距離をさらに縮めるために近づいてきた。
〔純、ココなら十分に戦えるはずです〕
「(隠れる場所はあるけど・・・向こうが許してくれそうにないか)」
濡れた服を急激に乾かしてしまいそうなくらい熱い炎を纏っている鳥人モンスター。
純は体内マナをフルに活性化しているおかげで服も皮膚も焼けるようなことは無かった。
「(・・・やるしかない)」
純は戦闘への意識を今まで以上に高めた。
そして、もう1人の相棒に話しかけようとした。
「(サポート、援護をたの〔頑張ってください、純〕)」
「え?」
〔・・・え?〕
かたや1人は理解が追い付かず、かたや1人はいまさら何言ってんの?と疑問をもって交わされた。
「(いやいや、俺一人じゃどうしようもないから手伝ってくれると助かるんだが)」
〔純、私はあくまで純のサポートをするのが主であって、それはどちらかというと精神面のサポート的部分です。
戦闘に関しては私に言われましてもどうすることも出来ませんよ?〕
「(はあっ!?、いや今までだって助けてくれただろ!?)」
〔それは、あくまで主に精神面が大きかったからです。
ただ純粋な戦闘面でのサポートに期待はしないでください〕
「(は、初めて聞いたんですけどー!)」
〔・・・言ってませんからね〕
シラッと暴露し話すサポート。
なんの悪びれることもなく言ってのけた。
〔という事で頑張ってください〕
「(ちょっ!他人事すぎる―)」
鳥人モンスターの接近をじりじり後退しながら続けていた話は、まさかの純に全任せで戦闘が始まろうとしていた。
残り23体
純が鳥人モンスターと接触する少し前
「確かに、澪奈ちゃんの言う通り、10体以上は居そうね」
「・・・ええ」
楓花と佳胡はゆっくりと一匹一匹の力量を計るように見回す。
「一級の方は少し数が少ないからどこかに行ったのかしら?」
「・・・二級の方も二体居ませんね」
「・・・これなら、先に3級4級のモンスターを倒してからにしましょうか。
どっちにしたって、俺たちの行動は偵察ですから。
幸い、1級達は何かあるのかあの場から動きませんから」
楓花たちの会話に芳守が入り、少し離れた角からモンスターたちの様子をうかがっていた。
「私もその方が良い気がします。
・・・なぜか分かりませんが、今のうちに倒しておかないといけない気がします」
澪奈が楓花たちに進言した。
「・・・ただの直感なんでしょうが・・・澪奈ちゃんが言うなら、もしかしたらそうなのかもしれないわね」
「分かりました。
私と芳守で3級は掃討しますので、楓花たちは4級の方をお願いします」
「了解」
「うん」
芳守、澪奈2人が返事をした途端に楓花と佳胡は道に真ん中に出て目の前のモンスターに目掛けて走り出した。
遅れずに2人もついていきモンスターの掃討に移った。
楓花が刀を芳守が剣で切り伏せ、佳胡が半透明な青く光る弓で、澪奈がどこかから取り出した御札と扇子でモンスターたちを次々倒していった。
「よし、3級4級は殲滅したわね。
・・・残るは・・・」
「・・・あいつ等だけ・・・か」
楓花たちは刀を肩に担ぎながら、20メートル先でこちらを工場の屋上から見て仁王立ちする1級一体とその後ろに佇んでいる2級二体のモンスターを睨みつける。
「・・・どうする?
向こうは完全にこっちに気づいているようだけど・・・まあ、そうよね目の前で仲間が殺されているんだから・・・。
ま、向こうが仲間意識があるかどうか疑わしいけど」
「・・・シンガイ・・・」
「!!」
急に近くから低く少し機械的に話す声が聞こえ楓花と芳守は後方に飛んだ。
佳胡や澪奈を庇う様に前に立って工場の施設、モンスターたちが見下ろしていた所より、手前の曲がり角からニュッと上半身が白く、下半身が真っ黒な、そして目だけが異様に濁った黄色い目で光っている人間の男の姿が現れた。
「ワタシタチ・・・ニモ・・・スコシ、ハ・・カンジョウ・・・ガ・・・アリマス」
口は裂けたように笑っているその口から歯をむき出しにした状態で楓花たちに話しかけた。
「喋った!・・・ってことは、あいつが初段ね」
「最悪です」
「・・・初段って言葉が話せるのか?」
「・・・講義で聞いたときは2段、3段に進化を果たしたモンスターの中には流暢に喋るモノも居るとは聞いたことがありますが・・・初段では初めて見ます」
楓花たちは油断なく初段の昇り詰めたモンスターに警戒する。
しかし、頭の中はこれまでに無かった異常事態に困惑を隠せずにいた。
「佳胡さん、初段と2段って全然違うもんなんですか?」
モンスターに目を逸らさず睨みつけながら質問する芳守。
「ええ、そうよ。
初段になるには1級が何らかの条件を満たさないと初段にはなれないそうなの」
「条件?」
「詳しくは知らないの。
モンスターにも個性があって条件が違うそうなのよ。
・・・ただ、二段からは別。
条件だけじゃなくて何らかの契約や加護、恩恵の元に進化するそうなの・・・。
いったい誰がそんなことをしてるのかは不明なんだけど・・・」
「・・・どうしてそんなことを?」
今の話を澪奈は聞いたことが無かった。
佳胡がなぜそんなことを知っているのか澪奈は疑問に思う。
「これは、大手のトップ連中の間では有名な話よ。
世界中の国のお偉方も周知の事実なの。
だけど初めて知った当時、そんなことを聞いて中には絶望に感じる者も少なからずいたのよ。
その結果、過酷な戦いに耐えられず止めてしまう人もいたそうよ。
だから、一定のランク、信頼できる組織のトップにのみ知らされるそうなの」
「でも、私たちはリーダーが彰隆だから、自然とその情報を知る機会があったってわけ」
佳胡の話で、秘密にされていた理由と知った理由を教えてもらった澪奈たちは納得した。
「・・・確かに、もしそんなことが組織の新人たちにバレたら・・・」
「あまりの次元の違いに心が折られる人が出てしまう」
初めて知った澪奈と芳守は事の重大さに改めて目の前の存在の危険性に気づいた。
「・・・それと、気を付けないといけないのは・・・」
「普段私たちやたまたまその場に居合わせ波長が合ったもの以外は知覚する事すらできない者と違って初段クラスからは能力を持たない一般人でも見えたりするのよ」
「それって!」
「ええ、その人たちを殺し、糧を得て成長するのよ。
最悪の場合は進化だってあり得るそうよ?」
「得る量や質は少ないだろうが、それだけたくさんの人を殺めて進化した事例だってある。
最も、その歴史は古くてほとんど伝承と少ない文献にしか残ってないそうだけどな」
「向こうにとっても``誰彼構わずではむしろマイナスになるのではないか?もしくは成長をそこで止める結果に繋がるのではないか``ってのが研究で出た結論だそうよ」
パチパチパチパチ
初段のモンスターが拍手をした。
「スバラシイ・・・ワタシ、タチヲ・・・ナガイネンゲツ、デ、ココマデリカイサレタノデスネ?
コレホド・・・ヨロ、コバシイコトハ・・・アリマセン」
たどたどしくも楓花たちの話を黙って聞き続けたモンスターは自身の存在を調べ、知ってくれたことに心から喜びを表した。
「・・・どうやら、研究発表は本当のようでしたね」
「・・・」
また楓花たちの間に沈黙が生まれる。
少しして、屋上から大きな声が聞こえてきた。
「オラアアアアアッ!」
明石 聡が2級モンスターに攻撃を仕掛けるところだった。
「ガァァァアアアアアアッ!」
気づいたもう一匹の2級モンスターが聡の攻撃で吹き飛ばされ屋上から落ちていく仲間のモンスターを無視し自身の斧を力一杯、聡に向かって振り下ろした。
その衝撃はすさまじく、多少被害を小さく働く結界があるのにもかかわらず屋上から地上近くまで大きく切り裂かれ大穴が空き、一部分が瓦礫に山と化した。
すかさず避け、大きく距離を取った聡は無事仲間の元まで避難した。
「危なかった~、もう少しで大怪我するところだった」
「あまり前に出ちゃダメよ?
2級モンスターなんだから」
「分かってる」
「聡、陽・・・俺が戦うからバックアップをよろしく頼む。
先ずは、先に落ちた2級モンスターから討伐してくれ。
実姫は俺のサポートを茉莉ちゃんは補助を使って俺を底上げさせてほしい。
芽木白のメンバーはすまないが聡達のフォローにあたってくれ」
「分かりました」
「りょうかいです」
聡と陽は落ちて行った2級モンスターを目掛けて屋上から飛び降りた。
続くように翼と來未も降りていった。
「柴垣さん、動きを鈍らせますので一気にお願いします」
そういうや否や佐久間 実姫は糸のような細く透明な特殊能力を使い屋上に残ったミノタウロスみたいなモンスターの体にその能力で巻き付けた。
「柴垣さん、、これで一時的に引き上げられました」
茉莉は持っていた扇子に描かれた文様に念を送るとそれを開き、柴垣に吹きかけた。
息吹が風に乗り柴垣の体に入ると薄く赤い発光をし始めた。
「・・・悪いがさっさと終わらせてもらうぞ?」
言うや否や、一瞬で間を詰め、巨大なミノタウロス型のモンスターを打ち上げ、そこから怒涛のラッシュをして最後に足に込めた力に光が強く宿り蹴り上げる。
ドオオォーーンッ!
腹の底から響く重低音と共に2級モンスターは消滅した。
ゆっくりと蹴り上げた足を下ろす柴垣。
「どうやら、他のモンスターもほとんど倒したようだな」
「はい、あとはここに残っているモンスターのみになります」
「結構、長かったですね」
柴垣の言葉に残敵モンスターを伝える茉莉。
いよいよ、終わりが見えて安堵する実姫。
「実姫、まだ気を抜くな。
最後に一番厄介なのが残っているからな・・・」
柴垣は鋭い目で見下ろし初段モンスターを睨んだ。
残り3体
【十時影 純】 15才 人間?(ぽっちゃり)
レベル 1
HP 1 MP 1
STR 1
VIT 1
INT 1
RES 1
DEX 1
AGI 1
LUK 1




