432 魂の発露
「・・・」〔ジン、集中して。カッコいいというのは分かりますから〕「あああうん、分かってる」〔・・・気を付けて下さいよ? 先ほどとは明らかにマナが違いますから〕「うん・・・っていうか。(ボソ)どうやって合体したんだろう? あれってやっぱりコアなのかな?」〔来ますよ〕「わわっ」
慌てて粒子化を始めるが、それよりも先に人型のドラゴンロボットはジンへと加速して急接近してきた。広げた8対の棒状の翼や背中、足の噴射口からマナを迸らせ、飛び出す姿はまさにロボットアニメの見本といっていいような演出に見えた。だが相対する側からすれば悠長にもしてられない。迷わずシャボン玉で加速して飛び跳ねる。
「!(マジ!)」〔もっとマナを〕
バチバチとジンの周囲の小さな粒子が弾ける。キラキラと舞い散らせながら、同程度の速度で付いてくるロボットと空中で鬼ごっこの様な状態となってしまった。
パパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパパッッッ!!!!!!
足場や戦闘用として生み出していたシャボン玉を問答無用に翼や手の鉤爪で次々と破壊しながら追いかけてくる人型ドラゴン。2人はまるで小さな彗星の様に宙にマナの線を描き、絵を作り上げる勢いで動き回っていた。雲をも切り裂き追いかけてくるその光景は夢に出て来そうな気迫を感じさせるが、ジンは冷静に相手の動きを観察する。
「(細かく滑らかに動いているようだけど、実際は翼の微調整かな?)」〔その様です。先ほどから魔法の質を上げて弾力で妨害しているのですが・・・あまり効果が無いようですね〕「(クッションや取り込む事は?)」〔瞬時に読み取っている様です。小さいモノは切り裂き、大きなモノは避けていますね〕「(って事は、対処が難しいか面倒と判定しているわけだ、だったらっ・・・)」「!」
小さなシャボン玉を大量に生成。マナを注ぎさらに弾力を強化させて密集させた。潰せると判断していたロボットは動きを鈍らされ、無理矢理急停止される。そのまま圧縮させ身動きを封じた。
〔そのやり方では〕「(一瞬でいい)」
粒子化状態で棒を握ると両端に刃が生成されていた。見ずに感覚で理解し、そのまま飛び込む。「!」身動き取れないと判断したロボットは翼を一部スライド、収納されていた小さな刃が光と共に音を上げ、密度の高い武器へと変わった。それだけじゃなく背中の装甲からも細く伸びて来た4つの砲身が空へと波動砲を撃ち上げた。ジンのすり抜け様に斬撃は、僅かに早く逃げ出せたロボットの脇腹の外装を削るのみに留まった。驚くよりも先に目の前に足場のシャボン玉を生成し、バネを利用して追いかけ追撃に入る。
「!」「っだあああっ!!」
バキガキドキガキバキドキガキバキ・・・!!!!
流石に僅かに驚くような挙動を見せつつも、彼の追撃に応対する人型ドラゴン。右、左、上、斜め右下、足場を使い背中を振り下ろすが、クローや宙を自由に移動できる機動力の翼&剣によって相打ちになってしまう。反撃と薙ぎ払いや振り下ろし、回転斬りからの尻尾での叩きつけと砲身による直射攻撃と自由度の高さでは変幻自在の人型ドラゴンに手数で距離を開けさせられていくジン。当然の様に宙から弧を描き追尾してくるレーザービームも彼の動きを足止めさせていた。相棒も、上手くポジションを確保しつつマナの波動砲を対処しているが、如何せん相手の手数が多過ぎた。
〔これは・・・〕「(一気に行くぞ)」〔了解〕
意識を切り替え、サポートもマナを多く使用しながらジンは粒子化の出力を上げた。弾けるマナが増え、瞳と髪が更に明るさを増していく。青い髪が現れ始めた時には、シャボン玉と翼+レーザーは互角の戦いを見せ始める。それを当然許さない存在がいた。コアとなったゴーレムである。
「・・・!」
怪しく目を光らせると顔全体が赤く光り始め、緑や紫の光を溢れ出させる。その瞬間、人型ドラゴンの翼が2対の羽になった。4つの砲身が背中から肩や腰に、爪はスライドして手甲へと変形しゴーレムの髪っぽかった触媒を腕に巻きつけ先を尖らせて魔力を通し、双剣へと切り替えた。
〔本当に、多彩ですね〕「(行くぞ)」〔はいっ・・・〕
睨み合う間も惜しむ様に2人は激しくぶつかり合う。
ドガドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴバゴドゴドガバゴドゴンバゴンドゴンドゴン・・・・・・!!!!!!
遠くにいてもまるで花火の爆発の様に芯に届いてきそうな衝撃波を撒き散らし、2つの巨大勢力はぶつかっていた。周囲の雲は輪っかを作った瞬間には遠くへと押しやられ消えてしまう。藍色と青空の中間の世界でジンとサポート・・・人型ドラゴンロボットだけが激しく戦い合っていた。
「!」〔足場を利用してっ。予測されています〕
実力は拮抗している様な状況だった。水と風の魔法を使っているが、飛び出した瞬間、斬り掛かる直前はどうしても直線が多く、性能強化された相手の予測を上回る事が出来ず、少々不利な状況が続いて行く。「!」それでも負けじと果敢に攻める姿勢で、微かに服や顔に切り傷と引き換えに、装甲や武器を壊していく。予測は出来ても純粋なマナの出力と質ではまだジン達の方に分があった。〔このまま〕と思うサポートの期待を裏切るように、まさにドラゴンの様な咆哮を上げたロボット。
「(まだかっ!)」
繰り出す連撃の最中、機体全体を赤黒く染め上げる。斬り上げ、飛ぶ斬撃、加速突き、魔法の連続射ちと相手の攻撃速度を少しずつ上回る速度で破壊していくのだが・・・それが却って全体に走る血管の様に脈動している嫌な予感を感じさせた。
「!」〔ジンっ?〕
咄嗟に大きく飛び退き驚くサポートを放って、後方に生成したシャボン玉の魔法を器用に棒で膜の様に包み込む。グングンと後ろへ下がりながらも振り向きざまの回転した複合斬撃を飛ばすのとカパッと口を開いたドラゴンが赤黒い波動砲を放つのはほぼ同時だった。
ッドォウン、ダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッッッ・・・!!!!
大きくマナが衝突した。
オーフェンツ・ヴァーム全体に響かせるような大きな衝撃波だった。微かに揺れる大陸に魔力を鍛えている者なら、感知力に優れていなくても全員が思わず上を見上げてしまう程のとんでもない波紋となって拡がっていた。だが、残念な事に浮島内部でそれに気付く者はいない。今や魔素がどんどんと濃くなってしまい、外部との間に感覚の違いと見えない境界線が築かれてしまっていたからだった。その結果、浮島ではエラーという信号だけで伝わってしまっていた。
〔ジン・・・!〕「?」
全力で振り切って飛ばしたために少し疲労感で集中を切らしかけていた所へ、ドラゴンに微かに流れ込んでいるマナを伝える。それに気付いた瞬間、周囲の粒子がまるで炭酸の様に噴き出させる。
「頼むっ!」〔了解っ〕
阿吽の呼吸で足元のシャボン玉以外の周囲の水玉を解除、マナを圧縮させ密度を高めてジンの体の中を超速で循環させる。慣れない質量にグラつき、マナを湯気の様に揺らめかせながらも彼は力を溜めて腰を落とした。ぶつかり続ける2つの飛ぶ斬撃と波動砲。体の芯にまでビリビリと伝わり五月蠅い轟音のはずなのに、その中で聞いた事ない高周波を間近で耳にする。青と緑の刃がパリパリと小さな稲光を走らせ、明るい黄色へと変わっていく。
(・・・!!!!)
波動砲を撃ち続けている最中に、ゴーレムはジンのマナを検知。緊急性を感じ、周囲の魔素取り込み最中のマナを更に急速的に吸い取っていく。みるみると赤黒かった波動砲は大きく、赤に緑が混ざっていく。コアの顔はピシピシと亀裂が入りながらも紫に変化し尚も亀裂を入れながら出力を上げていった。
徐々に勢いが弱まり、押し込まれて消えていくジンの斬撃。そこへトドメとばかりに紫色も入り複雑に混ざり合った波動を送り出し、たった数十メートル先にいる子供を殺すために全力を出す。相手の斬撃が消えた瞬間、ゴーレムの中で微かに勝利を感じさせた。
「〔・・・!〕」
1メートルの無い目の前に押し寄せた消滅させる熱光線。少しゆっくりに見える時の中、ジン達は高めた斬撃を放つ。
ドオゥウウウウウウウウウゴオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーッッッ!!!!!!
驚くドラゴン。一気に押し戻されたぶつかり合いに、壊れかけの腕、足、翼、尻尾とパーツを犠牲にして、波動方に更なるマナを注ぎ込んだ。拮抗し割れた一部が海中を深く貫き、近くにあった人の居ない小さな島や割れた島を跡形もなく破壊する。それでも無理矢理収束させて放った波動が再びジンの下へと押し込んでいく。相手の姿が見えないが、もはや玉砕覚悟の攻撃だった。
・・・シュパンッ!
極大化した波動砲にジン達の2撃目の斬り払いが入る。断ち切る為の鋭い剣閃にドラゴンの体は撃ち出したマナごと切り裂かれたのだった。
「・・・」
遥か彼方へと消え去る轟音。風の吹く音だけを耳にしながら、遠くにあるロボットは2つに割け、ぐらりと遥か下の海へと落ちていった。
・・・・・・
神の降臨する様な優しい光に包まれた異空間では、ドレッドが画用紙の触手を、魔法を斬り払い、アルタナルに迫っていた。が、「!」彼の後ろに置かれていた彫像が僅かに揺れ、波状光線を放ちドレッドを吹き飛ばした。宙で受け身を取ってバク転した後着地する。
「なかなか素晴らしい力ですね。申し子の兄なだけあるという事ですか・・・」「・・・」「気になりますか? 今のはただの魔法ですよ。・・・いえ、魔力ですかね」「・・・随分と余裕ですね」「ええ」「!」
バシュバシュ、ガンガキン、ドボン、ボゴボガアアアンンン・・・!!!!
「あなたほどの実力者でも、これだけ十分に戦えるのであれば・・・申し子相手でも、私は自分の意志を説けそうです」
光線の連射射ちからの氷塊。風を生み出しブリザードと化した所へ雷撃と撓った鞭の様な触手の乱舞。体表に纏った魔力を削られながらもドレッドは涼しい顔で斬り払い、焼き落し、空間を切り裂いた。服が少しボロボロになったが以前、戦闘継続には支障なかった。そんな相手を細く目を開けてアルカイックスマイルの様なにこやかな笑顔で見ているアルタナル。
「・・・枢機卿の言葉とは思えませんね」「ははは。残念ながら、疾うに世界は綺麗事では済まされなくなっていたのですよ。あなたもそれは十分ご存知でしょう? 滅ぼされ蔑まれたフォーブライトの悲しき少年よ」「・・・あなたもそうだったのですね」「直接ではありませんが・・・計画の足枷になるだろうと・・・おっしゃっておりました」「あの中にはたくさんの信者もいましたが・・・あなたにとっては必要な犠牲だったと・・・」
体を震わせ、俯くドレッド。家族を、慕っていた民達を勝手な言い分で蹂躙されたあまりのひどさと失望に体の内から込み上げる煮えたぎる怒りで視界を狭めそうになる。尚も続けるくだらない御託に息を一つ吐き捨てると迷うことなく力を解放した。
「哀しい事です・・・。囚われた世界に閉じ込められるよりはと・・・私も残念で仕方──」「もういい」「っ・・・!」
燃えるようにドレッドの足元を青い炎が渦を巻く。特殊軍の服装は黒いコートへと変わり、肩から手にかけて青い手甲が出現し、一部の髪に藍色のメッシュが入る。睨むように顔を持ち上げた時、黒い炎が波紋となって、画用紙の攻撃を全て燃やし尽くす。流石に彼の変わり様と、感じる魔力に目を大きく見開いてしまう。
「その力っ・・・。まさか・・・!」「アンタは枢機卿でも何でもない。世界を無用に混沌に落とす、背信者だ」「相違の見解ですね。我々は、主義主張こそ突拍子も無い様に聞こえてしまいますが、ちゃんとした人としての在り方を唱えているのです」「犠牲無くしてなんてのは・・・その意味の重さを知った者がいうからこそ・・・人々は教訓とし、学びを得る。途中で投げ出すだけならばまだマシだ・・・。だがな・・・。アンタの言っている事は、勝手に見限った上での傲慢な発言だ。そんなモノ、高説でも何でもない。独りよがりの解釈なんだよ」「・・・真理の答えは様々です・・・。私の道もまた正しい結果では?」「だったら、ここでハッキリと否定させてもらう。アンタの願う世界なんて、誰も望んでいない」「・・・結構」
睨み合う両者。にこやかだったアルタナルの目は確実に否定するドレッドを殺そうと冷たい目で見ていた。そんな彼の意志に反応したように後ろに立つ像が下から盛り上がっていく。雲の様に霧の絨毯が一掃と立ち込め、浮かび上がったのは・・・見た事ない大きな女神の石像だった。
「これを使うのは大変不本意です。ですが・・・あなたもまた救えるのならば、私はこの身を捧げましょうぞ」「!」
直径20メートルの大きな女神の石像の目が怪しく光ると頭上に乗っていた石像や周囲の石像が立ち上がり、動き始めた。アルタナルは見えない何かに吸い込まれる様に女神の体内へと吸い込まれていく。
「いつかは、この力すら・・・私は人々の為に・・・」
石像の体内に完全に取り込まれると灰色から白と藍色の布と羽織りに変わり、金のネックレスを下げた女神もまた人の様に自由に動き始めた。彼女等の手には丸い盾と槍や剣、弓が携えられていた。画用紙の触手や魔法同様、一斉にドレッドを敵と認識し、武器を構える。
「・・・ヒース達の願いは、もともと浮かばれなかったのかもしれないな」
ユラリと剣を構え、いつでも対応できるように神経を研ぎ澄ませる。「「・・・」」両者が動き出したのはほとんど同時だった。矢を射る音よりも先に気配で察知したドレッドは女神へと跳び上がる。当然、敵も彼に向かって追いかけるように飛び出した。驚く事も無く、斬り払うドレッドの攻撃を女神は見えない何かでガードした。鈍い感触を受け、後ろへと跳ね返ってしまった所へ殺到する様に突進を仕掛ける石像たち。
カキドガボゴバゴガキドゴドガバドンゴゴンゴガンガギンドゴンドッゴオ~~ンンン・・・!
「(なんだ?)」
斬り伏せる剣を、突き刺す槍を、その隙を縫う矢を、魔法を上手く回避、弾き、吹き飛ばして、逆に斬りつける。場所は異空間全体を十二分に使うように動き回る。果てしなく長い柱がぶつかった石像や触手に破壊され遥か下へと消えるように落ちていく。攻撃と爆発、連鎖する様に動く人型と爆煙は優しく包み込んでいた雲すら薙ぎ払い、豪快に穴を開けていく。その先に見えるのは底知れぬ薄暗い雲だった。この間、僅か30秒足らずの出来事であった。
「っ!」「無駄ですっ。私には届かない」
苛烈な敵の襲撃にも合間を縫って女神を斬りつけようとするが、何かが邪魔をして途中で弾き返されてしまう。ならばと青と黒の炎で周囲ごと焼き払おうとすれば石像の一部が盾となり、また一部が自分に向かって跳ね返されてしまった。ダメージは受けていないが、いまいち与えられてもいない状況に意識を切り替え、数度、高速移動と狙う角度を変えて放つがどれも似た結果に終わってしまう。
「これが・・・一端ですか。何とも凄まじい・・・」「(・・・能力ではなく、石像の力か・・・)っ!」「無駄です」「ちっ」
軽く振り払うだけでドレッドの炎が簡単に跳ね返される。巻き込まれた画用紙が苦しそうに悶え、消えていくが大量にストックでもあるのか次から次へと空から降ってくる。「っ」ドレッドは近くの石像を女神に向かって蹴り飛ばす。更に近くにあった画用紙を突き刺し、足場にするとそのまま上空へと跳び上がり、真上から黒炎を撃ち込んだ。当然の様に炎は女神に触れられず、外に拡がるように逸れていった。対応が遅れ巻き込まれた石像と画用紙が塵になっていく。
「(・・・範囲はおよそ2メートルの膜。乱れた魔力から・・・怪しいのはネックレス)っ」「!」「(当たりか?)」「・・・!」
落下中に足元を爆発させ、急降下しながら剣を突き立てようとすると見えないバリアの抵抗が少なく貫通。そのまま首ごとネックレスを狙ったのだが、巨大石像とは思えない速度と滑らかさで回避行動を取られてしまった。慌てて石像と画用紙を間に挟むが、ドレッドは着地と同時に迷わず直進。避けて隙を見つけ、斬り上げたらそのまま宙捻りで2つの画用紙を切り裂く。流れるように回転で周囲の敵を焼き払い、突き刺そうとした敵を逆に突き刺し、そのまま女神に向かって押し込んだ。「!」驚く相手を無視して、剣を引き抜くと同時にネックレスを狙って石像と蹴り叩き込む。見えないバリアが発動し石像はバラバラに砕け散る。だがその瞬間の勢いと粉塵に紛れ、近くにいたもう一体を斬り払うと、強引に女神に投げつける。
「!」 ドゴオオオンンン、ボガアアアンンン・・・!!
当たる直前、何かが接触し石像が宙で破壊されたが・・・一部が肩を被弾する。換装スタイル状態のドレッドの膂力に女神が大きく右肩を後方へと仰け反らせ、バランスを崩した。回り込み通りぬける間際、画用紙を青い炎で巻き込みつつ魔力弾を撃ち込む。時間差で敵を巻き込み2,3発と撃ち込むと徐々に女神の被弾の箇所が近く大きくなっていた。
「(強度でもなく、大きさよりも自動型・・・)」
怒りを撃ちに秘めつつも冷静に分析して、敵の攻撃を利用しつつ、相手の攻撃合間に自らの攻撃を叩き込む。ボンボンと小規模ながら爆発と共に女神の布が薄く焦げ、石像にヒビが入っていく。
「っ!(流石、現役の軍人。すでに反射を・・・。ならばっ)」「っ」
直接、斬りつけようと飛び出した瞬間、金色の後光の剣が下から浮きび上がり後退を余儀なくされる。周囲を回転する様に現れた後光剣。女神がその1つを手に掲げると他の剣が従うように連動した。振り下ろし矛先を決めた瞬間、不規則な動きを見せドレッドに襲い掛かる。1本1本が巨大な剣は周囲の味方をも巻き込んであらゆる物を切り裂こうとしていた。
「いつまで持ちますか?」「・・・」
石像も画用紙も自ら、破壊するアルタナル。その度に新たな石像たちが上空から舞い降りて、彼の攻撃をサポートした。剣を手にした事で速度が増したのか、ドレッドの動きが周囲を飛び回り、回避する事に専念させられていく。
「先ほどの様には行きませんよ?」「っぐ」
石像たちが自らを犠牲にドレッドに飛びつき、炎と剣で破壊されるが僅かに生まれた隙を後光剣が捉えた。ガードには成功したが、その重さと勢いに遠くへと吹き飛ばされる。何とか地面だと思われる感覚を頼りに魔力で強引に殴りつけ浮かび上がると同時に宙捻りで態勢を整える。追撃で飛んでくる剣に対応する。
「(器用な・・・。ですが・・・)」
ガギィン、ガギ、ガギ、ギギギギギギギギ、ガギンッガギィン、ガギィィィイイインンンッ!!
「(そこです)」「っ!」
隙も与えないような剣の乱舞に対応していたはずか、いつの間にか視覚に頼り過ぎてしまっていた。タイミングをずらされ、薙ぎ払うように死角から来ていた1本に対応が遅れ、吹き飛ばされた所へ石像と、画用紙の容赦ない魔法攻撃が撃ち込まれた。
ドガガガガガガガガガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーッッッ!!!!!!
重なる魔法に爆炎がどんどんと大きくなっていく。異空間でなければとっくに塔の一部どころか、中層は完全に消滅しているほどの破壊力だった。「・・・」盛大に舞い上がる煙の中を注視していた女神に向かって青と黒の斬撃が飛んでくる。バリアがあっさりと弾き返そうとするが、上手くいかず空間に僅かにヒビが入る。
「あなたのその心には、感銘いたします」「・・・」「ですが・・・それゆえに、残念です」
煙を断ち切って、睨む彼の額と口には血が垂れていた。コートにも少しボロボロになっている痕が見られるがその瞳にはまだまだ強い意志が残されていた。折れる事が無いと悟ったアルタナルは後光剣に加え画用紙、石像をこれでもかと増員させ、全力で彼を叩き潰そうとしていた。
「先ほどの様には行きませんよ」「・・・ふ、だろうな」
盾を構え、遠目に円陣を組み。その後ろを弓隊が構え、画用紙もまた魔力弾や魔法の玉を無数に宙へと作り上げる。その上で後光剣が上下左右から大きく突き刺すようにドレッドに切っ先を向けていた。
「・・・最後の確認をさせていただきます・・・。まだ・・・戦う意思はおありですか?」「・・・これが、俺の答えだ」「・・・残念です」
剣を下げたまま、ゆっくりと腰を落とした。魔力を更に高め、チリチリと周囲の空間を青と黒の炎が燃やす。高音の渦が空間を歪ませ蜃気楼を作り出し彼の姿を大きく揺らす。「(?)」微かに・・・笑ったような気がした。しかしそれもすぐに意識を切り替える。天に掲げた剣の刃を横から縦に向けた。
「・・・苦しみは与えません。それこそが・・・私の今できる最大の慈悲です」「・・・無用だ。その言葉・・・大事にとっておけ」「・・・」
後光剣が振り下ろされた瞬間、一斉が攻撃が放たれる。ガードも回避も逃すまいと、飛び出した剣と石像たち・・・だったのだが。「っ!」突然、後方から飛んできた紅い火に一部が吹き飛び、また反対側では誰かが攻撃を仕掛け、包囲網の穴を開けた。
「誰だっ!」「お兄様っ!」「一気に叩けっ!」「分かってるっ!行くよっ」「ワンッ!」
ドレッドは口を綻ばせると、瞳を輝かせ、近づいて来た後光剣と石像たちを灰燼に帰した。「!」とてつもない悪寒に再度振り返ろうとするが、それよりも早く少女の側にいる小さな女の子達が彼女の魔力を整え赤い火の矢を作り出す。構え、射るまでの一連の動作があまりにもスムーズ過ぎて、隙を見逃してしまった。
「(このていっ・・・!)」 ドッゴオオオンンン・・・!! 「馬鹿なっ!!」
反射の能力も障壁も素通りする様に貫通し、女神の顔は吹き飛ばされ後ろへと大きく仰け反ってしまう。女神の頭部や布からが激しく魔力を吹き出し、踏みとどまろうとするなか・・・その声はハッキリとアルタナルに届いた。
「これが・・・俺の慈悲だ」「・・・っ!」
背中からすり抜け様に斬られ、振り返ると同時に真っ直ぐに業火の剣が振り下ろされた。
「(・・・あぁぁ)」
青と黒の巨大な炎に包まれ、崩れ落ちる女神の石像の中、アルタナルは空に輝く炎と光に手を伸ばそうとして消えていった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 503 → ???
魔法値 551 → ???
潜在値 708 → ???
総合存在値 1111 → ???
スキル(魔法):干渉、棒術 MAX 、マナ零子 + 領域 ⇒ ???




