420 後悔の少ない選択を
少女達の魔法が1つに重なり赤い炎となって、巨大竜の頭を穿った。雲を掻き消す様に貫通したそれは、相手の必死に守っていた障壁をも突き破る。大きく開いた穴にメリリカが指し示し、グロッグが急かした。
「開いたっ!」「突っ込め―っ!」「うぉぉぉおおおおおおおおーーーっ!!」「総員っ、振り落とされないように何かに掴まれっ!」
レックスの声に負けないぐらいの掛け声でドレッドが指示を飛ばす。近くにあった手すりなどに皆がしがみ付いた。障壁は急速に開いた穴と罅割れを修復させ始めていた。
「アイツの船は頑丈よっ」「そのまま押し切れっ!」
ヒーとオメロスの言葉を信じレックスは飛空船を突進させる。
「私達も」「皆、突っ込めっ!」
ナルシャの掛け声が聞こえたのか、ゼクとロクサーヌが急ぎ塞がっていく穴に飛び込んで行く。その勢いは凄まじくみるみると縮んでいく。一番遠くにいた飛空船が間に合うかどうかはかなり怪しい所だった。
「「「いっけーーーーっ!!!!」」」
誰が言ったのか、思いが1つとなり、全員が飛空船を信じて、閉じかけた穴を睨む。
「「「っ!」」」
先端が何とか間に合い、強い衝撃にギリギリと嫌な摩擦音が響かせる。レックスは必死に逸れようとする舵を抑え付けていると、飛空船が僅かに光り出した。薄い膜が船を覆うとその勢いが増したのである。
(・・・ォォォォォオオオオオオオンンン・・・・・・・・・!!!!)
鳴き声が聞こえた気がした瞬間・・・障壁はガラスの様に砕け、大穴を開ける。突然、障害を突破した勢いもあってバランスの取れなくなった飛空船は浮島に滑り込む様に不時着した。数十メートルも土を捲り上げた所で船は若干傾けながら何とか停止したのだった。
「・・・お前等、無事か・・・?」「・・・何とか」「こっちもだ・・・」「ニャ~・・・次はもっと安全に・・・」「大丈夫かロロナ」「う、うん・・・」「他の皆さんもご無事ですか?」
強い衝撃に体を痺れさせながらもフラフラと全員がゆっくりと起き上がってくる。
「ああ。こっちも問題ない」「オメロス・・・」「ああ・・・。ふ、世話焼きが・・・」「オメロス君?」
支えてもらっていたシャノンノは不思議そうに見上げる。その視線の先の彼は少し寂しそうに・・・でもどこか誇らし気に微笑するだけだった。(みんな~)そこへゼクに乗ったプリメラ達とロクサーヌが急いで駆け寄って来た事で彼女の意識はそちらへと向いてしまう。
「お兄様、皆さんっ。ご無事ですかっ?」「ああ。こちらは問題ない。お前達も無事で何よりだ」「どうやら迎撃用は破壊したようですが・・・完全には壊せなかったようです」「飛空船と同じ設備を搭載しているのかもしれんな。周囲の環境から守る為の保護機能だろう。今は問題ない」(・・・でも閉じ込められちゃったね。それに・・・なんか雲が覆って来てる・・・)
ゼクの言う通り、周囲を見回してみると先ほどの戦闘で失っていたはずの多くの雲が密集し始めていた。まるで浮島そのものを隠す様に厚く覆っていくそれは、遥か上空に見える青空以外を白い牢獄の様で閉じ込めている様に錯覚させられる。ドレッドはゆっくりと口元を隠していた手を解くとゼクへと振り向く。
「キミに聞きたい。障壁やあの雲に危険を感じるかな?」(え?・・・うーん・・・。(フルフル)。たぶん大丈夫だよ? ぁ、壊すんだったらボクがするけど?)「いや・・・今はそのままにしておいてくれ。ありがとう」(わかった)「さて・・・ここからが本番だ」「そうですね。先ずは、分担を決めましょう」
作戦会議を始めようとした丁度そのタイミングで、船に飛び乗ってくるナルシャとユティ。持ち主の帰還に反応したのか船が僅かに起動して浮き上がり姿勢制御する。
「やっぱり、水平の方が助かるわね」「ジルクト君。船の調子はどう?」「少し詳しく見ないと分からないけど・・・。先ほどの様に飛ぶにはちょっと時間が掛かるかも」「一気にあの頂上を攻める事は出来ないか」「そもそもいるのかも不明だけどね」
不時着した浮島の端っこからでも分かるほどの存在感を示す塔の密集地。1つの巨大な塔を中心とした山の様な形に並ぶ白い塔は見事な景観だといえた。紐の様に斜めに伸びる柱も中心の塔の美しさを強調させていた。町全体に美意識と形に拘った、観光として見に来る分にはとても楽しめそうな場所だった。
フと、ミュティア達は訝しむ様に塔と一体型に見える町を目を細めて注意深く観察する。
「な~んか・・・どっかで見た事ある様ニャ~・・・?」「そうかしら? 結構似た様な建物にも見えるけど・・・」「どのあたりが?」「ほら・・・あそこ。なんか教会・・・はっ!」「アルメラの聖堂教会かっ・・・」
思い出した者達から次々と驚きの表情へと変わっていく。各国に当たり前の様に見てきた建物。その一部とはいえ、改めて誰かが気付かなければ見落とす所だった。
「なるほどね~。確かにちょっとだけ似てるかもしれないわね。白を強調してるトコとか」「(コクリ)あと無駄にデカい所とか」「それは言いがかりでは・・・?」「いや、そうとも言い切れねえだろ」「そうだね。僕達が入った神殿。どこかアレと似た技術を使用しているのかもしれないよ?」「・・・少なくとも数百年。いや、あるいは・・・・アルメラが出来る前に存在した建物、という事になるのだろうな」「特殊技術の事もありますから、その時代に作られた遺跡という事ですね」
ベラールやガジェット達も納得する様に頷く中、ナルシャ、ユティ、ドレッドは違う反応だった。
「問題はそこではない」「「「え?」」」「少なくとも、アルメラ教会・・・。(フルフル)いいえ。アルタナル枢機卿の様な人が裏で繋がっていた可能性があるのよ」「その通りだ。浮島の存在も随分前から知っていた事が考えられる」(で、でも・・・どうして今なの?)「タイミングだ」
ゼクや他の者達の疑問にドレッドは端的に答えた。それにロクサーヌは合点がいった様な声を上げる。
「なるほど。それでですか」「「「?」」」「メルグロッテと呼ばれていた時代にはまだ単純に力が足りていなかったのです。デッドグレムゲン、教会・・・そのどちらにも・・・」「ゴーレムが誕生して劇的にその利用価値が出てきたのは最近。それまでは脅威にもなっていなかった」「貴族などが今より強い権力を持っていた時代・・・どこも能力に重きを置いていた。ユティやロクサーヌ嬢の様な存在が国家権力に相当されるくらいにな。まあ、今も似た様な所だが・・・。それでもこの様な暴挙には出られないだろうな」「地位や権力次第だとしても・・・必ず反対する者や国が現れる。その時に私や彼女の様な存在がいては、協力者達も不信感を抱き、実現が難しくなってしまう」「・・・。蓄える必要があったっつう事か」「ずっと昔から・・・この時を待っていたのね」
やるせない気持ちに自らの手に拳を打ち付けてしまうレックス。他のレジスタンスメンバーもこれまでテロリストの犯して来た事が、ただの布石だと感じてしまいその顔には怒りが隠せていないようだった。
「今のは俺達が思った仮定の話が入っております。実際どうだったのかは・・・皆さんの方がずっと詳しいはず。その怒りは・・・ちゃんと阻止するために」「ああ、分かっている。心配するな」
ハッキリと笑顔を見せて頷く彼等に、まだ詳しくは知らなかったゼク達はホッと胸を撫で下ろす。そして自然と全員の視線はドレッドへと集まっていく。少しだけ目を閉じた彼は塔を睨み、今後を説明する。
「俺達の目的は奴らの野望を止め、浮島を降ろすか破壊する事。これだけ巨大な乗り物を浮かすためには膨大な魔力を吸い続ける必要がある。そんな制御室が上にある事はないだろう。中心の奥深くか、あるいは地下。当然、阻止しようとするだろう。どれだけの数がいるかもわからないがこちらに最優先にさせたい。レジスタンスと学生の皆さんは一塊となって、制御室に向かって欲しい。先発部隊として、俺、ロクサーヌ、ユティさんが遊撃を務めます。レックスさん達にはすみませんが──」「構わねえ。とにかく制御室を破壊して、島を墜としゃあ味方の援護も受けられるって事だろ?」「(コクリ)はい。我々が先に暴れれば必ず・・・ヒース達裏切者が現れます。レネッタも対策は取っているだろうが、お互いに足止め出来ればそれだけ後続が進みやすくなるでしょう」「時間を掛けた勝負も望めないだろう。後続は私とドーマが指揮を務める」「頑張ってねナッちゃん」「お前達の方が大変なんだがな・・・」
他人の心配をしている親友に思わず苦笑してしまうナルシャ。他の面々も気合いが入っているのか準備運動を始めている。
「よーし、ここからだ」「私達は皆のサポートだよバッツ」「分かってるって。でも・・・もしもの時は・・・」「(コクリ)」「制御室、ね・・・。分かる?」「(フルフル)流石に無理」「とにかく勝手に飛び出すなよお前等」「ベラールが前衛だから、絶対にそれより前に出ちゃダメだよ?」「「努力する」」「「・・・」」「さて・・・本来ならお守りって考えになるだろうが・・・」「足を引っ張るかもしれないのよ。適当言わないで」「だな。オレはそこの坊主2人にも助けられていた気がするぜ」「おんや~♪? 弱気ですか? グロッグさん・・・♪?」「うっせ──」「あ゛にゃーっ!」「ミュティアこそ、油断しない」
体の調子、武器等の確かめた彼等の目にはやる気一杯といった感じだった。
「ドレッドお兄様、ロクサーヌお姉様、どうがご無事で・・・。ジルクトお兄様も・・・お気を付けて」「ああ。3人共、無茶はしないで、っていうのは無理かな。それでも・・・本当に危なくなった時は・・・」「分かっている。お前にはいつも助けられていたからな」「オメロスさん、ヒーさん、シャノンノさん、それと・・・あなたもお気を付けて」「・・・(ペコリ)」
少しあどけない、何処かとある人物を連想する少女にもロクサーヌは無事を願った。言いそびれてしまったジルクトが必死にどう答えたらよいモノか悩んでいると、姉として優しく諭すように伝えるのだった。
「ぁ、姉さん。彼女はその・・・」「あなたが連れて来たのなら、しっかりと責任を持ってあげなさい」
少し顔を赤くしつつも弟は力強く頷いた。
「まさに乗り込んだ船や、ここは絶対死守したる」「あなた達も絶対、帰ってきなさいよ。欠けているなんて私、嫌だからねっ」「本番の時こそ練習の様に・・・。気付かない間に、心も体にも不要な力が入っちゃうものだからね。ほんのちょっとでもいいから気持ちを落ち着ける様に意識してみてね」「・・・ありがとうございます」
頼れる召喚獣と女優からのアドバイスに彼女達は力を貰った。
(ボクは?)「ここに残っていて欲しい。流石に護れる者が少なすぎるのは困ってしまう。構わないか?」「そうやな。不意打ちをそうそう受けへんからいてくれると助かるわ」「よろしくねゼク君♪」(うん。じゃあ船を護るね。皆・・・後でジンと一緒に追いかけるから、頑張ってね)「飛空船の防衛は上手くいくとして・・・」「(コクリ)。ジルクト、どうだ?」「すぐには動かせない。さっきの衝突が思って以上に消耗したみたいで低空飛行もちょっと時間が掛かりそう」「分かった。動かせるようになたら、つかず離れずで上空を飛んでいてくれ。多少目立つだろうが狙われる数は絞られるはずだ」「わかった。行こう」「(コクリ)」
ジルクトは少女と共に船内へと駆け込んでいった。見送ったドレッドはオメロス達に黙って頷くと、ゆっくりと前方へと振り返る。そこには合図を待っている皆の顔があった。
「行こう。奴らとの決戦だ」
勢いよく船を飛び出し、浮島へと下り立つ。たった数日で草木が生え、新たな息吹を感じさせる島の敵本拠地へ向かって彼等は戦を仕掛けに向かうのだった。
・・・・・・
ユティ達が浮島に侵入し塔へと向かい始めてから、少し経った頃。
日がかなり沈み、魔法による明かりのなか後始末が行われていた。ジンは少し小高い山になっている坂に腰かけ、その様子をただ黙って見ていた。そこへミゲイラが同じ方向を見ながら声を掛けてきた。
「・・・」「気に病む必要はない。酷い言い方をすれば戦争とはこういうモノだ。寧ろ・・・君のおかげで早くに終息できただけ被害は少ない方だ」「・・・はい」
ミゲイラが本気でそう言っているのは分かる。ジンとて学校の教科書や野外学習、テレビなどで知ってはいる。だけど・・・実際に自分の目で見て、当事者になるのではそのわけは違っていた。``これでもマシ``・・・。そう慰められても、転がっている死体を・・・その何とか残っている一部でも、拾って運ばれていく姿。失った友や仲間、恋人に泣き崩れている姿は見ていて気分が決して晴れるモノではなかった。
〔私達は何度も見ています。そして・・・これからも・・・〕「(わかっている・・・)」
覚悟がまだどこかで定まっていない自分に無意識に握り拳を作ってしまう。するとそっと両手を優しく触れてくる人が居た。・・・カルローラである。
「あなたはずっと戦ってきたものね。辛い思いをさせてごめんなさい」「・・・」「ミゲイラちゃんから聞いたわ。ベルニカでもずっと必死に生きてきたものね」
優しく後ろから抱きしめるリレーネ。顔は見えなくてもその気配はカルローラ同様、本気でジンを心配してくれているモノだった。``違う``と心では否定したいが、説明するわけにもいかなかった。その答えの先に対して・・・純達には責任が取れないから。
「あなたの助けがなければ・・・今の私達はいなかったかもしれない。本当に・・・ありがとう。あなたの力がたくさんの人々を救った。私もリレーネも皆も感謝している。それだけは・・・どうか忘れないで」「・・・」
ゆっくりと振り返るとリレーネやミゲイラ、ユーダスにアミル、ルチルが微笑みかけ静かに頷く。他の騎士達も周囲で作業していた防衛隊も冒険者達もジンに向かってゆっくりと片膝を付き、頭を下げた。
〔例え・・・我々の個人的な目的が入っているとはいえ。彼等の感謝を・・・無碍には出来ません〕「(・・・・・・あぁ・・・そうだな)」
暗い表情をしていたジンの顔に少しだけ元気が戻っていたのを確認したミゲイラは部下達を方をみる。理解した彼等は残りの作業を再開するのだった。そこへ少し居心地悪そうにエルフの少女が現れる。「・・・あの・・・私は、どうすれば・・・?」と困っている所へ、少し仰々しそうに告げるミゲイラ。
「この問題はいずれ噴出するモノだった。それはどちらに誰が付こうが近いうちに・・・ね」「・・・」「奇しくも君はたまたまファーランでの生き方には合わず。そこを奴らに付け込まれてしまった。何とも嘆かわしい事に」「「「・・・」」」
妙に熱を入れた様な演説に妻達の間に苦笑の様な顔が浮かぶ。しかし彼の言葉は止まらない。
「君は奴らに利用されていた・・・・ただそれだけだ。実際、私の知る限りでは君は誰も殺めていない。・・・まぁ少々、羽目を外してしまった所はあるが、この様な悪行に比べれば非常に、可愛いモノだ」「・・・で?何をさせたいわけ?」「・・・ふ。話が早くて助かるね。・・・例え利用されたとしても蛮行に加担した罪は科さなければならない。よって君には私の指示に従い、救助活動の急務にあたってもらう。・・・(ボソ)これで罪がかなり軽くなる。後は私がどうとでもしよう。君のような人材がとても必要だからね」「・・・狸親父」「では、まず最初の仕事として、ここでの支援活動から始めたまえ」「・・・」
大きなため息と共にエルフの少女はユーダスへと振り返る。彼もまた1人の騎士に視線を送れば「こっちへ」と案内をし始め、2人で共に去って行くのだった。そんな彼女達が小さくなっていく後姿を見ていたジンの前で片手で頭を抱えてため息を吐いてしまうカルローラ。
「あなたは・・・」「ふふ♪・・・でも、分かっていたはずですよ~? これがあの子にとっても・・・私達にとっても・・・」
その言葉に苦笑しつつ微笑むだけのカルローラだった。「それでは、我々も」とミゲイラが部下達に指示を出そうとした時、連絡用アイテムからコールがなった。
「(携帯みたい・・・)」〔実際、同じようですね〕「私だ」「あぁ、繋がった。こちらオーラルです。先ほど連絡しようとしましたが繋がらなかったので・・・」「いや、すまない。少々緊急があったものでね」「おっと、そいつぁ厄介な問題か?」「いや・・・つい先ほど片付いたよ。強力な助っ人のおかげでね。ベルニカとファーランの方はどうだい?」「あー、こちらもかなりの被害を受けたが、どうやら大方の鎮圧には成功したとの報告が来ている。・・・特殊軍の力を侮っていたな」「こちらも同じだよ。いや~本当に助かったよ~。ケーティルちゃんからもちょっとは休みたいと文句を言われていた所だったから大助かりだよ」「・・・(グループ通話?)」〔ますます凄い技術ですね。明らかに文明の進み方が違いますよ?〕
少し驚いているジン達を置いて、次々とアイテムから誰かの声が聞こえてくる。その中には知った声も混ざっていた。
「スメラルです。こちらは・・・まぁ彼のおかげあってか問題になってはおりません」「やはり普通・・・。自国の重要警備の中心にいません? 老師?」「ガッハッハッハッハッ。そんな軟弱ではワシの後を引き継げんぞ?」「いえ。 あなたはもっと長生きするでしょう?」「同然だ。 ワシはまだまだ若いのでな」「防衛して頂けるのはありがたいのですが・・・あなたは今何処に?」「そりゃあ、強そうな奴の所だ」「「「・・・」」」「(何か、マジで苦労してそうだな?)」〔あの時も、少々強引な所がありましたからね〕「御身を案じてですよスメラルジザイア女王。魔法で回復したとしても、立て続けに問題が起きては民を不安にさせてしまう」「・・・そうですね」「それに・・・親友の形見には、こちらも先ほど助けられました」「!」「「「?」」」
通話の奥でガタガタと椅子を叩き落すような音と、少し慌てている給仕達の声が入ってきた。そんな彼等を遮る様に主がアイテムに声を掛けてくる。
「そこにあの子が・・・ジンがいるのですかっ・・・?!」「〔?〕」「います。話されますか?」「ぇ・・・あ、いや・・・す、少しだけ待ってください」
何やら先ほどとは違う慌ただしさが感じられなくもないなか・・・「ほら」といってミゲイラがアイテムを手渡してきた。「あの?」と聞くと微かに深呼吸を繰り返している様な音が漏れてくる。少しして、落ち着いた穏やかな声で話しかけられた。
「そこにいるのですね・・・ジン」「はい。えーっと・・・あの・・・」「(ボソ)ぁーそっか。 コホン。 こうしてあなたとお話しするのは・・・鎮魂の星畑以来ですね。あなたのおかげで私は一命をとりとめました。ありがとうジン・・・」「・・・えっ。あ、いや・・・その無事でよかった・・・です」「ふふふ。そう無理に畏まらなくてもいいですよ? あなたが無事で本当に良かった・・・」「あれ?でも・・・」「指名手配の事ですね。裏切者に先に手を回されてしまいましたが、私の健在が証明された以上。何も問題はありません」「まぁそいつらを今、ワシが次々と倒している最中なんだがな」「え?」「よぉ坊主、久しぶりだな。ま、お前さんがあんなクズ共に殺されるなんて、全く思っちゃいなかったがな。おめぇとは今度、本気で戦いてえからよ」「ガオウ老師、邪魔をしないでください」「おっと、こりゃあ失礼」「それとその話、後で詳しく聞かせてもらいます」「お、おぅ。(やっべ~。マズったか?)」「何とも面白い関わり方だね君は」「ははははは・・・」
どう返せというのか、ジンは適当に乾いた笑いで流す事にした。
「ジン・・・?」「?」「・・・いえ。あなたの力は・・・ミゲイラ殿達の話からも分かっております。本当はこんな事、頼みたくはありません。あなたはまだ子供。こんな事を大人がお願いするなんておかしな話です」「「「・・・」」」「それでも・・・あなたの、実力を知っている者の1人としてそして・・・女王として・・・お願い申し上げます。・・・世界を救うために、その力を貸してください」
何となく深く頭を下げられている様な気配がした。それは彼女1人ではなく複数いる様な感じであった。目の前に立つミゲイラもカルローラとリレーネ、ユーダスなども頭を下げているからかもしれなかった。
〔ジン・・・〕
相棒の言いたい事は分かっていた。
「(ああ・・・)やれる範囲で頑張ってみます」
それが精一杯の答えだった。
【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)
身体値 301
魔法値 314
潜在値 355
総合存在値 708
スキル(魔法):干渉、棒術 8、マナ零子 8、感応 MAX




