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転と閃のアイデンティティー  作者: あさくら 正篤
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418 厄介な置き土産

「(やっぱり多い)」〔どうやら当たりのようですね〕


 ジルベガンの国境を通過した途端。申し子の防衛外に出たと明確に分かるくらい、遥か数キロ上空を駆けているジンは戦場が乱戦しているのを目撃する。一瞬の迷い・・・しかし・・・。


「(多少乱暴だが・・・)」


 ジンは体を捻ると棒を大振りで振りかぶる。強力な風と水を纏った斬撃は巨大ゴーレムを中心に複数に分裂して飛ばした。乱暴な乱れ撃ちながらも標的の大きさで全てを命中させる。但し同時に大きなクレーターと裂け目を作ってしまう。これでも相棒による援護ありの状態であった。突然の出来事にいくつもの戦場が状況を確認しようと止まったり、混乱状態になっていた。


〔丁度いいです。ジンはそのまま巨大なモノを〕「すー・・・っ!」


 数十キロ以上も先にいるモノも鍛えた感知能力とサポートの支援による視界で補足して、連続で斬撃を飛ばしていく。その間にサポートもまた無数のシャボン玉を生成する。それはゴーレムとデッドグレムゲン達に向かって乱暴に降り注がれた。


 ドゴドゴドゴドゴドゴドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ・・・・・・!!!!


 ほんの5センチにも満たない小さなシャボン玉。だが降り注がれ直径70センチ、深さ3メートルの穴と10メートル以上の土煙が上がる様はとてもおいそれとやっていい攻撃とは思えなかった。至る所で剣山の様に舞い上がり、サポートの絶妙なコントロールで持ってゴーレムと敵集団だけが吹き飛んでいる。とても信じられない光景が辺り一帯、数百キロ以上の範囲で起こっていた。


「「「・・・」」」


 巻き込まれなかった者は呆然と、近くにいた者は爆風から逃げようと退避する。何が起こったのかまるで分らない、まさに天変地異に近い現象に彼等は感じていた。魔法防御、能力を使った障壁がほとんど意味を成さない。ただの暴力だった。


「(何なんだよっ・・・)」「がっ!」「ひぃっ! たす──!」「にげろ──」「いや──」


 優勢に立っていた戦況が何もかも変わっていく。協力者達の中にはデッドグレムゲンに助けを求め、巻き込まれて吹き飛んで行く。防壁を張っていた者、鋼鉄や宝石の様な頑丈なドームを作って身を守っていた者がガリガリと乱暴に削り飛ばされ、空いた穴から爆ぜる様に吹き上がる光景を生き残っていた反逆者達は目撃する。ガタガタと揺れるのは降り注ぐ何らかの攻撃による地面か、それとも自身の震えなのか彼等には理解できる余裕が無かった。


「っ!何なんだよおおお゛お゛お゛ーっ・・・!!」


 叫んだテロリストも空を睨み上げることなく、障壁を破壊され他の仲間同様、痛みと共に少しだけ空の旅を味わうのだった。


 数分後・・・。もはや辺り一帯は戦争という体を成しているのか、怪しい状態になっていた。だが残念な事に、細部までは数キロ上空にいるジンには分からなかった。


「・・・はぁ・・・」〔流石に少し飛ばし過ぎましたね〕


 レジスタンスから貰った回復薬では、まだ十分に回復しきっているわけではなかった。感覚では問題ないと思ったのだが、マナを使用してみて分かった。


「少し・・・合っていない」〔質の高さが仇となってしまったのやもしれません。私達の細かなマナに一部とはいえ適合しないものか不純物が混ざっていたのかも〕「高級って言ってたから。たぶん・・・今のオレ達のとは違う何か・・・」


 体の調子を再度確かめ、輝きを抑え粒子化を戻す。


〔可能性を上げればキリがありませんが・・・一番としては器と魂・・・の方かもしれませんね〕「・・・借りているズレか・・・。問題は?」〔・・・。マナを通した限りでは問題ありません。どこかで休まれますか?〕「・・・時間がないし、先ずはジルベガンの優勢を決めてからにしよう」〔分かりました。それではこのまま南下しましょう。・・・おそらくですが・・・〕「(コクリ)。ゴーレムのそこで一区切りだな」


 向かうは港近く。足元のシャボン玉を強く蹴りジンは加速する。翼人種の様な制空権を使った3次元の戦いを行っていた者達ですら彼の飛び出したスピードには視界に入れる事もできなかった。


 ・・・・・・


 そうして目的地へと到着すれば、超巨大ゴーレムをいくつも倒している状況に出くわしたのだった。他に比べて明らかに過剰戦力を投入されている事が分かる。10:3も良い所だった。


「(先にあっち)」〔下のは私が〕


 即座に担当を決めると、迷うことなく体や武器に力を籠め・・・振り抜く。轟音を上げ反対側へと倒れる様にして上半身を失ったゴーレムが地面に倒れていく。その大きな図体に比例して上がる土煙を無視して、斬撃で他のゴーレム達を切り裂く。まさに戦況を無理矢理、逆転させる一手だった。


〔ジン〕「?・・・!」


 サポートの呼び出しからのマナによる微かな誘導。見知った人物を見つけ、その場へと急ぎ降りていく。


「・・・ふぅ。大丈夫ですか?」「・・・助かるよ」


 若干笑みが引き攣っている様にも見えなくはないが、ミゲイラは本心から感謝の言葉を述べる。姿をしっかりと見えない。何らかの魔法が使われているのがすぐに分かる。それでも連絡と見当はすぐに付く。


「キミのおかげで・・・この国も優勢になるだろう」


 軽く息を吐いているが、どこか安堵の色が強い様にジンには感じられる。それは近くにいたカルローラやリレーネ、メルギスの同様に見受けられる。


「やっぱりマズい状況だったんですね」「・・・ふ。恥ずかしい話だが、その通りだ。正直、ここで彼等を足止め出来れば御の字といった所が正直な答えさ」


 もはや嘘を吐く気もないのか、ハッキリと述べる。


「おいおい。なんか知らねえが、そんなガキが、かつての英雄様の頼み綱かよ。がっはっはっはっはっ。とんだお笑い草じゃねえか」


 なあ?と同志であるエルフの少女の方へと振り返るが、彼女は冷や汗を流し、難しい表情をして睨むだけである。「おい、どうした?」というドワーフの男の声も耳に入っていないくらい小刻みに体を震わせ、鈍重な亀の様にゆっくりとまるで相手を刺激しないようにジリジリと後退していく。


「(何なのよ、あの化け物っ・・・)」「本当に助かりました。あと少し遅れれば、カルローラさんが攻めに向かう所でしたよ」「この中で前衛は私1人じゃない。・・・まぁ、それもどうやら無事になりそうね」「本当にありがとう~。確かに、ミゲイラちゃんの言う通り、予想できなかったわ~。うふふふふ~♪」


 既に勝った気でいる彼女等が気に入らない準申し子級の男。しかし、同志は飛び出したい気持ちを必死に押し殺し、気配を殺し逃げる事だけを考えていた。


「逃げる──」「あぁ。動かないでください」「!」「そこに魔法を仕掛けましたので」「・・・っ!」


 気付かない間に2人の周囲にはいくつもの大きさの違うシャボン玉がフワフワと浮いていた。


「まあ流れ的に、敵というのは分かるので、大人しく投降──」「馬鹿言うなよクソガキ。姿も碌に見せねえテメエが何偉そうに言──」「黙ってっ!」


 遮るように強く怒鳴った声に少しだけ驚く男。


「アンタ、分からないのっ・・・?! この魔法に込められた魔力を・・・」「あ?」〔ふむ。レジスタンスの方もそうでしたが、私達の魔力に敏感なモノがいるようですね〕「(普段と大して変わらないんだけど・・・)」〔先ほどのズレが関係しているのやも。やはり微調整が重要かもしれませんね〕「(・・・そうしたいけど・・・)」「──そんな問題じゃないわよ。だから私はこの件から潔く引くわ」「はっ、そんなにガキが怖いか?」「怖いわ。ハッキリ言って。私達は眼中にないから、まだ攻撃されてないのよ。いい加減、気付きなさいよ」「はぁ~ぁ。臆病風に吹かれやがって。ワシのしたい様にする。邪魔するな」「~~っ・・・! 勝手にしなさいっ」「どうやら向かってくるようだよ」「そんな暢気な」


 ドワーフ男が腕をグルグル回している姿に、ミゲイラが観戦気分になり思わずメルギスが肩を落とす。ちなみに彼ら全員には少し離れてもらいつつ、シャボン玉の中に包みサポートが守っていた。


「聞こえないかい?」「何がでしょうか?」「・・・周りね」「・・・どういう力なのかは分からないけど、ゴーレムとデッドグレムゲン達はさっきから吹き飛ばされてるわね~♪」「え?」「カルローラ様っ」「リレーネ様~・・・ってあれ? もしかしてっ!」「アミルッ、ルチルッ!」「「!」」


 ユーダスの声に条件反射で剣を構えた2人。飛び掛かってくるゴーレムを目の前に横から勢いよく振ってきたシャボン玉が通り過ぎた。あまりに早すぎて見逃してしまう所だったが、直撃を受けたゴーレムは一部を残しバラバラになって吹き飛んで行った。


「「・・・」」「油断するな」「す、すみません」


 反省しつつも、主人達の下へと駆け付ける護衛騎士達。大半の者達が微かに見える姿でもジンに気付き、どこか嬉しさと安堵の色を乗せて息を吐いていた。


「「・・・」」


 目の前の出来事に緊張感を高める者も2人ほどいた。少女の視線は、ほれ見た事かと冷めた視線で仲間を見ている。対して男は、自分の能力と経験を信じ己を奮い立たせ、戦闘に掛かろうとしていた。


「(これでもダメか・・・)まぁ、あの程度ならどうとでもなると考えているんだろうね」「すっかり観戦気分の様だけど。あなた大丈夫なの?」「ん?あれぐらいなら彼にとっては──」「協力者達よぅミゲイラちゃん。流石にあの子も誰が味方かなんてわからないじゃない」「ぁ!そりゃそうだ」「我々もこの大混乱状態では、なりすまされると見分けが付きません」「いっそ、寝返って投降してくれると助かるんだけど・・・っと、どうかしたかい?」「「「?」」」


 やる気を見せるドワーフの男を無視して、戦場の中央を見つめるジン。


「おい、どこ見てやがるっ! っ!」


 イラついた男のハンマーをシャボン玉で物ともせず受け止めた。「うぼぅっ!」別の水玉をお腹に叩きつけられた男は血を吐きあっさりと100メートル以上も吹き飛ばされる。何度もバウンドし盛大に大きな岩にぶつかると、ガラガラと崩れて埋もれていく。たった一撃。自分達も可能な何気ない攻撃にも関わらず、エルフの少女はその中に込められた重さと魔力の次元の違いを感じてガタガタと震えた。


「一応、大人しく捕まってくれると助かります。 ミゲイラさん、すぐに皆さんを避難させてください」「何かあるのか?」「・・・あるというか・・・。()()んですよ」「いる?」


 誰が?と彼等が仲間の顔とジンの視線の先を交互に見ている時、ジンは武器を強く握り、重心を下げた。〔来ます〕というサポートの合図に合わせて、数百メートル先の戦場の中心地近くへと飛び出した。


 ・・・ーーー、ガゴンッ・・・!! ズンッ・・・ブォォォオオオオオオオオ・・・!!


「「「うぉぉおあああああっ!!」」」


 沈みゆく地面。2つの衝突が生み出す衝撃波は嵐の様に周囲に突風を巻き起こし、居合わせた人々やガラクタも全てを遠くへと押しやった。爆心地には子供と見た事ない生物なのかゴーレムがいた。


 ・・・・・・


 ほんの少し前。浮島の中央にある円筒部屋・・・その管制室ではカタカタと急ピッチで操作するレネッタの姿があった。


「何事?」「まさか、飛ぶ船で来るなんて私も知らなかったよ。ヒース君達、仕事だよ」「おいおい仕事って──」「キミらの隊長達が、古代障壁で黙ると思う?」「「「・・・」」」「あら・・・♪ こんな所で再会できるなんて、まるで運命じゃない?」「あの嬢ちゃん達・・・どっちが先に殺せるか勝負と行こうじゃねえか?」「ふふ。楽しみ・・・♪」「「「(えぇぇ・・・)」」」「持ち場はちゃんと守ってね。ここを潰されたら終わりなんだから」「おう。ちゃんと分かってるって」「来た相手をどうするかは、構わないのよね?」「(ニヤ)」「そう来なくっちゃ♪」「さって、何処を攻めてくるかな・・・」


 楽しそうに拳を打ち付けたり、舌舐めずりをして部屋を出て行こうとするジャグラとリダリー。


「ちょっと、勝手に持ち場を決めないでよ。シッター様と私が決めるからっ」「やれやれ。いよいよ本格的な決戦っぽくなってきたね~」「ガッハッハッハッ。やはりあの女(ロクサーヌ)も来ていたか。今度こそ、懐柔して妻にしてやろう」「(ふるふる)・・・。品性がありませんね~」「ああ゛?」「お好きにどうぞ。僕は・・・少々残念な気分なので」「何かあったのか?」「いえ。少し期待していただけです。運命は味方してくれませんでしたが・・・」「「「?」」」


 好き放題言って部屋を出て行くデッドグレムゲンのナンバーズ達。彼等はレネッタの言葉を完全に信じたわけではない。ただ、映像に映るユティ達の実力を己で判断し、侵入してくることを確信していたのだった。だからこそ、事前通りの各々の持ち場へと移動していくのであった。レネッタ自身もそれは容認している。彼女達は目的の為に利害が一致しているだけで、仲良しこよしを求めているわけではないからだった。しかし、それに納得できない者もいる。いや・・・ただ単純に彼女(レネッタ)が嫌いな者達である。


「呆れた。よくもまあこれでチームが組めるわね」「後ろから刺されるなんてマジ勘弁なんですけどー」「お前等。ちょっとは慎めよ」「はぁ・・・(戦闘前からこれで大丈夫か?)」


 キネシュタとナルの反抗的な態度に、ちょっとだけ焦るベンドとジパーグだが、微かに漏れ聞こえる協力者達の声には似た様な不満の声が続出していた。それにはヒース達も少し困惑してしまう。


「おいおいレネッタちゃん。本当に大丈夫か?」「なんならオレが──」「止めとけよ。次期王に殺されるぞ?」「ぁ・・・」「・・・」


 宙に映る映像を黙って見ていたルグルットは、ゆっくりと忙しく操作するレネッタの下へと近づいて行く。「レネッタ」と声を掛けると動かしていた指がスピードを落とし、ピタッと止まる。そしてゆっくりと顔を持ち上げる様に振り返る。


「無理をしなくていい。障壁の計算や操作にも魔力を使っているのだろう。・・・それで何分凌ぐつもりだ?」「「「え?」」」「例え一時的に倒し、退けたとしても・・・第2第3がもし来た場合。同じ手は通用しない。ここで浮島はもちろんの事、なにより・・・君が倒れられるのがオレには我慢できない」「・・・気付いてたんだ」


 いつもの調子に周りには見えるがルグルットにはどこか無理を利かせている笑みにしか映らなかった。


「どれだけの付き合いがあると思っている。・・・君はオレの妻になる女だ。こんな所で倒れられては・・・王以上に、1人の男として・・・自分を罰しなければならない」「・・・私の我が儘だと言っても・・・?」「それでもだ」「・・・」「・・・」「・・・暴君ね。あの頃みたい・・・」「それで救えるなら、喜んで怒られるよ」


 彼の説得に折れ、ゆっくりと上体を起こす。微笑み合う2人に一部から不満そうな顔をするが文句は出なかった。そうして操作盤から離れようとした所で、思い出したように片手で何やら暗号を打ち込む。


「これだけはさせておいて」「何をしたんだ?」「さっきアナタが言ったもしもに備えてよ。私のお気に入りを1体だけ、地上に放っておいたの。半分・・・暴走状態になるかもだけど・・・。まあ、いいでしょ?」「ああ。多過ぎて困るよりマシだ」


 優しく伸びてくる夫の手に彼女もまた自然と伸ばして重ね合わる。どちらからともなくお互いを包み込むと次期王はゆっくりと振り返った。


「どれだけかは分からん。だが奴らは侵入してくる。協力者達よ。お前達の本当の力を私に見せてくれ」


 決して大きな声ではなかった。微かに響く警報や障壁を攻撃されている振動にも負けてしまう様な声量だった。それでも・・・彼の自信を持った通る声には、王の資格を持つに足る存在感があった。協力者達は自然と姿勢を正し頭を下げるとまるで統率の取れた騎士の様に部屋を退出していくのだった。それには近衛騎士だけでなくヒース達も、冷や汗を掻きつつ笑顔を見せるのだった。


 王としての資質が、着実に身に付き始めているのを実感したのである。


 ・・・・・・


 ワラワラとまるで長い髪が触手の様に動いているのを想像する。体の全長は4,5メートル程。それに対して伸びた黒い毛の様なモノはその数倍にまで伸びている。宙を思うままに動く髪が一部、束になるとどこかへと一直線に伸びていく。人を狙っているのかと思ったがそうではなかった。


「・・・」


 まるでジンに見せるかのように引っ張り出し、ユラユラと戻ってきたその髪が掴んでいたのは魔法石だった。沈みかけの夕日の中でも綺麗に輝くそれは、ゴーレムに埋め込まれていたモノであると推測できる。やがて持ち続けた宝石がみるみるくすみボロボロと砂の様に砕け散っていく。


〔面倒ですね〕「(嫌な触媒・・・) !」「!」


 ぶった切るつもりで棒を振れば、髪の触媒を密集させ防ごうとしてきた。1,2割ほどが斬られ、引きちぎれボタボタと地に落ちた。フシュ~と煙を上げてマナの一部が空へと霧散していく。それを目の前のほっそりとした人型ゴーレムらしき生物?は黙って見つめていた。見た事ない相手の挙動に行動が読めず攻め込むか一瞬迷っていると、突然金切り声と獣の声が混ざった叫びを上げてジンに襲い掛かってきた。


 ガンゴガンゴドドガッ・・・ガゴガゴドゴン・・・!!!!


 ユラユラと揺れる髪らしき触媒を巧みに操り、ジンを刺す、叩く、薙ぎ払う殴打と休む間もなく攻撃を繰り出す。その合間に自らもその細い腕を壊す勢いで振りかぶったり、殴り飛ばそうとしてくる。ジンも攻撃をサポートと一緒に捌き、反撃を繰り出していく。


 ドガドガドガガガガッ!!!! バゴンガドンドゴンッ・・・!!!!


「「「!!!!」」」


 大きな衝撃や爆発と同時に地面が裂け、クレーターが更に広く大きく作られていく。たった数秒で次々と変化していく地形に流石に争っていた者達も怯え、顔を引きつらせながら下がっていく。


「全員、一旦退避しろ。巻き込まれるぞっ!」「「「!・・・うわあああああ」」」


 ミゲイラの声に我を思い出した者から逃げる様に避難していく。すかさずミゲイラを一部の部下達に任せるとカルローラとリレーネはユーダス達やエルフの少女を連れて、戦闘中のジン達の近くへと走る。


「投降するって事で良いのよね? だったらあなたも手伝いなさい」「私にどうしろとっ。こんなのケーティルと同じじゃないっ!」「あの子はまだ全力ではありません。今の内に少しでも負傷者達を避難させるのです」「あれでっ?!」「私達がいるからよ。アナタなら分かるでしょっ? 申し子といっても込める時間が僅かでも必要になってくるけど、それは使い方次第」「ここであの方の邪魔をする事が我々にとっての敗北を意味します」「・・・」「また寝返ろうとしても無駄よ」「分かってるわよ。あのゴーレムっぽい奴この辺りの人間全部殺す気なんだから」「では、私達は冒険者達に協力を仰ぎながら、奥の方へ向かいます」「カルローラ様、リレーネ様。どうか無茶だけはしないでくださいよ~」「あなた達もね」


 2手に別れると即座にユーダス、アミル、ルチルは端的に告げながら奥へ向かって駆けていく。カルローラ達は大きな地響きと地形が変化するジン達の近くへと近づいて行く。


「無理無理無理無理っ!」「さっきまでの威勢はどうしたのよ」「行きますよ」


 両手を掴まれ強制的に激戦地へと向かわされる少女は涙目だった。よくこれで今まで裏で生きて来られたもんだと2人の師匠は内心思ってしまうが今はどうでもいい事だと切り替える。近づくと言っても彼女達が寄れる距離は精々が500メートルまで。それ以上は自分達の身も巻き込まれるので近寄れない。


「さあここよ」「あなたの今の力を見せなさい」「~~~っ・・・!」


 自棄っぱちと両手で杖を掲げ、地面に叩きつける。そうして自らの魔力で持って出来るだけ大きな障壁を張ろうとする。


「やれば出来るじゃない」「っさい! 話しかけないでっ」「・・・少し持ってくれれば助かります」


 薄っすらと光るオレンジの目に、カルローラが元弟子の張っていく魔法壁を見守りながら問いかけた。


「どう?」「・・・見えませんね」


 その言葉に薄く笑みが出てしまう。


「ふ・・・。国を視るよりも1人の行く末が視えないなんてね」「占星師としては恥ずかしいわ~」


 その割には軽い調子の2人にエルフの少女は``本当に大丈夫か?``と不安に思ってしまう。そんな彼女の心を見透かしたように教えてあげる師匠達。


「考え方よ。リレーネが視えないって事は決まっていない未来って事よ」「ええ。この戦争・・・。あなたが付いて行こうとした世界は決定していないもの」「・・・これは?」


 ぷるぷる震える体で必死に杖を掴んで魔力を注ぎ込み、障壁を何十にも張り続ける少女。今は世界の事より目の前だった。それに対して2人の師匠は笑顔を見せる。


「「勝つわ」~」


 自信満々に断言するその表情に理解できなかった。「(何故?)」という当然の疑問が浮かぶ。それに答える言葉は決まっていた。


「だって娘が認めた子ですもの」「お母さんとしては、信じる以外ないでしょう~?」「・・・はぁ~~~っ???」


 ますます意味が分からなかった。







  【ジン・フォーブライト(純、クリス)】8才 (真化体)


 身体値 301

 魔法値 314

 潜在値 355


 総合存在値 708


 スキル(魔法):干渉、棒術 8、マナ零子 8、感応 MAX

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